タイトル■突刊マット
書き手 ■谷田俊太郎


マット界(プロレス・格闘技界)に関する
読み物企画です。書き手も内容もいろいろ!

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さよならリングス特集(最終回?)


2月15日・横浜大会を最後にリングスが解散しました。
この特集の最後に、この日の様子をリポート!
いきなり話は脱線してますが…。


<2002.2.18>
第一次リングス最後の大会・観戦記

リングス最後の大会を振り返ろうと
思うんですが、
昨日すごいものを見てしまったので
まず、ちょっと寄り道します。
なんか書いておきたくて。

*****

やっと、K-1 WORLD MAX 日本代表
中量級トーナメントを見ることができた。
いやー本当に、ウワサ通りの面白さ!

TBSの番組作りも見事にマッチして
各選手のキャラクター、バックボーン、モチベーションが
見えやすく、非常に感情移入しやすかった。

年末の猪木軍vsK-1軍もそうだったけど
ベタすぎるくらいのTBSの演出は
これからの格闘技番組の主流になるはず。

「ガチンコ」や「ZONE」に代表される
人間ドラマにスポットを当てた番組作りは
実はWWFの面白さにも通じていると思う。

そのTBS演出によって際立った
主役・魔裟斗の憎々しいまでのヒールっぷりと
その他の「貧乏・努力・根性」の選手達の好対照も見事で
これは家庭用エンターテイメント・ソフトとして
十分、お茶の間でも通じるだろう。

どの試合も見ごたえ十分だったが
最も強烈な光を放ったのは、
プロレスラー須藤元気!

立ち技競技初挑戦にして
優勝候補の小比類巻貴之からいきなりダウンを奪い、
変幻自在の戦法で、あわやの場面を何度も演出。
結果的には負けたものの
この男の才能は計り知れない。

K-1、PRIDE、プロレスの垣根がなくなり
完全なボーダーレス状態に突入して行く今後、
次の「桜庭」になりうる男は
須藤元気で間違いないだろう。

リングスにおける山本健一戦で
その予感を感じたのだけど、
今回の小比類巻戦でその予感は確信に変わった。

ド派手な入場シーン
アート系出身という異色のキャラクター
寝技・立ち技、二刀流の天才的な格闘センス
軽量級なのが惜しまれるが
ルックスもいいし、素質は申し分ない。

そんな次代のニューヒーロー
須藤をも取り込んだ新しいジャンル
「K-1中量級」は、
新時代を象徴するイベントとなった。

*****

さて、始まるものあれば
終わるものもありで、
すっかり前置きが長くなってしまったが(長すぎ!)
本題は、2.15横浜・リングス最後の大会だった。

前田代表の挨拶によれば
あくまで「第一次」リングスの最後であって、
これが本当の最後ではないようだ。

とはいえ、長く馴染んだ
現体制の興行は、今回が間違いなくラスト。
そう考えると感傷的な気分にはなる。

もう長いこと設置されなかった(低予算ゆえ)
大型ビジョンが用意され、大会開始前に
特別編集されたリングスの歴史を
振り返る映像が流された。
WOWOWさんの最後のサービス?

横浜アリーナでの旗揚げ戦・前田vsフライ、
(昔の映像なのに、なぜか前田が勝った瞬間、場内拍手。俺も)
歴代のジャパン選手達のデビュー戦、
そして前田vsカレリン、KOK…。
ついつい涙腺がゆるんでしまう。

恒例の、そして最後(?)の全選手入場式、
前田代表の例によってあっさりした大会宣言

軽量級日本人同士による試合から始まり、
やがてリングス・ジャパン選手が出場する
試合へと大会は進行していく。

最後だから、どうしても勝たせたい!
と祈るような声援の中、伊藤はまたしても勝てず。

横井はパンクラスのランキング上位選手に対して
圧倒的な「怪物」ぶりを見せつけるものの、
決め手に欠け、やはり一本取れず。

今度こそ!と期待が集まった滑川も
またしても登場した無名の強豪オーストラリア人に敗退。

最後くらい楽勝できる相手を用意してくれても
よさそうなものだが、そうはしないところが
良くも悪くも最後までリングスらしい。

休憩明けは
高阪と宇野薫クンのエキシビジョンマッチ。
懐かしきUWFの高速回転ムーブが展開される。

宇野クンの船木モデル(?)のパンツやレガースも
相まって、実にノスタルジックに見えた試合。
けれど、それを演じているのは、
当時はまだ選手じゃなかった、UWFチルドレン達なわけで
確かに時代の移り変わりと、
前田の壮大な格闘実験の成果はあったと感じられた。

試合が終わり、TK高阪がマイクを握る。

「今日、第1次リングスは終わってしまいますが、
 リングスはボクのこの胸には刻んであります。
 だから皆さん安心してください。
 ボクの闘うところはいつもリングスです」

う…。
いつもはクールな高阪の言葉だけに
涙腺が緩む。

そして、ハンvsコピィロフによる
旧リングス・ルールのこれまたセピア色の試合。
デカくて強くて面白い、初期リングスの代表のような二人のロシア人。
懐かしい。これぞ、俺が思うリングス!

けれど、全盛時のような攻防は見せられず。
やはり時計の針を逆に戻すことはできなかった。
人間は年を取る。世代は交代する。時は前にしか進めない。

ハンとコピィロフが最後の挨拶をする。

ハンはこう言った。
「私の試合が見たかったら、いつでも呼んでください。
 兵隊のようにとんできます」

多くの人々が去っていった中で
前田を、リングスを、ずっと支え続け、
最後まで裏切らなかった、ロシア人達。
ありがとう、本当に…。

再び、涙。

今日最後のジャパン選手、金原登場。
リングス初参戦で破れたミーシャとのリベンジマッチ。

「僕にもっと人気があれば、リングスは潰れなかったのに…」
解散が決まった時、そう言った金原。

だけどリングスファンはみんな知っている。
毎回毎回、世界チャンピオンクラスと対戦させられる
無茶なマッチメイクにもめげず、
結果は出せないまでも頑張り続けてきてくれた彼の功績を。

今日くらいはいい思いをさせてあげたい…!
と願いはひとつだったが、忘れていた。
ミーシャもまた非常に強い選手だったのだ!

膠着した試合のまま、結果はドロー。
前田の採点だけは、金原勝利だったことに
苦笑しつつも、心暖まる。

マイクを握ったけれど、言葉少なにリングを去る金原。
気持ちはわかる。無念だろう。

結局、リングス・ジャパンの選手は
誰一人、一本勝ちできなかった。

遂にあと一試合になってしまった。

果たして今後防衛戦があるのかわからないが、
リングス・アブソリュート級王者決定トーナメント決勝戦。
エメリヤーエンコ・ヒョードルvsクリストファー・ヘイズマン。

最後を締めるのが、
ロシア人とオーストラリア人というのも
なんというか、実にリングスらしい。

慣れ親しんだロシア国歌を聴きながら
感傷的な気分はMAX到達か?
と思っていたが、試合が始まって
そんな気分は吹っ飛んだ!

強烈きわまりないヒョードルのパンチで
ヘイズマンが吹っ飛び
こちらの湿っぽい気分も吹っ飛ぶ!
凄い!凄すぎる!
ヒョードル、強すぎる!
まさに、真・北の最終兵器!!

笑ってしまうほどの強さに
涙も感傷的な気分もすべてかき消された!

そうだ、これでなくっちゃ!

なんだか、最後の最後になって
新しい「始まり」の手応えを強く感じた。
新時代は既に始まっている!

リングスは消えても
ヒョードルや横井、リングスが生んだ
新怪物達の物語は始まったばかりなのだ。

表彰式が終わり、最後、前田がリングに上がる。

「本日はご来場ならびに、選手の応援、ありがとうございました。
 1991年、旗揚げをしたファイティングネットワークリングス、
 リングスジャパンは今日の大会をもちまして、一時興行活動を休止致します。
 同時に、経営形態、その他全てのシステムを刷新し、
 皆様の前に再びお会いすることがあると思います。
 その時は、ご声援のほどよろしくお願い申し上げます」

「待ってるぞー!」という大声援。

こうして、第一次リングス最後の大会は幕を閉じた。

長い間、お疲れさまでした!

今後のことはまったくわからないけれど、
前田日明がこのままで終わるわけがない。
いつかきっと第二次リングスは始まるだろう。
その日を楽しみにしていよう。

最後は、不思議と晴れ晴れした気分だった。
時代は変わる。
リングスも新時代対応にモデルチェンジ
しなければならなかっただけだ。

とりあえず、さよならリングス。
また会う日まで。






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