「映画でひとこと」−『魔界転生』
(初出 2004/4/6〜13)

今回はいっぺんに二つの映画のレビューをしたいと思います。
二つといっても、一作品、つまり同じ映画の旧版とリメイク版の二つ。
去年あたりに封切りになった映画で、窪塚洋介が天草四郎時貞役で出演した『魔界転生』って映画がありました。
あれ、リメイク版なんですね。
以前の作品は、深作欣二監督で、1981年に製作されたもの。
小学校の時か、テレビで見たような記憶があり、そのおどろおどろしさと妖しさに惹きこまれたものでした。
で、昨日、休みにかまけて『ハリー・ポッター』の二作目のDVD(『ハリー・ポッターと秘密の部屋』でしたっけ?)を借りようとレンタルビデオに行ったんですが、借りたのは何故か窪塚版『魔界転生』と、『未来世紀ブラジル』。
とりあえず『魔界転生』を観たんですけど、どうしても元の深作監督版も見たくなって、ビデオを借りて観ました。

まずはあらすじ。
考えるのもめんどくさいのでAmazonから転載。
「島原の乱で徳川幕府に滅ぼされたキリシタンたちの若き長・天草四郎は、やがて魔界からよみがえり、現世に未練を持つ剣豪たちを転生させて幕府への復しゅうを誓う。柳生十兵衛は、彼らの陰謀に完全と立ち向かっていく。」
ってな感じです。
この転生させる剣豪たちがスゴイ顔触れで、宮本武蔵、宝蔵院胤舜、十兵衛の父・柳生但馬守宗矩など・・・
こいつらが十兵衛と闘うってんですから、侍好きの私などは胸踊るわけです。

窪塚版では荒木又右衛門という侍も転生し、十兵衛の前に立ちはだかります。
不勉強にして知らなかったもので、ちょっと調べてみましたが、『忠臣蔵』『曾我兄弟』に並ぶ、日本三大仇討ちの一つになっている伊賀越仇討の剣豪だとか。
「鍵屋の辻での三十六人斬り」で有名らしく、仇討ちは1634年。
島原の乱が1638年ですから、『魔界転生』の時代では最近ですね。
武蔵も宝蔵院胤舜もこの時期の人です。
どうせならもっと時代を遡って源義経とか、楠正成とか、いやいや坂上田村麻呂(強いんでしょうか・・・)とかまで転生させればいいのになぁとか思いましたが、どうも原作では当時死に際の人しか転生できないようになっているようです。
この荒木又右衛門を演じるは、加藤雅也。
かっこよすぎます。
「ん?荒木又右衛門なんていたっけ?」という疑問から深作版も観たくなったわけですが、後述。

窪塚が天草四郎なら、十兵衛は誰か?
佐藤浩市が演じてます。
あとは但馬守が中村嘉葎雄、武蔵は長塚京三、胤舜は古田新太、クララお品役に麻生久美子。
胤舜はどうしてもイメージに合いませんでした、自分の中で。
漫画『バガボンド』の胤舜は美少年系でかっこよかったし、逆に深作版ではもっと猟奇的だったんですよ。
それがなんだかあっさりしてしまって・・・これも深作版を観たくなった理由の一つ。
麻生久美子はなかなかあの若さにしては色っぽいなーって思いました。
でも深作版のはもっともっと佳那晃子が色っぽかったなー、と、ここでもまた深作版を観たくなったのでした。

一般には窪塚版よりも、深作版のほうが評判いいようです。
でも窪塚版にもいいなーと思うところはありました(深作版と比べて、じゃなくて)。
最後の天草と十兵衛の決闘も、まずまず好きですね。
窪塚のわけのわからんミステリアスな感じが活きているような気がします。
火花が雨のように降るなかでの決闘で、ちょっとテレビゲームみたいでしたが・・・
殺陣は、あんまり時代劇に詳しいわけではないんですが、但馬守=中村嘉葎雄の動きは流石だなーって思いました。
なので十兵衛対但馬守は、なかなかよかったですね。

又右衛門の件、胤舜の件、佳那晃子の件(最後だけ随分俗な理由ですが)の三つの理由で、深作版を借りて観なおしました。
キャスティングはこっちのほうがスゴイです。
柳生十兵衛は千葉真一、天草四郎はジュリーこと沢田研二、武蔵は緒形拳、胤舜は室田日出男、細川ガラシアは佳那晃子、伊賀の霧丸に真田広之、柳生但馬守は若山富三郎・・・
錚々たるメンバーです。
一番話題にのぼるのは、ジュリーの天草でしょう。
妖しさ満点、演技も冴えてます。

荒木又右衛門は、深作版では登場しません。
代わりといってはなんですが、オリジナルで佳那晃子演じる細川ガラシアが転生させられてます。
これが色っぽいんですよ。
麻生久美子にはない艶っぽさが・・・
まぁ佳那晃子は脱いでますからね。
反則っちゃあ反則です。
それから室田日出男の胤舜ですが、「女を犯して殺したい」という願望を持つ、とんでもない変態坊主として描かれてました。
これを小学生のときに観たもんですから、強烈なイメージとして残ってますね。
トラウマとまではいきませんけど。
但馬守の若山富三郎は、動きが違います。
素晴らしい。
窪塚版の但馬守・中村嘉葎雄もよかったですが、さすがは若山先生、段違いにいいです。

原作のほうは読んでませんが、他に天草の軍師・森宗意軒や柳生如雲斎、田宮坊太郎から由比正雪までが出てくるそうです・・・読んでみたくなってきましたよ、ほんとに。
Vシネマで十兵衛=渡辺裕之の『魔界転生』では由比正雪など出てくるようですが・・・さすがにもう観ない!
二つを比べると・・・やっぱり深作版のほうがいいかなぁ・・・
ジュリー=天草が刎ねられた自分の首を持って高笑いするシーンとか、記憶にバッチリと残ってますもんね。
それなりに衝撃的だったんでしょう、小学生の私には。
しかしそれを「かっこいい」って思ったってことは、そのころから私はアンチ・ヒーローだったことがよくわかります。

それに私は「一度死んで(あるいは死ぬほどやられて)復活して、パワーアップして破壊の限りを尽くす」お話が大好きなんですよ。
窪塚版より深作版のほうが、そのテイストは濃かったなと。
小学生にして観たときも、十兵衛よりも天草を応援してましたもんね。
というわけで深作版に軍配。

(映画データ)
『魔界転生』(日)
公開:1981年/2003年
監督:深作欣二/平山秀幸
出演:沢田研二、千葉真一、緒形拳、真田広之、若山富三郎/窪塚洋介、佐藤浩市
管理人お気に入りポイント(★=1、☆=0.5。最高5):
★★★★/★★★

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