通信で英語の教員免許をとるには


最初に

 私は慶應義塾大学文学部通信教育課程(長いな・・・)に、英語の教員免許取得を目的に入学しました。私の他にも教員免許が欲しい!って方がいらっしゃるかと思います。しかし悲しいかな、教職コースのシステムは非常にわかりにくくなっていて、そのために「えー!この科目取っとかないといけなかったの?」と後でわかって卒業を先延ばしにしないといけなくなったり、あるいは「どれとどれを履修したらいいのかさっぱりわからん…もういいや」と投げやりになってしまってヤル気を削がれてしまったり(ちなみに私はこういうタイプです…子どもみたいですが)といったことがあるんじゃないでしょうか。そこでポイントをしぼって簡単に英語旧法適用の教職コースを中心に(新法もできる限りフォローしながら。旧々法はあまり需要がないと思うのでカット)、「道案内」をしようと思います。

 まず最初に、やるべきことを極めて簡潔に2点、挙げておきましょう。この2点はすべての科目、適用法に共通です。

 

1. なるべく早く『教職関係履修案内』を入手する
2. 『教職関係履修案内』と『塾生案内』に基づいて単位取得計画をたてる

 

 『教職関係履修案内』は、教職をとる人にとってはまさにバイブルです。教職コースに登録した時点でもらえるのですが、夏のスクーリングの時なんかに800円程度で買えるので、最初から教職目的で入学した人は早いうちに買っておきましょう。「どの科目を取らないといけないか」とか、「どういう手続きを取らないといけないか」ということが事細かに記載されています。ただし細かすぎてイヤになるんですけど…。そして、教職に関するイベントと、卒業要件は密接に、というかぐっちょんぐっちょんに絡み合っているので、『塾生案内』も援用して単位取得計画をたてます。

 と、以上の2点を実行すれば、教員免許は取れるのです。…で終わるとこの記事の意味がないので、以下に、より具体的なポイントを挙げて解説しましょう。次の4点です。

 

T. 適用法律の確認
U. 科目の決定
V. イベントと前提条件の確認
W. 卒業時期の設定

 

 ではこれら4点について、各々見ていきましょう。

 

T.適用法律の確認

 まずはこれをしないと始まりませんね。自分に旧々法旧法新法のいずれが適用されるのか、『教職関係履修案内』で確認しましょう。どの法律が適用されるかにより、履修する科目の条件やイベント(例えば介護等の経験や教育実習など)の有無や内容が変わってきます。適用法律は入学した時期や学士入学かどうか、などの条件によって決定されますが、これ一つ取っても吟味すべき項目は多いので、ゆめゆめ怠りなきようご注意を。スタート地点から転ばないように…

 

U.科目の決定

 適用法律がわかれば、今度はどの科目を履修しなければならないかをチェックしましょう。科目は@総合教育科目、A教科(私の場合は英語科)に関する専門教育科目、B教職に関する専門教育科目、の3つにわかれます。

 @総合教育科目は36単位以上とありますが、そのほとんどは卒業に必要な単位を利用することで充足できます。。注意すべきは必修の科目が2,3あるということです。それは旧法の方は「法学(憲法含む)」と「体育実技(2単位)」、新法の方は「法学(憲法含む)」と「体育(実技でも理論でも、2単位)」と「情報処理」と「外国語コミュニケーション(英語のリーディングやライティング、『教職関係履修案内』参照、2単位)」です。まだ専門に入っておらず、総合教育科目を取らないといけない方は、これらを踏まえて履修しましょう。

 A教科に関する専門教育科目も、そのほとんどは卒業に必要な単位を利用することで充足できます。例えば英語科で言えば「英語学概論」とか「中世英文学史」とか「日米比較文化論」とか、まぁ普通の専門教育科目ですね。ただしこれもA〜D群に分けられていて、各群の履修条件があるので慎重に科目を選択してください。少しややこしいのがスクーリング科目「英会話」で、『教職関係履修案内』でもある部分では「履修が必要」なんて書いてあるけど、旧法適用の個所を見ると必修ではないように書いてある。そこで大学事務所に電話で問い合わせたところ(こっちもちゃんと授業料払ってるんだから、わからないことがあればガンガン質問したりして事務員にも働いてもらいましょう)回答は、「旧々法では必修ですが、旧法、新法では必修ではありません。が、履修した方が望ましいです」という、なんともお役所的な言い方でした。要は、旧々法以外の人は必修じゃないんですねぇ。

 B教職に関する専門教育科目は、一部卒業に必要な単位を利用できます(教育学、教育心理学、教育史)が、多くを卒業に必要な単位以外に追加的に履修しなければなりません。旧法の私の例で言うと、教育実習の3単位を含めて14単位を追加履修する予定です。教職を目指し、まだ教職コースに登録してない人も、「教育学」、「教育史」(「教育心理学」はオススメしない)を履修しておけばベターでしょう。

 

V.イベントと前提条件の確認

 これは『教職関係履修案内』の「履修方法」を確認して欲しいんですが、教職コース登録から始まる…わけではないんです。教職コースを登録するには前提条件があって、卒業論文指導登録を済ませておかなければならない。で、『塾生案内』を見ると、卒業論文指導登録を済ませるには前提条件があって、これは『塾生案内2001』の149頁を参照してください…という風に、この前提条件というのに泣かされるのがこの項目「イベントと前提条件の確認」の意味です。上記のような「前提条件の前提条件」なんかがあるので、これが曲者なんですね。この「前提条件」のフローチャートを作ろうかと思っていたんですが、そんなことしてる時間がないので割愛させてください。

 さて、イベントの流れを大雑把に見てみましょう。教職コース登録後の大きな節目は3つあります。すなわち、@教科教育法履修、A実力テスト、B教育実習、です。それと流れにはあまり関係ありませんが、介護等の体験というものもあります。これは教職コースに在籍している期間であればいつでも構わないみたいです。また、条件によっては(こればっかり)免除される場合もあります。詳しくは『教職関係履修案内』参照のこと。

 流れからいうと、@教科教育法履修が節目の第一段階です。これは教科書でもスクーリングでも履修できますが、スクーリングの方がオススメです。確実に単位が取れる(と思う)し、レポートも提出しなくていいんですから。しかも授業はすこぶる楽しいものであります。これはスクーリングで取るしかないな、と思って何も考えずにスクーリング登録の時までノホホンとしているとえらい目にあいます…そうです、履修のための前提条件があるのです(但し新法の方は条件なし…ウラヤマシイ)。詳述しませんが、既得単位に関する条件と、卒論指導を1年以内に受けているという条件をスクーリング登録時までに満たさなければならないのです。

 A実力テストですが、英語科の場合はこれが厄介ものです。通学課程の学生でも骨を折るほどの難易度。TOEFLやTOEIC、英検の既得資格によっては免除されるので、そっちで頑張った方が早い場合もあるかもしれません。私はTOEICの方で免除してもらいました。

 そしてラストはB教育実習です。やっぱりこれには前提条件があって(ウンザリしますが)、@の教科教育法履修済みであることやAの実力テストをパスしていることに加え、細かい条件がいろいろあるんですが、中でも重要なのは、教育実習をする年度が最終学年であること、つまり実習年度には卒業見込でないといけないということです。ここで必要になるのが卒業予定申告です。ここまで粘り強く読みつづけてくれた方はもうおわかりですね?そう、卒業予定申告にも当然前提条件があります。卒論指導を受けているとか、既得単位の下限とか…これについては『塾生案内2001』、154頁を参照してください。つまりここで絡んでくるのが次の項目…(つづく)

 

W.卒業時期の設定

 (つづき)なんですね。卒業時期をきっちり決めて単位を取っていかないと、教育実習できない、教育実習できなければ教員免許は取れない、というわけです。まぁ単位取得計画をたてると自動的に卒業時期も設定されるんですけどね。要は綿密に計画をたてて、その上で学習を進めていかないと、あとで思わぬ落とし穴が待っているということです。

 

最後に

 前項に書いた通り、結局最後には綿密な計画が重要になってくるわけで、最初に指摘した2点に集約されるわけです。

 ここまで読んで「どこが"簡単に説明"じゃ!わかりにくいやないの!」と思われる方もいらっしゃるでしょう。是非『教職関係履修案内』をお読みいただきたい。向う様はさらに難解でございます由。これでも極めて大雑把でわかりやすい解説を目指したつもりです。また、私の脳にとっては『教職関係履修案内』はあまりに入り組んだ内容なので、私にも誤解、誤読があるかもしれません。以上をお読みになって記事中の間違いに気づかれたかたは指摘していただければ幸甚です。それからくれぐれも申し上げますが、教職コースの履修に関する手続きや科目の選択、計画立案などはしっかり『教職関係履修案内』及び『塾生案内』を自ら確認し、必ず自己責任で行ってください。「ここに書いてある記事を見て履修したら、とんでもない目にあった」という苦情は、申し訳ありませんが受け付けかねます。紙面の都合上、多くの細かい「前提条件」などをカットして掲載しているわけですし、教職は本当にややこしいので私も本記事について100%の自信を持っているわけではありませんので。あくまでも「大体こういう感じなんか」という概要を参考程度に捉えていただければと思います。

 あと、上でも述べた通り、「前提条件のフローチャート」や、また「たいが的教職履修モデルプラン」なんかも脳内企画としてあったのですが、今回は見送らせていただきます。

 蛇足ですが、これほどまでに教職課程がややこしくなった原因の一つには、法律がコロコロと短期間に2回も変えてしまったことがあります。また、「介護等の体験」制度も比較的最近のものですが、この必要性には個人的にはクエスチョンマークです。さらに英語科に限って言えば、コミュニケーション手段としての英語を重視すべしとの文部科学省の見解とは、食い違った教科科目の履修内容(バランスから言って英米文学、英米文学史関係が多すぎる)など、教職課程にはまだまだ改善すべき点があると思います。今は変革への過渡期なのかもしれません。まぁ文句を言っても免許取るまでは「負け犬の遠吠え」になってしまうので、頑張って勉強して、できるだけ早く免許を取得し、卒業できるように頑張りましょう。この記事がその一助になれば幸いです。

 

HP版編集あとがき

 以前にワードで作った自分の記事をこうしてhtml化したわけですが、出来としては「とにかく見にくい!」(笑)。正直ワード版の方が見やすいです。太字やら色やらごちゃごちゃしてて、文字も小さい・・・(でもなんか大きくするの、イヤなんですよね)。それから履修案内が2001年度版に拠っているところからわかるように、データをアップデートしてない。最新の教職関係履修案内は、前のよりも多少わかりやすくなってたような気がします。むしろそっちを見たほうがわかりやすいかも・・・。しかもしかも、今じゃ旧法適用者よりも新法適用者の方が多いかもしれないんですよね。なんか今更って感じの記事になっちゃいました。

 元々のは去年(2002年)の3月に、2,3時間でサクっと書いたもんなんですねぇ。それを元にもう一人の文学会会員の方が、加筆・修正してくれたのが、文学会会報誌に載った記事です。私的には最近サイト更新してなくて、だからといって新しいものを書く気もあまりなく、「過去の遺物でごまかしちゃえ」なんて安易な気持ちでこの「study!」コーナー立ち上げたんですが・・・案外大変でした。ちょこちょこ直したり編集したりするのが。

 とにかくわかりにくい記事ですが、ほんの一人でも二人でもこの記事で教職履修について有益な情報が得られればなぁ、と思います。

2003/8/19     たいが

 

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