タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

>>これまでの記録


<84> 4月1日(月)

■■ タイム・ゴーズ・バイ ■■

中学時代からの友達と
一緒に仕事をすることになった。
今日は最初の打ち合わせ。

一緒に下校しながら
「クラスでどの女が好き?」
なんて互いに牽制しながら話したり、
「宇宙の外側はどうなっているか」
とか畑の真ん中で語りあったり、
一緒にドンジャラしてたのは、
つい昨日のこと
…とはさすがに思わないまでも、
それほど古代の出来事とは思えない。

そんないわゆる放課後の時間帯に、
約20年後は、
クラスで育ててるナスの話ではなく、
商品企画や予算や部数の話をしている。

そう考えると
ちょっと感慨深いものがある。

タイム・ゴーズ・バイ。

もう一人、その仕事を
一緒にすることになったメンバーは
むかしの編集仲間。
20代前半の頃だ。

打ち合わせが終わり、
彼と一緒に駅に向う。

「景気、どう?」
「この年になると量こなすのはキツイっすね」
「若い頃はなんでもガムシャラにできたんだけどなぁ」
みたいな話をしながら歩く。
20代前半には絶対にしてなかった話題。

タイム・ゴーズ・バイ。

夜、WWF「ROW」を見る。
世紀の対決「ホーガンvsロック」が行われる、
レッスルマニアを翌週に控えた、
ニューヨークでの前哨戦。

この日のメインイベントは、
ロック、ストーンコールドvsホーガン、ナッシュ、ホール。
ハルク・ホーガンがWWFのマットで
試合をするのは、約8年ぶりらしい。
ホーガンの試合を見るなんて、いつ以来だろう?

現在、世界マット界で最も人気のあるスーパースター、
“ピープルズ・チャンピオン”ザ・ロックと
80年代から90年代にかけて最高のスーパースターだった、
ハルク・ホーガンの試合は、時空を超えた異次元対決。
同じリングに上がっている光景さえ不思議だ。

ホーガンのピークはとっくに過ぎている。
ファイターとしてのホーガンの全盛時代は、
IWGPで猪木を失神KOに追い込んだ頃だろう。

その頃、俺は中学1年生。
ホーガンの「一番」Tシャツを得意げに着ていた。
前述した中学の同級生とも出会ってなかった。

それから約20年。
今のホーガンは、さすがに老けた。
顔はしわが目立ち、“超人”と呼ばれた巨体も、
2メートルを軽く越えるナッシュ、ホールら
若い大きな選手と並ぶと小さく見える。

腕だけは異常なほど太いけれど、
筋肉増強剤を使っているのだろう。
逆に痛々しく見える。

タイム・ゴーズ・バイ。

そんな老いたホーガンが、
若くて、今まさに全盛期のロックと戦うなんて
ムチャなカードだ、そう思っていた。
試合開始のゴングが鳴る前まで。

試合が始まって驚いた。

ホーガンの存在感だけが圧倒的に目立つ!
いや、ホーガンは大してリングインしてない。
動きも正直いって悪い。

それでも、目立つ。
色気が突出している。
他の4人と比べものにならない。

現在の2大スーパースターのはずの
ロックもストーンコールドも
ホーガンの存在感の前では、ただの若僧だ。
青二才、ひょっこ、そう見える。
これが“格”の違いというものか。

「ホーガンは伊達じゃない!」

約20年前のスーパースター達。
スタン・ハンセンは引退した。
アンドレ・ザ・ジャイアントも
ブルーザー・ブロディも死んだ。
ジャイアント馬場も死んだ。
ジャンボ鶴田も死んだ。
アントニオ猪木も現役ではない。

ホーガンだけが、いまでも現役だ。
しかも世界最高峰の大舞台で、
メインイベントに出場するのだ。

ロートルじゃないどころか、
今でもスーパースターのままだ。
しかもロック以上に色気を放ってる。
これはとてつもないことだ。

新旧交代の激しいアメリカ・マット界で
ハルク・ホーガンだけが
80年代から90年代、そして21世紀の今まで
ケタ外れの長い期間に渡って、
頂点に君臨し続けることができた。

本当に傑出したタレント(才能)だったのだ。
改めてその凄さに気がついた。

タイム・ゴーズ・バイ。

されど、変わらないものもある。
時が過ぎないと気づけないこともある。

感動した。

解説の“キング”ジェリー・ローラーが
こんなことを言っていた。
「本当のスーパースターは、
 ボクシングではモハメド・アリ、
 プロレスではハルク・ホーガンだけなんだ!」

アリもとっくに引退している。

そう考えると
ロックvsホーガンは確かに世紀の一戦だ。
20世紀的なスーパースターの
おそらく最後の大一番。
最後のスーパースターを見届ける
最後の機会。

心して目に焼きつけたい。

今日見た前哨戦では、
ホーガンがロックにフォール勝ちしていた。

(つづく)

※余談
キングの言葉で気がついたこと。
世界でただ一人、マット界の2大スーパースター
アリともホーガンとも戦った人物がいる。
アントニオ猪木だ。
しかもホーガンを一流に育てたのは
間違いなく猪木。改めて凄い人だわ。





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