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パロディSS
遠山のかれんさん(後編)
「TVドラマ 遠山の金さん」より
狩野雅明
Up:2001.11.4 SUN


前編はこちら

船は進むよ何処までも。
波を切り裂き輝く舳先。
舳先を見下ろす甲板にネイティブアメリカンの血をひく一人の青年が立っていました。
「もうすぐジャパンか…」
まだ見ぬ異国に思いをはせていると声をかけられます。
「よう、ブルース。何をみているんだ?」
「一馬か。もうすぐジャパンに着くんだと思って見ていた」
「……日本か…何もかもみな懐かしい…」
「ところで一馬。ジャパンの船乗りは母港に帰るとこう言うらしいな」
ブルースは顔を引き締め、ポーズを決めます。そして…
「ソロモンよ、私は還ってきたっ」
「………いわねーよ」

パロディSS
遠山のかれんさん <後編>
花村かれん うぃず 村山おーるすたーず


「千葉屋に借金があった?」
かれんは同心中沢の水死体の娘に関する報告を聞いてそう聞き返しました。
「はい。被害者の娘の家は千葉屋から借金をしていました」
「では、娘は借金のカタに?」
「千葉屋は否定していますが、おそらくは……」
「千葉屋から逃げ出した時に事故にあったか、あるいは…」
「殺されたか、ですな」

「人身売買!」
「しっ、声が大きいわよっ。由里子!」
飛鳥は慌てて由里子をたしなめます。
ここは喫茶店。風見鶏。テーブルを挟んで飛鳥と由里子が話をしています。
「ご、ごめんなさい…でも、本当なの?それ」
「瓦版屋の祥子の話では確証は無いらしいの。でも、一馬からも似たような話を聞いたことがあるわ」
「外国船に娘を売り飛ばすとはねぇ…」
「組織的なのか、個々で行っているのか、黒幕は誰なのか、まだ分かっていないわ」
「じゃぁ今度の…」
「有り得るわ」

「足りないな」
光秀の目が老婆と夕子を睥睨します。
「足りないよなぁ」
宏樹がにやりと口を歪めます。
「期日は、今日、だったよな」
勘定をしていた隆之が凄みを利かせながら言いました。
「すいません。これだけしか用意できなかったんです。あと10日、いえ、あと7日待ってください。必ず全額用意しますから」
夕子は床に額をこすり付けるように土下座をしながら懇願します。
「駄目だ」
一瞬の躊躇もなく隆之が言い放ちます。
「そんな…」
絶句する夕子の手を宏樹が引っ張ります。
「言ったはずだぜ。期日までにきっちり用意しとけってな」
さらに三和土まで引っ張り寄せると光秀は老婆に言います。
「そういう分けだ。娘は貰っていくぞ」
「そ、そんな…お夕…」
「おばあちゃんっ」
「あぁ…赦して下され…その子を連れて行かれたらわたしは…」
「うるせぇっこのババぁ!」
すがり付く老婆を蹴りつけると3人は夕子を連れて長屋を出てってしまいました。
「おぉぉ……お夕ぅぅ…」

「たいへんだ、たいへんだよっ」
仕事から上がった武志と達也の所に同じ長屋の正人が飛びこんできました。
「おいおい、どうしたよ。そんなに慌てて」
「なに…ハァハァ落ち着いて…ハァハァるんだよ…アァこのスットコドッコイが!」
「だから何だよ」
「お夕ちゃんが、お夕ちゃんが千葉屋のチンピラに連れて行かれたんだよっ」
「なんだって!」
「野郎…ゆるせねぇ!!」
「武志っ何処に行く気だ!」
「決まってるだろっ千葉屋に行って夕子を取り戻すんだよ!」
「待て!」
達也は今にも爆発しそうな武志の肩を掴んで止めます。
「何故止める!お前、夕子がどうなっても良いのかよ!!」
「良いわけないだろっ…だがな、今奴等のところに殴り込んでも返り討ちに遭うだけだっ」
「だがなっ」
「時を選ぶんだ。やるなら夜だ。暗闇に紛れて忍び込もう」
「……わかった」
今まで見たこともないほど真剣な目をした達也の言葉に武志はしぶしぶし従いました。
「それで、婆さんの方は?」
「婆さんなら大丈夫だ」
「よし、とにかく夕子の家に行こう。話はそれからだ」
「…俺はちょっと寄り道していく。先に行っててくれ」
達也の言葉に2人は怪訝そうな顔をしましたが達也をおいて夕子の家に向かうのでした。

観客は拍手をせずにはいられなかったのです。
南蛮楽器"ちぇろ"の音色は確実に彼らの心を捉えたのでした。
鳴り止まない拍手に白人の壮年男性と年頃の日本人女性は頭を下げて応えます。
演奏が終わり三々五々散って行く人々を見送り、白人の男性は残った女性に声をかけました。
「オりんサン。マタ来てクレタノデスネ」
「ええ、JBとリオちゃんの演奏はとても素敵だから」
「アリガトウゴザイマス」
そんな会話に華をさかせていると一人の男がやってきました。
「療養所のおりん先生ですね」
「あなたは…」

闇夜に紛れて密談を。
酒を交わして女を味わう。
悪党のお決まりです。
「ゲーリー様。今度も御贔屓にしていただき、ありがとうございます」
「Yes、千葉屋ノ商品ハァドレモスバラシイ。買イ付ケルノハアタリマエネ」
「お褒めにあずかり恐縮でございます。ささ、今宵はお楽しみください」
「シカシ、千葉屋。借金ノ払えない娘達ヲ集めて我々ニ売るトハ、お主モ悪ヨノォ」
「いやいや。その上得意様のゲーリー様には適いません」
ひとしきり笑うと千葉屋の主人、尾上覚之丞は手を叩きます。
すると襖が開き縄で縛られた娘が連れてこられました。
「この娘は今日入荷したばかりのモノでございます。見本としてあなた様にご賞味いただきたいと思いまして用意させていただきました」
「ソウカ。ナラバ頂こう。娘。名ハ?」
「ゆ…夕子…」
「ソウカ。ユウコと言うノカ。ソウ、脅えるナ。コレカラ女トシテノ悦びヲ教えてヤル」
「い…いや…」
「ヨイデハナイカ、良いデハナイカ」
「いやぁ〜誰か、誰か助けてぇ〜」
嗚呼、夕子の貞操が大ピンチ!
「てめぇらっそこまでだ!!」
だん!と大きな音を立てて襖が開かれます。そしてそこに仁王立ちする男2人。
「武志君!達也君!」
「きさまらっ何奴っ」
「おまえらに名乗る名は無ねぇ!夕子を返してもらうぞっ」
「ふっ、貴様らのような下賎の者に何が出来る。皆の者っ曲者ぞっ出合え!」
尾上の声に屋敷中からわらわらと人が集まり2人を囲みます。
「しかし…貴様らここまでどうやって来たのだ」
尾上はもっともな質問を投げかけるます。
「それは……」
「それは、私が連れてきました」
凛とした声が人垣を割り、声の主が尾上達の前に進みでました。
「おりん…やはりお前か」

話しは数刻前に戻ります。
約束の刻限になったとき、武志はそこにいるはずのない人物がいることに驚きました。
「おりん…何故ここに…」
「俺が、連れてきた」
おりんの隣に立つ達也が言いました。
「何考えてるんだっ先生は関係無いだろ。何故連れてきた!」
「先生も関係者だ。先生は千葉屋主人の妻だ」
「な…なんだって!おりんっ本当なのかっ」
「………ええ、本当よ…今まで黙って…てごめんなさい」
おりんは罪悪感を滲ませた顔を俯かせるのでした。
「夕子はお前が自分に対して冷たくなったことを悩んでいた。その原因を調べていた時に偶然知ったんだ。今回は先生に協力してもらう」
「だがなっ」
「だがなもヘチマも無い!武志っ、夕子に何かあってみろ、俺は夕子を傷つける全てのモノを決して許さない。例えそれがお前であってもだ!夕子が救えるのであるならば俺は何だって利用してやる!」
「達也…お前…夕子のこと……」
「先生、武志。行こう。時間が無い」

場面は再び千葉屋に戻ります。
「もう、このようなことはお止めください。私は奉行所に全てを話します」
「そのようなことは許さん!…おりん、お前こそ、その男と情を通じていたことを私が知らぬとでも思っていたか!」
尾上は武志を指さすとそう叫びます。
「おまえが奉行所に私を告発するならば、私はおまえを姦通の罪で告発してやる。そして一生ふしだらな女と罵られるが良い」
「なっ…」
激発しかけた武志をおりんが制止ました。
「その通りです。私は他の男と情を通じたふしだらな女です。ならば、一緒に裁かれましょう」
「ぐ…もぉ良い。ならば斬り捨てるまで。皆の者、殺ってしまえ!」
おおぉと声を上げ手下達は武志達に斬りかかります。
武志、達也はその高い運動能力で刀をかわしていきますが夕子、おりんを庇いながらのために思うように動けません。
悪意の刃が彼らを捉えるのは時間の問題です。嗚呼、再び大ピンチです。
「そこまでよっ」
一陣の風と共に放たれた礫が手下達に命中。苦悶の声を上げ倒れます。
「なにやつ!」
「通りすがりの遊び人。かれん。悪の匂い連れられて此処に参上」
「かれんさん!」
「はぁい。おまたせ☆助けに来たわよ」
「ふん。遊び人ごとき増えたところで何が出来る」
「それはどうかしら?」
手下の一角が派手な音を立てて倒れます。
「葉隠れのお京、参上」
忍び装束の少女がビシッと小太刀を構えます。
「同じく、コンドルのジョー」
そう言った少年は濃紺を主にしたコスチュームに羽を模したマントをなびかせます。
ゲシッ!!!
お京の蹴りが炸裂。哀れコンドルのジョーは屋敷の壁にめり込んでしまいました。
「あんた、いつから科学忍者隊になったのよ!だいたい、今時の読者はガッチャマンなんて知らないわよ。あんたいったい何歳よ!」
やくざキックを連打しているお京に「それを知っているおまえこそ何歳だ」などというツッコミを入れる勇気の有る者はいませんでした。
(俺の出番はこれだけかよぉ〜(by泣きの丈))

閑話休題。

こうして集まったかれんとその仲間達によって次々と尾上の手下達が倒されていきま す。
「ぐ…こうなれば…センセイっお願いします!」
「やっとわしの出番か」
奥の間から出てきたのはこん棒を持った190を超えそうな大男でした。
「大仏!」
その姿を見て武志と達也が叫びます。
「ほぉ…お前らか」
用心棒の大仏は絶好の獲物を見つけた狩人の笑みを浮かべます。
「知り合い?」
かれんの問いに
「俺達の天敵だ」
と武志が応えます。
「死ねやぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!!」
手にしたこん棒を振り下ろすとその地面が大きくえぐられます。
「今度は逃がさん」
「やいやいやいやい。黙っていればやりたい放題。この遠山桜、散らせるもんなら散 らしてみやがれ!」
右半身を晒して啖呵を切るかれん。その腕には見事な桜吹雪の刺青が!
「おぉぉぉぉぉ!!!」
どよめく周囲。注がれる視線。
決まった。かれんはそう思いました。
「かれんさん、かれんさんっ」
「何?京子ちゃん」
「さらし…巻いてこなかったんですか?」
真っ赤な顔をしてお京が指摘します。
「え?」
視線を下げると…何も隠さず素肌を晒した右半身が…
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
かれんは絹を引き裂いたような悲鳴を上げ胸を隠ししゃがみこんでしまいます。
ブハッ!!!!!!
それを合図にしたようにこの場にいた男達は鼻血を吹き出し倒れてしまいました。
このかれんの『ポロリ攻撃』の威力の凄まじさを貿易商ゲイリーは後に本国へ送った手紙の中に記してしました。『あれでご飯3杯はいける』と。
「何やってるんですか。かれんさん」
「だって、胸の形が悪くなるからサラシを巻くのは止めなさいって由里子さんがぁ〜あ〜ん、まだショーリにも見せたことが無いのにぃぃ」
お京は涙をいっぱいに溜めたかれんに溜め息をつきます。
「とにかく、悪者は退治しました。決め言葉を言って退きましょう」
遠くから笛の音と御用提灯が十重二十重と近づいてきます。
良く見ると中沢に率いられた勝利とりつ子の姿も見えます。
「ぐす…うん…え〜と、『つまらなぬモノを斬ってしまった』ぐしゅぐしゅ」
「はい、良く出きました。丈、あんたも鼻血吹いてないで、帰るわよっ」

こうして、悪の千葉屋一党は奉行所に捕縛されたのでした。

「北町奉行ぉ〜遠山左衛門上さま御出座ぁ〜」
白州にいる一同が頭を伏せるなか、北町奉行が座に着きます。
「千葉屋による外国貿易商との人身売買容疑の件につき吟味いたす。一同、面を上げい」
白州にいるのは千葉屋主人尾上を筆頭に貿易商ゲイリー、大仏、隆之・宏樹・光秀のチンピラ3人衆。他方には武志、達也、夕子、おりんが座っています。
「千葉屋主人、尾上。お主は貿易商下ゲイリーと共謀し娘達を人身売買を企てたこと、相違無いな」
「いいえ、滅相もございません。我が千葉屋は信用第一。人身売買などという人の道に外れたようなことは決していたしておりません」
「夕子。尾上はこのように申しているが」
「千葉屋の言っていることは嘘です!私は千葉屋に借金未払いを理由に連れていかれ、その外国人に売られそうになりました!」
「何を言うかこの小娘が」
「いいかげんに認めなさい。千葉屋主人の妻として証言いたします。尾上は店の経営不振を人身売買によって穴埋めしようとしていました」
「奥方。証拠はあるのか!」
大仏が威圧をかけようと大声で怒鳴ります。そうだそうだとチンピラ3人衆も声を上げます。
「お奉行様。このおりんという女、そこにおります男と情を通じているような者です。そのような者の言などお聞き入れなされますな」
「この…言うに事欠いて…おりんを侮辱するとは…」
「耐えろ。今は裁きを受けているんだ」
激発する武志を達也が必死に抑えていました。
「ほれ、証拠を出してみるがよい」
千葉屋側は「そうだそうだ」と囃し立てます。
「そうだ、かれんさん…かれんさんなら全て知っています!」
「はっ。かれんなんて奴など何処にいるんだ。はっはっはっは」
千葉屋側の笑いに今まで黙っていた奉行が不意に立ちあがります。
「証拠、証拠とうるさい奴らだ。そんなに証拠が見たくば見せてやる。あの日、闇夜に咲いた遠山桜…忘れたとは言わせないぜ!!」
だん!と裃の右半身をはだけたそこには腕に咲き誇る桜吹雪が!
そう、遊び人かれんさんは北町奉行だったのです!
決まった。今度こそ決まった…今回はちゃんとさらしもまいているし。完璧よ。
かれんは心の中で喝采を上げていました。
しかし、いつまでたっても反応がありません。どうしたのでしょう?
「いやぁ〜見覚えないなぁ〜」
白州の男達は全員その言葉に頷きます。かれんは目が点です。
「え…どういうこと…」
「やぁ〜あの時は違う所に目がいっていたからなぁ……」
またもや男性一致で頷きます。
「まっ…まさか……」
「あなたが"かれんさん"である証拠、見せてもらわないと納得できませんねぇ〜」
うんうん。と頷く男達。もはや男性陣は一枚岩になったようです。
うううううううううううぅぅぅぅ……と「やらなきゃ駄目?」と目で訴えていますが「駄目!」のオーラが!
その気迫にたじろぎ、さらしをシュルリシュルリと緩めるかれん。
「こ…これで…どう…」
顔をこれ以上にないほど真っ赤にして腕の隙間から見える膨らみはまさしくあの夜の!!!!
「あ…あれは!」
「貴様はあの時の!」
男達に蘇るあの夜の出来事。
「ははぁ〜参りました」とひれ伏す千葉屋達。
さらしを巻きなおし座につく奉行のかれん。
「裁きを申し渡す………」
白州に溢れる殺気に思わず逃げ腰になる一同。
「あなた達全員!この場で斬り捨てます!!!そこへ直りなさぁぁぁぁぁい!!!!」
「わぁぁぁぁぁ〜御奉行っ殿中でござる、殿中でござるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜」
太刀を大上段に構え白州の男達に切ってかかろうとするかれんを役人達は必死に止めるのでした。
これにて一件落着。チョン!
「落着じゃなぁ〜〜〜〜〜い!!」
チャンチャン。
<遠山のかれんさん(了)>

*****後書き******
やれやれ、やっと完結しました。
長かった…執りかかってから1年です。
時間がかかった最大の理由は話しがなかなか膨らまない上に進まなかったためです。
かれんの口調がまったく定まらなかったなぁ…イメージが固定できんかったからなぁと反省しきりです。
次にパロディをやるとすれば都を主役に据えて推理モノの構想があります。
とりあえずマンガ喫茶に行って資料集めをしないとね(笑)。
(2001・11・4 初校UP)



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