タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎
「狼はガガーリン空港へ行く」を主宰している男
の書く生活記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。
>>これまでの記録
<162> 9月10日(火)〜11日(水)
■■ 海辺のカフカ ■■
打ち合わせを終えて外に出ると、
夕方だった。青みがかった夕暮れ。
いつの間にか空は晴れたようだ。今日はもう締切りもないし、予定もない。
誰か誘って飲みにでも行こうかな、
そんな気持になったが、まだ時間が早い。なんとなくふらっと
目についた本屋に立ち寄る。週刊アクションで始まった
江口寿史の新連載をぱらぱらめくる。今回はどことなく松本大洋っぽい絵だ。
物語は「ファイトクラブ」?
舞台は西新宿。もしや「いら夏」の影響?
やっぱりこの人はトレンド(死語ですね)
を取り込むセンスがいい。面白そうだけど、単行本を待つことにしよう。
新刊コーナーを覗く。
おっ!
村上春樹の新刊「海辺のカフカ」が出てる!!たしか9.12発売のはずだったのに、
もう売ってた。思いがけない幸運だ。しかも今日はたっぷり読む時間がある。
よし、今夜は酒より春樹だ。平積みになっている本の中から
しわや傷がついてない本を選んで
迷わず上下巻まとめて購入。帰りの総武線の中で読み始める。
薄くて軽い、手触りのいい紙だ。
紙が指にねっとりと吸いついてくる。
「読んで読んで!」
紙がそんな主張をしているようだ。
(単に手汗の可能性もアリ)1ページ目を開く。
「カラスと呼ばれる少年」
という太い文字と
カラスのイラストが目につく。「きた!」
これは“好み”の物語だ、
そんな予感がした。
期待感がふくらむ。文体は簡潔でなめらか。
水みたいに、すいすいしみこんできて読みやすい。
以前の「ひっかかり」の多い文体とは少し違う。
文章がより洗練されたみたいだ。あっという間に駅に着いてしまう。
そのまま家には帰らず、
喫茶店でつづきを読むことにする。前から入ってみようと思っていた
とっておきの喫茶店に向かう。
今日はあの店に入るのにふさわしい気がする。
小さな路地にある、ひっそりとしたその喫茶店は
一見、庭の広いただの一軒家のように見える。
たくさんの木に囲まれたログハウス風のお店。
通称“森の家”(命名・自分)白髪のおじいさんが一人でやっている。
そこそこ広い店内には、誰もいない。店内は暗かったが、本を机に置くと
おじいさんが照明を明るくしてくれた。
そしてクラシック音楽が流れ始める。
コーヒーを飲みながら
黙々と本を読む。外はもう暗く、店内は静かだ。
シーンという文字が手にとれるくらい静かだ。深い森の中にある小屋にいるような気分。
不思議な偶然だったが、
「海辺のカフカ」にはそんな場面も出てきた。
奇妙なおじいさんも登場する。
「いい場所選んだな〜」
と自分の読書環境選びに大満足。
コーヒーも旨い。
飲み終わっても、香りがそのまま残っていて
視覚・聴覚のみならず、嗅覚もいいかんじ。
いつまでもここにいたかったが
閉店時間になったので、
家に帰って続きを読む。
それにしても、おもしろい!
今までの村上春樹のどの小説にも似てない。
新しい。間違いなく、
2002年の今だからこそ書かれた
新しい小説だ。「アンダーグラウンド」や「約束された場所で」が
なれけば書けなかった物語だろう。今、生きている作家の最新作を
リアルタイムで読めることの幸せって
こういうことなんだろうなぁ。とか、しみじみ実感しながら、
ソファに寝転んで読みつづける。
よーし徹夜して読んじゃうか!
と意気込んだものの、
しっかり睡魔はやってきて
あっけなく寝てしまう。
朝、目覚め
顔も洗わず、つづきを読む。上巻を読み終えたので
今これを書いているわけだけど、
ピロリ〜ン!
書いてる最中にメールが届いた。「春樹新作」というタイトルで
カタリョウさんからだった。以心伝心(電信)?
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どーもですー。
大変ですよ!
もう「海辺のカフカ」が書店で売られてました。
2日も早いですよ〜。って、もう買いました??
わたしは昨日の夜、
お金がなかったので、とりあえず上巻だけ買って
ちょっとだけ読んだんですけど。なんか、ちょっと、いつもと違う感じ。
村上春樹っぽさ、というか、
読んだときにすぐ村上春樹とわかる感じが、
かなーり薄いんですよ。
15歳の男の子が主人公だからかもしれない。
東京の野方、とか具体的な地名が
出たりしてるからかもしれない。
あ、でも、
スプートニクの時から地名とかは出てましたね。なんだろう、この感じは。
あー、会社で仕事をしてる時間が
なんだかもったいない。
早く家に帰って読みたいです。
こういう時、サラリーマンはつらいです。とりあえず報告でした。
では。**********************
もちろん買ってます。読んでます。
読み終わったら、
感想を交換し合いましょう!それにしても、ウフフ
申し訳ないですけど、今あらためて
サラリーマンを辞めた幸せを実感しました。
お先に下巻に突入させてもらいます。
ハイホー!
(つづく)