「映画でひとこと」−『いまを生きる』
(初出 2003/10/1〜5)

多くの方の勧めで『いまを生きる』を借りてみました。
イギリスに留学してたときに、ロンドンの古本屋さんで文庫本買って読んだんですが(勿論日本語翻訳版です)、映画は未見でした。
私が中学生か高校生のときに、「アメリカ版金八先生」なんて謳い文句で宣伝されていたような記憶があります。

先生を演じるロビン・ウィリアムズ、いい演技してます。
にっこり笑って説得力ある言葉で諭す、教師としては理想的ですね。
で、授業の中で教科書を破かせたり、机の上に立たせて「違う角度からものを見なさい」とか言ったり、型破りな授業展開をするわけです。
現実的にはそんなにうまくいくわけないんですけど。
まあ面白いなぁとは思いました。
舞台はアメリカにあるガチガチの名門校で、そういうところで自立心を養い、リベラルな授業を展開する・・・ある意味スカッとするというか、気持ちいいです。
私も私立の中高一貫校で、結構クサクサとした閉塞感の中で学校生活を送ってましたからね(現在ではだいぶ自由なようですが)。

あと、高校生の生活を描いているだけに、見ていて恥ずかしくなるような青さがあります。
きっと若い人なら楽しく観れるでしょう。
年老いた人なら懐かしく、微笑ましく観れるでしょう。
私はなんだか恥ずかしいという気持ちが強かったです。
若くもなく、年寄でもなく、その狭間にあるせいでしょうか。

物語の中で大きな意味を持つのがニールの死でしょう。
原作でも自殺してましたが、映画では案外変更されてて死なないんじゃないかと思ってました。
でも映画でもやっぱり自殺してしまいました。
私はどうしても「死ぬことはなかったんじゃないの?」って疑問に思ってしまいます。
あの死によって、他の生徒たちが相対的に生を見つめなおすことになるならばわかるんですけど、先生が辞めるきっかけになってしまうという、なんともネガティブな方向でしか位置付けられていません。
そこはすごく納得いきません。

ラストもイマイチに感じました。
原作読んだときもそうでしたが、完結感がもう一つ足りません。
最後に学校への反抗心から、先生への思慕から、生徒たちが机の上に立って挨拶します。
先生が「ありがとう」と言って物語は終わりなんですが、あのあと生徒たちは叱られ、反省文の一つも書かされ、先生も特に辞めることに変更はなく去っていく。
そう想像されるんです。
なんだかすっきりしません。
あれで先生が戻ってくるとか、学校がもっとリベラルな方向に変わるとか、そういうハッピーエンドにはつながらず、結局バッドエンドって感じがします。
どうにもすっきりしませんでした。

この映画、好評を博しているようですが、私はちょっと辛目の観方をしてるようです。
授業のシーンはよかったんですけどね。
仕事柄参考にもなりました(笑)。
ただ、やっぱりニールを死なすことはなかったし、先生も辞めることなかったんじゃないでしょうか。
結果だけ見ると、体制側が勝利し、先生・生徒たちは敗れたって感じであまりいいエンディングじゃなかったなと。

このレビューを読みなおして、ストレスが溜まっている最近では爽快感あるハッピーエンドを観たがっている私に気づきました・・・

(映画データ)
『いまを生きる』(米)
原題:『Dead Poets Society』
公開:1989年
監督:ピーター・ウィアー
脚本:トム・シュルマン
音楽:モーリス・ジャール
出演:ロビン・ウィリアムズ、イーサン・ホーク、ゲイル・ハンセン
管理人お気に入りポイント(★=1、☆=0.5。最高5):
★★☆

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