タイトル■ニューヨーク貧乏 〜金が尽きたら、さようなら〜
書き手 ■マイティー井上Jr

現在ニューヨーク在住のフォトグラファーによる
貧乏生活報告を含めた、ニューヨークの今を伝え
る身辺雑記です。あくまでも1個人のみの視点で
お送りするエゴイズム通信であります。「
セプテ
ンバーイレブンで激減した観光客を1人でも多く
ニューヨークへ呼び戻したい!そんなピュア−な
気持ちもありますよ」という、そんな企画です!

>バックナンバー


第40回 
 9月11日と事実の伝え方 ■


ニューヨークは秋の気配につつまれ始めた感じで
爽快な日々が続いている。
空は子供の描くようなベタ塗りのブルー、そんな空を見る度に
あの日の事を思い出す・・・。

同時テロから2年、ニューヨークはテロ以前と変わらないかんじにまで復活した。
2年目を迎える今年の9月11日は去年とは比べものにならない程ひっそりと
式典などが行われるようだ。

前代未聞のショッキングな事件だったが、
2年という歳月は人間にそれを忘れさせるには十分なようである。
今年、テレビはテロアタックについてはここ数日
2年前に何が起きたかと取り上げはじめているぐらいだ。

そんな中、最後の消防士の葬儀がブルックリンで行われた。
あの日以来、消息不明で何の遺留品も手にできていない家族にとっては
何もまだ終わっていないからだろう。

その後に起きたアフガニスタン、ビンラディンについての情報、
イラクの事についてもテレビから得る事は日に日に減少している。

どれもまだ完全にカタがついてないが、
人の興味が薄れると共に報道も同じように希薄になっている。

ビンラディン、フセインが果して何処に潜んでいるかなど
政府にもっとメディアが詰問してもいいのでは?
アメリカのメディアも腰抜けたもんだと感じてしまう。
政治的圧力やなんかがあると思うのだが・・・。

最近のこれらの問題についての討論といえば、アフガン、イラクなどの駐留費や
戦費$870億(約10兆2000億円)をどうするかと言う事に集中している。
イラクの原油で半分は負担するとしても残りをEUや日本にという考えらしい。

イラクの復興支援に関して日本の話が出る事はないが、
ことお金の事になると「ジャパン」という名詞を頻繁に耳にし、
改めてアメリカにおける日本の位置付けを悟らされたしだいである。
「やはり日本ってお金持ちのお坊っちゃんみたいにしか思われていないのか!」と。

個人的にこのような事に関連した事と言えば
今年の夏は再びジャーナリズムのワークショップに参加し、
タイムマガジン、ニューズウィークなどアメリカを代表する雑誌社を
訪れる機会に恵まれ、いろいろとアメリカの報道についてや
雑誌、写真の内状について知る事ができた。

俺の分野は写真なので関心はどのような写真が好まれるか、使われるかだが・・・。
写真はアメリカ寄りのドラマチックなものが選ばれていると感じた。
もう少し嫌悪感を露にして言えば、
アメリカのヒューマニズムを美化したプロパガンダ的写真だ。

例えば、アメリカ兵が歓喜の中バクダッド市民に迎えられているとかで
決してアメリカ兵の死体の写真などは使われていない。
アフガン、イラク兵士の黒焦げの死体や血まみれの写真は敢えて使われている。

これは公平に事実を伝えると言う意味では矛盾している。
しかし、どの国でも行われる事で、人道的配慮と言う意味で
その国で発刊されるかぎり仕方がないようだ。
相手の敵国人に対しては人道的配慮は必要がなく悲惨であればあるほど
商品価値は上がるといった何とも恐ろしい決まり事だ。

15年間いろいろな雑誌で仕事をしてきたが、
どんな仕事に於いても事実を正確に伝える事は殆どできていない。
むしろデフォルメしドラマチックに商品として仕立て上げていたと自身思う。
事実をありのまま伝えるのが良いのか、
見て側に分かりやすく味付けをして伝えるのが良いのか、
そんな堂々回りの事を悶々と考えるテロアタック2年目を迎える今日この頃である。


(つづく)





[マイテイ−井上Jrの自己紹介]

[トップへ]