「映画でひとこと」−『えびボクサー』
(初出 2004/1/25〜29)


大学の試験が終わってホッとしたところでビデオを借りてきました。
タイトルは『えびボクサー』。
新作で、日本では去年劇場公開されたイギリス映画です。

かつて将来を嘱望されていたボクサーの中年男ビルが、突然変異で2m10cmに巨大化したエビを購入。
冴えない毎日から抜け出すべく、人間対エビのボクシングで儲けようとする。
ロンドンまで出てテレビ局に売り込みにいき、紆余曲折を経てなんとか番組出演が決定。
番組収録が始まるが、ビルの心境が変化して・・・・
というお話。

エビと人間のボクシング、って聞いただけで、普通の人なら「アホらしい」、B級好きなら「面白そう」って思う設定ですね。
言うまでもなく私は後者。
バカバカしくてくだらないのが大好きです。
ただ、観てみると、意外にもちゃんとお話が展開してるのにはビックリしました。
もうちょっとバカバカしさを徹底しても良かったのでは?と思うくらいです。

上のあらすじにもちょこっと書きましたが、ビルの心境の変化が一番のテーマじゃないかと思います。
そこはそれなりにシリアスです。
が、設定が設定ですからねぇ・・・感動する、ってほどではありません。
でもそこはイギリスらしさかなぁなんて思いました。
アメリカ映画なら、ラスト近くにビルがマイクで語るシーンはもっと感動的なものにするでしょう。
しかしイギリス映画であるこの作品ではかなり短いシーンになっていて、しかも語ったあとには別の男に「なんてつまらんことを言うんだ」ってな感じでけなされてました。
そこってイギリスっぽいなぁって思ったんですよ。
日本人と多少似た感覚なんじゃないでしょうか。
完全にストレートな感動のシーンを作るんじゃなくて、ちょっと照れくささを見せるというか、斜に構えた視点もある、そういうところ。
まぁどこをどう感動的に作ろうが、エビですからねぇ・・・
エビと人間が抱き合うシーン見ても感動できるわけないですね。
逆に笑えます。

感動できるってほどでもない上に、派手な面白さもありません。
ところどころクスっと笑えるくらいのポイントはありますが。
完全にギャグ映画として期待すると、見た後ガッカリするでしょう。
出演者も非常に地味。
それでも私はまぁまぁ好きです。
ラスト近くでビルがマイクで語ったセリフはありきたりです。
その内容は誰もが願うことなんですが、ビルは素直になれず拒絶していた願望です。
その彼が素直になってマイクで語る、それはエビを飼育したことによって起こった変化です。
そのプロセスは面白い。
「うーん、そうきたか」って思いました。
しかも中年の哀愁みたいなものも感じとれて、ちょっと切なかったですね。
私も中年の入り口にいるんでしょうか。
映画観てない人には何言ってるかさっぱりわからないでしょう。
わかりたい人は観てみてください。

それにしても最初はもっと強烈な映画かと思っていました。
『えびボクサー』だけに、パンチの効いた作品かと。
・・・おあとがよろしいようで。

(映画データ)
『えびボクサー』(英)
原題:『Crust』
公開:2003年(日本・・・日本以外の国では動物愛護協会の反対により、上映未定)
監督・脚本:マーク・ロック
出演:ケヴィン・マクナリー、ペリー・フィッツパトリック、 ルイーズ・マーデンボロー
管理人お気に入りポイント(★=1、☆=0.5。最高5):
★★★

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