SCW 合宿 2005 〜モラトリアム〜


28編 『第1節 優先順位[priority]』

目が覚めたら、もうすぐ待合わせの時間だった。
「ねぇ、いいの?もうこんな時間だよ?」
目が覚めたというより、妻が俺を起こしたのだ。
「ねぇ、いいの?もうすぐ待合わせの時間なんじゃないの?」
「うるさいな、いい訳ないだろ?遅刻しそうなんだから!」
とは俺は決して言わない。何故なら愛妻家だから。
「うん、やばいな。どうしよう?」
どうしよう口で言ってどうにかなる訳はないが、取敢えずいうよね、どうしよ
う?って。
こんな時は焦ってはいけない。先ず物事の優先順位を考えて、最短で目的を達成
する事が肝要だ。
優先順位を考える為、優先順位をつけるべく今から何をやるべきか考えながら、
あっちの部屋とこっちの部屋を行ったり来たり建設的な思考を練っていると、
「先ず、TOKさんに電話したら?」
と妻。それも一理ある。こういった事態の時は論理的思考より、
そういった複雑な思考回路を持合わせていない妻のような人間の直感の方が正し
い事が往々にしてあるものだ。
俺は妻の言葉に従った。
電話の呼び出し音を聞きながら、TOKが昨日から「遅刻するなよ!」と煩く言っ
ていたのを思い出した。
「お?どうしたん?」と、TOKの声。朝から関西弁はきつい。
「今起きました。」
「…。」寝ぼけているのか反応が薄い。どうやら彼も起きたばかりの様だ。
「可及的速やかに集合場所へ向かいます。」
「急げ!すぐ出ろ。」
大体の到着見込みを話し、電話を切った。
凡人ならここでばたばたする処だが、俺は慌てない。
先ずやるべき事の優先順位を考える事が肝要だ。
今のステータスは、やるべき事のリストアップ。
取敢えず、シャワーを浴びながら考える事にしたのだった。