タイトル■ニューヨーク貧乏 〜金が尽きたら、さようなら〜
書き手 ■マイティー井上Jr

現在ニューヨーク在住のフォトグラファーによる
貧乏生活報告を含めた、ニューヨークの今を伝え
る身辺雑記です。あくまでも1個人のみの視点で
お送りするエゴイズム通信であります。「
セプテ
ンバーイレブンで激減した観光客を1人でも多く
ニューヨークへ呼び戻したい!そんなピュア−な
気持ちもありますよ」という、そんな企画です!

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第33回 
 写真はフィルムからデジタルへ。さて… ■

いままで写真のことに関して敢えて触れてこなかったのは
あまり一般的な話題でないという判断からだったが、
好きな事を書いて良いというこの媚びることなく発信して行くのが持ち味の
このウェブのポリシーに反していたのかも知れない。
レスポンスがあると、遠くにいるだけに日本との繋がりが感じられてうれしいもので
そこらへんを気にし過ぎていたさもしさを反省している。

で、写真のことだが、
フィルムからデジタルへと時代は進行中で、プロにとっては一大事。
なにが一大事かというとデジタル化のための機材をそろえて行くこと、
そしてそれを使いこなす知識を仕入れていくことだ。

ただデジカメで撮ってプリントアウトすればよい、というわけにはいかない。
どんなカメラで撮っても、フォトショップで色やコントラストなどを調整し、
本来被写体が持っている色に近付けて行く作業をする。
基準となるグレーカードを現場で移しておき、事後モニターを見ながら
その色に近付けていく作業は結構取り留めもないことで、
使っているモニターの種類、その日の目の調子、部屋の照明など
色を左右する要素を一定になるべく保つ必要がある。

インクジェットでプリントするにしても、
機種により色味が違うので、それも把握しなければならない。
モニターと出力されたものが果てしなく近い色に持っていく努力をするが、
プリントしたものはすぐ判断できず、半日ほど置かないとプリントの色が安定しない。
出力直後に判定しても色が変わってしまうのでやり直す羽目に...。

データで渡すにしても、基準を相手に伝える必要があるため
グレーチャートやカラーチャートの写し込みは不可欠だが、
いつでもどこでもそれができるだけの余裕があるわけでもなし、
特に報道分野では不可能に近い。

私はビザはジャーナリストだが、報道分野で仕事をして来たわけではないので
新聞社とかの事情はよく知らないが、察するにすでにワークフローが確立されていて
このカメラで撮ればどう調整すれば良いとか一本化されているのだと思う。
撮影、その後のデータ化、印刷と社内ですべてできるのは新聞社だけだから。

フリーランスで仕事をしている限りそれは望むわけにはいかず、
特に入稿の早い雑誌では自分のワークフローを相手に応じて
それぞれ用意しておかなければならないと、こちらのカメラマンは言っているが、
そういう世界から遠のいてしまった状況にいる今の身には今一つピンとこない。
あと、日本とアメリカとでは印刷のインクや基準が違うため
それも考慮しないといけないらしい。

デジタルは小さなメモリーカードを数枚持って行けば数百枚は撮れるし、
ポラロイドとかフィルム、色を調節のフィルターとか荷物は減るような気がしたが、
デジタル化に伴い余計荷物が重くなった。そう思うのは私だけじゃないのでは・・・・。
ノートブックパソコン、バックアップのハードディスクにCD、予備のバッテリーに充電器、
ファイアーワイヤーなどコードなどすべてが電気仕掛けなだけにバックアップに気を使う。
当然、デジタルカメラも2台同じものが欲しくなる。

ここ数年で100万円から50万円そして20万円と下がってきたが
フィルムカメラから比べれば2倍以上、数十年上がらなかったギャラは下がるし辛い!!

あとはデジタルとフィルムとでは、撮る時の気分がどうも違う。
撮っては消せ撮っては消せるデジタルは、貧乏性の私には有り難いのだが
緊張感が全くフィルムとは違うのだ。
フィルムを使っていた時は「良いの写っててチョ〜ダイ!!」と念じながら撮り、
現像所で十字を斬りながら仕上がりを待ったものだが・・・。
1度憶えたあのスリリングさは忘れられない!アドレナリン吹き捲くりである。
こんなこと書くとお客は不安がるかも知れないけれど。

自分としてはモノクロプリントでジワジワト赤い光の中から像が浮かび上がり、
思い通りに出て来た時の快感が写真の醍醐味と思っているからだ。

そんなことが許されて仕事になるのが私の一つの夢である。

アメリカには少なからずまだその可能性があると思っている・・・。



(つづく)





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