タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎
「狼はガガーリン空港へ行く」を主宰している男
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。
>>これまでの記録
<148> 7月6日(土)
■■ 七里ヶ浜とウクレレ ■■
15時から七里ヶ浜で取材なので、
渋滞を考慮に入れて12時に一之江に集合し
カメラマンM氏の車で出発。ところが道がすいていた。
少なくとも2時間はかかると見ていたが
13時半にはもう鎌倉に着いてしまった。そんじゃ由比ヶ浜で水着ギャルでも眺めてますか!
…と盛り上がったものの、
由比ヶ浜は、誰もいない海。いや、海の家を作ってる人達はいたんだけども
水着ギャルはおろかサーファーもいない。
「ま、平日だし、曇だしね…」
と落胆しながら、すぐに七里ヶ浜に向う。七里ヶ浜には、サーファーがたくさんいた。
たしかにこっちの方が波が高かった。
そういうことか。
でも水着ギャルはいなかった。カレーが激ウマと噂の「珊瑚礁」に入って
時間をつぶすことにした。
メニューに珍しい「ビーフカツカレー」を発見し
1700円だったが、せっかくなので注文。
生も少々。意味不明に贅沢してる。ビーフカツといえば薄い肉なのが相場だが、
ここのは分厚かった。
ステーキ、いやトンカツのよう。
すごいボリュームで食後苦しくなる。
カレーもビーフカツもうまかったけど、
脂、とりすぎたな。まだ時間があるので、
海岸に出て缶コーヒーを飲みながら
男二人でボーッと海を眺める。やっと時間になる。
今日はウクレレの製造・インストラクターをしている
三井さんという人の取材である。海岸から山の方へ歩くこと5〜6分、
坂の途中に「OFFICE T」はあった。三井さんは日産のデザイン部門で
自動車の内装を手がけていたインダストリアルデザイナーから
今の仕事に転職した人。趣味で習い始めたウクレレだったが、
師匠に後継者として指名されて、
会社を辞めて、1年前から
このスタジオ(家)ごと引き継いだそうだ。現在はウクレレを作り、
ウクレレ教室を開き、
日本で唯一のウクレレ専門職人として
活躍されている。部屋に飾られたたくさんのウクレレを見ながら
「楽器の形ってなんでこんなにキレイなんでしょう?」
と聞いてみると、それは「機能美」なのだそうだ。楽器は材質から形の細部に至るまで
すべて「良い音」を出すために
一切の無駄が削ぎおとされた
すべてが意味のあるデザインになっている、
だから美しいと。なるほど。インタビュー、撮影が終わった後で
「少し音を聴かせてください」と
リクエストしたら、
「じゃあ、ひいてみましょう!」
と急遽ウクレレ指導をしていただくことになった。
いいんですか?俺の手には10万以上するウクレレが。
楽譜も用意され、
基本的なことから教えてもらう。楽器がまるでできない俺。
指がうまく動かないし
コードも覚えられない。
一方カメラマンM氏は結構できている。少々落ち込んだけれど、
ウクレレをひくのは楽しかった。
反復さえすれば弾けるようになる予感もある。
先生に合わせて何度も練習。
ウクレレの音はなごむ。ウクレレソロで
歌も聴かせてもらったし
しかもそれを録音したMDまでいただいた。
まったく素晴らしい取材である。
ありがとうございました。素晴らしいといえばこの暮らし。
木製の大きなバルコニーに出ると
山、緑、街、海が一望できて
海からの潮風、緑の香りのさわやかな風が
なんともいえず心地よい。こんな別荘のような家で
ウクレレを作って、ウクレレをひき、
風を感じながら海を眺めてビール…
最高じゃないですか、先生!
羨ましい限りです。
帰り道、M氏と二人、盛り上がる。
「オレたちもウクレレ覚えよう!」
「あんな風にひけたら絶対モテるよ!」
「夏のヒーローだよ!」ウクレレのハワイアンCDを聴きながら、
右手にはどこまでも続く夕暮れの海。
いい気分だ。鎌倉は別世界のようだった。
(つづく)