タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している男
の書く生活記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

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これまでの記録


<169> 10月24日(木)

■■ 33 ■■

今日から33才なのである。

33、これはおぼやすくていいな。
25を越えた頃から、自分の年齢を
覚えられなくなってきたんだけども
ゾロ目なら忘れないだろう、たぶん。

それにしても、年齢が変わっても
なんの感慨もわいてこない。
イエーイ、とも、やれやれ、とも思わない。
もう見事なくらい。

そういうもんなのかな、33は。
ま、32も31もそうだったような気もするけど。

さて、そうボヤキつつ話を変えます。

自分でもよくわかってないことを書くので
まとまりのない話になりそうだけど
そこんとこよろしくです


レコード屋にいくと、
80年代コンピレーション盤が異常に目につく。
ようやるよ…、とあきれるほど、
いろんな80年代ものが売ってる。

他にやることないんかい!と
ツッコミのひとつも入れたくなる。

でも、売れてるんでしょう。
売れるから出す。商売の基本だ。

で、たしかに80年代バリバリどっぷり人間の俺は
そのテの曲がかかると思わず耳を傾けてしまう。

そういえば、オアフ島を車で一周してる時に
カーラジオでも80年代の特集をしていた。

プリンス、カーズ、ワム、シンプルマインズ、a〜ha…
次々とそんな曲がかかっていて
かなりゴキゲンになってしまった。

外国でも80年代ブームなんだな〜、と思った。

こういう現象の理由は
よく言われる話だけど、
商品を提供する側が80年代育ちの30代に
なってきたからだろう。
それで主な購買層もその年代と。

これはきっと世界的にそうなんだろう。

で、たとえば、今デュランデュランを聴いてみると
あまりにもうすっぺらな音で聴くに耐えなかったりする。

耐えないのだけど、スマパンやらレディオヘッドやらの
90年代グループと比較して、
どっちが「キュン」とするのかといったら、
間違いなくデュランデュランなのだ。
それってどうなの?と思うけど、事実として。

どんなにクソみたいな曲でも
10代の頃に聴いた曲は
自分の中では永遠の輝きになってしまってる。

クオリティじゃ美化された記憶に勝てない?

そんなことを考え始めると
20代以降の人生は「10代のおまけ」みたいなものなのかな?
そんな気がしてくる。

10代で実は自分の人生のピークは終わっていて
残りの人生は「余生」とでもいうか。

今は時代全体がそんな印象だ。

コンピレーション、トリュビュート、ベスト盤、
どれも発想は「10代のおまけ」。

かつての感動を再現したいとか
そのまま手にいれたいとか、
動機は微妙に違っても、
根っこの部分は「あの頃に帰りたい」。

これは、作る方にとっても
買う方にとっても、そうだろう。

フィギュア・ブームなんてのも
典型的な「10代のおまけ」だろうな。

実際に今、自分でも
「ガンダム」に関する本を作ってる。
これまた、80年代もの。

その本で紹介してるんだけど
Zガンダムで、フラウ・ボウがアムロにこんなことを言っている。

「子供にもどったって、
 何も手に入れられないと言うことだけは思い出して」

たしかに懐古的になってばかりいても
何も始まらないような気はする。

おまけの人生を生きてるってのも
なんだかな。

んじゃ、どうすべきか?

それが難しい問題なわけである。
だから音楽業界もそうなってるんだろう。


それでえ〜と…
話がまとまらなくなってきたぞ

そうそう、そんなことを考えがちな最近、
最も感銘を受けているのは、桑田佳祐です。

最新作の「ROCK AND ROLL HERO」
これがすごくいいんだよな〜

今まで書いてきたようなことを
吹っ切った地点に辿りついてるような作品だ。

閉塞感が漂う内省的な歌詞のインパクトが強くて
最初はネガティブな印象だったんだけど、
聴きこんでいくうちに、その印象が変わったんだよね。

シニカルで、中年親父のグチやボヤキみたいな歌詞なのに、
アルバム全体の印象は、えらく前向きで明るい。

すがすがしく開き直ってるパワーがみなぎっていて、
デビュー作の「熱い胸さわぎ」を彷佛とさせるんだ。

今の自分のリアルを
小細工なしにストレートに表現してるとこが
まったく同じ印象。

「熱い胸さわぎ」の頃は
「女呼んでもんで抱いて」とか「ラーメンラーメン昨日もラーメン」
なんてのが、当時の桑田にとってのリアルで

40代の今は、年とった自分や、社会に対する憂いが
リアルになったというだけで、
今の自分をストレートにむきだしにフルチンで見せたる!
という表現の核の部分が一緒、といいますか。

なんでそんな20数年ぶりにデビュー作を彷佛とさせるような、
ある意味、若々しい作品を作れたのかと考えると、
「波乗りジョニー」とか「白い恋人達」みたいな
過去の自分のヒット曲をカバーするような曲を
作ったことがよかったのかなと。

そういう曲を作ってしまう自分を自己嫌悪しつつも、
でも嫌いじゃないんだよね、と飲み込んでしまったというか。

そういう曲が大ヒットしちゃったことで、
逆に反発心がわいて、違うことをやりたいぜ〜〜!
という心境になれたというか。

「俺ってこんなもんなんだよね」
ということを受け止めて、認めて
その上で前に向かっていこうとしてるというか。

で、そんな心境で作ったと思われる
この「ROCK AND ROLL HERO」は
「10代のおまけ」感がまったくしない。

ジョン・レノンそのまんま、みたいな
もろ桑田佳祐にとっての「10代のおまけ」みたいな曲が
あるにもかかわらず
ちゃんと「2002年を生きる40代の今」の作品になっている。

こういうのを聴くと
「10代のおまけ」じゃない30代とか40代の
生き方もちゃんとあるんだ!
という気になってくる。

「今も捨てたもんじゃないな」という気持がするというか。

桑田佳祐のような境地に至るには
前向きに懐古する、ってのも
ひとつの方法なのかも。

そういえば
高田延彦が引退試合に田村潔司を指名したのも、
前向きに懐古して今を表現する、
みたいなカードだな。

わざわざ今さらUインターの記憶なんて
ひっぱりだす必要ないのにそうするのは、
過去の自分と向きあわない限り、
自分のレスラー人生を全うすることにならない。
それが2002年に引退する今、すべきことだ。
そんな風に高田は考えたのかもしれない。

桑田にも高田にも共通するものがある気がする。
それが今後の30代を生きるヒントなのかも。


そういえば(そういえば、ばっかりだけど)
ガンダムに関する文章を書きながら
自分にもそういう実感はあった。

過去や記憶を今の視点で見つめ直してみることで
新たに気がつけることや、
忘れちゃいけなかったはずのことも思い出したりして。

単に懐古的になるのではなく
今を生きるヒント探しになっていた。

うしろを見ながら、前に進む!


おおーっ、これぞ現代をサバイブする大発見か!?


あ、つまりは「温故知新」?

長々と書いてきて、結論がそれか

これも33のリアル…?


(つづく)






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