タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している男
の書く生活記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

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これまでの記録


<163> 9月11日(水)〜12日(木)

■■ 続・海辺のカフカ ■■


あれから1年の9月11日だった。

昼間のうちに仕事を片づけ、
夕方になると「森の家」に行き、
「海辺のカフカ」のつづきを読んだ。

1年前にはこの世になかった本。
1年前には行ったことなかった喫茶店。

今日はひとりだけお客さんがいた。
初老の男性、常連のようだった。

「今夜の巨人は勝つかねぇ」
彼はマスターのおじいさんに話しかけながら
ちらちらと何度も俺の方を見た。

この店における俺という存在は、
よほど珍しい存在なのだろう。

だが5分もしないうちに
彼は帰り、店内は昨日と同じように
シーンとなった。

昨日と同じクラシック音楽が静かに
かかっている以外は、物音ひとつしない静寂。
車の騒音や鳥や虫の声も聞こえない完璧な静けさ。
こういう場所はなかなかない。

昨日と違ったのは、
コーヒーと一緒に
生チョコが出てきたことだった。

ナカタさん(「海辺のカフカ」に登場する老人にちなんで、おじいさんをそう呼ぶことにした)
の好意のしるしなのだろうか?

…だったら嬉しいけど、
ナカタさんは、あまりにも無表情かつ無口なので
そういうことはまるで読み取れない。

結局、2時間近くその店にいたけど、
お客さんは一人も入ってこなかった。

たぶん毎日こんなかんじなのだろう。
もしも今日俺が来なかったら、
ナカタさんは2時間近く誰もいないこの店に
一人でいることになる。

ナカタさんはこの静かすぎる空間で
どんなことを考え、なにをして、
毎日をすごしているのだろう。

「海辺のカフカ」のナカタさんが猫と話ができるように、
「森の家」のナカタさんはコーヒーカップと話ができるんだろうか?
非常に好奇心をくすぐられてきた。

もう少しこの店に通ってみることにしよう。

一夜明け、「海辺のカフカ」は大詰め。
下巻の1/5を残すのみとなった。

という報告メールをカタリョウさんに送った。
彼女は春樹フレンドなのである。

するとすぐに返事が返ってきた。
タイトルは「サラリーマン&受験生の悲哀」

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ひょえー!マジですか。
わたしはまだ上巻の2/3くらいですぅ・・・。
今、建築士の試験前ということもあって
家に帰ってからは
勉強しなくちゃいくけないから
ガシガシ読めないんですよ〜(泣)

だから、小学生のファミコンのように
一日1時間、と決めて読んでるんですけど、
これって、細切れに読むのが適さない本だと
思うんですよねー。

あー、会社にきたばっかりだけど
もう帰りたい!!

> 俺の場合は
> 村上春樹はやっぱり村上春樹だなぁ
> とか思いながら読んでます

登場人物が増えて
物語が進んできて、かなりなじんできました。
大島さんとか、昔ながらの空気の人もいるし。
でも、カフカくんも、清潔で家事好きなところとか
かなり村上家の人ですよね。

> 全体的な印象としては
> これまで以上にポップなかんじ
> そういう意味じゃ
> やや近いのは、「ダンスダンスダンス」かな?

あー。
わたしは、「ハードボイルドワンダーランド2002」
って感じかな、と思ってました。
あれが好きだからってだけで、
あんまりたいした理由はないです。
まー、なにしろまだ上巻の途中なんで
よくわからないです。

あと、昨日、谷田さんが
紙質のこと書いてたじゃないですか。
わたしも開いたときに、あれ?って思ったんですよ。
普通より薄い紙ですよね?
手に吸い付くような感触で、
昔、学校の図書館で読んでた本みたい。
カフカくんの読んでる本の感触を
疑似体験しているみたいだし。

ってな感じです。

また書きます。
谷田さんも、読後の感想、教えてくださーい。
ネタばれ禁止でよろしくです

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一気に読んだ方がいいタイプの本、
だと俺も思います。
でも実際なかなかそうもいかないんだよねぇ

それはそうと
やっぱり紙、気になりましたか。

意図的にこういう紙にしたんだろうなぁ。
紙好きとしては、嬉しい工夫。
匂いもかいでみたけど、匂いは普通でした。

あと、ふたつの話が同時進行してるという意味では
「ハードボイルドワンダーランド2002」
っていうのも、たしかに。

登場人物のカラフルさと
(読むすすめていくとわかると思いますが)
作品全体のどことなく明るい雰囲気が
「ダンス〜」を連想させます。

「ダンス」はハワイで
「カフカ」は四国
どちらも海に囲まれたあたたかい場所だから
開放感を感じるのかな。

あくまで主観ですけど
「ねじまき鳥」とか「スプートニク」は
かなり暗い印象だったんですよね
「明」よりは「暗」
「開」よりは「閉」というか

ではネタバレしないように
今回はこのへんで

サラリーマンでも受験生でもない
俺はつづきにとりかかるとします

ハイホー!



(つづく)





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