タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎
「狼はガガーリン空港へ行く」を主宰している男
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。
>>これまでの記録
<137> 6月19日(水)
■■ 再び「模倣犯」 ■■
映画「模倣犯」応援BBSが
大変なことになっている。
http://mohouhan.yahoo.co.jp/
肯定派と否定派が入り乱れての大討論会だ。
賛否両論が分かれる映画だろうとは思っていたけれど、
まさかこれほどの盛り上がりを見せているとは…!肯定派は「こんなに考えさせられる映画は初めて見た」と絶賛し、
否定派は「こんなにつまらない映画は初めて見た」と激怒する。実際、映画館で隣に座っていた女子高生は
「なにこれ?ぜんぜんわかんねー!」と吐き捨てていた。で、俺はというと「また最初から見てー」と興奮してる。
このBBSでは、肯定、否定いずれにせよ、その温度が高く、
まるで「新世紀エヴァンゲリオン」最終回を巡るあの大論争のようだ。
こういう作品は久しぶりなのでは?謎についての様々な解釈から結末についての是非、
映画の見方、人としての生き方、そしてメディア論に至るまで、
かなりの意見が飛び交っていて、実に面白い。映画の中でもブロードバンドが重要なファクターとして扱われるが、
まるでこの掲示板も映画の一部だ。いや、実際それも狙いなのだろう。
そこにある種の怖さを感じつつも、
様々な意見を読み、いろいろな解釈を知り、
またそれを確かめに映画館に足を運びたくなる。だからリピーターがやたら多い。
既に3〜4回見てるという人もざらだ。俺もすでに2回見に行っていて、また見たいと思っている。
映画館を出て現実に戻ってから、ジワジワと迫ってくるものがあり、
またそれを確かめるために映画に戻りたくなってしまう。
かなりの中毒性、ハマる快感がある。エンターテイメントで哲学する映画、現実にフィードバックする映画、
監督自身がそう呼ぶこの作品は、まさに狙い通りの結果となった。性善説か性悪説か?
環境か血か?
自分の役割とは何か?
そんな哲学的テーマに思いを巡らせる。テレビに映る中居正広、
事件を報道するニュース番組、
コマーシャルという奇妙な存在、
多チャンネル、インターネットの行方…などなど
普通に見ていたメディアの見え方も変わっていく。
そしてそれらについてBBSで様々な人々の意見を知る。
そしてまた映画に戻る。
現実と映画を往復し、回転し続ける運動体。
おそらく名作と呼ばれることはないだろうけど、
かなりの人々の心の中で、現在進行形の現実として生き続ける映画。
そういう意味では、過去にあまり例のない作品なのかもしれない。
『模倣なんかじゃない。世界で初めての事件ですよ』
ぜひ多くの人に体験して欲しい映画である。
(つづく)