タイトル■ニューヨーク貧乏 〜金が尽きたら、さようなら〜
書き手 ■マイティー井上Jr
現在ニューヨーク在住のフォトグラファーによる
貧乏生活報告を含めた、ニューヨークの今を伝え
る身辺雑記です。あくまでも1個人のみの視点で
お送りするエゴイズム通信であります。「セプテ
ンバーイレブンで激減した観光客を1人でも多く
ニューヨークへ呼び戻したい!そんなピュア−な
気持ちもありますよ」という、そんな企画です!
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第38回
■■■ 大停電!真っ暗闇の27時間!! ■■■
このところニューヨークは蒸し暑い日が続いている。
緯度からすれば青森と同じなので涼しく過ごしやすいと思われるがちだが、
かなりの蒸し暑さで、ここ数週間は30度を下回った事はない。そんな中の先日14日のブラック・アウト(大停電)。
「世の中、右も左も真っ暗闇でござんす。」と昔そんな歌があったが、
まさしく真っ暗闇の世界であった。で、時系列で話すと・・・。
14日、午後4時5分過ぎユニオンスクエアーの、とあるビルの12階にいたところ
階下から上がって来たセキュリティーガードに階段で避難するように促される。サンダル履きのおかげでパタン、パタンと妙に音を響かせながら下に降りる。
階段は所々非常灯が切れていて真っ暗で、こんな時こそ
「スモーカーの権威を取り戻すぜ!」
とライターを取り出し、その光を頼りに階下へとゆっくり降りる。
調子に乗って長い間灯していたので着火部分の鉄が熱くなり親指をやけど。地上に出た頃には道は既に人でごった返してはいたが、パニックというほどではなかった。
だが一斉に人が動き出し車道にまで人が溢れ、そのうえ信号が作動していないので
ドライバーと歩行者のトラブルがそこら中で起こりはじめている。また、地下鉄がダウンしたおかげで
バスでの帰宅に切り替える人でバス停は黒山の人だかり。
しかし、既にバスは鮨詰め状態。とても乗れそうにない。
殆どの人は、徒歩での帰宅を考えはじめる。徒歩での帰宅を決意した人たちは飲み物を求め店を探すが
略奪の予防のため、ほとんどの商店は店を閉じ始めなかなか買うことができない。
デリと呼ばれる個人商店はビジネスチャンスと悟るや否や
早々に店を開け続けロウソクを灯しながら営業してくれたので助かった。
ボッタクリもなく真面目に商売をしたしエライ!!。その反面、チェーン店はレジの依存率が高いからか、店を完全に閉めていた。
やっていれば随分儲かったろうに・・・。5時頃やっとチャイナタウンまで辿り着く。
買い物袋を両手一杯に抱えた中国人のおばさん達に出くわす。
こんなことになるとは露知らず、一杯買い込んでしまったらしい。
「当分冷蔵庫も使えないしどうするのだろうか?」と余計な心配をする。
「グッドラック!」6時ごろ、マンハッタンとブルックリンを繋ぐ橋の一つマンハッタンブリッジの袂に着く。
橋はマンハッタンからブルックリンへと渡る人の大行進。
老いも若きも皆歩いて帰らなければならないのだ。
普段は人が通行できない車道が歩行者に解放され違った景色を眺められた。しばらく行くと、地下鉄のトンネルの開口部にぶつかるのだが、
そのトンネルからは止まった地下鉄から避難した人が出て来ていた。
約1時間半、彼らは暗く蒸し暑いトンネルの中にいたことになるが、
おそらくこんなことが至る所で起きていたと思われる。
彼らの背中は汗でビッショリだった。また、橋の途中で止まった車両には乗客を避難させた車掌が暑さの中、
車両で待機していたが、彼は再開されるまでの38時間、どうしたのだろうか?日没になる前に帰ろうという人、車の波は、
ブルックリンに入っても途絶えることなく続いている。8時プロスペクトパーク公園に着いたころ日が落ちはじめる。
バスは鮨詰め状態だが、人並みも幾分減って来たのでバス停に並ぶ。
4台目にやっと乗ることができたが、渋滞で9時過ぎに最寄りのバス停に着く。もうすでに街は真っ暗やみ、車のライトだけが唯一の頼りという有り様。
上空には警察のヘリコプターが犯罪が起きないようにとサーチライトを
道に照らしながら旋回している。なんだか脱走囚気分が味わえた。10時前やっと家に辿り着く。
アパートの玄関で御近所からローソクを1本わけていただき
それを頼りに6階まで、足はパンパン。
水道は使えたが、温水はダメ、水でシャワーを浴びクールダウン〜。
やっと、やれやれ!他のルームメートが帰っているのを確認する。
ジェーソン(最近ルームメイトになったイギリス人)と
今日の災難について闇のなかで話す。
もう一人の日本人の女の子は、何が起きたか知らないようで
只の停電ぐらいにしか思っていない様子。テレビ、ラジオが使えないので、予備電源でパソコンを起動し情報を得るが、
復旧の見通しがたたないことを皆に告げ、やることもないので寝ることにする。
が、寝苦しくなかなか寝れない。
涼むため、窓から外を眺めるとなんと星が綺麗に見えることか!
まあ、こんなに星が見えるのもブラックアウトのおかげだろう。翌日の夕方7時半、電気が帰って来た!なんの前触れもなく突然。
通りでは歓声が起き、電気の有り難みを知らされた27時間となった。戦争、天災などでライフラインが切断されることを考えると大したことないが
電気に依存しきった生活を送っている都市生活者の稀弱さを改めて露呈した。
たかだか27時間の停電であったが意外とこたえた。エルニーニョ現象、オゾン破壊など地球温暖化の原因となっているのが
森林伐採や、車、工場からの排ガスで、
アメリカなどの物質主義がもたらした負の財産だが、未だに京都議定書など
その努力に加わろうとしないアメリカに対する神の怒りではと思っている。
少なからず今回のことで節電、資源節約にアメリカが関心を持つことを祈っている。
(つづく)
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