日本映画

あ


あゝ同期の桜
(1967)
5
2004年7月
日本の敗戦が目前に迫っている第二次世界大戦の末期、人手不足で学生が特攻隊として借り出された。そんな彼らの厳しい軍隊生活と出撃までを描いた作品。
これ特攻隊がテーマだからちょっと観るの気が引けたんですけど観てよかったです。確かに死に行く若者達を描いているから重いんですけどだからこそ残された時間を懸命に生きる特攻隊員たちの姿が心に残ります。しかも松方弘樹、千葉真一なんて目がくりっとして若いですね。って二人の若さにもちろん驚いたんですけど、同じ特攻隊のメンバーに夏八木勲、蟹江敬三、村井国夫だなんてすごい面子。特に夏八木勲は妻子もちなのに特攻隊員の役どころだけど見せ場も結構あってかっこよかったな。妻(これが佐久間良子だ)と特攻する前日に二人っきりの結婚式を行いウェディングドレスを破ってスカーフにしてと手渡すシーンは切なかったなぁ。
千葉真一が身寄りのないという設定なんですけど、友人の松方弘樹の家族が面会に来て妹の藤純子を家族を一人くらい分けてやるよとかいって二人をくっつけるところが微笑ましかったりと中島監督は過酷な状況下の中でもさりげない笑いを入れてくるところがいいんですね。
高倉健と鶴田浩二が松方弘樹たちに飛行機の操縦を教える教官兼特攻隊員だったり先輩兵士から殴られているところを助けるのが天知茂だよー、というこちらも豪華な面子で
ほんと誰もが知っているに間違いないオールスターキャストでこれだけで十分観る価値ありますよ。
でやっぱり東映の社長からクビ宣言されたという噂のラストネタバレ→
まさに突撃の瞬間の写真とともに「この瞬間彼らはまだ生きていた」とスクリーンに映し出される字幕。「それから数ヵ月後日本は敗戦した」みたいな字幕が映し出されて唐突に終わるんですけど←今なら全然OKならすとだけどやっぱり当時は早すぎたんだろなこの演出と思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
松方弘樹
(白鳥少尉)
なぜかいつもリーダーシップをとってる感じのベン・アフレックで。
千葉真一
(半沢少尉)
ベン・アフレックと比べると幸薄いマット・デイモンで。


ああ爆弾
(1964)
3
2005年6月
数年ぶりに刑務所で知り合った発明好きの田ノ上太郎とともに出所した大名組の大名大作だったが議員に立候補する矢東弥三郎に乗っ取られてしまっていて・・・
作品紹介の一言コメントに「新旧やくざの対立に、万年筆爆弾をめぐるサスペンスを絡めたミュージカル・コメディ。」と書かれてあったので期待していたのですがオープニングの歌舞伎ちっくな雰囲気にちょっと怪しい感じがしたのでもしやとは思ったのですが、やっぱり想像していたものとかなり違かったし今まで観た岡本喜八作品の中で一番ノレなかった作品でした。
奥さん役の越路吹雪がちょっとおかしくなっていたりタイトルにもなっていて重要なアイテムになる万年筆爆弾とかいろいろ面白そうな要素があったのですがあのテンションについていけなかったのが残念です。
敵役の中谷一郎もなんかおもろいキャラをやろうとしている勢いは買いたいところですけど眼鏡をかけたら仲本工事じゃないかというルックスだしいつもの兄貴っぷりが全くないのでトホホでしたねぇ。
伊藤雄之助もこう出ずっぱりだと彼はこってり系の顔つきだからちょっと胃もたれします。やっぱりこの人すごい存在感だからちょっとしたアクセントとして出るくらいでちょうどいいんだなぁと思いました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
伊藤雄之助
(大名大作)
イメージ的にはビル・マーレーかな?
砂塚秀夫
(田ノ上太郎)
発明家でどこまでもついていくというキャラがイライジャ・ウッドっぽくて。
中谷一郎
(矢東弥三郎)
ビル・パクストンはどことなく胡散臭げなキャラがはまりそう。


愛のうず潮
LOVE OF FROZEN LAKE
(1962)
4
2008年6月
学校を卒業しすぐに武彦と結婚した綾子だったが夫の武彦の帰りは毎晩遅かった。夫の武彦はニューヨーク支店長の座を狙い社長の姪の夏江と不倫をしていたのだった。そんなことを知らず綾子は不安な日々を送っていたがある日、綾子が通う染物教室に写真家の香川英二が写真を撮りに現れて・・・
新珠三千代と三橋達也の名コンビが繰り広げる不倫もの。
昼ドラも真っ青な展開。そして新珠三千代の不幸っぷり。新珠三千代は以前からどちらかというと綺麗なんだけど幸薄い感じがやっぱり似合うなと再認識しました。(気が強い役もいい。)
それに平田昭彦の旦那としての最低っぷりがすごいです。草笛光子との不倫は百歩譲って置いといたとしてそれ以外に夜中に帰ってきてブザーを鳴らして新珠三千代に出迎えさせて「なんだ、まだ起きていたのか。」て現代でやったら即離婚ものです。偶然会社の近くで妻と鉢合わせした時もものすごく動揺しつつもこんなところうろつくんじゃない。的なことを言ったりしたり、終盤出張と言いつつ熱海に草笛光子と旅行したことがバレたときも近所の塩沢ときが新珠三千代と三橋達也が一緒にいるところを見かけたという余計な告げ口をされて逆切れ。冷酷なところが平田昭彦にぴったりでしたが観ていてムカッとしました。
草笛光子も最初はクールな重役秘書と言った感じで平田昭彦を手玉に取っていると思っている時は余裕を見せていましたけど後半どうも上手くいかなくなりかけてきたら自宅に乗り込んで平田昭彦に結婚を迫るご乱心ぶり。後半の草笛光子は怖かったです。
と付いてない新珠三千代のもとに突然現れた三橋達也。積極的にアタックした甲斐があってか新珠三千代も二人っきりで会ってくれるようになったときに
どんな人が好きなのかと聞かれ、「あなたです。」と直球勝負。さすがは和製ジョージ・クルーニー。(と勝手に思っている。)こういうことは濃い目の顔の人が言うと画になります。
クライマックスついに実家に帰った新珠三千代そしてその後を追う三橋達也。ネタバレ→
これでようやくハッピーエンドと思いきや平田昭彦と草笛光子の乗った車が事故に遭い足を切断する重症に。結局旦那のところに戻ることにしてどこまでもついていない新珠三千代。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
新珠三千代
(毛利綾子)
やっぱりここはナオミ・ワッツで。
三橋達也
(香川英二)
ジョージ・クルーニーにお願いしたい。
平田昭彦
(毛利武彦)
冷たい感じのブルース・グリーン・ウッドで。
草笛光子
(浅見夏江)
ヘレナ・ボナム=カーターに凄みを効かせて欲しい。


愛の渇き
THE THIRST FOR LOVE
(1967)
3
2009年4月
悦子は夫の死後、舅の弥吉の寵愛を受け本家で生活をしていたが悦子は密かに庭師の三郎に心動かされていた。そんなある日、女中の美代を三郎が妊娠させてしまい・・・
三島由紀夫原作の愛憎劇を浅丘ルリ子で映画化。
三島由紀夫原作ものはやっぱり若尾文子が一番だと思いつつもこの映画に限っては浅丘ルリ子で正解だと思います。が、どうも日活というのが三島由紀夫カラーにあっていないように思えて見ていて違和感がありました。庭師の石立鉄男も石立鉄男?という感じで配役がもうひとつなのですが独特なカメラワークと世界観というか雰囲気はよかったのでこれは大映で映画化してほしかったなと思いました。
浅丘ルリ子は顔がもうひとつ好きになれないのですが今回はものすごくはまっていてよかったです。石立鉄男が気になり始めてさりげなく靴下(安物)をプレゼントをしたにもかかわらずゴミ捨て場に捨てられていたと知った時とか、女中を妊娠させてしまった時になんとか女中に子供を堕ろさせようとする時に表情には出さないけれど内心怒りと嫉妬で狂いまくっている様子が手に取るように分かって浅丘ルリ子はこういう内面で怒りを表現するのが上手いなと感心しました。
あと、次男夫婦と浅丘ルリ子の奇妙な共存生活?みたいな独特な三島由紀夫ならではのセレブの生活っぷりが描かれていたところはよかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
浅丘ルリ子
(悦子)
これはアンジェリーナ・ジョリーにお願いしたい。
中村伸郎
(杉本弥吉)
偏屈な役も似合いそうなサム・シェパードで。
石立鉄男
(三郎)
ロドリゴ・サントロあたりで。


愛のきずな
(1968)
3
2009年5月
妻子のある鈴木良平はある日、雨宿りをする雪子という女を家まで送るがやがて二人は恋に落ちてしまう。しかし雪子にはもうじき出所してくる夫がいることが分かり・・・
藤田まことの不倫の顛末は?
藤田まことは重役の娘と結婚していて会社でも家でもうだつが上がらない感じなのですが、偶然出会った園まりにメロメロです。園まりはとんかつ屋さんで働いている明るいいい娘さんなのですが何故か藤田まことに惹かれてしまい何となく納得出来ないのですが、後々分かってくる事実としては園まりは愛されずにはいられない体質らしいので納得です。
そんな二人の序盤はいちゃいちゃっぷりは園まりはいいのですが藤田まことが嬉しそうな顔をしすぎて引いてしまうのですが突然、園まりに夫がいてしかも殺人を犯して刑務所からもうすぐ出所してくるというからさぁ大変。藤田まことの慌てっぷりが笑えます。昔はちょっと性格が悪そうな顔つきをしていたのでこの後の展開で色々面倒になる前に別れようと思うのですが別れられないから園まりを殺すのですが、どっこい園まりは記憶を失いながらも実は生きていた・・・という無茶な展開が新鮮です。
記憶がないまま、もう一度付き合い始める二人ですが全てを投げ出して旅立った二人の乗った列車が停まった駅に偶然、佐藤允が・・・
電車が出発して乗り遅れたはずの佐藤允が何故か電車の中にいるというホラー映画の殺人鬼も真っ青な展開に目が離せません。と、こんな昼ドラのような強引な展開が実は松本清張原作だとはとても信じられないのでした。
ともあれ園まりはとてもはつらつとしていてものすごくよかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
藤田まこと
(鈴木良平)
どちらかと言うと情けない役のほうが似合いそうなベン・アフレックで。
園まり
(平井雪子)
とにかく明るいイメージのブリタニー・マーフィーで。
佐藤允
(平井健次)
どこまでも追いかけてきそうなハビエル・バルデムで。


愛のむきだし
LOVE EXPOSURE
(2008)
4
2009年8月
敬虔なクリスチャン一家の長男ユウは次第に懺悔を強要するようになる父のため、毎日罪を作るようになっていたそして盗撮の世界に行き着くユウだったが、そんなユウはヨーコという少女に運命的な出会いをするのだが・・・
評判はいいらしいという噂は聞いていたのですが、上映時間4時間をいう長丁場のいろいろな要素が詰め込まれたドラマ。
とにかく4時間もあるから最初はどうしようかと思ったのですが終始、映画全体にパワーがみなぎっていて4時間という時間もなんのその。長く感じませんでした。
家族崩壊、盗撮、キリスト教に新興宗教とパーツパーツを見ていると全然関係なさそうなのですがこれが面白いことに繋がっていくからすごいと思います。最初は父親の渡部篤郎に暑苦しい女が出来て父と息子の関係が危うくなるところから最後は新興宗教に取り入れられた家族を取り戻しに行くというスケールの大きな話になっていくのですがキャラクターもそれぞれ濃くて楽しいです。
主役の二人がアイドルというところも変態になったりパンツ丸出しになったりと体を張ってアイドルなのに吹っ切れていると感心したのですが
、何より悪の元凶みたいな強烈なインパクトを残す安藤サクラがすごい。途中の休憩で奥田瑛二と安藤和津の娘だよと教えてもらってビックリ。後半戦は安藤和津にしか見えなくてちょっと困りましたが、小池栄子ばりの強烈な個性とふてぶてしさを兼ねそろえていて、とにかく存在感が抜群でこの娘は今後も見逃せないと思いました。
主人公の男の子は懺悔のために盗撮魔になるのですが盗撮修行のくだらなさと真剣さのバランスも絶妙だったりして不良仲間といつの間にか盗撮グループを結成してAV業界のアイコンとなるという発送も面白いなと思いました。
そんな主人公の仲間にセール品の万引きを得意とする高校生がいるのですが、主人公の心がどん底になるような出来事が起きた時に、「お前の悲しみを50%引き受ける」的なことを言ってなぐさめていていい台詞だなと感動しました。
女の子も見た目も可愛らしいくて何を語ったらいいか整理が付かないのですが、何となくもう一度観てみたくなる、そして4時間観た自分が誇らしかったり、観た人と延々と話し続けられそうな映画だなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
西島隆弘
(角田ユウ)
ダニエル・ラドクリフにやってもらいたい。
満島ひかり
(ヨーコ)
可愛らしい「テラビシアにかける橋」のアナソフィア・ロブで。
安藤サクラ
(コイケ)
エレン・ペイジが何気にぴったりな気がします。


青い山脈
THE GREEN MOUNTAINS
(1949)
5
2007年3月
とある田舎町の女学校に通う寺沢新子は金物屋の息子の金谷六助と親しくなるがそのことが原因で偽のラブレターが送られてきてしまい、新任の教師、島崎雪子に相談し雪子は生徒に一喝するがそのことが反感を買い次第に問題は町全体にまで広がって行き・・・
戦後の封建的な町で起こる騒動を描いた青春映画。
お金がないから自宅の卵を売って学用品を買うという新子と六助の出会うエピソードがいかにも戦後という感じがして歌も「若き明るい歌声に〜」馴染み深くてこれはさわやかな青春映画だと思ったら全然違うのでびっくりしましたが面白かったと同時に今でも通用する内容で観てよかったです。
女学校において新子が六助と一緒にいたということを後輩に告げ口されたことから偽手紙に発展しそれを教師の島崎雪子に相談したことにより新子はクラスで孤立するといういじめに至るまでの流れが妙にリアルでイジワルするグループのリーダー格の生徒も「学園のためにやったんです!全ては熱情からやったことなんです!」と雪子先生に言ったりする憎たらしいところはまさに現在にも通用する内容だと思います。雪子先生役の原節子も封建的な町の体質を変えようとまずは数少ない味方の校医の沼田の軽い女性蔑視的な考えを平手打ちといった
永遠の処女といったイメージを十分に活かしつつこんな先生に教わりたいという気持ちにさせる非常に理想的な先生像は見事。
新子役の杉葉子もはつらつとして影口を叩かれても気にしないところやついにキレた時に相手をひっぱたいて逆に張り倒された時に石を握り締めながら立ち上がる芯の強いところなんかも今の子と違ってしっかりしていて応援したくなります。
池部良は当時30歳を超えて大学生という感じはしないけれどハンサムで仲間想いなところがこちらも好感度高ったし校医役の龍崎一郎も三枚目なんだけどやるときゃやるというところが一見シリアスな内容になりがちなところをかわしていてよかったです。
事件は町全体まで広がって理事会で白黒つけようということになるのですが雪子先生は結果がダメだったら「先生と一緒に東京に行きましょう。」なんて言ってくれたらがんばろうという気にもなりますよ。いじめ、いじめと世間じゃ騒いでいているけれど教育委員会の方とか先生はまずこの映画を観て何かを感じとってもらいたいと思いました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
原節子
(島崎雪子)
清潔感あふれるケイト・ブランシェットで。
龍崎一郎
(沼田玉雄)
三枚目もシリアスな役もいけるマーク・ラファロで。
杉葉子
(寺沢新子)
いじめられても負けなそうなキルスティン・ダンストで。
池部良
(金谷六助)
学ランが似合いそうなオーランド・ブルームで。


続青い山脈
(1949)
5
2007年3月
理事会の数日前、沼田は何者かに襲われ怪我を負ってしまうが犯人は町の権力者の井口と分かっていた沼田は秘策を練って理事会に挑むのだが・・・
いよいよ理事会で白黒はっきりつけるクライマックスのj後編。
新子と雪子先生を応援する後輩の和子の母親で沼田を慕う芸者の梅太郎の協力や六助の親友ガンちゃんも欠席した両親のふりをして理事会にもぐりこんで何とか票をあつめようとするのですがこの時のガンちゃんがいちいち「ゲーテ曰く・・・」と言ってゲーテの言葉を引用するところや梅太郎のちょっと世間ずれした発言が笑いを誘います。
偽ラブレターの内容も誤字脱字が多くて「恋」を「変」と間違え「変しい変しい」(恋しい恋しい)となっていたり「悩」を「脳」と間違え「脳ましい」(悩ましい)と間違えていることが学校中に知れ渡り今度は偽ラブレターを出した本人がからかわれ始めるとう新たないじめのターゲットとなってしまうところをさりげなく描いているところも感心してしまいました。
ユーモアも交えつつ新子と偽ラブレターを出したいじめっ子は当事者同士で結局問題を解決したり封建的な町にも新しい風を吹き込むさわやかな終わり方も好感度が高くやっぱい前編後編あわせて観て改めて今の若い人たちにも観てもらいたいなぁと思いました。
俳優陣とキャラクターも木暮実千代の芸者や眼鏡っ子の若山セツ子などどれをとっても他に当てはまるくらい人はいるのだろうか?と思うほどぴったりはまっていて
特にガンちゃん役の伊豆肇は愛嬌があって一番好きなキャラクターです。脇役も魅力的であってこそいい映画って出来るんだなぁと思うのでした。
それにしても三島雅夫はホクホク顔でいい人そうなんですけど意外とあくどい役が多いんですね。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
木暮実千代
(梅太郎)
トニ・コレットはコメディセンスがあるのでこういう役に向いていると思う。
若山セツ子
(笹井和子)
見た目が幼いアリソン・ローマンに。
伊豆肇
(富永安吉【ガンちゃん】)
やんちゃっぽい役が似合うクリス・エヴァンスで。
三島雅夫
(井口甚蔵)
権力者という雰囲気のあるベン・キングスレーで。


青い芽
(1956)
3
2007年6月
野球の試合でピッチャーの沢木に野次を飛ばす不良達を一喝したのり子だったがその帰り道に待ち伏せを受けてしまうが一蹴する。あくる日、沢木に誘われボートを乗りに池に向かったのだが・・・
雪村いづみの青春映画。
35分程度という超短編の作品のためバランスが悪い感じはするのですが、不良達に啖呵を切るし嫌がらせを受けたら不良をひっぱたくはで雪村いづみらしさは伝わる内容にはなっていました。当然歌うシーンもあるのですがひばり、チエミ、いづみの三人娘のうち雪村いづみは都会の雰囲気がして結構好きです。
高校生がお互い好きで付き合うとか付き合わないとかそういうごくありふれた内容なのですが急に結婚したいなどと言い出した雪村いづみをお母さんの清川虹子は取り乱しているところをお父さんの藤原釜足がじっくり話を聞いてあげていろいろアドバイスしてあげるという理想的な家族を描いていてほのぼのします。
雪村いづみはミッションスクールの学生という設定なので劇中結婚式で賛美歌を歌うのですがこの時の新郎新婦が宝田明と司葉子。この二人を見ることが出来ただけでも得した気分になりました。
どうでもいいですが雪村いづみは清水ミチコにどことなく似ているなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
雪村いづみ
(のり子)
ちょっと気の強そうなところのあるエマ・ワトソンで、
山田真二
(沢木光雄)
正義感のあるダニエル・ラドクリフで。


青色革命
THE BLUE REVOLUTION
(1953)
3
2009年2月
歴史学者の小泉達吉は大学教授を辞め家で職を探す生活を送っている。損な中、達吉のもとに高校の教科書の執筆の話が舞い込むのだが・・・
市川崑監督の元大学教授の生活を描いた家族ドラマ。
意見の相違から大学を去って今は家でぶらぶらしているよな大学教授のエピソードより脇役達のエピソードがとても濃くて中々面白かったです。
ちょっと生意気な次男役がものすごい若い頃の江原達怡が扮しているのですが、ちゃっかり質屋まがいの事をして一儲けしているところなんか当時の雰囲気が手に取るように伝わってきてこの時代の映画の醍醐味はこういう風俗を観ることもひとつだと思います。
下宿している三國連太郎がこの時代には珍しい、オネエ系。姪で男勝りの久慈あさみに言い寄っているから女の子が好きってことは確かなのですが、
温泉旅行に久慈あさみと二人で行ったまでは良かったけれど部屋が別々になっていて三國連太郎が一緒の部屋になりたくて泣き出したところは笑いました。こんな三國連太郎は滅多にお目にかかれません。こんな三國連太郎に付き合う久慈あさみも相当変わり者ですが、勝手に見合いを組まれた相手もいてその相手が伊藤雄之助。伊藤雄之助に言い寄られてもハゲは嫌いときっぱり言って相手にしないところも笑いました。
胡散臭い加東大介がお父さんを料亭といっても今で言う水商売に近い?店に連れて行くのですが真面目でそんな店に行ったことがないものだからすっかり木暮三千代にはまっちゃって遅すぎた春みたいな感じで奥さんの沢村貞子にはたから見ると下手な嘘にしか聞こえない嘘で店に通うところなんかは真面目ばかりじゃなく遊びもほどほどにやらなくちゃいけませんと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
千田是也
(小泉達吉)
真面目な印象の強いモーガン・フリーマンで。


青ヶ島の子供たち 女教師の記録
(1955)
4
2009年2月
大学を卒業して東京の小学校の教師になった広江節子は生徒からも好かれるいい教師だったが、夏休みに帰省した故郷の青ヶ島の教師不足を目の当たりにして青ヶ島に戻るのだが・・・
左幸子主演の心温まる女教師もの。
山岡久乃主演の「こころの山脈」同様、文部省の推奨だったと思うのですが、日本映画全盛期のこの手のジャンルの映画って本当心温まります。
ざっくり分けると東京のパートと、青ヶ島(と言っても青ヶ島も東京なのです)になっているのですが、子供が子供らしくあった時代とでも言うのでしょうか。どちらのエピソードも子供たちが素直でいいですね。
東京でのエピソードで印象的なものは転校してきた島田君が超内気でいつになっても一言もしゃべらないしクラスメイトが休み時間に超えかけてくれてもモジモジしていて現代だったら手を焼くこと間違いないという感じなのですが、ある日島田君の大切にしている鉛筆が無くなってクラスメイトが校内放送で鉛筆探してくださいと流すんです。そして鉛筆が見つかって島田君もやっとクラスに馴染むんです。なんていいエピソードでしょう。
ちなみに島田君のお父さんは佐分利信にお姉さんは香川京子とものすごい家庭だったりします。そして校長先生は宇野重吉で下宿先のおばさんは杉村春子と演技派ぞろい。
そして青ヶ島に帰って電気もない島の生活で暮らしている子供たちにちゃんとした教育を受けさせてあげたい思った左幸子は学年の途中で学校を転任してしまうのですが、青ヶ島のエピソードは過酷でした。
同じ東京なのに船は月一回しかこないし、当然医者はいなくて誰かが病気になったら巫女頼みという何時代?みたいな隔離された世界でちょうどこの年の年越しは大荒れで港がないものだから月一回の船もこないので食料も援助したくてもしてもらえない状態に。ついには村のたくわえも底を突きそうで本当に大変な事態になったとき、
あの超内気だった東京の島田君が学級会で青ヶ島のお友達を助けようって提案するんです。島田君が自分で積極的に発言するまでに成長して、感動しましたよ。そして島田君のお父さんが東京都の役人にコネがあるからといって飛行機で救援物資を届けるんですよ。なんて心洗われるエピソード。仰げば尊しとはまさにこのことだと思うのでした。
青ヶ島で子供のために頑張っている先生が沼田曜一。新東宝ではキワモノというか粘着質な嫌な役が多いのですが森田健作みたいな理想的な先生役は初めて見たのでものすごく新鮮でした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
左幸子
(広江節子)
先生役も余裕でこなしそうなケイト・ウィンスレットで。
沼田曜一
(安成先生)
田舎の熱血教師が似合いそうなマーク・ラファロで。


青空娘
THE BRIGHT GIRL
(1957)
4
2006年10月
祖母が他界し有子は継母のもとに引き取られるが愛人の娘ということで有子は父親が出張中の間女中のような扱いを受ける。それでもくじけず明るく生きていく有子はある日、母親が生きていることを知り・・・
増村保造監督と若尾文子の初コンビ作品。当時26歳の若尾文子がセーラー服姿で元気はつらつです。物置部屋から「青空さんこんにちは。」ですから。
シンデレラのような扱いにも耐えて明るく振舞う姿がすがすがしいく継母や姉の嫌味もなんのそのという所が若尾文子らしくてよかったし継母役の沢村貞子も神経質そうでギスギスしていて顔を合わせると不機嫌そうな表情になる所がすばらしくまさに継母にうってつけでした。
姉も金持ちの友達呼んで卓球大会をやったりするけど金持ちの川崎敬三に女中さんもやろうよ。とか半ば強引に誘われてしかも川崎敬三に勝っちゃって二人は急接近して姉はものすごい嫉妬するという展開が繰り広げられるのですがこういう娘にかぎって運悪く悪気はないんだけど自然と人気者になっちゃうんですよねぇ。
そんなこんなで母親が生きていることを知った若尾文子に川崎敬三やら高校時代の恩師で美術教師の菅原謙二も母親探しに協力してくれるのですが菅原謙二も若尾文子に惚れちゃってこんな内容なのに無理なく軽くコメディ要素が入っているところもさすがです。そして菅原謙二が若尾文子が幸せになることが僕の幸せ・・・みたいなことを言ってひっそりと身を引くところなんて渋カッコよかったです。
家での数少ない味方でミヤコ蝶々と末っ子の男の子とか相変わらず配役がいいのですが、ネタバレ→
最後に若尾文子が愛人でも母親と別れて世間体ばかり考えて愛のない夫婦生活を送っている父親の信欣三に「愛しているならどうしてお母さんと別れたの?別れたならお母様(沢村貞子)のことどうして愛さないの?お父様は生ぬるいのよ!」みたいなことを言って喝を入れるところは感動しました。←人間中途半端はいけないのです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(小野有子)
シンデレラっぽい役が似合うアン・ハサウェイで。
菅原謙二
(二見桂吉)
先生役が似合いそうなルーク・ウィルソンで。
川崎敬三
(広岡良輔)
お金持ちのお坊ちゃまという感じのオーランド・ブルームで。


赤い手裏剣
RED SHURIKEN
(1965)
3
2007年5月
三組のやくざが張り合う宿場町にたどり着いた伊吹新之介は炭屋の松次郎のもとにわらじを脱ぐが新之介は仏一家にも旨い話を持ちかけ宿場町は大騒動になっていき・・・
市川雷蔵主演のアクション娯楽時代劇。
シリアスものかと思いきやぶっ飛び系の時代劇でした。まず
雷蔵の衣装がレザーのベストにレザーのパンツですよ。時代劇なのに斬新過ぎます。内容も金のためなら平気で違う組に味方するようなあくどいキャラクターなのですがとにかく陽気なので辛気臭さが感じられないところと軽い感じでいいですね。三組のやくざの親分も単純でどこか抜けていてあっさり雷蔵に騙されるところが笑いを誘います。
雷蔵が馬を預ける厩の娘、小林千登勢がヒロインでこちらは素朴な感じがして好感もてます。それにしても昔は若かった。
そんな小林千登勢とは対照的に女郎風の腹黒い春川ますみがよかったです。時代劇でも女郎屋で働いているイメージが強いのですがむっちり系の体つきで自分に一番得だと思える男に色目を使って言い寄る悪女系のキャラは見ていて楽しいです。雷蔵はクールなので当然本気で相手にしないので最後は逆切れするというステレオタイプなキャラクターなところも分かりやすくてよかったです。
雷蔵の時代劇はシリアスものからミュージカル今回みたいにナンセンスな感じとバラエティ豊富なんだなぁと改めて感心しました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
市川雷蔵
(伊吹新之介)
どんな役でもこなすアンディ・ラウで。
小林千登勢
(お雪)
厩の娘もいけそうなチョン・ジヒョンで。
春川ますみ
(千波)
仇っぽいコン・リーで。


赤い陣羽織
THE SCARLET CLOAK
(1958)
4
2007年11月
水車小屋の番人の甚兵衛は美しい妻のせんがいたがその妻を狙う代官の荒木源太左衛門は伝説の赤い陣羽織をはおり何かにつけて甚兵衛に用事を言い付けせんに言い寄るのだが・・・
山本薩夫監督にしては珍しい時代劇コメディ。
赤い陣羽織の赤は血で染められたなどと噂があって中村勘三郎は恐れられているけれど実は妻の香川京子に頭が上がらずものすごく臆病者でおまけに有馬稲子をものにするのも側近の悪知恵がなければ一人じゃ何も出来ないという情けない代官というところが滑稽でこんな情けない代官だから有馬稲子は毎回軽くあしらうというところが観ていて楽しいです。
有馬稲子がちょっかい出されて気が気でないのは夫の伊藤雄之助ですが毎回うろたえてばかりでちょっぴり情けないけれど妻のことは心から愛しているということろが伊藤雄之助らしく後半ついに勘三郎と有馬稲子が一線を越えたと勘違いして香川京子を襲いに行こうと赤い陣羽織を羽織って代官の家に忍び込むという展開になるのですがみんなが勘違いして大騒ぎという展開が爆笑を誘います。
勘三郎は慌てて香川京子のもとに戻るのですが誰も勘三郎が代官だと気がつかず門前払い。
代官だろうがなんだろうが赤い陣羽織が権力の象徴として描かれていてそれをはおれば顔なんてどうでもいいと皮肉っているところがコメディなんですがよく出来ていて山本薩夫らしいところだなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
中村勘三郎
(荒木源太左衛門)
情けない役はお手のもののベン・スティラーで。
伊藤雄之助
(甚兵衛)
オーウェン・ウィルソンにやってもらいたい。
有馬稲子
(せん)
綺麗なお姉さんという感じのケイト・ベッキンセールで。
香川京子
(荒木信乃)
意外と気が強そうなダイアン・クルーガーで。


赤い天使
(1966)
4
2005年2月
看護婦の西さくらは過酷な戦場に配属されそこで軍医の岡部と出会いやがて二人は恋に落ちていくのだったが・・・
オープニングで陸軍病院に赴任してきた若尾文子がチンピラ役でおなじみの千波丈太郎に精力が有り余っているから犯されそうになるけどきっと誰か助けに来るんだろうと思っていたら本当に犯されてしまうからビックリしたぁ。だけど犯されても泣かないところがやはり若尾文子らしいところだと思います。
そんな彼女が次に送られた先は重症患者がいる病棟でここで両手を失くした川津祐介を慰めるためにホテルで関係を持ってあげるのですがここまではなんだか「ポルノの女王 にっぽんSEX旅行」のような感じもしなくはないけど関係を持った男達が次々と死んでいき若尾文子のナレーション「また私は人を死なせてしまった。」が虚しく響きギリギリのところでポルノを回避しているなぁと感じました。
軍医役の芦田伸介と相思相愛になるのですが
若尾文子が「西は岡部軍医のことが大好きです。」とストレートな告白もさることながら自分の事を苗字で呼ぶところはなんて初々しいんだろうと思ってしまいました。軍医の服を着て軍医ごっこもしているし・・・
と戦時下の恋愛模様?は若尾文子の美しさと気丈さもあいまって楽しく観ることが出来たのですが、日本軍の上層部の無謀さというかもっと頭を使って作戦立てろよと素人目から見てもこうして日本は敗戦したと分かるような日本軍の作戦のダメさ加減に呆れてしまうのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(西さくら)
ナタリー・ポートマンは自分のことを苗字で呼んでも全然OK。
芦田伸介
(岡部軍医)
リーアム・ニーソンは腕のいい軍医とかぴったりそうで。


赤い水
RED WATER
(1963)
3
2007年11月
観光客が隣町にとられ財政的に苦しくなってきたツバメ町。議長たちはずる賢い禅恵和尚が寺の裏で温泉が出ると臭わせたことをきっかけにすっかりその気になり土地買占めを始め、うどん屋の利吉も巻き込まれていき・・・
伊藤雄之助が特殊メイクで生臭坊主役を怪演した風刺コメディ。
地方の小さな町で市議たちの使い込みが昼食は高級な弁当、
視察旅行と称した観光旅行となんだか現代でもおんなじことが起きているなぁと内容はコミカルで滑稽に描かれているのですがそこのところちっとも昔と変わってないと思うと腹立たしくて笑うに笑えなかったです。
伊藤雄之助が誰よりもずる賢く一枚上手なお坊さんという役どころでふとしたことから「家の寺の裏に温泉が出るかもよ」と言ったが最後土地の値段が上がると見越した船越英二は他の市議に黙って土地をうどん屋の八波むとしに上手いこと言って買いしめの手伝いをさせるのですがそれが他の市議にばれて泥沼の土地の買占め合戦。
結局これは温泉じゃないと分かると今度は芸者の色気を使って何とか再検査させることに成功し温泉成分を捏造し見事温泉であることを証明し市議たちは大喜び。うどん屋の八波むとしは自分が踊らされているのに気がつきうどん屋家業に戻り、温泉捏造を暴いた新聞記者の川崎敬三は記事はもみ消され左遷されてしまうというなんとも山本薩夫らしい苦い終わり方がとても印象的でした。
森光子がしっかりものの八波むとしの奥さん役だったり、暴力的な市議に若山富三郎が出ていたり、宇野重吉までが出ていたりと脇役が豪華だったりして見応えはあります。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
伊藤雄之助
(禅恵和尚)
「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」のウィレム・デフォーなみの特殊メイクでした。
八波むと志
(うどん屋利吉)
ちょっと抜けていそうなフレディ・ロドリゲスで。
船越英二
(福住議長)
世渡り上手そうなルーク・ウィルソンで。


赤線地帯
STREET OF SHAME
(1956)
3
2006年3月
売春防止法の施行が間近に迫った赤線地帯の「夢の里」を舞台に様々な理由で娼婦になった女達の生き様が描かれていく作品。
赤線地帯の意味は売春を目的とする特殊飲食店の集まっていた地域。だそうで合法的に売春が認められていた時代の末期の話なわけなんですが、多分この映画は物語の背景はかなり忠実に作られているんだろうなぁと思いました。というのも出演者が京マチ子、若尾文子、木暮実千代、三益愛子、沢村貞子とすごい豪華で京マチ子と若尾文子は当然娼婦で沢村貞子は「夢の里」の女主人とイメージ通りの役どころ。じゃあ木暮実千代と三益愛子は京マチ子とかに夫をたぶらかされて殴りこんでくる奥さんなのかと思っていたらこの二人も娼婦なんでびっくりします。それだけ当時はこういうことをしなければ生きていけなかった時代の厳しさがあったんだろうなぁと感じました。
京マチ子はみんな和服の中ピッチピチのスパッツ?みたいなのをはきこなし一人ど派手で勝気で想像通りの京マチ子って感じです。一方若尾文子も負けておらずしたたかに男をたぶらかし貢がせ最終的には布団屋の主人を夜逃げさせるまで追い込んで密かに貯めた金で布団屋を買い取り女主人になってみごと娼婦の道を抜け出す様は
まさに若尾文子の一人勝ちな¥といったところで観ていて気持ちがよかったです。
京マチ子と若尾文子が客を取ったの取らないので取っ組み合いの大喧嘩をするのを密かに期待していたのですがそれがなかったのがちょっと残念。
ラスト店を出た若尾文子の代わりに下働きをしていた女の子が店に出ることになるのですが初めて客引きするシーンで物陰から恐る恐る赤線地帯を見つめるその視線が恨めしい感じがちょっと怖い感じがして印象的でした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
京マチ子
(ミッキー)
性格も勝気そうだし体型もムッチムチなジェニファー・ロペスで。
若尾文子
(やすみ)
シャーリーズ・セロンにしたたかな役をやってもらいたい。


暁の合唱
(1963)
3
2008年10月
運転手の浮田とコンビを組む新人のバスガール朋子は無賃乗車をした三郎を捕まえるが三郎はバス会社の社長の弟だった。そんな三郎が朋子のことが好きになり・・・
色々な出来事を通して人間的に大人になっていく星由里子の星由里子の成長記といった感じなのですが、はつらつバスガールといった感じが星由里子の制服姿が似合っています。
激しく揺れるバスの中でよろめいてお客さんに励まされ、自分のふがいなさにこっそり涙する。「だって女の子ですもの。」的な爽やかエピソードがあったかと思いきや、とある日、花嫁ご一行様を乗せたバスに妊婦の菅井きんが乗ってきたと思ったらやっぱり産気づきました。そしてバスの中で出産という新人じゃなくてもハードな展開に星由里子は最初は「イヤだわ。イヤだわ。」なんて狼狽するばかりだったのですが、花嫁の親戚、北林谷栄に叱られて「こんな事えは一人前になれないわ。」と気がつき人間的に成長するのです。
と星由里子もいいのですが、個人的にはバス会社の事務員の新珠三千代が相変わらずよかったです。社長の山村聡の2号さん的な役どころなのですが、このままでいいのかしら?なんて苦悩する
ちょっと幸せとは程遠い感じがまた新珠三千代の美しさを引き立たせています。
恋愛エピソードは山村聡の弟、黒部進と運転手の宝田明が星由里子を取り合うのか?と思いきや山村聡に頼まれて宝田明は新珠三千代とくっついちゃうんですね。最後のほうはバタバタしてまとめた感がありましたが、青春という感じの星由里子と大人な新珠三千代と一粒で二度おいしい感じの欲張りな映画だったなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
星由里子
(斎村朋子)
爽やかな役が似合うアン・ハサウェイで。
黒部進
(小出三郎)
遊んでる印象が強いジョシュ・ハートネットあたりにお願いしたい。
宝田明
(浮田兼介)
運転手役もいけそうなアーロン・エッカートで。
新珠三千代
(高杉米子)
幸薄系美人のケリー・ラッセルで。


暁の非常線
(1957)
4
2007年8月
深夜に銀行にギャングが押し入る凶悪な事件が立て続けに起こるが警察は手がかりをつかめずにいた。その犯人は三ノ輪一家の幹部の馬島仕業だった。馬島は密かに娘の雪江の婿になり跡目を狙っていたが・・・
天知茂が極悪人っぷりがしびれる悪漢映画。
「スター毒殺」事件も殺人犯になってしまった天知茂が主人公であの映画は恋人をとられて嫉妬に狂った天知茂が殺人を犯してしまう話だったのですが、今回は最初から極悪人。
銀行強盗を行った時、行員までも殺す残虐さなのですが殺し方が金庫を爆破するついでに一緒に金庫にくくりつけて爆発させたり使えない部下は当然のように殺すのは序の口で警察に手がかりを掴まれたと察知した天知茂は車の手配をしたバーのマダムをドライブに誘い出し車ごと崖から落として証拠隠滅を図る冷酷さが気持ちがいいです。
「スター毒殺事件」もそうでしたが
最後、警察に追いつめられてからの逃亡劇が悪人が主役なだけあってかなりしっかり描かれているところも特徴的で最初から最後まで天知茂という感じで天知茂好きにはたまりません。
ヒロインはやっぱり新東宝の清純派の三ツ矢歌子というところは納得なのですがその兄さんが(やくざの家が嫌で家を出た)和田孝とフィアンセで事件の謎を追う新聞記者が沼田曜一ってところが微妙なのですがこの配役のおかげで天知茂の冷徹な悪役が光っていたから逆によかったのかなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
天知茂
(馬島政吉)
こういう役はやっぱりショーン・ビーンしかいません。


赤ひげ
RED BEARD
(1965)
4
2005年4月
長崎で医学を学び江戸に戻ってきた保本は小石川の診療所に見習いとして住み込むことになるのだが貧乏人ばかりがやってくる診療所と赤ひげと呼ばれる所長のやり方に不満を抱いていたが、赤ひげの下で働くうちに保本は本当の医師のあり方を悟っていくのだった・・・
三船敏郎が主役というより加山雄三が演じるところのエリート思考の見習い医師保本の成長と心変わりを主に描いた作品でした。
加山雄三が赤ひげに反発する前半はそれはそこだけ見るとそれなりに可笑しいんだけど山崎努のエピソードや狂女の暗い感じのエピソードで正直楽しくなかったんですけど後半からたたみかけるように一気に面白くなって最高でした。
三船敏郎達が岡場所から高熱の少女おとよを連れ出そうとしてやくざものと一騒動あるのですけど三船がここで豪快な立ち回りをしてようやく本領発揮で唯一の見せ場のような気がします。その代わりといっちゃなんですが女郎屋の主人杉村春子がすばらしく面白かったです。病気が治ったんだからといっておとよを無理やり連れ戻そうと診療所に乗り込んでくるんですけど「渡鬼」のタキさんでお馴染みの
野村昭子はじめとする看護婦達が杉村春子に大根が真っ二つに折れるくらいに殴りかかって笑ったなぁ。殴られっぷりも杉村春子は見事でした。
あとは貧しすぎて盗みをするがきんちょとが舌足らずながら一所懸命に強がりな兄貴風をふかせて台詞言っていていかにも貧しい江戸のがきんちょという感じが微笑ましかったです。
最後は予想どおり加山雄三がエリートの道を蹴って赤ひげのもとにいく正しい終わり方で、いつもながら上映時間長かったけど黒澤映画を観てよかったなぁと思うのでありました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三船敏郎
(新出去定)
「ER」出身のジョージ・クルーニーで。
加山雄三
(保本登)
エリートだけど庶民のために戦うイメージの強いクリスチャン・ベイルで。


悪人
VILLAIN
(2010)
4
2010年10月
祐一は出会い系サイトで出会った佳乃とたびたび会っていたがある日、目の前で佳乃に裏切られたはずみで佳乃を殺してしまう。やがて祐一は再び出会い系サイトで光代という女と出会い愛し合うようになるのだが・・・
深津絵里がモントリオールで女優賞を受賞した話題作。
満島ひかりを見にいったら意外にも全体的によくまとまっていて面白かったです。2時間超えもあっという間でした。
配役がとにかく適材適所といった感じでみんなキャラクターにぴったりとはまっているところが成功の最大のポイントだと思います。特に女優陣がすばらしく、
深津絵里もいいのですがやっぱり満島ひかりと樹木希林の二人がよかったですどっちか日本アカデミー賞とらないかなぁなんて思っています。
満島ひかりは妻夫木君にキレていつもの満島節全開というところもいいのですが、珍しく岡田君にキレられるというシーンに「あれ?」という表情をするところもよかったです。それに冒頭で同僚に軽くキレるシーンが一番テンション上がりました。同僚にまでキレるってどこまで凶暴なんだろうかと・・・
岡田君も「告白」の時の空回りしているんですがいい人そうというキャラクターとは真逆の今どきの心無い金持ちのところの息子という役がはまっていてよかったです。イメージとしては塚本高史がぴったりかなと思っていたのですが岡田君が意表をついていてよかったです。
あとは樹木希林が切なすぎて本当によかったです。この映画の中で、一番気の毒な気がしました。
と主演二人のことはこれっぽっちも書かなかったのですが、これはもちろん二人がちゃんとしている上で脇役たちの強烈な個性があるからなのです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
妻夫木聡
(清水祐一)
くすぶっている感じのジェームズ・マースデンで。
深津絵里
(馬込光代)
地味目なクレア・デーンズで。
岡田将生
(増尾圭吾)
イメージ的にはジェームズ・フランコあたりにお願いしたい。
満島ひかり
(石橋佳乃)
キルスティン・ダンストにビッチにやってもらいたい。


悪魔が呼んでいる
TERROR IN THE STREETS
(1970)
5
2008年8月
旅行会社に勤める派遣社員の江原ユリはある朝突然会社をクビになり恋人にも別れを切りだされアパートに帰ると、管理人からもアパートを出て行くように言われてしまう。分けが分からないながらも出版社に面接に行き採用確実の手ごたえを掴んだユリだったが不合格の通知が届き・・・
酒井和歌子に次々と不幸が襲い掛かる不条理サスペンス。
これでもかと酒井和歌子に降りかかる不幸の連続(それもものすごくテンポ良く)に思わず笑ってしまいます。もう観ていてあぁ次の不幸はこれだなと予測できるところもいいです。
失業して家も追い出されそうになってもポジティブな酒井和歌子は早速、就職試験を受けに行って偶然出会った新克利に絶対受かるよと言われて有頂天。自分にご褒美とばかりにバッグを買ったりしてウキウキしてアパートに帰ると空き巣に遭って通帳奪われそしてまさかの不採用通知。ふらっと入った喫茶店では財布もなくっているという、ここまできたら財布がなくなるくらいのことはもう可愛らしくさえ思えます。しかたなくホステスになってはもたものの初日から客の大滝秀治が財布がないと騒ぎ出して調べてみたら案の定身に覚えのない酒井和歌子の服から財布が出てきて・・・
もう何故こんなにも不幸が続くのか観客にも理由が分からないから酒井和歌子と同じ気分に慣れること請け合いです。
後半、徐々に不幸の理由が明らかになって殺し屋やらゴーゴー喫茶?が出てきてサイケな展開と事件が起きるたびに都合よく現われる酒井和歌子のことを何かと気にかけてくれる神出鬼没で怪しすぎる新克利とか面白いのですが、
前半の不幸が起きるたびに顔が見事なまでに歪む酒井和歌子の熱演も最高で、不条理な前半だけでも十分に楽しめます。
酒井和歌子ってお嬢様女優というイメージが強かったのにこんなに変な映画に出ているギャップもナイスです。
変な映画指数最高値に近い名(迷)作だと思います。DVD化されたら是非欲しい一品であります。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
酒井和歌子
(江原ユリ)
これは若いころのローラ・ダーンにぜひやってもらいたい役です。


悪名
シリーズ第1作
(1961)
5
2004年1月
遊郭で琴糸と一晩を過ごすことになった朝吉。しかしその界隈では名の知れたモートルの貞と呼ばれる男が一騒動おこし翌朝モートルの貞と対決することになった朝吉は貞を打ち負かした。貞はいつしか朝吉を慕うようになる。やがて遊女の琴糸を足抜きさせる手引きをする朝吉だったが・・・
「座頭市」のDVD-BOXの横に「悪名」DVD-BOXがあって興味が出て早速「座頭市」「悪名」と平行鑑賞開始。どちらが好みと聞かれれば「悪名」の方が好きだなぁ。この当時の映画としては多分珍しかったと思う総天然色のカラー映像が昭和初期のレトロでモダンなネオン街と遊女達のケバそうでケバくないカラフルな着物がもろ好みです。
断然面白くなるのがモートルの貞が浅吉を兄貴として慕うようになって遊女の琴糸を足抜きさせるようにするエピソードが始まってから。浅吉と貞のいわば街のチンピラがやくざの巨大組織に殴りこみをかけぎゃふんと言わせていくさまが痛快なんですよね。
そんな男の世界にお絹とお照という二人の女性が登場し恋愛エピソードも無理なくしっかり絡んでこんな完成度の高い映画には滅多にお目にかかれないと感心するのでした。
なんといってもモートルの貞役の田宮二郎のすばらしいこと。こんなさわやかなやくざ者は見たことないってくらいさわやかです。寅さんのような格好も彼がやるとばっちり着こなし最高にかっこいいんです。
勝新太郎もいかつい中にも時々見せる表情がやんちゃで「座頭市」とはまた別の一面が見られてまたまたすごいな勝新はと思うのでした。
中村玉緒のお絹というキャラクター一晩ともにすることになった朝吉とお絹。嫌がる素振りをするお絹に「嫌いか?」と聞かれ「好きや。一緒に寝んやったら朝吉はお絹を一生の妻にしますって一筆書いて。」みたいなこと言うんですよね。それに琴糸と朝吉が最後の旅をする話を盗み聞きして結局三人で旅をするという奇妙な三角関係の図。かまととぶってはいるが実はかなりしたたかな女ってところが面白かった。
遊女の琴糸が水谷良重がふてぶてしくてかわいくないと思っていたんですけど、琴糸というキャラクターは遊女という仕事が死ぬほど嫌で逃げ出したいと思っているから愛想がなさそうに見えていいんだぁと
改めて90分弱の映画にいろんな要素がうまく凝縮されているすごい作品なんだと感心するのでありました。
ほかにもシルクハットの大親分やら子分2000人を束ねる女組長の麻生イトなる魅力的なキャラクターが出てくるんですけどそれは次の「続 悪名」で・・・
ハリウッドバージョンはこの人で!!
勝新太郎
(朝吉)
「座頭市」とかぶるけどヴィン・ディーゼルかな?やくざやチンピラでカリスマ的な役といったらディーゼルがいまのところ一番だと思う。
田宮二郎
(モートルの貞)
いま最高に上り調子にあるオーランド・ブルームあたりでさわやかに。
中村玉緒
(お絹)
したたかそうなウィノナ・ライダーで。
水谷良重
(琴糸)
ふてぶてしそうなところもありそうなレニー・ゼルウィガーで。


続 悪名
シリーズ第2作
(1961)
5
2004年2月
故郷にお絹をつれて戻った朝吉、そこに貞が訪ねてくるがうっかり朝吉がやくざ稼業をしていたことを洩らしてしまい朝吉達は大阪に出戻ってくる。そんなある日、貞の弟分の河太郎が妻とともに騙されたと泣きついてきた。朝吉と貞は沖縄の源八のところに乗り込み勘定を取立て源八の親分、松島の長五郎にも殴り込みをかける。その度胸をかわれ松島の元締めから親分に頼まれた朝吉は仕方なく親分になるが・・・
前作の登場人物にプラスアルファされた悪名シリーズ第二弾。前半はコメディータッチで仕上がっていて思わずにやりとさせてくれるシーンがたくさんあります。朝吉が琴糸の写真をこっそり持っていたのを見つかってお絹に「琴糸はんの事をなんとも思っていなかったら破けるでっしゃろ?」と責められ「ただの写真やないかい。」みたいな会話だタジタジになるあたりなんか微笑ましいです。
玉緒が勝新を叱ってるよーって感じで。貞も助けたチェリー迫らた現場をお照に偶然見られてチェリーVSお照の大喧嘩。この喧嘩っぷりが昭和の喧嘩って感じ(どんな感じ)でいい味出しているんですよね。
そんなてんやわんやの前半とは打って変わって後半はドラマティックに物語は進んでいくのです。ネタバレ→
朝吉を忘れるためによく知らない男と結婚する琴糸。←それを世話する因島の女大親分麻生イトの人情味あふれる人柄なんかが無理なく物語の流れに入っているところがすばらしい。
終盤松島の元締めに裏切られカポネ一味と助っ人なしで対決することを決意した
朝吉に赤紙が届き出兵前の貞との別れときたらこれぞ男同士の友情と絆といった感じで涙なくしては見られません。ネタバレ→戦争なんてやくざと同じしまの取り合いだ。←と貞の台詞がうまい具合に戦争を批判しているのにもセンスがあるなと感心するのです。
ラストネタバレ→
朝吉が戦争に行っている間、身代わりに貞がチンピラに刺されて死んでしまう。←という衝撃のラスト。この時の画面の構図がすばらしく上手くて2度目の涙を流しながらしびれました。
「悪名」「続 悪名」の2本セットでもしかしたら今まで観てきたベスト5、もしかしたらベスト3位に入る勢いの傑作かもとふと思っているのです。この作品で一旦終わりかと思ったらなんと「新・悪名」にまだまだ続いているのでした。それはまた次の機会に・・・
ハリウッドバージョンはこの人で!!
藤原礼子
(お照)
凛とした美しさがナオミ・ワッツ的かな?
浪花千栄子
(麻生イト)
生きていたら辛辣なベティ・デイビスにぜひやっていただきたい。
長谷川季子
(チェリー)
旦那を尻に引いていそうなところと自ら男を誘惑していきそうなジーナ・ガーションで。
南都雄二
(河太郎)
情けない旦那役もきっちりこなしてくれそうなスティーヴ・ブシェミあたりで。


新・悪名
シリーズ第3作
(1962)
4
2004年2月
戦争から朝吉は戦死したことになっていてお絹も再婚していて愕然としたが、村では朝吉を祝う会が行われた。しかし手伝いに来る途中幼なじみの月枝が暴行されてしまう。月枝は村から姿を消し、朝吉は貞の妻お照を訪ね大阪に向かう。そこで偶然、娼婦となった月枝を見かけ元締めの元に向かった朝吉だったがその元締めは貞の弟の清次だった・・・
前作のラストでネタバレ→
モートルの貞の死と←朝吉の出兵で完結して新たな悪名シリーズの始まりか?と思ったらちゃんとした続編だったのでびっくり。いろいろな意味で「新」要素が満載で楽しかったなぁ。
今回の舞台は戦後の闇市。
戦後ということで日本の文化ってやつも変わり始めたころでおネエ系のお銀(今で言うKABA.ちゃん)が新キャラクターとして登場。貞との出会いと同じように弟の清次ともいっぱつ殴り合いの喧嘩をするけどその姿をみてお銀が朝吉に一目惚れ。KABA.ちゃん的なキャラのお銀に迫られたり、月枝に「朝吉さんの子供が産みたい。」と衝撃の告白にさすがの朝吉もタジタジといった姿が楽しいのです。そんな楽しい中にも在日朝鮮人問題(当時は第三国人といって闇市でかなり儲けていたらしい)と社会問題もさりげなく扱っている秀作なのです。
田宮二郎は前作のモートルの貞から弟の清次役になっていて、西洋かぶれって設定なんですけど、いやぁー結構流暢な英語を話すもんで感心しましたよ。ラスト朝吉についていく清次は兄の貞にそっくりで、そうそうこの絆で結ばれた二人が見たかったんだよとホッと一安心して終わるのでした。
それにしても朝吉が出兵してから10年後って設定で貞にそっくりな弟、清次の登場。勝新と田宮二郎そんなに年齢はなれているわけじゃないけど、しっかり離れているように見える(年月を感じさせるのは)勝新がすごいのか田宮二郎が若いのか悩んだけど結局二人ともすごいってことなんですね。
清次のお相手が座頭市物語のおたねさんでおなじみの万里昌代ってのがうれしかったけど、お絹の再婚という意外な方法で中村玉緒も悪名シリーズを今回で卒業というちょっと寂しいかったなぁ。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
浜田ゆう子
(月枝)
突然「子供を産みたい」と突拍子もないこと言いそうなリサ・クドローあたりで。
万里昌代
(お雪)
どんな服も強引におしゃれ着こなし気も強そうなサラ・ジェシカ・パーカーで。
茶川一郎
(お銀)
妖しげな雰囲気漂うアラン・カミングで。


続・新悪名
シリーズ第4作
(1962)
5
2004年2月
闇市がなくなり大阪の町でぶらぶらしていると、靴磨きの少女ひろみが雇い主の男にぶたれているところを助け宿につれて帰り翌朝、偶然役者になったお銀と出会う。女剣劇一座の五月は演芸館主、玉島の嫌がらせで芝居が出来ずにいた。朝吉は早速玉島の元へ話を付けに行くがそこには用心棒として雇われた清次がいた・・・
「続・新悪名」と頭がこんがらがるタイトルですけど今回は戦災孤児のひろみを中心においた一風変わった作品に仕上がっています。このひろみ役の子役が「渡る世間は鬼ばかり」なんかの橋田壽賀子ドラマに出てきそうな全然かわいくない子役ってところが戦災孤児に妙に合っていてリアル。しかも無駄にませていて朝吉もたじだじという構図も楽しかった。しかしお銀をおばちゃんと呼んじゃうところはまだ子供。なんせおかまを見抜けないのだから・・・って普通わかるってのお銀が男だってこと。
だけどなんてったって
一番の見所は田宮二郎の歌でっせ。ジャズの名曲「センチメンタル・ジャーニー」をギター片手にフランク・シナトラばりの上手さで突然歌いだすんだもんな。しかも「これなセンチメンタル・ジャーニーって曲や。いい歌やろ。」的な関西弁とジャズジャズのギャップがインパクトありすぎ。ひろみも喉自慢大会に出るためにこの曲を歌うんですけど、これが小生意気に上手い。子供時代の美空ひばりを見たって感じ。
ひろみのダメ母親役にミヤコ蝶々が好演。ひろみの稼いだ金をちょっと借りるといって全部強引にもっていく様は憎たらしいほど上手いし、喉自慢で不正に優勝しようとするやくざどもに清次を押しのけ自ら絡んでいく度胸のよさもあっぱれ。ミヤコ蝶々はすごい人だったんですねぇ。
前半の女剣劇一座のエピソードと喉自慢大会のエピソードが無理なく繋がっていて相変わらず感心するんですが、喉自慢大会会場が因島ってことで琴糸さんが1シリーズぶりに登場。今度は幸せそうでよかったと思うのでありました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
近藤美恵子
(五月淳子)
伍代夏子とか演歌歌手がやりそうなこの役。顔が歳をとるごとに演歌歌手っぽくなってきている気がするセリーヌ・ディオンで。
ミヤコ蝶々
(お政)
人情派って感じのウーピー・ゴールドバーグあたりで。


第三の悪名
シリーズ第5作
(1963)
4
2004年2月
お照の居候している朝吉は戦争時の上官だった修と出会う。彼は粟津一家の二代目だったが今は松島一家に身を預けていた。松島一家の女親分お妻は修をかたぎにしたいと思っていた。しかし修は朝吉の因縁のカポネ一味の企みを握っていて手を貸すことになるが、カポネ一味の経営するキャバレーでは清次が支配人になっていて・・・
前作の「続・新悪名」で完結したかと思いきやまだまだ続いていたシリーズ第5作。東京の大学を出たエリートやくざで朝吉の戦争時代の上官、修の登場で清次こと田宮二郎の出番が少なかったのが残念だったけどこれはこれで楽しかった。
桑田佳祐のようないでたちの長門裕之が今までの悪名シリーズにはなかったダークな雰囲気をかもし出しています。シリアスというより辛気臭い感じもしなくはないけどそれが逆に勝新と田宮二郎の陽、長門裕之の陰って感が今までとは変わって結構新鮮だったりするんですね。
でもやっぱり楽しいのは朝吉と清次の会話のやり取りが最高でネタバレ→
貞がやられたのはしょうがないと←あっさり割り切ってカポネの元で働く清次に縁切りをするけど、カポネの性根がわかった清次が「すんません。」と詫びを入れにきて朝吉が「すんません。じゃあらへんで!わしはお前を弟のように思っとったんじゃ!」と一喝。清次もうれしいやらなんやらで男泣き、観ているこっちもうれし泣きでっせぇ。本当に心配しているからこそ本気で怒る。これも「悪名」シリーズの醍醐味ですなぁ。
勝新、田宮二郎以外で今のところ全シリーズ登場している藤原礼子もどんどん綺麗になっていってる感じがしてよかったし、月丘夢路の女親分も粋でよし。もうひとつの醍醐味は女優陣がとても魅力的なところもありますね。
西村晃が大親分で登場していたけどこれがすごい迫力。水戸黄門の時のようなやさしさは一切なし。修羅雪姫でさえあった人情すらなくただただ非情な役どころに驚いたのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
長門裕之
(修)
どことなくダークな雰囲気なホアキン・フェニックスで。
月丘夢路
(お妻)
粋な感じがして人のトップに立つ役がよく似合うキャサリン・キーナーで。
西村晃
(松島の元締)
迫力が違うジェームズ・コバーンで。


悪名市場
シリーズ第6作
(1963)
4
2004年3月
刑務所に入ってしまった清次の元に訪れた朝吉とお照は清次がはめられたと知り四国に向かうがそこには朝吉と清次の名を語る偽者が街を仕切っていた。朝吉は偽者のもとにもぐりこみしばらく探りを入れていたが、追風組が勢力を拡大するために偽の朝吉達を利用しようとしていた・・・
とうとう出てきた朝吉と清次の偽者。この偽者を芦屋雁之助と弟の子雁が演じているんですが雁之助は勝新に体型が似ているでまさに偽朝吉にはうってつけ、一方子雁の方は背が思いっきり小さくて清次とは似ても似つかないところ(流暢に話す英語だけは一緒)に愕然とする本物の清次がまた笑いを誘って相変わらず面白いなぁと思うこのシリーズ。
偽朝吉が親分衆達に河内音頭を歌えと言われるも河内出身じゃないから歌えず、変わりに裸踊りで勘弁してもらうシーンなんか見ると芦屋雁之助は本当に芸達者だし、変わりに河内音頭を歌う勝新にも感心しちゃうんですよね。
さらにこの
悪名シリーズのすごいところは以前登場したキャラクターがまた登場してくれるところ。今回はお銀が朝吉をサポートするという旧作を観ている人にはたまりません。
今回のヒロインの瑳峨三智子はパチンコ屋の女主人という役がはまっていたけど、歴代のヒロインとくらべると当時若かったんだろうけどどうもビジュアル的にオバサンっぽく見えてしまって個人的には好きじゃなかったなぁ。
一件落着して船に乗っていると新手の清次の偽者が登場するんですが、この役の
藤田まことが今までに聞いたことのない迷台詞「耳から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタいわしたろか。」(手の動きつき)が衝撃的。あまりの面白さに藤原礼子も思わず素で吹き出しそうになっているところを見逃さなかったのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
瑳峨三智子
(咲枝)
場末感がとっても似合うジーナ・ガーションで。
芦屋雁之助
(一郎)
ちょっとコメディーより過ぎるけど、芸達者のジャック・ブラックで。
芦屋小雁
(二郎)
妙な小者感がいい感じの、デヴィッド・アークエットで。


悪名波止場
シリーズ第7作
(1963)
4
2004年3月
偽の清次を問いただすと妹のためだと弁解した三郎のため朝吉は力になることにしたが三郎の妹おとしは麻薬中毒だった。三郎もこのシマの鬼瓦組の金を持って消えてしまった。朝吉たちはお照が金を持って戻る間鬼瓦組の下で働くことになるが・・・
前作のラストシーンからの続きってところがいかすんでけど、
またまた出ました藤田まことの迷台詞「鼻の穴から手ぇ突っ込んでおまえ扁桃腺コリコリいわしたるでぇ。」ってもうおかしくって扁桃腺コリコリのフレーズが最高。この台詞最近すっかりマイブーム。
今回はこんな偽清次の妹を助けるために途中下船の旅。だけど偽清次にあっさり逃げられ借金を返すために肉体労働までする朝吉。あぁいくらなんでも人が良すぎるぜ朝吉っつあん。男気あふれるところは十分わかったからもういいでっせ、それより巻き添え喰らって肉体労働するはめになる清次がまた笑いを誘うんですけどね。それに今回
ダコタ・ファニングを生意気にしたようなハーフの子供に「景気よくしていきやぁ。」と気合を入れられる清次の図ってのが楽しくて最後はなにげなく意気投合しているところもなかなかほほえましかった。
ヒロイン役でホステスの滝瑛子も今でいう米倉涼子のように現代的で久しぶりに正統派という感じがしてなかなかよかったと思います。
麻薬や麻薬中毒の妹、ネタバレ→
その中毒者の夫がちょっとしたはずみで殺してしまったり←とちょっと内容を聞いただけでは暗くなりそうなところですがそこをカラッと明るく見せてしまうところがこの悪名シリーズのすばらしいところと再認識したのでありました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
滝瑛子
(悦子)
いわゆる気の強そうな美女といわれるジャンルに入りそうなエリザベス・ハーレーで。


悪名一番
シリーズ第8作
(1963)
4
2004年3月
年も明けようかという年末、お照は友人の店で忘年会をやったある工場の従業員が金を払わないというのだ。そこで朝吉達は工場に向かうが会社の金を預けている大黒金融の従業員が預金を持ち逃げしたというのだ。
二人は情報を集めるために東京の本社に乗り込むが、朝吉の名前は東京では無名で相手にされず・・・
朝吉、清次のコンビが今度は東京へ殴りこみって話。東京のやくざの親分(いいやくざ)に娘のように面倒見てもらっている妙子に誰かと訪ねられ「八尾の朝吉いいますねん。」と答えると、
妙子に八尾ってどこ?と切り返され唖然とする朝吉と清次の姿が何とも楽しい一作。そうだよなぁ、自分も八尾ってどこだろうって思うもん。いまだに・・・
それに清次の問題発言で朝吉に叱られるという序盤のお決まりパターンももちろんあります。東京なだけに靖国問題で誰が祭られてますの?と発言し朝吉を怒らせちゃうんですけど、清次とおんなじ気持ちっていうか無知なもので靖国に関してはよくわからないからいまだにニュースなんかで話題になっても「?」って感じなんですよね。
こうしていつものように清次と軽く縁を切った朝吉は一人敵地に乗り込むわけですけど、舞台が東京なだけに「なんだね君は?大阪の田舎やくざは早く帰りたまえ。」とか普通使わないよなと思う微妙な標準語で馬鹿にされて悔しい思いをする朝吉となぜか東京にいたお銀に仕事を見つけてもらった先が大黒金融とつながりがあるやくざの組に入ることになった清次、お互いが詮索し最後はお決まりの大乱闘なんですけど
清次が「生きてたら一緒に靖国神社に行きましょう。」的なことを言うんですけど朝吉は目を潤ませ感動しちゃって清次のこと許して仲直りするんですけど、この男の友情ってやつは毎回みてもいいもんです。
ラストのネタバレ→お照がお金に困ってつれて来た友人に実はお照自信が金を貸して困ってた。←というオチが大どんでん返しで藤原礼子有終の美を飾ったという感じで楽しかった。そうなんです悲しいかな藤原礼子も悪名シリーズ1作目から連続で出演していたのにこれでラストなんですよね。お照というキャラクター朝吉のことちょっと好きだったはずだから悪名ファンとしては本当の最後で朝吉とお照が結ばれてほしかったな。
この金融会社の社長秘書役の江波杏子が東京の冷たい雰囲気の女って感じがよく出ててかっこよかったし、今とあまり変わらない(ちょっと言いすぎ)容姿が驚異的なのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
江波杏子
(圭子)
レベッカ・ローミン=ステイモスあたりの悪女系女優で。


悪名太鼓
シリーズ第9作
(1964)
4
2004年5月
河内の祭りの資金調達のために清次は朝吉に無断で太鼓を九州に貸し出してしまう。怒った朝吉は清次の後を追うが朝吉は清次の乗ったトラックから転落して取り残されてしまう。
そんなある日、河内に戻った朝吉の元に清次が殺されたとの電報が入り・・・
シリーズが続いていくと同時に時代も進んでいるんで犯罪もなんか現代的になっちゃうんですよね。
「悪名」シリーズ前半じゃあ遊女にまつわるごたごただったりやくざ同士の抗争を描いていたけど、最近じゃ悪徳金融業社とか麻薬とか現実味を帯び始めてきているところが興味深いです。
殺されたと言われている清次はもちろん生きているわけだけど、清次の戸籍が売られていてその清次の戸籍を買った男が殺されたんだから死んだって言うのもあながちうそではないんだけど、この死んだ男の妻が今回のヒロイン朝岡雪路なんですけどやっぱり若くて勝新の相手役にぴったりだし、浜田ゆう子の香港マフィアと精通するミステリアスな女もはまっていていいんだけど、今回
清次にいいなずけが登場するんですけど、相手役の若松和子が年取りすぎだし女将さん的な性格でいまひとつ。田宮二郎の相手は氷の心の持ち主って感じの都会派のクールな女が断然似合うのです。
今回はなんと朝吉と清次が敵と味方に分かれて殺し合いの展開に発展するんですけど、清次は拳銃を持っているわけだから断然有利なわけ、だけど二人には強い絆があるから目で合図してわざと外すぞって合図を送るんですよね。やっぱり「悪名」シリーズはこの男の友情がいいと改めて思うのでした。
劇中、田端義夫がひ弱な流しの歌手で出てきて芦屋雁之助、小雁にケチつけられるんですけど(もちろんこの二人は朝吉に叱られる)この田端義夫が実はネタバレ→
麻薬組織を追っていた刑事だった←と楽しいオチがついているのもポイントが高いのです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
朝丘雪路
(宏子)
不幸な人妻(シングル・マザー含む)はトニ・コレットにおまかせ。
若松和子
(お徳)
なんかダイアン・ウィーストあたりが突然彼女になったって感じでした。
浜田ゆう子
(杏子)
悪の組織がよく似合うダリル・ハンナで。


悪名幟
シリーズ第10作
(1965)
4
2004年6月
足を洗う決心をした朝吉はびっくり鍋屋に清次を連れていく。しかし勘定が払えなくなった朝吉は仕方なくびっくり鍋屋の娘お米の誘いで賭場に行く。そこで工場の女社長お政に大勝し小切手を手にする。しかしお政はこの小切手が銀行に渡ると不渡りになるからもう少し換金は待ってくれと朝吉に頼み朝吉は了解するのだが・・・
悪名シリーズも10作目まできたかぁ。最初は朝吉が戦争に行ったり、遊女の足抜きとかやってた時代が懐かしいなぁ。まぁ時代背景は変わっても展開は基本的に同じ(朝吉は足を洗いたいけど清次はこのままがいいから喧嘩になって別行動→ひょんなことから朝吉は人助けをするはめになるけど相手の組になぜか清次がいる→清次が朝吉の仲間とばれてしばかれる→結局二人が仲直りしてやっつける。)なんですけど不思議と痛快なところは変わらずで安心して楽しめるんですよね。
今回、朝吉はお米の大親分にその性格をかわれて気に入られるんですけど、その組の中に裏切り者がいてどこかで見たことあるぞと思ったら佐藤慶でした。若いときの佐藤慶がまた悪そうな顔で中堅どころのやくざがはまっていました。
この
悪名シリーズが魅力的な理由の一つに仁義と人情がちゃんとあるところだと今まで観てきて感じましたね。たとえ敵方の卑怯なやくざであっても限度ってものを知っていてそれ以上の手出しはしないんですよね。今回も朝吉は子供を助けるために単身で敵方に乗り込んでいって案の定袋叩きになるんですけど殺しはしないし瀕死の重傷になるほど殴られずぎりぎりのところで許されるし、最後の朝吉と清次も悪の親玉をこらしめる程度で許してあげるところが人間味があっていいんですよ。現在じゃそんな事はありえないのが時代は変わったもんだとしみじみと思うのでありました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
水谷良重
(お米)
相変わらずいけずな雰囲気を漂わす水谷良重には唇がちょっと似ているアンジェリーナ・ジョリーあたりで。
ミヤコ蝶々
(お政)
コメディもいけますって感じのダイアン・ウィーストで。
佐藤慶
(遠藤)
最近テレビドラマじゃ主役なのに映画じゃ悪役ばかりでおなじみのキーファー・サザーランドで。


悪名無敵
シリーズ第11作
(1965)
4
2004年8月
常公に騙されて売春させられそうになった娘お君を逃がそうとした朝吉たちはついでに常公の妻の朱実もつれて君の故郷に逃がした。朝吉は片山津温泉で一人の女と一夜を過ごすのだったが、その女こそ朱実たちに売春させている組の女親分、百合子だった・・・
「ポリデント」でおなじみのおっとりしたキャラクターが今と変わらない八千草薫が売春婦役っていうのが不思議でした。雰囲気が森光子のようでコミカルな「悪名」シリーズが彼女の出演しているシーンではより一層楽しくなっています。その反対に朝吉と知らず一夜を共にする女親分に藤村志保が担当。この凛とした藤村志保の朝吉に対する恋心と組のために命を狙わなければならない苦悩がピリッと引き締めてくれて久しぶりにヒロイン二人のバランスと朝吉、清次の絡みもいい感じで始まった頃のシリーズを思い出しました。
朝吉はぽん引きしている朱美の旦那の常公も夫婦は一緒じゃなきゃあかんと言うことで一緒に連れて行って改心させちゃうんですよね。常公が言い訳なんかした日にゃあ頭を気持ちいいくら本気で叩いちゃってますから朝吉は本当にいい奴です。
この旦那役が千波丈太郎って人なんですけどチンピラ感がよく出ていたけど見た目は格好よかったですわ。そこら辺にいる感じのイケメンぽん引きいるなぁみたいな感じで。昔の映画観るといつも思うんですけどこういう役できる俳優って本当いないですねぇ。
清次も逃げる途中で捕まっちゃうんですけど調子のいい性格でちゃっかり敵方のぽん引きやったりして朝吉に「このガキゃ。」といつものように叱られますけど最後は「死ぬ時は一緒」みたいな男の友情を確かめて二人で敵陣に乗り込んでやっつける。という「水戸黄門」的な展開は何回観てもスッキリするのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
八千草薫
(朱美)
見た目がおっとりしています、レニー・ゼルウィガー
藤村志保
(百合子)
女親分といったらこの人ルーシー・リューしかいません。
千波丈太郎
(常公)
オリヴィエ・マルティネスがまさにこんな感じの役にぴったりで。


悪名桜
シリーズ第12作
(1966)
4
2004年10月
焼き鳥屋となった朝吉と清次はある日新聞記者がからまれている所を助けたちまち英雄となる。しかしこの時の少年、猛は朝吉を襲って来たが朝吉は猛を捕まえ更正させようとするのだが・・・
なんといっても幼なじみの朝吉と清次の家に転がり込んでくる菊枝役の市原悦子がいつもの「悪名」とは違うおっとりムードをかもし出して
さすが市原悦子、40年前と芸風も顔も変わっていなくて恐れ入りました。
この市原悦子の演技をちょこっとチェックしてみたんですけど、店に殴りこまれた時に朝吉と清次はもちろん戦っている訳ですけどその後ろでしっかりと恐怖におののく市原悦子のさりげない演技見たときこの人映っていないところでもちゃんと演技する人なんだなと感心しました。
猛は地主の息子で大鯛組とABCクラブがこの地主を利用しようと悪巧みしつつも最後はいつものように朝吉と清次にこてんぱんにされるという展開がストレス発散に相変わらずちょうどいいです。朝吉、清次の二人に対して60人ぐらいで襲ってきてるんじゃないの?と思わせつつ全くの無傷でこやつらを叩きのめすところが爽快!
そんなABCクラブのボスが藤岡琢也なんですけどいつの間にかボコボコにされてなんだか岡倉大吉がやられているようでちょっと切なかったです。
関係ないけどうちの母親の知り合い(70才くらい)は別れるときに「バイバイ」と言うところがかわいらしいなぁなんて思っていたら、田宮二郎も別れ際に「バイバイ」と言っていてこの世代のちょっといかした人は茶目っ気のあること言うんだなと妙に印象に残りました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
市原悦子
(菊枝)
常におっとりしている感じのジェニファー・ティリーで。


悪名一代
シリーズ第13作
(1967)
4
2004年11月
人を殺めた清次が朝吉の前から姿を消して一年。一人旅をしていると渡り仲居をしているお澄という女から初恋の人と間違われてしまう。朝吉はこれもなにかの縁だとお澄の働く旅館に泊まるのだがそこでは親の遺産を相続することになっている娘が沖縄の源八に捕まっていた。源八によれば二代目シルクハットが絡んでいると聞き早速シルクハットの元に出向くがそこにはシルクハットの妹を妻にした清次がいた・・・
前半は勝新太郎と森光子の掛け合いが絶妙でいつもの悪名なんですよね。
森光子が「なぁ、ちょびっとだけでええからキスして。」って唇拭いて目を閉じると勝新がチュッってキスすると二人ともうれしそうに照れちゃうところはかわいいかったです。
そんなコミカルな前半と打って変わって二代目シルクハットの妹坪内ミキ子を女房にした田宮二郎が再登場してくる中盤以降はハードな展開。何だかんだいって3億の遺産を相続する娘をかくまうことになって坪内ミキ子のところに隠すんだけど結局見つかっちゃって抵抗するんだけどネタバレ→
坪内ミキ子刺されて死んじゃうんですよね。しかも妊婦なのに。←思うにこのシーンで悪名は一代限りでいいっていう原作の今東光のメッセージがそのまんまタイトルになったような気がします。
最後の乱闘もいつもは殴り合いで決着が付くけど今回はどすが出てきて切り付けあうんですよね。朝吉も今回はどすを手にするんですよね。そういえば朝吉、清次の二人はいつも拳でかたをつけていたけど多分初めてなんじゃないかなぁ?人を殺めるの。ネタバレ→
清次は刺されて重体、朝吉は自首して終わるという←いよいよ終焉にむけたエピソードといった内容に仕上がっておりましたがどうもいつもと雰囲気違うと思ったらいつもの田中徳三監督じゃなかったんですね。やっぱり監督が違うと雰囲気はこうも違うものなんですね。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
森光子
(お澄)
ドリュー・バリモアは気のいい仲居さんとか似合いそう。
長門勇
(二代目シルクハット)
一筋縄いかないけど実はいい奴という感じのヴィンス・ヴォーンで。


悪名十八番
シリーズ第14作
(1968)
4
2005年1月
ついに逮捕された朝吉だったが兄の辰吉のおかげで執行猶予付きで出所することができた。そんな兄の辰吉は選挙に出馬するも中沢組の組長の陰謀で朝吉を殺人犯に仕立てられてしまい・・・
確か次の「悪名一番勝負」で最後だったはずですが田宮二郎は一足お先に卒業ということで田宮二郎好きな自分にとってはこれが事実上ラストエピソードなんですけど前半は出所にまつわるエピソードや朝吉が辰吉の工場で世話になるとか清次抜きのエピソードが続いてどうなることかと思ったけど後半ようやく朝吉のピンチに清次がどこからともなく助けに現れてからはいつもどおりの展開でやっぱり楽しいです。清次の口癖「梅にウグイス、松に鶴、朝吉親分ときたらこの清次兄ぃ」は全くその通りだなぁと痛感するのでした。
森光子が前作に引き続き登場して内容自体も前作の続きなのでてっきり同じ役かと思ったら全く別の役でちょっと残念。でも相変わらず勝新とのラブシーンは可愛くって笑っちゃうしマドンナの安田道代もこのシリーズのイメージどおりのしっかり者のお姉さんという感じで西村晃も相変わらずの役どころでいつもながら上手いことキャスティングするなぁと思います。
シリーズも後半を向かえるとやっぱり時代の流れに逆らえないとでも言うのでしょうか、
シリーズ始まった当初は戦後の貧しい闇市を食いものにするやくざ同士のしまの取り合いやら遊女を足抜きさせたりして時代を感じて特に田宮二郎がモートルの貞だった時代の一作目と二作目本当に傑作だったなぁとしみじみ思います。でもそれ以外の作品もそれはそれで好きなんですけど。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
安田道代【大楠道代】
(鈴子)
ビジュアルはダイアン・クルーガー的な印象でした。
西村晃
(中沢政兵衛)
悪巧みに長けていそうなアラン・リックマンで。
金田竜之助
(村上辰吉)
がっちりしていていい人そうなチョウ・ユンファで。


悪名一番勝負
シリーズ第15作
(1969)
3
2005年3月
呉服屋の娘おりんの借金を肩代わりして数年、朝吉は花島組が縄張りの長屋の用心棒になっていたが大西組の陰謀により長屋が取り壊されそうとしていた・・・
田宮二郎が出ていないのでどうなる事かと思いましたけど、時代も昭和初期に戻っていたのでおそらくこれは第一作目以前のモートルの貞と出会う前の「悪名」シリーズの外伝的内容なのかなぁと思いました。
田宮二郎のいない分、外伝的な内容にしているし江波杏子や安田道代に田村高廣、津川雅彦と豪華なのは買うけどやっぱり物足りないというか「悪名」ではないなぁという感じです。
江波杏子は最初、資金繰りに行き詰って朝吉が金を持っていると知り借金を申し込む呉服屋の娘役だったのでらしくない。と思っていたら数年後の設定で女賭博師になって帰ってきていつもの姐さんキャラに戻って一安心。DVDのパッケージを見た感じだと朝吉を陥れそうな仇っぽい役かなと思っていたけど映画の中じゃいつも悪女ぽ役が多い印象だってので、今回のいい役はめずらしかったです。
安田道代は「痴人の愛」のナオミのような奔放な役だったけどナオミのような男を破滅させる奔放さじゃなかったのでよかったです。
一人で花島組を守ろうと息巻いてはいるけど喧嘩は弱いししゃべりはどもっていて情けないような面白い、川流れの仙次というキャラクターはどこかで見たことあるなぁと思ったら津川雅彦でした。ちゃんと見るのは多分始めてかと思うのですが三枚目のキャラクターを演じられる上手さに驚きます。津川雅彦は今とは全然風貌が違うけどどことなく面影は残っていて言われてみれば確かに・・・という気がしました。
さらにもう一作「悪名縄張荒らし」というのがあるらしいのですが機会があったら観てみようかと思います。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
江波杏子
(おりん)
ファムケ・ヤンセンは女賭博師が似合いそうです。
安田道代【大楠道代】
(お浜)
意外と奔放な役が多かったりするマギー・ギレンホールで。


赤穂城断絶
(1978)
4
2004年11月
赤穂浪士たちによる敵討ちで有名なな忠臣蔵もの。
なんてったって浅野内匠頭の敵を討ったのに切腹する結末が何かいやで今まで忠臣蔵って苦手で敬遠していたんですよね。それが偶然この「赤穂城断絶」の予告編を観る機会があったんですがこれがすごかった。大石内蔵助が萬屋錦之介ってだけでもこれは必見の予感がしたのに製作が東映だから千葉真一や松方弘樹に成田三樹夫そして渡瀬恒彦まで東映やくざ映画でこの夏お世話になった方々総出演の忠臣蔵、しかも監督は深作欣二でこれは見逃すてはならないと思って初忠臣蔵のはこびとなった訳です。
いきなり浅野内匠頭(西郷輝彦)が吉良上野介を松の廊下で斬りつけるシーンからかな?吉良のねちっこい嫌がらせを観ずにすんだから以外といやな気持ちにならなかったです。そのぶん敵討ちにたいする同情も薄くなりましたが・・・
そこからの討ち入りまでは実際観てみて想像していたのとずいぶん違うなぁと思いました。クライマックスの討ち入りまでどこに重点を置くかは監督の裁量によるものでしょうけどこの映画は大石内蔵助がなかなか行動を起こさない中、赤穂浪士たちが苛立っていく様に重点を置いているんじゃないかと感じました。だから無謀に行動して脱落していく浪士のエピソードが結構長時間あったりして忠臣蔵は初めてだったけど新鮮な感じがしましたね。この身勝手な行動するのが近藤正臣。相変わらず仲間にいたら迷惑するキャラでムカついたけどそれを心配する仲間が森田健作で笑っちゃうくらいこの人熱血さわやかさんでした。
千葉真一も出だしが小汚い浪人で中島貞夫監督作品を思い出したけどしかも剣の達人でいちいちキメのポーズがかっこよかったし、しかも吉良邸で一番の剣の使い
手渡瀬恒彦と千葉ちゃんの一騎打ちはこれだけでも観た甲斐あるという充実感がありましたよ。
吉良邸の隣に住む三船敏郎や吉良邸に出入りしている大滝秀治は大石内蔵助の討ち入りに関して吉良に密告することだって出来たのに吉良って嫌われていたんですね。ともあれこの深作版忠臣蔵は出演者だけで十分満足できたのでありました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
萬屋錦之介
(大石内蔵助)
デンゼル・ワシントンなら頼もしい感じがしてみんな付いていきそう。
金子信雄
(吉良上野介)
クリストファー・リーにひとつ腹黒いところをお願いしたい。


朝の波紋
(1952)
3
2009年2月
貿易会社で秘書をしている篤子は優秀であるため秘書以外の仕事もこなし、大きな取引をまとめていた。ある日、篤子のの家だあずかっている健ちゃんの面倒を見てくれている伊能田二平太と知り合いになる。やがて篤子のまとめた取引で商品が届かないという事態が起こるのだが、それは伊能田の勤める貿易会社の嫌がらせで・・・
高峰秀子と池部良のちょっとトレンディドラマっぽいドラマ。
高峰秀子がで英語なんかもペラペラと話して難しい商談も軽く成立。というバリバリのキャリアウーマンな役どころが様になっているし、池部良も大企業に勤めているけれど、いつもミスばっかりしてしまうお人よしなんですが肝心な時はバシッと決めるところが池部良らしくて二人の相性も中々いい感じでした。
内容も
高峰秀子が上手いこと進めている仕事に邪魔が入り、それが池部良の会社だったことから「最初からそれが目的で家で面倒見ている健ちゃんに近づいたんじゃないのかしら?男は信用できん。」と月9みたいなトレンディドラマのさきがけ展開になって興味深いです。も高峰秀子と同じ会社に勤める岡田英次も口説いていていい感じになるのですがところどころで性格の悪さが垣間見えて結局振られるところも月9的展開。
それにしても岡田英次がものすごく性格悪くて驚きました。池部良に故意のライバルがいれば盛り上がるのですがそれが岡田英次というところも意表をついていたし、他人のことを考えず自分のことしか考えない横暴な事を言いまくる岡田英次にちょっとショックを受けました。
全体的には好みなのですがいい子なのですが、子供のエピソードがなければすっきりしてよかったなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高峰秀子
(瀧本篤子)
キャリアウーマンが板についている「BONES」のエミリー・デシャネルあたりで。
池部良
(伊能田二平太)
爽やかのルックスのジェイソン・ベイトマンで。
岡田英次
(梶五郎)
見た目がどことなく性格悪い役に向いていそうなピーター・サースガードで。


あした来る人
(1955)
4
2007年7月
梶大助の娘の八千代は夫の克平が家庭より仕事中心の生活に嫌気がさしていた。そんな中、カジカの研究に打ち込む曾根二郎という男と知り合い次第に惹かれ始める。一方、大助はの裁縫店の女主人杏子の面倒を見ていたが、彼女は子犬がきっかけで克平と知り合うがこの二人も次第に惹かれ始め・・・
ベテラン豪華スター共演の川島雄三作品。
面倒を見ている裁縫店の女主人が自分の娘の婿と恋に落ち、娘も別の男と恋に落ちるという一見ドロドロしたメロドラマになりそうな感じですがそこは川島雄三だけあってサラッと描いていて当時の風俗も楽しめるところが個人的にはよかったです。
キャラクターも山村聰は新珠三千代のパトロンなんかやっていますが決して肉体関係を望んでいるわけではなかったり、新珠三千代は内に秘めた情熱をあるとき爆発させて三橋達也の遭難騒動の時にいても立ってもいられず山に向かってしまうタイプで逆に月丘夢路は不満をはっきり口に出すタイプで遭難の時も平気な顔して逆に三橋達也に文句を言っちゃうような直球型の性格で登場人物がみんな個性的だし、月丘夢路は山のことにしか頭にない三橋達也にうんざりしているはずなのにカジカの生態を熱心に研究する三國連太郎に恋心を抱いてしまい結局三國連太郎と上手くいっても同じことが繰り返されるのではなかろうか?という
人間ってダメだよねぇという川島雄三らしさが出ていました。
後半、三橋達也と新珠三千代が恋仲になるのですがこの二人他の映画でも相手役を務めることが多くベストカップルでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
山村聰
(梶大助)
パトロンとか似合いそうなマイケル・ケインで。
月丘夢路
(大貫八千代)
思ったことは口に出しそうなジェニファー・ロペスで。
三橋達也
(大貫克平)
ストイックな印象のジェラルド・バトラーで。
三國連太郎
(曾根二郎)
学者役とか意外と少ないけど似合いそうなジム・カヴィーゼルで。
新珠三千代
(山名杏子)
ジェニファー・コネリーあたりにお願いしたい。


足にさわった女
(1960)
4
2005年2月
父親の法事を行うために厚木に向かう女スリ師のさやは偶然休暇中で彼女を追う刑事の北八と列車で鉢合わせになってしまう。なんとか北八をまいたさやは小説家の五無から金を騙し取りようやく厚木に到着するのだったが・・・
網タイツを履いた女の足だけで見せるオープニングですでに京マチ子テイストで溢れていて自然と期待が高まりますが内容も京マチ子一色で楽しかったです。京マチ子を食べ物に例えるなら生クリームたっぷりのすごーく甘いデザートだと思うのですがそれに今回は相手役にこれまた食べ物に例えると味噌カツとかソースたっぷりのお好み焼きを連想させるハナ肇で二人ともこってり顔だからよその国の映画を観ているような気分になれる不思議な映画です。(厚木の米軍基地とかも出てくるし)
そんなこってりな二人の間に小説家役で船越英二が混ざってくるのですが、今まで観てきた作品は性格は真面目だけど暗めな男が女にはまって身を破滅させてしまう役ばかりだったのですけど、「暖流」とこの作品で明るい馬鹿という新境地を見ることが出来て船越英二はすごい人だなと一気に好きに好きになりました。
中盤から先輩スリ師に
大御所、杉村春子の登場にさすがの京マチ子も一歩引くのか?と思いきや当時36才なのに劇中25才の設定になっている強引さだし杉村春子は自ら「生娘のお春」と言い出すし両者一歩も引いていないところがすごいと思います。そう京マチ子は主張せずともオーラが自然と前へ前へと出てくる珍しい女優なのです。
一応京マチ子は親戚に村を追放されて自殺した父親の復讐をするために厚木で盛大に法事を行うことが目的というよく分からないけど壮大な目的のために厚木まで旅をするのですがそんなのどうでもよくなってくるんですよね。これは京マチ子を楽しむ映画なのですから・・・
それにこの映画でおそらくブレイク前の田宮二郎やら江波杏子をちょい役で観ることが出来てうれしかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
京マチ子
(塩沢さや)
アンジェリーナ・ジョリーで。コメディやるならこういう作品にしてほしい。
ハナ肇
(北八平太)
濃い口のジョージ・クルーニーで。
船越英二
(五無康祐)
小説家にぴったりなルーク・ウィルソンで。


阿修羅城の瞳
(2005)
3
2005年5月
かつて「鬼殺し」の異名を持つ病葉出門は江戸を賑わす盗賊のつばきと出会うがそんな彼女は恋をすると鬼の王、阿修羅になってしまう運命を背負っていた・・・
テレビで見かける人ばかりだから金払って観たくない。という考えがあって新作の日本映画は観ない事にしていたのですが、最近は「パッチギ!」も観たし、DVDでもたまーに借りるようになったので観てみようかなぁと、思い切って映画館に足を運びました。映画の日だったし。
舞台で大ヒットしたというだけあって内容もオーソドックスな感じですが中々いい感じ。オープニングのねぶた祭風なシーンもよく出来ていて、江戸の町に人間となって潜んでいた鬼たちが暴れだしたぞ。といきなりアクションシーンはいいのですが斬られた鬼の体から出る血が蛍光の黄緑色?なのが安っぽく感じられ少々興ざめ、未見ですが舞台だったらこの血の色でも構わないと思いますけど映画は普通に赤でよかったような気がします。
セットもだんだん舞台っぽくなってきて最初はちょっと違和感ありましたけどこういうもんだと割り切れば案外しっくりくるから妙なものです。
つばきの痣がどんどん大きくなっていく小さなCGというか特殊効果はいい感じなんですけど、最後阿修羅城が復活して逆さまになった城から出る炎の塊、その直撃を受けて炎の海と化す江戸の町は
本当ならクライマックスですごい見せ場のはずがCGがダメ過ぎて一気にテンション下がってしまいます。これもうちょっと何とかならなかったのかなぁ?やっぱりCGに大金かけられるハリウッドととの格差はすごいものがあるなぁと切なくなりました。
市川染五郎はさすがに2度舞台で同じ役をやっているだけあってはまっていました。というよりこんなべらんめい口調が似合う三枚目な役とは思っていなかったので感心しました。
宮沢りえは予告編で見たときはいい感じだなぁと思いましたが、実際この役って男勝りなところがあるか男っぽい台詞をいうとらちょっと違うかなぁってところがありましたけど悪くはなかったです。どちらかというと2回目の舞台で同じ役をやった天海祐希の方が絶対はまっていたんだろうなと思います。
他にも樋口可南子とか渡部篤郎も悪くはないけどイメージとしては同じく2回目の舞台の夏木マリと伊原剛士の方がよりはまっていそうな予感がします。美惨は1回目の舞台だと江波杏子だったそうでこれもなかなかすごそうで舞台版のビデオがあったらぜひ観てみたくなりました。
あとこの映画の気に入ったところはエンディングに流れる曲がスティングってところにセンスを感じました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
市川染五郎
(病葉出門)
ヒュー・ジャックマンに「ヴァン・ヘルシング」的ノリでやってほしい。
宮沢りえ
(つばき)
タンディ・ニュートンは「リディック」でネクロモンガーの夫人をやっていたから鬼になっても大丈夫。
樋口可南子
(美惨)
エルフからオスカー女優まで演じられるケイト・ブランシェットに鬼をお願いしたい。
渡部篤郎
(安倍邪空)
裏切り者といえばショーン・ビーンで。



THE HOLE
(1957)
4
2009年2月
週刊誌の記者、北長子は警官の汚職記事を書き、クビになってしまう。生活に困っていたところ友人から失踪ルポの企画を持ちかけられ長子は資金調達のために銀行に金を借りに行くが、支店長の白州とその部下の千木は長子の失踪を利用し、銀行の金を横領しようとしていた・・・
京マチ子のシニカルなクライム・コメディ。
失踪ルポをやるにあたり、一ヶ月誰にも気が付かれなかったら雑誌社から賞金が、もしくは京マチ子を見つけた読者が賞金をもらえるという懸賞付きの記事を書くということで物語が始まりこれはこれで面白そうなのですが、失踪した京マチ子に全ての罪をかぶせ銀行の金を横領しようと完全犯罪を企む山村聡と船越英二が出てきて話は思わぬ方向に進むのですがこれがとてもよく出来ていて面白かったです。
山村聡の仲間にはすっぱな女がいてその女が京マチ子のふりをして銀行員に扮して金を横流しする役目となっていて、本物の京マチ子は失踪しているから銀行で働いているのが偽者とは誰も証明できずにいるうちに、雑誌の記事で書いた警部の菅原謙二に犯人扱いされて追い回されたりしているだけでも大変なのに、次々と京マチ子の周りで死体までも増えていき、こうなったら自分の力で何とか無実を証明するしかないと、そういえば何となく怪しいと睨んだ山村聡に近づくために7変化して事件を解決に導くのです。
京マチ子は追いつめられてから奮闘する姿が様になっていてスパイも真っ青なやりすぎな七変化で田舎臭い娘っ子から木の実ナナのようなど派手なダンサー風の娘まで幅が広すぎて笑えるし、警部の菅原謙二もルパンの銭形警部なにもドジっぷりがいいアクセントとなっていて普通ならシリアスなサスペンスになりそうなところを上手い具合にコメディタッチに仕上がっていて感心。
京マチ子を失踪ルポに誘う北林谷栄も銭ゲバっぷりと脇役たちも適材適所に配置されて完成度も高かったなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
京マチ子
(北長子)
へこたれない感じのするサルマ・ハエックで。
船越英二
(千木恋介)
善玉も悪玉もいけるマーク・ラファロあたりで。
山村聡
(白州桂吉)
リーアム・ニーソンあたりにお願いしたい。
菅原謙二
(猿丸警部)
ドジな警部が似合いいに違いないクライヴ・オーウェンで。


あなたと私の合言葉 さようなら、今日は
GOODBYE, HELLO
(1959)
4
2008年1月
キャリアウーマンの和子は半次郎という婚約者がいたが一人身の父親の面倒を見る責任から親友で料亭の女将の梅子を通じて婚約破棄をするのだが・・・
市川崑監督作品、大映オールスターキャストの当時としては都会的なストーリー。
若尾文子の台詞に感情がこもっていなくて最初焦りましたが、カーデザイナーというオシャレな職業で(仕事ももちろん出来る)社内では男を近づけないオーラを出しているということなので棒読みでいいんだなと強引に納得しました。
京マチ子は若尾文子より3つ年上の先輩というさば読みな設定で若尾文子の振った婚約者の菅原謙二に惚れて猛アタックという図々しいくてちょっとうっとうしいのですが菅原謙二からもあの人ウザイんですけどと若尾文子に相談するところは観ているこってと全く同意見だったので笑ってしまいました。
こうと決めたら絶対実現させる、やっぱり京マチ子は押しが強かったです。
お父さんの佐分利信は突然仕事に嫌気が差して会社を辞めるし、お見合い話を持ってくるも娘に嫁に行ってもらいたくないからお見合い当日に仮病を使って具合が悪くなるという典型的な波平のような日本のお父さんという感じで佐分利信はやっぱり頑固な親父がよく似合います。
御用聞きの川口浩は綺麗なお姉さんは好きですか?ということで若尾文子に憧れて告白しようと思っていて若尾文子モテモテという状態なのですが妹でスチュワーデスの野添ひとみが惚れちゃって結局、京マチ子も菅原謙二もみんな落ち着くところに落ち着くのである意味安心して観ていられるのですが(船越英二も相変わらず三枚目が決まっています。)たまにはいつもと違ったく見合わせのカップルも観てみたかったです。
冒頭に売れる前の田宮二郎がちょこっと出てきてのがまたよかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(青田和子)
キャリアウーマンが似合いそうなダイアン・クルーガーで。
京マチ子
(市毛梅子)
押しが強そうなミニー・ドライヴァーで。
佐分利信
(青田伍介)
厳格そうなジェームズ・カーンで。


あにいもうと
OLDER BROTHER, YOUNGER SISTER

(1953)
4
2005年7月
学生との間に子供を身ごもって実家に戻ってきてしまったもんは兄の伊之吉に毎日のように悪態をつかれて・・・
成瀬巳喜男作品に京マチ子って何かイメージが違うような気がしていたのですがよく考えてみると原節子もかなりインパクトのある女優だから京マチ子と成瀬巳喜男の組み合わせもありつっちゃーありなんですね。
というわけで今回の京マチ子は大学生の子供を身ごもって出戻ってきたのはいいけど、近所の冷たい視線や兄の罵声を毎日浴びて前半は毎日ふて寝しているような役なのですが、そのふて寝している格好がシミーズですよ。あの京マチ子のむっちむちの肉体にピッタリだし、しかもシミーズ姿で脇の下を手ぬぐいで拭く姿なんてすごくリアルでなんか見てはいけないものを見たという感じがします。
たまらず家を出て行ってネタバレ→
流産して←戻ってきた時はすでに開き直っているのですがここからが京マチ子が本領発揮して面白さが一気に加速します。いつもと違うドメスティックな森雅之がつい京マチ子を平手打ちをしちゃうんですけど生まれ変わった(開き直った)京マチ子は森雅之を殴り返すんですよ。しかもグーで!森雅之もそりゃ吹っ飛びますよという勢いですごかったです。
京マチ子を妊娠させちゃう大学生(船越英二)が親父さんのところに挨拶にやってくるのですがこいつが子供をおろしたかどうかばかりを気にして誠意がないものだからさすがの親父に怒鳴られるは帰りがけに森雅之に殴られたりしてダメ男っぷり前回でいかにも船越英二という感じがあぁ大映作品観ているんだなぁと思わせてなんか安心しました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
京マチ子
(もん)
殴ったら殴り返しそうなアンジェリーナ・ジョリーで。
森雅之
(伊之吉)
見た目が凶悪系なジョン・レグイザモで。
久我美子
(さん)
まともな妹役には真面目そうなケイティ・ホームズあたりで。


あの手この手
PRESENT FROM AKO
(1952)
3
2009年3月
大学助教授の鳥羽は新聞で人気の身の上相談のコーナーを持っている妻の近子の尻に敷かれた生活を送っていた。そんなある日、三重から近子の姪が家出してきて・・・
市川崑監督tのコメディ。
家出してきた久我美子が水戸光子に頭が上がらない森雅之に何とか主導権を握らせてやろうと、まさにあの手この手を尽くして森雅之が尻に敷かれていようとも割と平穏な暮らしを送っている夫婦のリズムを崩すのですが、この時代ってよく家出してきた娘を預かるシチュエーションが多く見られますけれど、どの映画も家出してきた女の子はよく言えば逞しいし悪く言えば厚かましいんですよね。
今回の久我美子もまさに厚かましいことこの上なく、久我美子といったら香川京子と並んで真面目な学生さんというイメージがものすごく強かったので今愛の厚かましくちょっとお節介でそのくせやることが全部裏目に出てしまう鬱陶しいタイプの役はショックでした。
森雅之は冷酷な役もこなしますがこういうちょっと間の抜けた情けない感じの役どころも普通にこなして相変わらず感心します。後半も妻の水戸光子にバシッと言うところがスカッとしてよかったです。
水戸光子もいつも脇役というイメージが強かったのですがほぼ主役という役どころで芯が強くて仕事もバリバリこなす奥様という当時としては割と進んだ女性を好演していていて何だかんだ言っても森雅之とあっさり仲直りしてヤレヤレみたいな展開で微笑ましい笑いをとるというのはこの時代の映画ではよく観られるシーンでこういうシーンがあると日本も平和になってよかったなあと思わずにはいられないのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
水戸光子
(近子夫人)
しっかりした奥さんという感じのサリー・フィールドで。
森雅之
(鳥羽さん)
人の良さそうなピート・ポスルスウェイトで。
久我美子
(アコちゃん)
最近活躍がめざましいアン・ハサウェイで。


暴れん坊街道
THE HOURSE BOY
(1957)
4
2004年11月
与作は家老の娘重野と恋仲になり与之助という子供をもうけるが不義を問われ与作は追放されてしまう。重野も姫の乳母になる事に決まり与之助を手放すことになってしまう。
それから10年近くが過ぎ息子を探す与作は宿場で馬方をする三吉とその面倒を見る小まんという娘に出会う。やがて姫の一行もこの宿場にやってくるのだが三吉こそが二人の息子だとは知るよしもなく・・・
いかにも悪ガキって感じの子供には中村錦之助だと思っていて実際この組み合わせは間違いなく面白いんですけど、ここの所内田吐夢監督作品を観ていて気が付きました。内田吐夢が子供の使い方がうまいんだなぁと。
とにかく親なしっ子になってしまった三吉のがきんちょぶりがすばらしく一丁前に煙草すったりして生意気な口を利くところや賭場じゃちょっとは顔の聞く存在に恐れ入ります。それに与作と小まんをそれぞれ慕っているけど与作は小まんとちょっといい雰囲気になっているのを見てやきもち焼いて大暴れする三吉。普段は強がっているけどまだやっぱり子供みたいなところがいいんです。やっぱり
この時代の子役は本当芸達者だったんですね。
小まんが与作の世話をしながらも「くたびれているけどいい男。」なんてちょっとした憎まれ口を言ってみたりする粋な女で、与作は与作でちょっかい出しつつも小まんに借金があると知ると金策に走る人情味溢れるいい奴なんですよ。三吉と三人次第に家族のようになって行く様子がいいのだけれど貧しい中の幸せってこういうものなんだろうなと感じました。
終盤、三吉も小まんのために金を作ろうと姫の寝室から刀を盗み捕まってしまうのですが生みの親の重野に事情を話すも時すでに遅く三吉が処刑されそうになった時ネタバレ→
与作は三吉が探していた自分の息子だと知り切腹しちゃうんですよね。←何もそこまでしなくても・・・とりあえず話し合えばいいじゃないかと思うんですが武士とか侍ってやっぱり話し合いってダメなんですかね。こういう侍の精神っていまいち理解できなかったですね。この精神が解らないということは前世は侍ではないような気がする・・・
ハリウッドバージョンはこの人で!!
佐野周二
(伊達与作)
くたびれ感がショーン・ペンにはあると思う。
千原しのぶ
(小まん)
キャサリン・キーナーはどこか小粋な雰囲気で。
山田五十鈴
(重野)
ジュリアン・ムーアは子供を手放した母親の役とかも無難にこなしそう。


脂のしたたり
(1966)
4
2008年11月
証券会社の調査員、仲田はある日雪子という女性がある銘柄の株を大量に買い込んだことに興味を持ち調査を開始するのだがやがて仲田の周囲で脅迫めいた出来事が起き始め・・・
田宮二郎の証券サスペンス。
ミステリアスなヒロインは富士真奈美、敵役は成田三樹夫。という顔ぶれでサスペンス映画としての画面は文句なしで証券業界が舞台になっているところが何となくタイムリーでなかなか面白かったです。
田宮二郎は客が買った銘柄情報を元にちゃっかり自分も株を買って一儲けしているようなインサイダー取引ですか?みたいなところもあって正義感から調査を始めるわけではないのですが、だからこそ事件に巻き込まれていくうちに金よりも真相のほうが重要になってしまうところが田宮二郎らしいんですよね。
富士真奈美はも敵側についていてファムファタール的な存在で田宮二郎を翻弄するのですが実は富士真奈美にも秘密があって彼女なりに色々あることが分かってきてサスペンス要素に一役買っています。
成田三樹夫は王道の悪党で、最初の田宮二郎の出会いから睨みをきかせているところがおっかない。田宮二郎のかつての恋人、久保菜穂子も偶然成田三樹夫のクラブの雇われママになっていますが事件の真相が知られそうになるとあっさり殺すところも極悪非道で成田三樹夫らしくてよかったです。
単なる証券がらみのサスペンスかと思いきやいわゆる三国人問題が絡んでいて当時の時代性を感じる作品でもあるのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
田宮二郎
(仲田浩)
巻き込まれることが多い気がするクライヴ・オーウェンで。
富士真奈美
(名和雪子)
魔性系のレベッカ・ローミンで。
成田三樹夫
(桂三郎)
悪役の王道ジョーン・ビーンで。


甘い汗
SWEET SWEAT
(1964)
3
2006年7月
若い頃から愛人生活で家族を養ってきた梅子。娘の竹子も高校に通わせ、梅子は新たに愛人の話が入るのだが・・・
金に貪欲な愛人生活を続けているという京マチ子ならではの役どころでまさにパワフルそのものといった感じなのですが子供がいるのに毎晩朝方に酔っ払って帰ってきては居候先の弟夫婦に迷惑かけてばかりでだらしなさすぎるところが下品でちょっといくらなんでもねぇという感じでした。
おとなしい女を愛人に望んでる男の下にかまととぶって行くけれど本性がばれてあっけなく愛人契約解消とかこれをきっかけに自業自得の出来事がこれでもかと起こっていくわけなんですけど相変わらずめげないです、京マチ子は。こんちくしょう。みたいなところが京マチ子らしかったです。
佐田啓二が昔の恋人として出てきていい仲に戻りつつもやっぱりだまされていたみたいな展開になるのですが、市原悦子が佐田啓二の女でちょっとした女のバトルがあるところがテンション上がります。
チャイ服の市原悦子と京マチ子の殴り合い寸前みたいな戦いはめったに観られません。
そんなダメな母親に育てられたせいか娘の竹子は利発でしっかり者の娘さん。最初気がつかなかったんですが桑野みゆきだったんですね。桑野みゆきといえば不良っぽいイメージが強かったのでびっくりしました。
親友の池内淳子も水商売っ気たっぷりで以前から清楚なイメージがあったのですが結構こういう役が多いんですよね。だけど全然嫌味じゃなくてサバサバしているところがものすごく好感もてました。
そのほかにも母親に沢村貞子やら京マチ子を改心させようとする怪しげな会の女に野村昭子だったり脇役が充実しているのが観ていて楽しかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
京マチ子
(梅子)
何があってもへこたれなさそうなミニー・ドライヴァーで。
池内淳子
(さと子)
主人公の親友にぴったりなジョーン・キューザックで。
桑野みゆき
(竹子)
利発な娘さんという感じのアン・ハサウェイで。


天城越え
(1983)
4
2010年3月
家出をして天城を越えようとした建造はその途中で大塚ハナという娼婦と出会う。やがてハナと別れた建造はハナが土工を殺した疑いで捕まったことを知る・・・
松本清張原作ものですがサスペンスというよりは少年時代の苦い思い出と言う方がしっくり来る感じの作品。
平幹二郎が少年時代のある事件を回顧する形式で話が進んでいくのですが、田中優子が出てくるまでは何人かの行商のひとと山道を歩くだけという感じでちょっと退屈なのですが出てくる人がことごとく豪華で坂上二郎や柄本明に休憩によった茶屋では北林谷栄までもがいます。そのほかにも吉行数子、石橋蓮司に樹木希林も出ているし、平幹二郎の時代では加藤剛まで出ていてこれだけ層が厚いのも珍しいです。
土工殺しは最初から少年時代の平幹二郎が起こしたというのは分かりきっているのですが、偶然であった娼婦の田中裕子と一緒にだびをするうちに芽生えた恋心、トラウマから来る嫉妬なんかが切ないです。
一方取調べをする刑事の渡瀬恒彦を容疑者の田中裕子の攻防が迫力満点でハラハラします。当然犯人ではないから否認する
田中裕子に対してビンタなんて序の口という渡瀬恒彦のやり取りが本当に体を張っていて田中裕子の演技をちゃんと観るのは初めてだと思うのですがすごい女優だなと思いました。何といっても少年に向けるときの優しい表情とは裏腹に警察や世間の冷たい視線を見返すときの手鋭い目つきとか全てが素晴らしかったです。
観終わった時はまぁ普通かなと感じたのですが日が経つに連れてじわじわと良さみたいなのが分かってきた気がします。松本清張さしいトリックと小市民的な動機も健在です。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
渡瀬恒彦
(田島松之丞)
迫力ありそうなベニチオ・デル・トロで。
田中裕子
(大塚ハナ)
勝気で艶っぽい感じのアンジェリーナ・ジョリーで。
平幹二朗
(小野寺建造)
マイケル・ケインあたりにお願いしたい。


海女の戦慄
(1957)
3
2008年11月
ミス海女に選ばれたヨシの妹チエは取材のためにユキとともに上京するが行方不明となってしまい、やがてユキが溺死しているのが発見される。村には風来坊の俊介という男が現われヨシとともに妹の行方を探し始めるのだが・・・
新東宝のセクシーサスペンス。
海女たちがみんな若くて仕事着がレースクイーンも真っ青のハイレグで新東宝らしくお色気たっぷり。
行方不明になった三ツ矢歌子と万里昌代(珍しくあっさり死ぬ)は悪党に沈没した船からお宝を取って来るよう強要される役。三ツ矢歌子は珍しく新東宝仕様のセクシーな海女着で海に潜っております。一方、
姉の前田通子は妹の事を気にかけながら今日も取れ高No.1みたいなセクシー海女なのですが顔がどうしても松井一代にしか見えなくてちょっと困ります。
そして風来坊と称して実は刑事の天城竜太郎は松井一代似の前田通子とともに妹の探しをするのですが天城竜太郎も偽勝新太郎といった趣きで顔がというよりメイクが異常に濃すぎてインパクト大。
悪党はボスがスーツでサングラス手下がアロハシャツのような派手な服装のチンピラという典型的なスタイルで村人たちにも正体を知られずに三ツ矢歌子を無理やり海に潜らせたりなかなかいい線にっているのに肝心なところでミスをするというお約束もありで新東宝作品は見た目のインパクトと分かりやすい展開が一番だと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
前田通子
(宮川ヨシ)
セクシーな海女になれそうなエヴァ・メンデスで。
三ツ矢歌子
(宮川チエ)
アン・ハサウェイのような人が海女をやるような感じ。
天城竜太郎
(波野俊介)
ジェラルド・バトラーあたりにお願いしたい。


海女の化物屋敷
(1959)
3
2006年6月
親友の由美から奇妙な手紙を受け取った恭子は彼女の住む海女の部落へとやってくるのだが由美の周りでは不幸が続いていて・・・
オープニングのスタッフロール?がセクシー系な海女さんたちがポーズを決めていたりするのですがこれ、普通に写真でいいじゃんというところをわざわざ人間が必死に「だるまさんが転んだ」状態でストップしているところがおかしいです。無理目なポージングしている海女さんなんて微妙にプルプルしていましたから・・・
三原葉子が怪奇な出来事の裏に潜む陰謀を暴く2時間サスペンスといった感じの内容なのですがそこは新東宝だけあってこんなセクシーな海女ばっかりいる部落があるか?とか海女同士のケンカなどを要所要所に絡めていてしっかりツボをおさえてあります。
だけど今回はちょっと「海女の化物屋敷」なんてとんでもないタイトルなんで一体どんなぶっ飛んだ内容なのかとワクワクしていたら案外普通のサスペンスだったし、
肝心の三原葉子がなかなかセクシーな格好をしてくれないから新東宝ものとしてはちょっと期待はずれで残念でした。とはいっても最後に捕まった三原葉子はなぜかシミーズ姿(これがものすごく似合う)というらしい格好でようやく新東宝らしくなりましたけど。
そして今回の三原葉子の彼氏はおそらく不遇な時代だった菅原文太。多分ものすごい切れ者の刑事なんでしょうけどピッチピチの海パン履かされて三原葉子とは何かミスマッチ。彼女にはやっぱり吉田輝雄がお似合いだなぁと思うのでした。
あと海女の中に万里昌代がいたのですが、今回は性悪で想像通りの万里昌代って感じがしてよかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三原葉子
(仁木恭子)
むっちりなところがかぶるドリュー・バリモアで。
菅原文太
(野々宮刑事)
真面目すぎて浮いちゃいそうなジェイソン・パトリックで。


あらくれ
(1957)
4
2005年10月
お島は缶詰矢の若主人、鶴さんの後家となるが性格が合わずついには家を出てしまう。やがて旅館の女中となり浜屋の主人と関係を持つが病気療養中の女将が回復し旅館を出なければならなくなる。そして洋服屋で勤めるようになりそこで出会った小野田という男と結婚するのだが・・・
出会う男がは浮気癖や煮え切らなかったりと本当相変わらず高峰秀子は男運がないし人生もついてないという不幸な役がはまっているのですが高峰秀子は決してメソメソなどせずにむしろ逆境に立ち向かって雑草のようにたくましく人生を生き抜いていく様が魅力だなぁと思いました。
最初の旦那の上原謙も相変わらず浮気がばれても開き直るような嫌な役なんですけど高峰秀子と上原謙が取っ組み合いの喧嘩ですよ。原節子じゃこうはいかないなぁと思うとやっぱり原節子も好きだけど高峰秀子の方が好きですね。
二番目の男旅館の旦那、森雅之もこれまた煮え切らなく線の細い感じが相変わらず上手いのですがこちらは浮気をしたわけじゃなく本妻の存在のおかげで両思いなんですけど仕方なく別れなきゃならないので喧嘩はなし。
と上原謙と森雅之とイケメンと付き合ってきたのに最終的に再婚したのが加東大介ですよ。夫婦で洋服屋を開くんですけど高峰秀子が営業して仕事とってきているってのに従業員に仕事はまかせっきりでグウタラしているし、浮気もして何度も取っ組み合いの喧嘩をしてひとしきり喧嘩が落ち着いたら加東大介がさりげなく高峰秀子の手を握って仲直り・・・って展開が最高に笑えます。しかも
浮気相手の家に乗り込んで浮気相手もボコボコにしてあらくれどころか荒くれ者ですよ。
ネタバレ→
最後、結局浮気を繰り返す加東大介に見切りをつけて従業員の仲代達矢をつれて店を飛び出し新たに店をやろうという旅立ちですがすがしく終わるのですがきっとまた仲代達矢に捨てられるかなにかしらして傷つくんだろうけれど、それでもまたたくましく生きていくのだろうと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高峰秀子
(お島)
人生たくましく生きていそうなミニー・ドライヴァーで。
上原謙
(鶴さん)
マット・ディロンあたり浮気をしている若旦那というキャラが似合いそう。
森雅之
(浜屋)
いい人すぎて煮え切らない感じのジョン・キューザックで。
加東大介
(小野田)
ヴィンス・ヴォーンはグウタラしていそうな雰囲気がある。


ある脅迫
INTIMIDATION
(1960)
4
2008年11月
地方銀行で働く滝田は栄転のため東京へ行くことになるが、やくざから過去の横領をゆすられ銀行強盗を強要されてしまう。うだつの上がらない幼なじみの中池が宿直と知り、夜中に滝田は銀行強盗を実行するのだが・・・
金子信雄と西村晃W主演のサスペンス。
60分ちょっとという短い時間ですが面白かったです。金子信雄と西村晃の湯悪どころがふたりにぴったりなところが面白さの勝因だと思います。
金子信雄の自分より立場の低い人間の見下す様はこの頃からすでに確立されていましたし、
西村晃はお人よしで気も弱いのですが独特のねちっこさが出ていて最高です。後半なんて「怪談せむし男」に匹敵するんじゃなかろうかという怖さを出していてまさに怪演という感じがしました。
ネタバレ→
全ては西村晃が仕組んだことなのですが、理由が一度だけ金子信雄に土下座をさせたかっただけでこれまでの恨みを晴らして金子信雄を破滅に導くわけではないところが逆に真綿で首を絞める感じで怖いです。最後もとっとと銀行を辞めて金子信雄の近くにいたほうが色々と都合がいいからとストーカーのように付きまとうラストは完全に西村晃の勝利。
金子信雄は分かりやすいキャラクター、西村晃は何を考えているか分からないキャラクターと色分けが明確になっているところもよかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
金子信雄
(滝田恭助)
最後はギャフンとなる役が多いレイ・リオッタで。
西村晃
(中池又吉)
ジョン・マルコビッチに怪演してもらいたい。


ある殺し屋
(1967)
5
2004年12月
表の顔は飲み屋の主人、裏の顔は凄腕の殺し屋の塩沢はある日無銭飲食をしたはすっぱな女圭子の代金を払ってやったが圭子は塩沢の店に押しかけてきてしまう。一方暴力団から殺しの依頼を受けた塩沢はいとも簡単に依頼をこなし幹部の前田に弟子入りを申し込まれるのだが塩沢に断られてしまう。そんな前田は圭子と手を組み塩沢をにあ仕事の話を持ち込むのだったが・・・
今回の市川雷蔵祭でこの映画が一番の拾い物でした。
暴力団の組長に小池朝雄、幹部に成田三樹夫という設定で気分はすでに70年代の極道物で、これにチンピラ役はおまかせの千波丈太郎も序盤にちょっとだけしか出てこないけどこれだけの面子だけ見ればりっぱなやくざ映画の一つでも作れそうな勢いだし野川由美子は四角いコースターをつぎはぎしたようなもろ昭和テイストなセーターがやけに似合っていて今でいうコギャルのよな雰囲気と金と強い男に目がない強欲な感じが見事でキャスティングが絶妙で面白いです。
そんな中に市川雷蔵?と最初は思ったけど、雷蔵一人だけ違う雰囲気をかもし出すから逆に引き立っていましたよ。何から何までリサーチ済みで全て計算づくの本当雷蔵らしい殺し屋で成田三樹夫が演じた前田というキャラクターはそれとは正反対で大概大雑把だからしょっちゅう叱られて暴力団の幹部なのにしょんぼりするところがちょっとかわいいです。
最後も2億円の麻薬を奪う仕事に成功するけど思ったとおり圭子と前田に裏切られるんですがそこになぜか小池朝雄が現れて「俺に黙ってこんな仕事をするとはふてえ野郎だ。」的なことになり大乱闘。
期待通りに組長なのに命乞いしながらやられていく小池朝雄はある意味つぼを押さえていてくれて偉いです。
雷蔵も裏切られたのにちゃんと麻薬を三人で分ける心の広さといったら出来ることじゃないですよ。その男気に惚れた成田三樹夫が改めて子分に申し出ると「色と欲に目がくらむような奴はダメだ。」的な内容を言われてしまうんですけどそれを今度は一緒についてこようとした野川由美子にそのまんま言って立ち去っちゃうの。本当このラストおかしくって、成田三樹夫ますます好きになりましたよ。
あ、野川由美子に追い出される飲み屋のバイトの娘が小林幸子なんですけどおそらくノーメイクであろうのっぺりとした顔は脳裏に焼きつくインパクトの強さなのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
市川雷蔵
(塩沢)
何事も計算して行動していそうなレイフ・ファインズで。
野川由美子
(圭子)
色気と性悪さが売りのジーナ・ガーションで。
成田三樹夫
(前田)
ちょっとすねたりしょんぼりする役が似合うベン・スティラーで。


ある殺し屋の鍵
(1967)
3
2004年12月
日本舞踊を教えている新田の裏の顔は実は凄腕の殺し屋。そんな新田の元に石野組幹部から政界の秘密を握る男を消す依頼を受け成功するのだったが・・・
名前と職業は違うけど基本的に雷蔵の役どころは同じなんですけど前作に比べると無理があったなぁ。政界の秘密を握る男を消すようにある大物政治家が建設会社の社長の遠藤(西村晃)に4000万円で依頼をする。で遠藤は石野組組長に2000万円で依頼する。で組長は1500万円で幹部に依頼をして幹部がようやく新田に1000万円で依頼をするところはまぁいいし、新田に依頼した石野組が新田を消そうとするのも何となぁく分かる気がするのですがその後がちょっと強引な気がします。新田も石野組に復讐したからそれ以上深追いしなくてもいいような気がするし、石野組に依頼をした大物達も新田を深追いする理由が分からない・・・と
内容の甘さが気になってしまいました。
内容が甘くっても出演者が魅力的だったらまだ面白いんですけど暴力団が今回は魅力的じゃないから前半もイマイチ盛り上がりに欠けた気がします。(前作は小池朝雄に成田三樹夫と暴力団がすばらしく魅力的だった。)
佐藤友美は踊りの教室に通っている生徒で雷蔵に密かに好意を寄せていながらも政界や企業の社長の愛人で生き抜いているという設定だから話にも強引に絡んでくる感があったような気がしました。ラストの彼女の行動はファム・ファタール的でよかったんですけどね。
監督やスタッフが同じで設定も同じなのにどうしたらこんなに内容に差が出るのか観終わった後、不思議でしかたありませんでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
市川雷蔵
(新田)
「ある殺し屋」同様にレイフ・ファインズで。
西村晃
(遠藤)
腹黒い大企業のお偉いさんといえばブルース・グリーンウッドで。
佐藤友美
(秀子)
レベッカ・ローミン=ステイモスにこの役はぴったりだと感じました。


暗黒街の顔役
(1959)
3
2005年5月
金融会社の社長が射殺される事件が起こり事件の目撃者もいたが事件は未解決のままだった。そんな中目撃されてしまった小松峰夫はジャズ喫茶で歌う毎日を過ごしていて。横光組の親分は右腕で兄の竜太に弟の歌を止めさせるよう頼むのだったが、峰夫は歌を止めようとせずライバルの黒崎が峰夫を消しにかかり・・・
一応やくざの抗争ものなんですが実は「トロイ」のように弟の余計な行動によって窮地に追い込まれていく兄・・・のような話でした。
歌手を夢見る宝田明ジャズ喫茶で歌いまくりです。笑っちゃうくらい伸び伸び歌うのはいいけど目の前の定食屋に目撃者の娘が働いている近場で歌うのはまずいんじゃなかろうか?足を洗って堅気になりたかったら街をはなれようよ。とやっぱり
こういうあまりにも自分の夢に一途で悪気がなく迷惑かけちゃうって展開腹が立つんですよね。鶴田浩二いや横光組全体がまったくいい迷惑です。
この腹立たしいエピソード意外はよく出来たやくざ映画で好きです。鶴田浩二は知能派やくざでいざって時にしか暴力は使わないタイプで、一方勝手にライバル視している(親分が鶴田浩二にちょこっとだけ肩入れしていて嫉妬しているところもポイント)田中春男は何でも暴力で解決しようとする完全に極悪非道系のタイプでこの田中春男が宝田明をネタに鶴田浩二を陥れようってところが結局内部抗争的な話に落ち着いちゃうんですが王道の悪役って感じがして好きだし、ネタバレ→
目撃した女の子も消されて(殺されて)しまうところ←なんかも正しいやくざ映画だなぁと感心しました。
これ三船敏郎も出ているのですが脅されてびくついてる町工場のおやじという役どころが切ないです。っていうか三船がやくざごときにしかも下っ端にびくびくしているところなんてえーっと思うのですが最後は逆切れしてやくざをのしてくれるのでホッとしました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
鶴田浩二
(小松竜太)
真面目そうなところがジェイソン・パトリック的で。
宝田明
(小松峰夫)
迷惑かける弟のイメージが定着してしまったオーランド・ブルームで。
河津清三郎
(横光)
和製カルロス・ゴーンといった感じで。
田中春男
(黒崎)
素も凶悪そうなトム・サイズモアで。


暗黒街の対決
(1960)
4
2005年5月
大岡組と小塚組が争う荒神市に東京から汚職で左遷された藤丘刑事がやってきた。破天荒な藤丘はかつて小塚組の幹部だった村山に近づくが二人は大岡組に突然襲われる・・・
「暗黒街の顔役」ととつながりがあるのかなぁと思ったら全くの別物。雰囲気だけ同じなんですね。個人的にはこっちの方が断然好みです。鶴田浩二は足こそ洗ったものの真面目な任侠道精神を持つ相変わらずな役どころですが、三船敏郎がようやくイカシタ刑事役でこれを待っていましたという感じでホッとしました。「暗黒街の顔役」じゃやくざに嫌なことを命令されて「嫌だ!嫌だ!」と駄々をこねる町工場のおやじというトホホな役でしたから。
そんな二人が手を組んで大岡組を追い詰めるのですがこの組長が前作同様河津清三郎でその手下の殺し屋達の中に
天本英世がいたのですがウディ・アレン並に見た目が変わらないしこの人ちょっと怪奇系の顔立ちだから恐かったです。しかも歌を歌うんですよ。バックコーラスなんですけど確か月を消しちゃう歌で、囁くように「消しちゃうぞ。」って歌うから殺し屋というより呪術師みたいでした。
司葉子も出ていて彼女はキャバレーのNo.1という役どころが初めてスクリーンで見たのですがお嬢さんというイメージがあったのですごく意外でした。しかも司葉子意味ありげに大岡組のことをいろいろ嗅ぎまわって盗聴までしているからもしかしておとり捜査官なのか?と思ったらそうじゃなくて別の理由があるところなどはいい意味で裏切られました。
三船敏郎がネタバレ→
暴力団を撲滅させるべきやってきた秘密刑事だったという設定や←最後の撃ち合いのなかにも遊び心や三船&鶴田の男の友情と娯楽の要素盛りだくさんで刑事&やくざというジャンルでは正しい形だなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三船敏郎
(藤丘三郎)
破天荒なイメージのラッセル・クロウで。
鶴田浩二
(村山鉄雄)
エリック・バナはやくざな役をやってもいい人そうです。
司葉子
(サリー)
けっこうはすっぱな役もできるマリア・ベロで。
河津清三郎
(大岡久三郎)
ジョン・ボイドは面構えがすでに悪そうで。


暗黒街の弾痕
(1961)
5
2005年5月
テストドライバーの兄の死を不審に思った弟の草鹿次郎は親友でトップ屋の須藤と真相を調べるうちに産業スパイとして情報を売買する暴力団の存在にいきつくのだが・・・
一連の暗黒街シリーズ(「顔役暁に死す」含む)の中で
内容が「黒の試走車」的な産業スパイの要素にやくざが絡んでしてもろにツボという感じで一番好きです。
今回はというより相変わらず中丸忠雄が悪役でそれに立ち向かうのが加山雄三、佐藤允というお馴染みの面子に岡本喜八作品にかなりの確立で脇役で出てくるミッキー・カーチスが今回ちゃんとした仲間として扱われているのが珍しかったしあんなヒョロっとしているのに捕まった佐藤允をなんだかんだいって救出しちゃうしでいい仕事しているもので感心しました。
ヒョロっとしているといえば喜八作品じゃ悪役でお馴染みの天本英世。いつも雇われ殺し屋のリーダー的存在で卑怯な手で追い詰めるところまでは順調なんですけど虚弱体質っぽいから最終的に接近戦とかに持ち込まれると弱いからついつい怯んでしまってやられるってパターンが分かりやすくて好きです。
エンジンの設計図を中丸忠雄が狙いそれを守ろうとするのが中谷一郎なんですけど、最後ネタバレ→
設計図は最初っから事務所中に張りめぐらされていた←というオチがどこかで観たようなデジャヴ感に襲われてすごく気になったのですが中谷一郎の行動が痛快でした。
「顔役暁に死す」でも後妻を演じていて今回もナイトクラブの怪しげな歌手で全てを計画していたファムファタール的存在の島崎雪子にウットリしました。
トップ屋って何だろうと思って調べたらスクープ記事を探り出す人だそうでまた一つ勉強になりました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
加山雄三
(草鹿次郎)
マシュー・マコノヒーとかこのキャラの正義感に合うような気がして。
佐藤允
(須藤健)
荒っぽいところがコリン・ファレルっぽくて。
ミッキー・カーチス
(三木)
ジョバンニ・リビシあたりにコミカルにやってほしい。


安城家の舞踏会
THE BALL AT THE ANJO HOUSE
(1947)
4
2006年5月
戦後、新憲法により次々と華族が没落していく中、安城家も明日にでも屋敷を明け渡さなければならない状態で最期の思い出に盛大な舞踏会を開くのだったが・・・
華族の最期を描いた大作だったんですが内容が現実離れしすぎていて昼ドラのようでなんだか楽しかったです。
全てがなくなりこれから働いたこともないのにどうやって生きていくか心配しなくてはいけないのに安城家の人々は過去の栄光にすがりつき、代々受け継いできた屋敷が他人の手に渡ることばかり気にしている中、次女の原節子だけが現実を見据えて少しでも屋敷を高く買ってくれる人を探したりして手際のよさを発揮するのですが「ごきげんよう」だの「ごめんあそばせ」というのが令嬢だけあっていちいち何かにつけてこの言葉を挿んでくるのが面白い。原節子だけあってこういう役の似合うこと。そして全てを見透かしているようでなんだかちょっと怖いところも原節子らしくてよかったです。
長女の逢初夢子はプライドが高くて元運転手が仕事で成功して屋敷を買い取ってくれるというのに「元運転手なんかに買ってもらいたくない。」だの「華族は滅びても貴族の心は失わない。」みたいなメロドラマちっくな台詞をバンバン言うところも楽しいです。
そして森雅之も相変わらずニヒルな感じで屋敷がなくなるのに女中に手を出したりするところはいかにも森雅之らしくて関心しますが、さりげなく父親を裏切った男の娘(一応婚約者)を辱めて殴られる時なんて
みんなの前で往復ビンタ。しかもこのビンタ本気で入っているにも関わらず殴られ終わった後に高笑いしてピアノを演奏する森雅之ときたらカッコよすぎます。
この映画、いやらしい人間関係がなかなか面白かったので前編後編と分けてもうちょっと長く観ていたかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
原節子
(安城敦子)
全てを見透かしていそうなケイト・ブランシェットで。
滝沢修
(安城忠彦)
同情したくなっちゃう顔のイアン・ホルムで。
逢初夢子
(安城昭子)
貴族とか華族にぴったりなクリスティン・スコット=トーマスで。
森雅之
(安城正彦)
冷たい感じのするレイフ・ファインズで。


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