タイトル■女湯物語
書き手 ■加藤さこ
『女湯』と書かれた暖簾(のれん)をくぐると、
そこには男達の想像を超えたドラマが渦巻いている……。
というのは大げさだけど、お風呂屋さんの「女湯」って、
利用している女の私でも摩訶不思議な物語があるのです。
週に3回は必ず風呂屋に行くライター加藤が、
暖簾の向こう側の世界の「禁断の話」をお届けします。
■バックナンバー
第3回『あなたのキズを数えましょう』
歌手の小柳ゆきの歌をはじめて聴いたとき、
この少女はスゴイと思ってしまいました。
しかし、これは全くの勘違い。
数えるのは「あなたのキズ」ではなく、
「あなたのキス」だったなんて…。
ものすごくがっかりしました(笑)。先回と少し話題が似ていますが、
今回は女湯で交わされた「キズ」の話です。
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身体にひとつのキズも持たずに生きてる人は
まず、いないんじゃないでしょうかね。
私は右足に有刺鉄線で引っ掻いた傷痕があるし、
お腹には手術をした痕があります。
もちろん、帝王切開じゃないですよ(笑)。でも、多少目立つ傷跡でも、
他人には黙認されるようです。
自分が思っているよりも
ぜんぜん、気にならないってことですね。以前、仲良くなったスーパー銭湯の女湯友達が、
「子供の頃に、私の目のことですごくイジメたけど、
今って、誰もキズのこと言わないんだよね。
鏡でじっくり見ないと、自分でも忘れちゃってる」
と、脱衣所の鏡に向かってつぶやきました。確かに彼女の左目の上にはキズがあり、
そのせいで左右の位置が微妙にズレてます。
気が付かないふりをしているわけではないけど、
なぜだか、キズが彼女の顔に馴染んでいるみたいで
すごく自然なんですよ。
だから誰も言わないんだと思いました。でも、その話がきっかけとなって、
女湯の脱衣場で、私と彼女、あとひとり、
よく話をする女の子の3人で、
キズにまつわる話が始まっちゃいました。
ふだんは黙認されていた、キズの品評会…。
キズ自慢なんてすごく子供じみてるし、
女3人でキズを数えあうなんて、
ものすご〜く悪趣味ではあるけど、
風呂上りのヒマつぶしには
まあ、良いかもしれない。予想通り、3人とも子供の頃の
ドジからついたキズが多かったけど、
中には、受験シーズンに手首に付けたためらいキズ
なんて生々しいことを言われて
内心ギョッとしたのもありました。笑って話せるのは、キズが癒えているから。
精神的なキズも同じだわね。
ひどいキズは本当に癒えていないと、
人に笑い話として話せないからね。いろんなキズについての話を聞いていると、
なんだかアンティークな骨董品を思い出しちまいました。
価値があるかはわかりませんが…。女湯は、ときどき妙な社交場になるンです。
って、こんなヘンなヤツらは私達だけかもしれず…。
【お風呂屋さんワンポイント情報】
●スーパー銭湯
普通に比べて、サウナや露天風呂、
薬湯など、設備が充実していて、
レジャー施設もあったりする銭湯のこと。
宴会ができて割高な健康ランドに比べると、
スーパー銭湯は入浴を目的とする施設はシンプルで低価格。
最近では、健康ランド並みに美容と健康に力を入れて
集客を狙うところもある。
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