タイトル■カメとプレの不思議な世界
書き手 ■加藤さこ

ヌマガメ、リクガメなど4匹のカメ、
そしてプレーリードッグを飼っている彼女が、
カメやプレーリーを飼うことになった経緯や
野生動物としての彼らの現在の状況、
不思議な生態と格闘する楽しさと厳しさ、
いろんなエピソードを語ってくれるコラム。
ある意味、知られざる世界の入口かも。

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【第4回】 困惑のネーミング

ペットに名前を付けるとき、
あっさり決まるときと、
ものすごく考え込んでしまうときがある。

カメに名前を付けるとき、
すごくジジくさい名前が浮かんでしまう。
カメの行動がジジくさいから仕方ないのだ。

村上春樹の「ねじまき鳥〜」に
名前がないと、うしろから呼びかけるときに
困る…というようなくだりが出てくる。

ペットの場合も、名前を決めないと
呼びかけるとき、非常に困る。
名付けずにいると、
「チビ」とか、「オイ」とか、
ヘンな呼び方になってしまう。

その昔、付き合ってた男と、
ペットの名前のことで
大喧嘩したことがあった。
私が猫に『ねこ』という名前を
付けたことで怒りをかってしまった。

「『ねこ』は種の総称で、名前ではない」
これが彼の言い分。
「おまえがもし『人間』と名付けられたら
どんな気持ちだ」
と怒鳴られた。
数日後、このことがきっかけとなって、
この人とは別れることになってしまった。

この猫だけを可愛がるつもりで、
他の子を飼わないようにという気持ちを込めて、
すべての猫の代表として、
『ねこ』と名付けたつもりだった。

名前に対する思い入れは、
人によってものすごく違うことを
この喧嘩で実感した。

そして私は性懲りもなく、
初めて飼った亀に
『カメ』と名付けた。
カタカナの「カメ」というのが
私にはすごく可愛く思えたからだが、
亀はこの子だけという気持ちも
込めていたはずだった。

しかし、私は掟を破り、
2匹目を飼ってしまった。
迂闊なことに、他のリクガメに
一目惚れしてしまったのだ。

2匹目としてウチに来た
ホルスフィールドリクガメは
「やま」という名前を付けた。
これは「太陽にほえろ」という
ドラマに出てくる「やまさん」
という刑事から頂いた。
「やま」は、ジジくささの中に
キラリと光る渋さを持っていたのだ。
私以外は気付かないだろうけど、
確かに持っていた。

「やま」は、風呂に入ると
おならをするし、
エサを食べたあとには
口をニチャニチャさせるし、
ミドリガメの「カメ」とは違い、
すごく人間っぽい。
それもちょっとお下品な
オヤッさんという感じ。
でも、瞳は子供のようにキラリとしていた。
私のイメージでは「やまさん」だった。

私にとって名前は、
春樹の小説のくだり同様、
それほど重要なものではないけれど、
実は獣医にもらった診察券を見るたびに
ほんの少し、後悔をしている…。

診察券の名前の欄に「加藤カメ」と
書かれているせいで、
私の本名は「カメ」と思い込む人が
出てきてしまったのだ。

私は「加藤カメ」と呼ばれることに
抵抗を感じてしまう。
ということは、カメがイカした名前とは
思っていないということかもしれない。
少しだけ、ミドリガメの『カメ』に
すまない気持ちが湧いてきた。

ごめんね、カメ。
でも、ホントに可愛い名前と思うよ。







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