タイトル狼男、スペインへ行く
書き手
 谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
のスペイン旅日記です。 2002年4月30日から
5月8日までの旅の模様を短期集中連載する予定。
ビバ!スペインの情熱的な気持ちで見たこと聞い
たこと感じたことを書くんドス。オラオラオラ〜




第1回  そもそもなぜスペインなのか?


そもそも俺はスペインのことは
よく知らなかったのである。

今回スペインに行くことについて
何人かの人達はこう言っていた。
「スペインは一番行きたい国だった」
特に女性がそう言っていた。
魅力的な国であることに間違いないようだ。

で、なんだか申し訳ないような気がするけど
俺はそれほどスペインに強い関心はなかった。
というかよく知らなかった。

俺の世界地図には
基本的にはプロレスのある国しか
インプットされてない。
スペインにプロレスはないし、
スペイン出身の格闘家というのも
あまり聞いたことがない。

あと俺と世界の接点といえば
音楽くらいだけど
スペインのミュージシャンといっても
フリオ・イグレシアスくらいしか思い浮かばない。
ジプシーキングスは確かスペイン人じゃないよね。

映画にしても「What?」
スペイン映画も見たことあるかもしれないけど
パッと思い浮かばない。

そういうわけでスペインは
非常に縁遠いというか
未知なる国だった。

もちろんテレビや雑誌で見たことのある、
たとえば白い家の街コスタ・デル・ソルなんかは
一度は行ってみたいなと思っていたけど、
「一度はハワイに行ってみたいな」とか、
そういう誰もが思うような気持ちと
それほど変わらないものだった。

でも、「地球の歩き方」をめくると
スペインにはミロやダリ、そしてピカソの美術館がある。
「ゲルニカ」の本物も見られる。
それはぜひ行きたい!…と思ったのだけど、
その美術館がある街を訪れるのは
日曜日だったりメーデーだったりして休館日らしい。
今回のツアーには組み込まれてなかった。

ちなみに闘牛も行きません。

あと、スペインといえばガウディ!なんだけど、
ツアーの日程表には「サグラダ・ファミリア」という
文字も見つけられなかったので
てっきり行けないと思っていた。
ま、「ガウディの傑作聖家族教会」と書いてあったから
わからなかっただけの話なんだけど。

…なんだけど、なんだけど、と
気勢の上がらない始まりになってしまった。

これでは、じゃあなんで行ったの?とか
本当は行きたくなかったの?とか
そんな人が行くなんてズルイ!とか
思われてしまいそうですが、
とにかく旅をしたかったんです。

旅はいつだって面白い。
国内だろうが海外だろうが
どこかへ行ってつまらなかったことはない。

そして、予備知識のないところに
行くのは面白い。
むしろ知らない方がワクワクする。

で、旅先になぜスペインを選んだのかというと
今回発見したツアーが非常に安かった
というのが一番の理由です。
ミもフタもないけど、それはやっぱり大きい。
他のGW中のスペイン旅行の約半額だった。

いつかは行こうと思ってた国だし
俺はヨーロッパに行ったことがない。
いい機会じゃないか。

しかもスペインは
キリスト教の文明と
イスラム教の文明が
混在してるということだ。
それはなんていうか
今まさに興味深いテーマでしょう?

いずれにせよどこかには行きたい。
でも、いま猛烈に行きたい国はない。
…ということで、ほぼ即決。
すぐに申し込んだのだった。

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

そして4月30日、成田空港。

税関を抜け、免税店の奧にある
喫茶店にツアー御一行は集結していた。

添乗員さんから今回の旅について
いろいろ説明された。

彼女が強調していたのは
「スペインは非常に治安が悪い!」
ということだった。
その悪さたるやヨーロッパでも
随一を誇るらしい。

ひったくりやかっぱらいが日本人を
狙っているので、バッグは持ち歩かない方がいい。
もちろん現金やパスポートも。
ホテルの部屋も安全ではないので、
ドアの前にはイスを置いておいた方がいい…等々。
そしていくつかの実例も紹介された。
確かに恐ろしい。

その実例を聞いた俺は
あまりの恐怖にブルブル震え、
思わずちびってしまった!

…というのは嘘だけど、
まあ飲みすぎてへべれけにならないよう
用心しよう!とは思った。
結局、日本にいる時より
飲んじゃうことになるんだけど。

そんな話を聞きながら
「地球の歩き方」のスペイン語のページを見る。

もちろん俺はスペイン語なんてさっぱり。
「グラシアス」「アディオス」しか知らなかった。
「ハイ!」にあたるのが「オラ!」ということも
今まさに初めて知った。

オラオラオラオラオラ〜!=ジョジョの奇妙な冒険
…で、これはすぐ覚えられた。まあ簡単だし。

そして数字の読み方も予習。
2はドス!
そうか、ドスカラスのドスは2って意味だったんだ!
4はクワトロ!
そうか、クワトロ・バジーナのクワトロは4って意味だったんだ!

結局、覚えられた数字はこの2つと
1のウノ。これはウノさんという知り合いがいるからだが、
その3つしか覚えられなかった。

自分の教養のなさを痛感するわけだが、
事実なので仕方ない。
まあ、数字くらいなら英語で大丈夫だろう。
だめなら身ぶり手ぶりだな。

さて、そうこうしてるうちに
我々を乗せたスイス・エアラインは出発した。
眼下に見える千葉の田舎風景はやがて
海に変わり、そして氷だらけのロシアに変わる。

たぶんシベリアと思われる
荒涼とした氷の大地は果てしなく、延々と続く。
こういう風景を見てると、
やっぱり地球はとんでもなく大きい惑星で
まだまだ人間が足を踏み入れてない土地も
いろいろあるんだろうなぁ、と思う。

そこには氷の中で生活してる
たとえば「氷族」なんて未知の種族も
いたりするんじゃないだろうか。

彼ら氷族は、強く抱き合ってしまうと
溶けて消えてしまうのだろう。
だから愛の結実は死を意味する。
彼らにとって恋人との抱擁は一生に一度だけ。
死は至福の瞬間だ。
溶け合って二人は正に「愛の結晶」となる。
氷族、なかなかロマンチックな種族だ

…などと赤ワインを飲みながら
妄想してるうちに寝てしまう。

飛行機はユーラシア大陸をズンズン横断していく。

起きてしばらくすると
ドイツ上空らしかった。

モニターの表示を見ると
シュツットガルトあたりらしい。

シュツットガルト!
といえば、問答無用で
猪木vs“墓掘り人”ローランド・ボック戦だ。
「シュツットガルトの惨劇」と言われる
伝説的な試合が行われた舞台。

今回、俺の不在中の5月2日に東京ドームで
新日本プロレス30周年記念大会が行われる。

だが、そのラインナップはとてもじゃないが
30周年に相応しいとはいえないお粗末なものだった。
今ここで「猪木vsボック戦」に思いを
馳せてる方がよっぽど30周年っぽいな、
とか、ぼんやり考える。

それにしてもローランド・ボック、
どこへ消えてしまったのだろう…。

この機内ではレイモンド・チャンドラーの
「湖中の女」を読んでいた。
フィリップ・マーロウはピューマ湖ダムで
水面に浮かびあがる女の死体を発見していた。

我々がスイスに着くまでに
事件は解決するのだろうか。

成田からトランジットで立ち寄る
スイス・チューリッヒ空港までは約12時間。

ドイツまで来たのでもう数時間だ。
事件が解決する前に
スペインに着いてしまうだろう。

それにしてもウトウトしていて
物語があまり頭に入ってこない。
チャンドラーの文は
相変わらずカッコイイんだけどなぁ。

機内では、機内食以外にも
モナカアイスやおにぎりのサービスもあった。
ロゴデザインもオシャレだし
スイス・エアラインはなかなかいい。

さあスイスだ。

(つづく:スペインに着くのはたぶん次回)





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