タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

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これまでの記録


<139> 6月24日(月)

■■ 放浪の果てに ■■

午後3時近くに昼食を食いに出かけた。
最近発見した、うまいラーメン屋へ向かう。

いつも行列ができている店だけど
この時間なら空いているかも!
という目論みは、見事にはずれた。
…休みだった。

仕方ないので、その先にある別のラーメン屋へ。
しかし辿りつくと、ここも「支度中」。

もう結構家から離れてしまっている。
自転車をこぎながら次の策を考える。

ここから家までの帰り道にはいくつか店がある。
フォルクス、マクドナルド、スパゲティ屋、とんかつ屋、洋食屋…
でも、どれも気分じゃなかった。
パンでもない、米でもない、パスタでもない
麺だ。今日はラーメンの気分だ。

担々麺を食べよう。
家の前を通り、駅前通りの中華料理店に向う。

…やっと着く。

ガーン!ここも「支度中」だった。
いつもフルタイム営業してるのに…。

うっ、となると
もう他にはうまいラーメン屋はない。
困った。

今日はやらなきゃいけないことも多く、
めしに時間をかけている余裕はないのに…!
焦ってきた。

でも、時間も時間だもんな。
マックかパン屋で何か買って
家で食べようか…?

しかし、いつもならすぐ
「マックでいいや」と妥協する俺なのに、
なぜか今日はそう思えなかった。

こうなったら、意地でもどこかに入ってやる!
そんな厄介な意地が芽生え始めていたのかもしれない。

そこから俺の放浪の旅が始まった。

もう何を食べたいのかもわからなくなっていた。。
とんかつ屋、そば屋、メキシコ料理屋、定食屋、喫茶店、洋食屋…
昼飯を求めて、東西南北、街中を彷徨った。

しかし、どこも「支度中」「準備中」だ。
なんてことだ。

候補の店が次々に消えていく。
有力チームが次々と消えていくワールドカップのように…。

妥協はしながらも
明らかにまずそうな店には
やはり入りたくない。

そして無駄に時間が経過していく。
心なしか日も暮れてきた。
空腹も限界に近づいている。

途方にくれた。
いつの間にかまた自分の家の近くに戻っている。
だが、その前を通りすぎる。

なにやってんだろう、オレ…。

再び、最初に向かった
ラーメン屋がある通りまで
戻ってきてしまった。
「ふりだしに戻る」である。

「フォルクス」があった。
営業中だ。

肉を食べたいわけじゃなかった。
しかし、もう仕方がない。
家を出てからかなり時間もたっている。
妥協も時には正しい選択だ。

何より、ここがもう世界の果てに思えた。

「フォルクス」に入った。
お客は誰もいなかった。
パートのおばさんが一人で掃除に励んでいる。

ポッツーン。
だだっ広い店の真ん中に一人で座る。

さんざんメニューを検討した挙げ句、
最も凡庸なハンバーグランチを注文。

本を読みながら食べたいので
ライスではなく、パンで。

本が開いた状態をキープできるように試行錯誤。
本の右はじに、重量のあるステーキ皿をのせ
ページがめくれないようにする方法を発見。
闘魂三銃士の自伝『烈闘生〜傷だらけの履歴書』
を読みながら、食べる。

海外武者修行に出た武藤敬司が
プエリトリコ、ダラス…など
様々なテリトリーを彷徨っている。

ああ、まるで今日の俺のようだ…。
俺って武藤?グレート・ムタ?(←正常な思考ができなくなっている)

それにしてもこの店、
さっきから誰もお客がこない。
ずっと俺一人だ。

静かすぎる。
時が止まっているようだ。
世界に俺一人しか存在してないようだ。

砂漠のド真ん中に
一人取り残されたような気分だ。

思えばオアシスを求めて、長い旅を続けてきたものだ。
ラクダにも苦労をかけたね。疲れたろう?
ふふ、それで辿り着いたのが「フォルクス」とはね。
笑ってくれ、ラクダよ。
うふふ、あはは。(←正常な思考ができなくなっている)

ふと食べているものに目をやる。
ハンバーグとパン。

これならマクドナルドで十分だったのでは…
バーガーなら本を読みやすいし、何より早い。

長い苦難の旅の末、手に入れた財宝が
実はちっぽけでつまらないものだった、
そんなオチか。
うふふ、あはは。(←正常な思考ができなくなっている)

砂漠つながりで
「アラビアのロレンス」のテーマが
頭の中で壮大に、そして悲しく鳴り響いていた。

(つづく)





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