タイトル■突刊マット
書き手 ■谷田俊太郎


マット界(プロレス・格闘技界)に関する
読み物企画です。書き手も内容もいろいろ!

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<2002.4.1>
3.30 DEEP2002観戦記
〜ビバ!和田さん ビバ!リングス ビバ!メヒコ〜


和田良覚デビュー戦を
見届けるために、
いざ名古屋へ。

和田さんはこれまで
リングスのレフリーだった人。
39歳にして
初めて選手としてリングに上がる。

リングスが解散してしまったため
職を失い、
家族のためにリングに立つ決意をしたのだ。
これは応援しないわけにはいかないでしょう。

がんばれお父さん!
リストラ世代の星になれ!

もともと和田さんには
「和田良覚最強説」(笑)という噂があり
選手達から「和田さんは3分間なら最強!」
などと言われていた。
果たしてそれは単なる冗談か、それとも…?
遂にその神秘のベールが明かされる時がきた!

やってきたのは
愛知県体育館。
名古屋城の敷地内にあり、
周りは見事な桜が咲き乱れていた。

和田さんデビュー戦の
舞台となる「DEEP2001」という大会には
リングス、元リングス選手が計4名も出場する。

思いの行き場を失ったリングスファンの俺としては、
今日は「リングス」の大会として見させてもらう。
高阪が言ってくれた言葉を思い出す。
「僕の闘うところは、どこでもリングスです」

アマチュア選手の前座試合が4試合あり、
いよいよ本戦が始まる。
和田さんは第一試合だ。

「UWFのテーマ」が鳴り響き、和田さん入場!
うしろには、金原、高阪、滑川、横井、それに高山など
リングス&Uインターの仲間だった選手達がぞろぞろ続く。
みんな和田さんのために、集まってくれた!
このシチュエーションだけで、早くもオレ涙目。

対戦相手はアステカなるマスクマン。
ズバリ弱そうだが、それでも一応はプロレスラー。
油断はできない。

…が、やはり圧倒的に和田さんは強かった。
思いの他、極めるのに時間がかかったが、
終始優勢に試合を進め、
最後はショートフックでフィニッシュ!
完璧だ。

拍手、和田コールで
場内、大爆発!

最高!

試合後、リングに上がってきた子供を
抱きかかえ笑顔の和田さん。
こういう場面ってふだんは結構冷めてしまうもんだけど、
今回は素直に拍手を送れた。
田村vsヘンゾ戦以来の心地よい感動だった。
おめでとう和田さん!

もう第一試合でお腹いっぱいだったけど、
大会はまだ続く。なんと12試合もあるのだ。
前座も入れると計16試合。
多すぎだっちゅーの。
女子プロ・オールスター戦なみの苦行だ。

けど、滑川、横井、坂田と
リングス勢は全員勝ったので、
気分よく見れた。
滑川、横井は判定勝ちだったけど、
それでも嬉しかった。
なんでもいいから勝てばいい。
それほどまでにリングスファンは
ハッピーエンドに飢えていたんです(笑)。

それに輪をかけて、
かつての天敵・パンクラス勢への
ブーイングの集中放火ですっかりゴキゲン。
(パンクラファンには申し訳ないけど)

鈴木みのるvsエル・ソラールは
金的攻撃を続けるソラールに大声援が送られ、
鈴木にはなぜか大ブーイング。
結局、ソラールは反則負けなんだけど
場内は大ソラール・コール。
調子こいた太陽仮面(ソラール)が客を煽ると、
パンクラス勢が激怒して、
パンクラvsメヒコ軍団の大乱闘に発展!
おもしろすぎ。これ今年の裏ベストバウトになりそう。
ビバ!メヒコ!!

そしてようやくメインイベント、
ドス・カラスJrvs謙吾。

最初に謙吾がラップだかヒップホップだかの
最悪な曲で入場してくる。
不快極まりないが、それが終わると
『スカイハイ』の美しいメロディが流れる!
ドスカラスとともにドスJr入場!

突如、ただのマスクマンが大好きなプロレスファンだった
幸福な少年時代の記憶が甦ってきて、また目頭が熱い。

けれど、良かったのは入場シーンだけではなかった。
ドスJrは、強かった!
マーク・ケアーばりの高速タックル!
ビル・ロビンソンばりの強烈なスープレックス!
バーリ・トゥード戦士として十分すぎる素質の持ち主だ。

またセコンドについた父親ドス・カラスが、
踊り(?)まくってはしゃいでいて、これまた最高。

「ビバ!メヒコ」コールで場内は
異様な興奮状態。

結局、謙吾が逆転勝ちしてしまい
完璧なハッピーエンドにはならなかったが、
今日は満足できる興行だった。

笑顔で会場を後にするなんて
いったいいつ以来なんだろう?

「UWFのテーマ」で始まり
「スカイハイ」で終わる。
すっかり屈折していたプロレスファンにとって
久しぶりに、プロレスファンでよかった
と思わせてくれる大会だった。

プロレスの楽しさは「記憶の美化」あるいは「浄化」だ。
うしろむきな発想だとは思うが、これは事実。

たとえつまらなくも我慢して見続け、
記憶のメモリーを増やし、
いつかやってくるはずの巨大な感動に備える。
それがプロレスファンなのだ。
貯金の量が多ければ多いほど、
引き出す「感動」が大きくなる。

だからこそ
記憶再生装置として音楽は重要。
レスラーにとって
入場曲は最も大事なもののひとつなのだ。
最近はそれをあまりにも疎かにしている
選手が多すぎるよな。

まあ、いいや。
今日はグチを言いたい気分じゃない。
いつもはどうかと思う近藤の入場曲「エンヤ」でさえ
許せてしまうほど気分がいい。

Uインター、リングスと
滅亡していった団体達の記憶が美しく甦り、
何かあれば、かつての仲間達が集合し
一致団結する感動物語に酔った。
技術はないけど、卑怯な真似をしてでも勝とうとする
太陽仮面の喧嘩魂にプロレスラーの鏡を見た。
幻想を守るためだけに
バーリ・トゥードに本来まったく必要ない
覆面をかぶって試合するドスJrに
プロレスラーの誇りを見た。

「プロレス」という大河ドラマは
まだ終わってない、…ような気がした。

今日は勃った!濡れた!感じた!
プロレスインポ、ちょっと回復!

ビバ!プロレスラー!!





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