タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

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これまでの記録


<122> 6月3日(月)

■■ ブラジルとイタリア ■■

急ぎの仕事を片づけテレビをつけると、
ブラジルvsトルコは後半に突入していた。

ブラジルは、マット界でもここ約10年で
急激におなじみになった国である。

1993年にコラルド州デンバーで行われた
第1回アルティメット大会で
ブラジルの無名な青年ホイス・グレイシーが
いきなり優勝し、世界を震撼させた。

それまでブラジルは
プロレスファンには縁の遠い国だった。
ブラジル人のプロレスラーはほとんどいなかったし、
故ボボ・ブラジルだって
ブラジルなのは名前だけでアメリカ人。
(本名ヒューストン・ハリスさん)
ブラジルとは、アントニオ猪木が育った国、
という接点くらいしかなかった。

なぜ、そんな格闘技に無縁な(当時の認識)国の
痩せた小柄な青年が、マッチョな強豪アメリカ人を
次々と秒殺することができたのか?

やがて、それは「グレイシー柔術」という、
路上の護身を想定した実戦用格闘術のおかげだと判明する。

その昔、柔道がまだスポーツ競技化される以前に、
前田光世という一人の日本人柔術家がブラジルに渡り、
まだ柔術と呼ばれていた、柔道の実戦用技術を
エリオ・グレイシーという男に伝授していたという。

エリオはその技術を、息子やその一族に教え、
その柔術を身につけたグレイシー一族は、
ブラジルではバーリ・トゥード(なんでもあり)と
呼ばれるノールールの試合で、
無敗を誇っていたことが明らかになった。

いわば格闘技の裏世界を支配していた一族だったのである。
突如、歴史の表舞台に現れた神秘の血族。
ここからグレイシー柔術最強の神話が始まる。

グレイシーに限らず、ノールール戦の本場
ブラジルの柔術家はみな強かった。勝利への執念も異様。
治安の悪い国ならではなのだろう。

打倒グレイシー!打倒ブラジル!打倒柔術!は
日本の悲願となり、何年にも渡って連戦連敗が続く。

徐々に、ブラジル人や柔術家を倒す選手も現れたものの、
打倒グレイシーという願いは果たされることはなかった。

そして1997年10月11日東京ドームで行われたPRIDE1。
400戦無敗と噂され、ホイスの10倍強いと言われる、
グレイシー一族のボスキャラ、ヒクソン・グレイシーに、
日本プロレス界の大物・高田延彦が挑む世紀の一戦が実現。

だが、高田は無惨な秒殺負け。
翌年に再戦するも、また惨敗。
絶望感は頂点に達した。

だが、救世主が現れる。
その名は桜庭和志。

99年11月に、エリオの五男ホイラー・グレイシーを破り、
翌年5月、90分を超える死闘の末、
遂にホイス・グレイシーから勝利を奪った。

“グレイシーハンター”として
日本のみならず世界の英雄となった
桜庭の残る獲物は、ヒクソンだけとなる。

だが、ヒクソンは対戦を避け、
この一戦は今だ実現していない。

無敵となった日本のエース桜庭、
だが2001年3月、思わぬ伏兵
ヴァンダレイ・シウバに敗れることになる。
それはまたしてもブラジル人だった。

大方の人間は、これはフロックだと信じた。
だが、同年11月、桜庭はリベンジを挑むも再び敗れる。
シウバは本物だった。

そして今年2月、リングスのエースだった田村潔司が
満を持してシウバに挑むも、やはり完敗。
シウバはPRIDEミドル級において今や敵なしだ。

シウバの勢いは止まらない。
2001年のK-1王者マーク・ハントを倒した
事実上K-1最強の男、ミルコ・クロコップとも
異種格闘技を行い、引き分ける。

またヘビー級でも、リングスのKOKトーナメントを制し、
PRIDEに殴りこみをかけ、PRIDEヘビー級王者となった
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラが頂点に君臨している。
彼もまたブラジル人である。

再び、今マット界のテーマは打倒ブラジルである。

…ハッ!

前置きのつもりが
ついつい長くなってしまった。
本題はサッカーの話である。

そんなわけでブラジルは因縁深く、
また非常に馴染みのある国なので、
そういう意味で
ブラジル代表には注目していた。

いやー、ブラジル人は
やっぱりサッカーでもブラジルだなぁ!
アグレシッブでスピーディー、
ブラジルのサッカーはシュートボクセのようだった。

シュートボクセというのは、シウバが所属する軍団で、
獰猛で攻撃的な戦法で、今マット界の台風の目となっている連中です。
もちろんブラジル人集団。

サッカーファンには当然のことなんだろうけど、
サッカー音痴のプロレスファンには、
そういう見え方が新鮮で興味深かった。

当たり前だけど、顔もみんな見慣れたブラジル人顔だし。

あの凄いドリブルとか見てると惚れ惚れするし、
マット界では敵だけれど、馴染みがある分、
今後もブラジルは応援しようと思ったのだった。

そして、今度はプロレスファンには
まったく無縁な国、イタリア軍団が登場。

噂には聞いてましたけど、
つくづくカッコいいですなぁ…(ため息)
しかもほぼ全員かい。

監督までステキなロマンスグレーだ。

選手の顔がアップになるたび
一緒に見ていた家人は大騒ぎである。

「かっこい〜トッティ〜〜〜〜ッ!!!!!!」
「ホント、かっこいいいね〜!!!!!!」
「この人も、かっこいいいね〜!!!!!!」

強くて、若くて、かっこよくて、金持ちですか。
言うことありませんな。

しかし何ひとつ共感できませんな…。

片や、エクアドルはみんなカッコ悪い。
見事に対照的なほど。(すいません…)

必然的に(?)俺は「がんばれエクアドル」!

…しかし、非情なほどの実力差。

地道で小刻みなパスな繰り返すエクアドルにイライラ。
ドカベンでたとえると、
バントばかりしてた地味な集団、信濃川高校っぽいな。
もっとドカーンといかんかい!

一方、イタリアはプレイも優雅で華麗。
まるで花形満ですな。
ビエリだけは、ガルルル…!としててちょっと違う印象だけど。

結果は、イタリア快勝。
まあやむなしか。

それにしてもすっかり
ワールドカップ日記になってしまったこのコーナー。
この状態はたぶん続くでしょう。

さて、いよいよ次は日本か。


(つづく)





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