タイトル■ニューヨーク貧乏 〜金が尽きたら、さようなら〜
書き手 ■マイティー井上Jr
現在ニューヨーク在住のフォトグラファーによる
貧乏生活報告を含めた、ニューヨークの今を伝え
る身辺雑記です。あくまでも1個人のみの視点で
お送りするエゴイズム通信であります。「セプテ
ンバーイレブンで激減した観光客を1人でも多く
ニューヨークへ呼び戻したい!そんなピュア−な
気持ちもありますよ」という、そんな企画です!
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第49回
■■■ 氷点下のニューヨークで ■■■
今日も氷点下。
ニュースでは毎日イラクのことよりこの寒さをまっ先に取り上げて
いるくらい寒い。ニュースでは「今日は最高気温20度最低気温0度
でしょう・・・。」とおっしゃるが華氏F(Fahrenheit)である。日本人には馴染みの無い華氏を使っているのは
アメリカ、イギリスとサウジだけ。
いまだに感覚的にピンとこないので計算式 ℃=5分の9(Fー32)で
頭の中で換算している。
今年は氷点下10℃以下の日もあり外に出るのもおっくうであるが
時限爆弾のスイッチが入った今は作品を撮りに出かけている。
手袋を外しカメラを構えるとカメラは氷のようだ。
だからワザワザ首から氷をぶら下げて毎日歩いている感じ。
寒さでカメラのバッテリーはすぐダメになるので手間の掛かる電池の入らない
カメラで撮影しなければならない。
露出はフィルムのパッケージを参考にカンで合わせるのだが
手がかじかんで上手く露出のダイアルも合わせられない。
30分も歩き回るとやる気が失せ、撮影より暖かい場所を求めている。
避難後、デリでコーヒーを飲むとジワジワとほぐれていくのがわかる。
日本酒の熱燗がこんな時は一番良いのにと思うのだが・・・。
ワンカップの自販機がもしニューヨークにあれば
間違いなくこの時期、俺はアル中になっているだろう。
寒さで直ぐに尿意をもよおすので離れる前には必ず用を足す。
束の間の快感!
こんな事して芽が出るかどうか甚だ怪しいと思いながら・・・。
しかし、やるしかない、こんな寒いニューヨークを選んだのかと我を恨む。
ストリートベンダー(屋台)は今日もこの寒さの中商売をしているし
ここより寒い世界で暮らしているエスキモーはなんてタフなんだと感心すると共に
自分の軟弱さに気付く。しかし、なんで暖かいうちにもっと撮らなかったのかと後悔。
巻を入れるのが遅かった。何年生きててもこれだからしようがない。しかし、俺の中でニューヨークは冬のイメージが強い。
冬のニューヨークは人生の厳しさをどこか映し出している感じがするからだ。
それは、移民の歴史を映し出したフィルムのイメージからだろうか?
祖国から新天地を求めやって来た移民たちのこの地での厳しさをこの寒さが物語っている。
戻れる国のある俺は彼らほどシリアスな思えないが、
少なくともこの地の厳しさを感じた者として彼らのストーリーを撮り終えたい。
表面的なクールさでなく実は非常にドロ臭いニューヨークを伝えたいと思っている。
NYブルースだ!
東京でも変に作られたお台場、六本木ヒルズより浅草、歌舞伎町が好きな俺だから。
この冬で撮り終わらなければまた次の冬にまた撮るしかない・・・。
そうやってニューヨークとこれからも関わり続けて行くことだろう。
(つづく)
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