「映画でひとこと」−『ロベルト・ベニーニのMr.モンスター』
(初出 2002/11/20〜21)


今日、2本も映画を見ました。
で、せっかくだから感想など書いてみようかと思いまして。
書くなら「マンガでひとこと」みたいにシリーズ化するのもいいなぁとも。
というわけで「映画でひとこと」。
まだ「マンガ〜」も1回しかやってないのにいきなり違うシリーズ始めちゃいます。

見た映画は『リトル・ダンサー』(2000:英、原題『Billy Elliot』)と、『ロベルト・ベニーニのMr.モンスター』(1994:伊/仏、原題『Il Mostro』/『Le Monstre』)。
とりあえずは後者を紹介しましょう。
監督・脚本・主演のイタリア人、ロベルト・ベニーニは『ライフ・イズ・ビューティフル』で有名ですね。
あらすじは、ベニーニ演じる一般市民・ロリスが、誤解につぐ誤解から連続殺人の容疑者となってしまう。
警察は囮捜査として女性警官・ジェシカを彼と同居させるが・・・という感じ。
『ライフ・イズ〜』を見た人は、あの映画の前半が最後まで続くと思ってくれて大きくは違わないです。
シリアス度ゼロの、100%コメディ。
ドタバタ喜劇って感じですが、『ライフ・イズ〜』と同じく、周到に用意されたシチュエーション・物語展開がすばらしく、ベニーニの才能の高さがわかるってもんです。

意外性から笑うところももちろんあるんですが、「あー、こうなるやろなー」と予測できるところでも笑ってしまう。
これは私にとっては驚きです。
私は、自分が思いつかないようなことに対して「負けたー」って感じで笑う人だったのに、予測できてしかも予測した通りになっても笑える。
以前ならありえなかったことです。

これは一つには俳優・ベニーニ自身の喜劇的才能によるものでしょう。
あの喋り方や行動、仕草、身振り。
そういった要素だけでも笑わせる何かがあるんだと思います。
ひょっとしたらそういうのが喜劇の原点ではないでしょうか(と、喜劇の何たるかも知らないくせにちょっとえらぶってみる)。
さらに突っ込んで考えると、あのキャラクターによって、私のなかの「笑いの障壁」というか、「お笑いプライドの壁(なんじゃそりゃ)」みたいなものが低くされてしまうんでしょう。
ほら、同じようなギャグでも知らんお笑い芸人がやってるのを見るより、仲のいい友達がやってるのを見たときのほうが笑えるってことあるでしょう?
それって自分のなかで「笑いの障壁」の高さが違うからだと思うんです。
とにかくベニーニには愛嬌がありますから。
あれで一気に「笑いの障壁」は低められてしまいます。

もう一つにはイタリア人というところからくるものなのか、陽気さというか、楽観的な雰囲気があって、それが私の中で笑いを起こさせやすくする素地を作るんでしょう。
イギリス留学中に一緒に勉強したイタリア人たちも、みんな陽気で明るく、ポジティブで楽観的な人たちでした。
イタリア人のそういうところは大好きで、一種憧れさえ抱いています。
私はこう見えて(どう見えて?)、案外悲観的で厭世的で、すぐにイヤになって投げ出してしまう性格ですからね(会社も大学も辞めてしまった経験あり)。
しかも彼らは、特に映画の中のベニーニは、単に明るいだけではなく、ウィットに富んでるんです。
とんちが利いてるというか(笑)。
それも嫌味が全くない。
ベニーニのセリフを聞いてると(というか聞きながら字幕で読んでるわけですが)、ああいうのが本当の「知性」ってもんなんじゃないの?と思います。
今言った「ポジティブ・楽観性+知性」は、『ライフ・イズ〜』の後半ではさらにそのシリアスで悲惨なストーリー展開と対照化されてることによって際立つんですが、それはまた別の機会にお話しましょう。
それにしても、本当にあんな風になれればなぁ、と思ってしまいます。

理屈はさておき、とにかく笑って明るくなりたいときには特効薬となりうる一本。
しかもほのかなお色気もあり。
見るしかないでしょう、これは。

(映画データ)
『ロベルト・ベニーニのMr.モンスター』(伊/仏)
原題:『Il Mostro』/『Le Monstre』
公開:1994年
監督・脚本・主演:ロベルト・ベニーニ
出演:ニコレッタ・ブラスキ(ベニーニの奥さん)
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★★★★★

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