日曜ちゃん編 「日曜ちゃんとその他の観察」

ウェンブリーは大抵の場合、僕らのすぐ横を流れている
年々、他人事になっていく夏がゴトゴトと荷台にのせられて
僕らの時間から去っていく 少女はどこか遠くで綺麗になる
だから、9月は旅行に出掛けたくなる。そんな風に合宿にむかって漕ぎだす

親密感で満ちている車が諏訪の霧の中を吹き抜けて
降り立つ頬紅色の午前中がふるえている。
田舎の結婚式のような待ちぼうけのあとのけだるさを、
誰かの煙草の火が燃やしているのを眺めながら、昼食を終える。

よそよそしい挨拶みたいな雨が降り、黒白模様の球体が、土のうえで氾濫した
古惚けた砂が捨てられて、交わる声が記憶をさらって、夕闇模様の玄関に打ち揚げられる。

花魁の緩んだ帯が鼻さきをくすぐり、結ぶおなじ白い手が酒をついでいる
薄黄色の風除けがはためいて、湯上りのけむりが夜の静けさを、会話の中に落とした
御猪口の顔が月の光と一緒にふるえて、仲間達の行く末をボンヤリと照らす。

未だ火は燃え続けることで、少女の死を告げた。
弔いの祭りは大木を滑らせる。やさしい匂いの路地を行ったり来たりの車輪のうえ。

暗闇に浮かぶ高速道路はとても高い場所にあって、目下の青白い光がゆらりと。
少女を横の流れに浮かべる。やがて見えなくなるまで、僕らは添えられた花束のやうに寄り添った。