タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎
「狼はガガーリン空港へ行く」を主宰している男
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。
>>これまでの記録
<153> 7月24日(水)
■■ いらいらのろのろ ■■
昼までには終わると踏んでいた原稿に
思ったより手こずってしまい
時計を見るともう2時だ。
やばい!3時から水天宮前で取材である。
所用時間は約1時間。
ぎりぎり間に合うはず!ノート、テレコなどをバッグに放り込み
大慌てで準備と着替え。
さて出るか!と思ったら
尿意。
時間を惜しみながら大急ぎで用を足す。
こういう時に限って長い!2時10分前。
駅すぱあとによると47分で到着するはず。
でも乗車時間は30何分だったし、
取材先の会社は駅から徒歩2分だった。
ギリギリ大丈夫なはず!
…と都合よく計算。
自転車に飛びのる。
さあ行くぜ!と思ったら
…ガシャンッ!!!
もう一台の自転車がぶっ倒れる。
しかも朝顔の鉢の上に…。
ちっ!こんな時に…!!
見捨てようかと思ったが
鉢の上というのが気になり
立て直す。…ったく!
よし、レッツゴー!
駅前まで猛ダッシュ
しっかし、こんな時に限って
歩行者、自転車で道がふさがっている!
その僅かな隙間をぬってひたすら前進。
日傘をさしたおばさんと自転車ギャルの間を通り抜ける。
キキィィィ〜〜〜ッ!!
急ブレーキ!
正面からきた自転車と激突しそうになった。
あぶないあぶない。
日傘でお互い全然前が見えなかった。やっと駅前到着。
自転車を止める。…が、地面が斜めってて
自転車がフラフラしてる。
ちっ!こんな時に…!!
見捨てようかと思ったが
倒れたら迷惑になるので
立て直す。…くそっ!よし、レッツゴー!
都営新宿線の駅まで猛ダッシュ
しっかしこの駅は
遠くて地下深い!現在2時15分。
乗り継ぎさえうまくいけば
間に合うはずだ!やっと改札到着。
スイカもメトロカードも使えないので
切符を買わなくちゃいけない。
ああ面倒くさい。時間ない。え〜と神保町まで310円ね…
ぐわっ!
小銭も千円札もない!!!
しかもこの販売機、万札が使えない!!!
オーノー!イラつきながら
隣の販売機に並び、やっと買う。
ホームに猛ダッシュ…階段をひたすら下へ
ああ〜〜〜!!
この音は!!!…電車が行ってしまった。
キップをさっさと買えてりゃ!!
どこにぶつけていいのか
わからん怒りがわいてくる。
やっとホームに降りると
1台、電車が止まってる。
しかも「急行」と書いてある。おお、捨てる神あれば拾う神あり!
私ハ神ニ感謝シマス!!現在2時18分
奇跡の逆転が見えてきた!「急行」に飛び乗り
ほっと一息。
全身汗びっしょり。それにしても…
始発駅とはいえ
なかなか出発しないぞ、コレ。「出発まで今しばらくお待ちください」
という放送が何度も流れる。しばらくっていつまでなんじゃい!!!
ホームの発車時刻案内が見える場所まで
電車の中を移動。ぬわに!!!
23分!?
遅い!!!あれ?でも反対ホームに
もう一台電車が止まってるぞ!
発車案内を確認ぬわに!!!
あっちが先に出発か!!!
でも各駅停車だぞ
いや、でも常識的に考えて
神保町までなら
急行に抜かされることは
ないだろう!
…と0.05秒で判断。猛ダッシュで反対ホームへ!
乗った瞬間
ぷしゅうう…とドアがしまる。ふう〜〜〜
ギリギリセーフ。
あぶないとこだった。車内アナウンスが流れる。
「この電車は◯◯で急行電車の通過待ちを致します」
えええええええええ〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!◯◯って3駅隣じゃん!!
そんなにすぐ抜かされるわけ!?
あり得ない〜〜〜っ!!!!このノロマめっ!!
◯◯駅に着く前に
急行に乗り換えられないかと
路線図を何度も何度も何度も何度も見返すしかし何度見ても
乗り換え不可能!!
大失敗だなんてこった〜〜〜!!
あのままあれに乗ってればよかったんだ!!
いやその前に駅員に確認すればよかった!!
つーかホームの表示をちゃんと確認してれば!!
つーか小銭さえ持ってれば!
つーか自転車さえ倒れなければ!
そもそも乗り馴れたJRを使うべきだったか!?後悔がぐるぐるぐるぐると渦を巻く。
電車はのろのろのろのろ
俺はいらいらいらいら
◯◯駅に到着。
「この電車は当駅で3分間の通過待ちを行います」
無情の車内アナウンス。3分!!
この一刻を争ってる時に
なんと悠長な!3分もあればカップラーメンも出来上がるし
ウルトラマンは怪獣も倒せるし
ボブ・サップは余裕で田村潔司をKOできちゃうのだ!(…悲しい喩え)もはや万事休すか…
気が遠くなるほど長く感じる3分だった。
やっと電車は動き出した。
のろのろのろのろ
いらいらいらいら
2時半にもう近い。
一本電話した方がいいのだろうか
幸い携帯のアンテナは3本立っている。
いや、まだ早いか。うつろに思いをめぐらせていると
どこかの駅に停車。ホームに各駅までの所用時間表が見える。
目をこらして見る。…おっ!神保町まで18分?
神保町から水天宮前までは5分くらいだろ。
まだ間に合うかも!絶望は愚か者のすることさ
最後まで希望を捨てちゃいけないんだ!
そうだ、そうだよ!
奇跡は起こすためにあるのさ!正面には、不自然なほど大股開きした
美人の女の子が座ってる。
“まだツキは残ってる!”
すべてを都合よく解釈しようと努める。や〜〜〜〜〜と、神保町到着。
2時50分をすぎている。
うう…微妙だ。都営新宿線から半蔵門線に猛ダッシュで移動。
しっかし、これまた遠い!離れすぎ!やっとホームに到着。
2時55分也。しかし次の電車の発車時間は
2時58分!
鳴呼……ジ・エンド!!!!
電話しなければ…
しかし携帯は圏外。
公衆電話を探すが、なかなかない。
あ、あった!十円玉を何個か放り込み電話。
…しかし、ホームがうるさいのか
俺の耳が悪いのか
全然向こうの声が聞こえない!「もしもし…!もしもし…!」
ガアアアアアアアアアアアアア!!!
電車、来ちゃったよ!!!
やばっ!しかも、ますます聞こえね〜〜〜っ!!「5分か10分ほど遅れそうです!
申し訳ございません!」用件を一方的に伝えて
超大慌てで電話を切り、電車に飛び乗る。
ガシャガシャ…と
おつりの落ちる音が遠くから聞こえるが無視。
もったいないけど仕方ない。…結局8分遅れくらいで
取材先の会社に着けた。しかも社長さんが忙しかったようで
10分くらいは会議室で待つことになったので
よかった…。
結果オーライ、ではあった。
急いては事をし損じる
急がば回れ
こんな言葉を何度も何度も
噛み締めた、夏の午後だった。
それしても
ついてない時って
とことんついてないよなぁ…
(つづく)