タイトル■突刊マット
書き手 ■谷田俊太郎


マット界(プロレス・格闘技界)に関する
読み物企画です。書き手も内容もいろいろ!

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<第12回 2002.6.1>
革命戦士、再び! 長州vs猪木、最終戦争勃発!!

ワールドカップ開幕戦で
世間が沸き返る5月31日、
マット界に激震が走った!

新日本プロレス退団を表明して以来、
頑に沈黙を続けてきた長州力が緊急会見。

退団の理由は
アントニオ猪木との確執や不信感だった
と激白した!

日刊バトルニュース(6/1)から記者会見の模様を引用してみる。

−−退団の本当の理由を聞かせてください

長州 会長(実際は前会長でオーナー)であるアントニオ猪木ですね。
   (猪木を)許せないというものが、大きくなってきた。
   役員全員がそういう考えを持っているだろうけど、どうしても前に出ない。

 −−具体的には?

長州 最後のきっかけは、武藤たちが(1月に)新日本を出たときかな。
   あっ、これで自分が新日本の中で物事を考えていくことが終わったなと。
   別に選手が出たことは何の驚きもないが、
  (退社して全日本に移った幹部社員の)渡辺や青木たちは
   新日本にプライド持ってたし…。
   でも会長は、なぜ彼らが辞めていったのかを見ようとしなかった。
   すべて物事をすり替える。腹は見えてた。

 −−猪木と直接話は?

長州 最後の幹部会が終わった後、30分くらい話しをした。
   もうついていく気持ちがないことをはっきり言った。
   何だかんだ(猪木という)みこしを担いできた。
   でもこの30年、唱えるものは大きいが、何一つ実現しなかった。
   ジャイアント馬場さんが、最後まで
  (猪木を)信用しなかったのも分かる気がする。
   会長には感謝すらないよ。

“許せない”!
“すべて物事をすり替える。腹は見えてた。”!!
“唱えるものは大きいが、何一つ実現しなかった”!!!

そして“感謝すらないよ。”!!!!

おおお、かつての師匠に
そこまで言うとは!

さすが長州!!!!
俺は今、大コーフン状態である。

猪木との確執は噂されていたし、
退団の理由もそこにあったという
こと自体には、驚きはない。

ただ、ここまで辛辣な言葉で批判するとは
予想だにしなかった。
まさか猪木の墓に糞ぶっかけるとは!

長州が他のプロレスラーよりも
決定的に優れていたのは
タイミングを見計らう嗅覚の鋭さである。

その機を見るに敏さは(変な日本語ですが)
かねてから定評があった。

自分が話題の中心になり得ないタイミングでは
徹底的に沈黙を守り続け、
行動を起こす時、発言する時は、
必ず最高のタイミングを見計らい
爆弾を投下する。

その長州イズムが久々に大爆発した!

世間での異常ともいえる猪木ブームとは裏腹に、
現在の猪木は、
日本マット界最大の巨悪であることは
公然の事実である。

新日本プロレスが今、
壊滅的絶望的致命的に地盤地下しているのも、
猪木によるここ数年間の徹底した新日批判、
およびプロ格路線という的はずれプロデュース、
猪木采配によるPRIDE、Kー1での他流試合での敗北、
などが大きな原因。

もちろん猪木がいてこそ
マット界は話題が途切れなかったわけであり
面白くなっていた部分ももちろん大きい。

巨悪であると同時に神でもある
スケールの大きさが猪木の魅力なのだが、
いずれにせよ、その功罪は大きい。

ジャイアント馬場が他界して以来、
マット界の絶対的支配者として君臨する猪木に、
いったい誰が噛みつくのか?

それがここ数年のマット界の裏テーマであり、
個人的には、それをした者こそが、
マット界の新たなる救世主になり、
最大のベビーフェイスになるだろうと予感していた。

だが、その支配者の力は絶大である。
それに噛みつくことは、ある意味、
マット界での死を覚悟しなければならない。
だからこそ、実行した者は英雄になり得る。

その大役は小川直也に期待していたのだが、
まさか猪木によってマット界で
失脚していた長州だとは!

さすがとしか言いようがない。

これこそが起死回生の一発逆転ホームラン!

ヒクソン戦だとか全日参戦などという
誰もが思いつく凡庸なアイディアでの再生ではなく、
「猪木殺し」という
核兵器クラスの爆弾にスイッチを入れた、
長州の自己プロデュース能力には脱帽するのみ。

革命戦士は死なず!である。

そして
さすが長州!と感服するのは
ワールドカップ開幕日を選んで
テロアタックを仕掛けた、
この卓越したセンス!

ワールドカップ一色になってしまう
この6月、どの団体も興行を控え、
嵐が過ぎ去るのを待とうとしていた。
ワールドカップという巨大すぎる
外敵にマット界は沈黙するしか手段がなかったのだ。

だからこそ、ここで動いた者が
マット界の救世主になれる!
そこも長州は狙っていたのだろう。
もう唸るしかない。

この長州発言は、
猪木批判をしたくてもできなかった
マスコミにとっては絶好の大スクープ。
待ってましたとばかりに飛びつくだろう。
そしてプロレス週刊誌紙は爆発的に売れ、
マット界に大きな経済効果をもたらすはずだ。

長州、一夜にして大復活!
マット界最大のベビーフェイスに!!

10数年前、長州が革命戦士として
新日本に牙を向いた時の名セリフが甦る。

「プロレス界に非常ベルが鳴っている」

「俺はフライングするからな!」

「トップは俺が走ってやる!」

猪木に対して新旧世代闘争を仕掛けた真夏の両国、
あの名シーンが今、新たに再現される。

「お前は噛みつかないのか?
 今しかないぞ、俺達がやるのは!!」

熱い、熱いぞ、久々に。

かつて長州が人気絶頂時に新日を退団し、
全日本に移籍した時、猪木は言ったものだ。

「大掃除ができた」

今回はいったいなんと言うのか。こっちも注目。

猪木が既に現役を引退している今、
リング上での直接対決は不可能。
長州は一体どんな報復攻撃を考えているのか?
狙うは新日本プロレス壊滅か?

ともかく遂に、マット界最大のリベンジ、
日本マット界の今後を大きく左右するイデオロギー抗争が始まった!
こうなったらPRIDEやK-1なんて目じゃない。
これはもう最終戦争だ。

革命戦士、再び!
熱い夏がやってくる。





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