タイトル■突刊マット
書き手 ■谷田俊太郎
マット界(プロレス・格闘技界)に関する
読み物企画です。書き手も内容もいろいろ!
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<第21回 2003.2.17>
U-STYLEはマット界の小さな灯
2月15日、ディファ有明でU-STYLE旗揚げ大会を見た。
田村潔司の長年の夢だった
UWFスタイルのプロレスの復活。
果たしてそれを俺はどう感じるんだろうか?
そう思いながら
特に昂る気持ちにもならず
淡々とディファ有明に向かった。
イッツ・ア・スモールワールド、
それが見終わった直後の率直な感想だった。
小さな会場、小さな選手、小さなスケール。
良くも悪くもスモールワールド。
ノスタルジーの居心地よさはあったものの、
かつてのUWFやリングスのように、
新しい刺激や可能性を感じるものではなかったし、
マット界をつき動かすほどの大きな運動体には
きっとならないだろうなぁと思った。
ましてや“なんでもあり”のバーリトゥードが
誰もがテレビで普通に見られるようになった時代に、
顔面パンチなし、ロープブレイクありの、
ぬるめに見えてしまうUWFルールが
今後K-1やPRIDEのように
大衆に広く支持されていくとは考えにくい。
いわゆるプロレスとバーリトゥードの中間になる
UWFスタイルは一般的にもわかりにくいはず。
やっぱりUWFスタイルはもう今さらだよぁ…
と正直思った。
でも、これはこれでいいんじゃないだろうか。
そうも思った。
マイナーにはマイナーの良さがある。
それをやりたい人がいて
それを支持する人がいるのなら
十分存在異義がある。
そうだ、別にマイナーだっていいじゃないか。
すべてのものがメジャー志向である必要はない。
多くの人に見てもらえることだけが価値ではない。
たとえば、石井館長の逮捕、森下社長の自殺は、
格闘技を過剰にメジャー化しようと背伸びしすぎたがゆえに
生じてしまった“ひずみ”にも思える。
また、見えざる大衆のみを意識しすぎたせいで
プロレスファンから総スカンを食らったWー1。
あれは、誰が、何のためにやっているのか、
いまひとつ目的が見えず、
にもかかわらず、犠牲にしたものが大きすぎるから、
多くの人に拒絶されているのだろう。
メジャー化絶対主義は失うものも大きい。
これらの最近の暗い出来事は、
その警鐘、非常ベルかもしれない。
U-STYLEは、そんな最近の風潮に対する
アンチテーゼだと思えばいいんだ。
このリングは、
多くの観客や視聴率を獲得することが目的ではなく
田村潔司という個人が
自分の夢を実現させるためだけに生まれた世界。
あくまで等身大レベルの小さな夢かもしれないが、
“俺はこれをやりたいんだ!”
“やらなくちゃいけないんだ!”
という個人の力強い意志はダイレクトに伝わってきた。
そして田村の
必死で一生懸命な表情には
見ていて胸をうたれた。
「俺もがんばらなくっちゃ」
そんな気持ちにもなったほどだ。
プロレスや格闘技を見ていて
そんな気分になったのは久しぶりかもしれない。
地味で、不器用で、頑固で、
時代の流れにも逆行しているかもしれないけれど、
それでも自分の信念を貫き通そうとしている姿に
ふと前田日明が重なって見えた。
今はメジャーになることのみが絶対的価値になりつつあり、
そのためにいろんなものが
マット界から失われ始めている。
(もちろん受けた恩恵も大きいけれど)
でも、U-STYLEには
他のリングから失われつつある
何かがある。
それは、ビジネス優先ではない、
生きざまを自己表現するための戦いというか、
青くさい信念の発露というか。
思えば、そういうものを求めて
我々はプロレスや格闘技を見ていたはずだ。
そういう意味で、U-STYLEは
田村潔司がともしたマット界の小さな灯
みたいなものかもしれない。
あまり好きな言葉じゃないけど、
“良心”といってもいいかも。
これは暖かく見守っていくべきだろう。
すでに発表された次回大会では
田村と三島ド根性ノ助の一騎討ちがいきなり実現する。
この対決はノスタルジーではなく、
新しい息吹の感じられる好マッチメイクだ。
田村のやりたいことは
決して懐古主義じゃないことがわかる。
サップ対ミルコに比べるとスケールは小さいけれど、
これまであり得なかった田村と修斗の接触は、
きっと新しいうねりを生みだすキッカケになるだろう。
だから思う。
もうUWFのテーマ曲は使わなくていい。
死んだ子の数を数えるような真似はやめて
田村が作る新しい世界というイメージを打ち出してほしい。
懐かしのメロディーはもういらない。
思い出にひたるのは飽きた。
見たいのは、
小さくても新しい始まりなのだ。
…とかなんとかぼんやりと考えた
寒風ふきすさぶ有明からの帰り道でした。
メジャーにならなくていいけど
今後はせめて後楽園ホールで試合してほしいなぁ…
ディファは不便で遠すぎるよ。
(これは単なるボヤキ)
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