タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎
「狼はガガーリン空港へ行く」を主宰している男
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。
>>これまでの記録
<111> 5月15日(水)
■■ イナゴ少女 ■■
夕暮れに見かけた
一人の少女の話をしたい。
少女は高校生だった。彼女は友達と二人して
つまらなそうな顔をしていた。二人は特に会話もなく、
時々、思い出したように
氷の溶けきったオレンジジュースを
退屈そうに飲んでいた。でも僕には
彼女が存在している店の一角が
なにか特別な空気を
作り出しているように見えた。そう、僕を激しく
混乱させ揺り動かす
何か特別な…
…と、村上春樹チックに
書き出すとなんだか
せつなく甘酸っぱい恋物語でも
始まるような気がする。しない?
まあいいや。
どのみち、そういう物語は始まらなかった。
彼女が特別な空気を
発していたのには
明確な理由があった。ウンコ座りをしていたのである。
それも地べたにじゃなく、
イスの上にウンコ座り。
IN マクドナルド。
足を曲げたそのポーズは
イナゴに似ていた。
それにしても
なぜイスの上でウンコ座り?
しかも30分以上そのポーズだった。
かなり疲れるはずである。
社会へのささやかな反抗?
それとも痔持ち?
あるいは練習熱心なキャッチャー?
やがて彼女の携帯が鳴った。
「SAKURAドロップス」だった。
ウンコ座りのイナゴ少女と
せつない恋のメロディ。
なにか青春の屈折感を
象徴した場面をみたような気がした。
しない?
まあ、いいや
ただそれだけっす…
(つづく)