タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

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これまでの記録


<136> 6月18日(火)

■■ 赤と青の明暗 ■■

日本の敗戦で放心状態が続く中、
テレビではイタリアvs韓国戦が始まっていた。

「ま、一応みるか…」
すっかりW杯観戦意欲も衰えてしまっていた。
酒もツマミも用意してないあたりが、
昨日までの自分と大いに違ってしまった証明か。
実際あまり飲む気になれなかった。

イタリアの先発メンバーには
我らがダークヒーロー・デルピエロの名前があった。
トッティ、デルピエロ、2大スター初の共演だ。
少しだけ見るモチベーションが上がった。

「日本の分も韓国にがんばってもらいましょう!!!」
とか実況の人は言っているけど、
悪いけど全然そんな気分にはならない。

こっちはトルコに負けているのだ。
強豪イタリアに善戦するだけでも株を上げられる
韓国がねたましい、ぶっちゃげた話。
あ〜あ、初戦はやっぱブラジルの方が良かったか、
と今さら言っても仕方ないことを思う。

で、正直言って韓国はこれまでも強かった。
でもなんかダサイんだよなぁ、暑苦しいし…
というしょーもない理由で応援してないんだけど、
イタリアに勝ってしまう可能性も大いにあると不安だった。

試合が始まり、最初に韓国にPKの大チャンスが訪れる。
や、やっべー!
これまでのほとんどの試合が、先制点を取った方が勝っている。
もちろん日本しかり…。
イ、イタリアが負けるのか…!

しかし、アン・ジョンファンのシュートを
守護神ブフォンが食いとめる!すげーよブフォン!!

危機一髪のピンチを脱出したイタリアは
やがてビエリのヘッドで先制点を獲得。
これでホッとした。

韓国もがんばってるけど、もう決まったでしょ。
うんうん、同じような展開で負けるってことで
共催国同士、最後まで仲良くしましょうね。
すっかり大船に乗ったつもりで、俺も寛大になっていた。(?)

イタリアはデルピエロをひっこめ、
早々に守りの体制に入る
しかし、韓国は待ってましたとばかり
攻めの布陣をひく。
…おいおい大丈夫かイタリア?

で、当たり前の話だが、
韓国に負けるつもりなど微塵もなかった。
イタリアのピンチが再三続く。
ブフォンの奇跡的なプレイでなんとか
凌いではいるものの、やばいぞ。

すっかり身を乗り出して見ていた。
ビールも飲み始める。

熱血!根性!気迫!
そんなスポ根マンガ的な言葉が
よく似合う韓国の猛攻が続く。
やっぱりすげえわこのチーム。
イタリアと五分以上に渡りあっている。

こんなに必死なイタリアも初めて見た。
予選リーグとはまるで違う本気バージョンだ。
互いが全力を尽くし、魅力を爆発させあっている。
攻めも攻めたり!守るも守ったり!
気迫、技術、熱気、すべてがスゴイ。
息がつまるようなものすごい戦いだ!!
これぞ名勝負!!W杯のベストバウトかも!?

応援してなかったはずなのに
韓国の攻撃力、精神力にもぐいぐい魅せられていく。
奇跡を起こしそうな異様なエネルギーが確実にある。
「あーっ、日本にこういう試合を見せて欲しかった!!」
思わず叫んでしまう。

そして後半もあとわずか、
イタリアがこのまま逃げ切れるかと思いきや、
韓国が遂にゴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ル!
ぬぅわあああああああああああああああ。

遂にやらかした!ミラクルだ!
こりゃ延長になったら、間違いなく韓国が勝つぞ。
やばいよ、イタリア!

そして延長戦に突入。
イタリアのピンチは続く。
そして、なんとトッティにレッドカードが!
ホントかよ!

なんてこった〜〜〜〜〜っ!
ってことは勝っても次はトッティ出場停止か。
…とか言ってる場合じゃなく、
これでビエリ一人になっちまっただよ。
だからデルピエロを代えるなって言ったんだよ!
インザーギを出そうよ、トラパットーニ監督さんよおお!
はっ…しかしPKまで持ち込めば
こっちには守護神ブフォンがいるのだ!
こうなったら、逃げきるんだアズーリ!

…こちらも錯乱気味で絶叫である。

しかし延長後半12分、
アン・ジョンファンがゴ〜〜〜〜〜〜ッル!
…やっちまった
遂に激闘に終止符が打たれた。
韓国が勝った…
執念の大逆転勝利だ。

しかも最初にPKを失敗したアン・ジョンファンが
フィニッシュを決めるという劇的すぎる幕切れ。

大爆発する真っ赤なスタンド。
次々に打ち上げられる花火。
放心するイタリア…。
一緒に放心する俺…

でも悔しいけど、韓国は勝って然るべきチームだった。
ポルトガル、そしてイタリアまで撃破。
すごいよ。次はスペインも殺るかもしれない。

敗れたけどイタリアもやっぱり強い。
とにかく両者とも素晴らしかった。
最高級の戦いだった。
これがベスト8に残るということかと思った。

この弩級の名勝負を見たことで、
日本敗戦のショックはすっかり吹っ飛んでしまった。
気迫、根性、技術、試合のクオリティ…
あらゆる意味で、日本は韓国に負けてた。
もちろんだけど、イタリアにも。
ベスト16は妥当な結果だったんだなと思った。
世界のトップレベルはまだまだ遠いわ。

クールでスマートな「青」の日本・イタリアは敗れ、
ホット、というか、熱血・根性・努力の
泥臭い色に見える「赤」の韓国・トルコが勝った。
赤と青の明暗がハッキリ分かれた。

赤は今日のラッキーカラーだった。

とかそういうことではなく、
ユニフォームの色はチームのカラーそのものを
象徴していたのかもしれない。

「青」より「赤」の戦い。
日本が次にめざすべき段階のヒントはそのへんにあるのかも、
そんな気がした。


(つづく)





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