タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

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これまでの記録


<117> 5月25日(土)

■■ 海の見える生活 ■■

よく晴れた初夏のような土曜日。
鎌倉・湘南方面へ出かけた。

「数年後には海の見える家に住みたい!」
と家人が発作的に言い出したので
そのロケハンである。気の早い話だけど。

これまで俺は「川のそば」を
中心に引っ越し先を選んできた。
江戸川、鶴見川、荒川、中川、
そして再び江戸川。

今の家は江戸川まで一駅離れてしまうが
まあ近いことは近い。
小さな川も近くにはある。

高校生の頃、上京の下見に
一度東京にやってきた。
その時に江戸川の広々とした
河川敷を見て、えらく感動した。
「東京っていいなぁ〜!」

もしかすると金八先生などのドラマで
大きな河川敷=東京の青春
という刷り込みが強烈にあったのかも。

まあ、潜在意識についてはよくわからんが
とにかく俺は川が好きで、
東京=大きな川のある街というのが
最初に抱いた東京のイメージだった。

だから、川のそばを選んで引っ越してきた。
あと制覇してないのは多摩川だけ。

しかし、海には縁がなかった。
故郷である長野県には海がなく、
年に一度、新潟まで海水浴に行くかどうか
という育ち方をしたので、
海はあくまで非日常的な存在。
日常的な大自然といえば、山だった。

けれども、クラビやモルディブに旅行し、
海を見ながら数日過ごす経験をしてから
「海のある毎日はいい!」
と意識改革がなされてきた。

だから家人の提案には特に異論はなかった。
ただ引っ越すとなると
海があるだけでなく、街の雰囲気や不動産状況など
様々な要素が重要になってくる。

また鎌倉にしろ江ノ電沿いにせよ、
もう何年も行ってないので、
記憶がおぼろげだ。
住むことを前提にした上で
しっかりロケハンし、
その上で引っ越しを検討したい。

というわけで、
横須賀線に乗り遠路はるばる
鎌倉方面へ。

昼頃到着したので、
まず駅前にあったレストランに入る。
特製オムライスと鎌倉ビールを注文。

オムライスはこの店自慢の卵焼きに
チキンライスをとじこめたもので、
これがフンワリフワフワでうまい。
他のメニューもどれもうまそうで、そそる。
うまい店がある街はいい。
鎌倉に住みたい度ワンポイントアップである。

小町通りをぶらぶら歩く。
鎌倉には何度か来たことがあったのだけど、
この商店街を歩くのは初めてな気がする。

観光地化された商店街なのだけど、
ここがなかなかいい。

古都の趣きを残す民芸調の店が多く、
また視界の先には山や緑が見えるので
松本のナワテ通りという商店街を彷佛させ、
身体になじむ。

うまそうな店が多く、いい匂いがする。
いちいち入ってみたくなる。
住みたい度グングン上昇。

八幡宮方面まで歩き、そこから
由比ヶ浜まで歩く。

リゾート地のようなオープンカフェや
バーが何軒もあり、そそる。
こういうとこにパソコンを持ち込んで
毎日シゴトする生活もいいな…と妄想。

海に着く。
かなりの賑わいだ。
バーベキューをしてる若者達、
ギターをひいている恋人達、
昼寝している家族、
そしてサーフィンをしてる人々。
楽しそうだ。

俺もこのへんに住んだら
ヒクソン・グレイシーのように
毎日サーフィンするのかも。
「狂った果実」の太陽族のような生活。
それもなかなかいい…!
など、あれこれ想像を巡らせる。

ま、実際にはそうならないだろうことも
これまでの経験上わかっちゃいるが、
それでも確かに海が近くにある生活はいい。
問題は不動産状況である。

不動産屋が非常に少ないことからも
賃貸物件は少ないことが予想される。

いくつかの商店街を歩きながら駅に向う。
わずかだが、不動産屋はあった。
予想は当たった。
賃貸物件は少なく、家賃も高い。

純粋な希望としては、
海のすぐそばで3LDK、大きなバルコニー付き。
あるいは小さな庭のある貸し家。
家賃は12万円以内。

しかし、そんな夢ははかなく消える。
んな物件あるわきゃない!
そういう状況のようだ。当たり前か。

古い家が多く、ちょっとした路地でも
情緒あふれる鎌倉駅周辺は魅力的だが、
ここで部屋を探すのは困難そうだ。

じゃ、江ノ電方面に行ってみようと
まずは七里ヶ浜へ。

山の斜面にバルコニーの大きな素敵な家が
いくつもある。スペインのミハスのようだ。

しかし商店も少ないし、不動産屋もない。
つーか海のそばには賃貸物件が見当たらない。

あっさり探すのはやめ、
目の前に海が見えるイタリア料理店に入り、
バルコニー席でビールを飲んで、まったり。

車が多すぎるのが気にいらんが、
確かに毎日海が見えるのはいいだろうなぁ。

そこから海沿いに稲村まで歩く。

江ノ電の線路沿いにはステキな家が多い。
大きなバルコニー、ハンモックのある庭…、
緑が多く、閑静なリゾート地という趣き。
すっかり気にいるが、やはりアパートなどない。

「マンション建設反対!」という
看板がいくつもあった。

線路沿いに古い日本家屋があり
「御自由にお入りください」
と書いてあるのが目に止まった。

線路をひょいとまたいで入ると
古びた畳の上で家具や食器を売っていた。
廃屋みたいな建物なのだが、これまたステキ。
縁側があり、そこからは海も見え、
風鈴の音色が心地よい。

いい生活だなぁ…
と思いながら、そこを出る。

住むのは不便そうだが、稲村はいい。
しかし超売れっ子作家にでもなって
一軒家を建てない限り、
こんなとこに住むのは不可能だろう。
…つまり、果てしなくムチャ!?

絶望的な気持ちと妙な野望が渦巻く
微妙な気持ちになったが、
それはそれとして
夕暮れの稲村を歩くのは気分がよかった。

せっかくだから大仏も見ていこう、
ということで次は長谷へ。

喉が乾いたのでソフトクリームを買うことに。
ラムネ味を1個注文したのだが、
おじさんは「もう1個なんか付けようか」
と言ってくれるので、お言葉に甘える。

ところが、おじさんはダブルトッピングに失敗。
まずは1個ラムネのみのを渡され、
「もう1個あげるから」とおじさん再度トライ。
でもまた失敗。結局、3個もソフトクリームをくれた。
値段は1個分。いい人だ。しかしいいのか?

ソフトクリームをペロペロしながら、
鎌倉の大仏を眺める。

夕暮れの大仏もいい。

俺は昔から大仏が好きだ。
大仏であればなんでも好きといっていいが、
鎌倉の大仏は特に好み。
野外にいるのがなんといってもいい。

スペインではキリスト教やイスラム教の
ケタ外れにすごい教会やら宮殿を見てきたが、
はやり大仏を見る方が心が安らぐ。

俺は、というか日本人は
巨大な偶像への崇拝心や憧れが強いのだろう。
だからウルトラマンやゴジラなどの
巨大ヒーロー文化は日本独特なものなのだと思う。

大仏がすぐそばにある生活もいいな、
と思うが、はやりこの街にも
あまり不動産屋は見当たらなかった。

日も暮れたので帰ることに。

引っ越し計画については
互いに口にしなくなっていた。

まあいずれにせよ数年先の話。

ぼちぼち考えるとするか。



(つづく)





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