日本映画

い


ICHI
(2008)
2
2008年11月
仲間に見放された盲目の女芸人の市は道中、十馬という男と知り合い、白河組の宿場町にたどり着くがそこは万鬼と呼ばれる男が荒していて・・・
綾瀬はるかが女座頭市に挑戦。
素材というかビジュアルがいいと思ったのですが内容がもうひとつどころかもうふたつ位でものすごくもったいなかったです。
勝新太郎版の「座頭市」シリーズ全26作+北野武版も観ていていますが決定的に悪かったのは話だったと思います。座頭市というば道中偶然立ち寄った宿場町で悪党に苦しめられている庶民をいざこざに巻き込まれた市が結果的に悪党を成敗して旅立つみたいな内容なのですが、今回は師匠を捜す旅の道中で情報を知っている悪党の中村獅童ところに殴りこみに行く形になっています。
賭場も出てくるのですがお約束のいかさまを市が暴くというシーンがないのもちょっと・・・という感じです。
その辺はいいとしても、色々出てくる豪華な俳優たちのエピソードにつながりがないところが一番の問題だなと思いました。結局、宿場町の人もそんなに困っている感じもしなかったし・・・座頭市はストイックなイメージがあるので例えば綾瀬はるかに師匠がいたとして思い出があったとしても、大沢たかおがトラウマで剣を抜くことが出来ない理由が何であれあったとしてもそれを回想して映像化しないほうがいいんですよね。
三男優も大沢たかおは変に三枚目でキャラクターに合っていない様な感じがしましたし、中村獅童も舞台じゃないんだからもっとナチュラルに演技して欲しい感じ。窪塚洋介にいたっては時代劇に向いていなし、宿場町を治めている二代目というよりその辺にいる荒くれ者という感じで、どちらかというとさりげなく出ている加山雄三の息子、山下徹大の方が落ち着きがあってよっぽど二代目に見えました。
と散々な結果になりそうなところ綾瀬はるかだけが一人頑張っていた感じでかろうじて★2つです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
綾瀬はるか
(市)
「アイズ」の盲目つながりのジェシカ・アルバで。
大沢たかお
(十馬)
真面目そうなエリック・バナで。
中村獅童
(万鬼)
笑った顔もちょっと怖いトム・サイズモアで。
窪塚洋介
(虎次)
二代目という肩書きが似合いそうなクリスチャン・ベールで。


黄線地帯(イエローライン)
(1960)
4
2005年11月
殺し屋の衆木は依頼を受け神戸の税関長を殺すが、依頼人の阿川にハメられ警察に密告されてしまう。警察に追いつめられて衆木は踊り子の小月ルミを誘拐し神戸に乗り込む。彼女の恋人で新聞記者の、真山俊夫も国際売春祖機器と関係あるとかぎつけルミを探しに神戸に向かうのだが・・・
石井輝男監督の一連の「地帯」シリーズの一本なんですが唯一のカラー作品。一応主役は吉田輝雄ってことになっているけど実質的には殺し屋の天知茂がの方が活躍していて天知茂を主役と言いたい。
もちろん売春組織がテーマですが神戸という土地柄か国際的です。今回は白人達が日本人女性を買うということで黄色地帯というそうなんです、途中悪党のボスに捨てられた娼婦が出てきてこれが白人の女の人を黒塗りして黒人に見立てて「肌が黒いから嫌なんですか・・・」みたいな台詞言わせて石井輝男節炸裂だなぁと妙なところで感心しまいます。三原葉子が助けてくださいと書いたお札がめぐりめぐって吉田輝雄の手に渡るところとかほとんどギャグで笑えるし。
三原葉子も最初は連れ去られる時にわざと靴を落としたり札に助けを書いたりと度胸のいいことしているけど天知茂の可哀想な生い立ちとかを知っていくうちにうっすら恋心?みたいな度胸もあるが人情もあるみたいなところが魅力的です。
それはそうと
天知茂が逃げ込むガスパ的なアングラ感漂う街のセットのすばらしいこと。石井輝男という人はあの成瀬巳喜男組出身なんですけど成瀬巳喜男はセットにすっごくこだわったらしいということで作風は全然違うけれどこういうセットの本格さは成瀬巳喜男精神を確実に受け継いだんだろうなと思いました。
最後ネタバレ→
せっかく売春組織を壊滅させた天知茂は犬死にして吉田輝雄が一人いいとこ取りみたいな終わり方が天知茂好きの自分にとってはちょっと納得できなかったのでした。理想は追いつめられつつも一人逃げ延びもちろん吉田輝夫と三原葉子も無事だったら文句なかったのになぁ・・・
ハリウッドバージョンはこの人で!!
吉田輝雄
(真山俊夫)
「地帯」シリーズの吉田輝雄の役はなぜか腕っ節も強いしちょっといい男って設定が多いクライヴ・オーウェンを定番にしたい。
天知茂
(衆木一広)
「地帯」シリーズの天知茂の役はショーン・ビーンを定番にしたい。
三原葉子
(小月エミ)
「地帯」シリーズの三原葉子の役はむっちり系のドリュー・バリモアを定番にしたい。


生きる
LIVING
(1952)
4
2005年4月
市役所の市民課の係長の渡辺は職場で波風立てず30年間無遅刻無欠勤で過ごしてきたが、自分が末期がんと知り市民のために周囲の反対を押し切り公園を建設しようと立ち上がり・・・
志村喬演じるところの渡辺というキャラクターは家族にすら言いたいことも言えず、いや言いたいのだけれどその一言が言えないような人間で友達やこれといった趣味もない人間なのではっきり言って観ていてイライラするのですが、自分もそうなんですが会社への帰属意識が薄いのでこの余命いくばくもない渡辺のように日々の仕事をただ単調にこなしている毎日を振り返った時に「今まで一体何をしてきたのだろう。」と思い公園建設を成し遂げようとする姿はすごくわかります。
自分の死期が迫っているのを知っているから同じ建設場所に飲食街を作ろうとしているやくざに脅されたって一歩も引かない。むしろその姿勢でやくざのボスに無言の圧力をかけて逆にやくざを引かせるところはスッとします。
最後の最後まで渡辺という男は声を荒げてガツガツと行動することはないのですが使命感のようなものはひしひしと伝わってきて、
この映画観終わったらもうちょっと仕事に気合いをいれてやらなくちゃいけないと思いました。
最後は無事公園が出来たのを見届けて渡辺は死んで終わるのかと思ったらそこから葬式のシーンで市役所の職員達が渡辺について回想し始めるのでびっくりします。公園が完成したのは係長のおかげだとか係長は他の課の迷惑を顧みず強引に計画を進めて行っただの親族の目の前でしかもそっちのけで討論しあう主人公抜きで展開してしかも今までのことが台無しにならないあたりは黒澤監督らしいなぁと感心するのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
志村喬
(渡辺勘治)
なんでもトム・ハンクスでリメイクとの噂が・・・


異常性愛記録 ハレンチ
(1969)
3
2010年9月
吉岡と将来を決めたい典子だったが、典子には執拗なフリン相手の深畑という男がいた。深畑は四六時中典子に付きまとい、ついに逃典子は深畑からげ出したのだが・・・
今まで観てきた石井輝男作品史上もっとも変態な映画。(ポルノじゃありません)
色々な変態が出てくるオムニバスかと思いきやこの時代にストーカーと変態を合わせ技で見せる斬新な内容でした。
オープニングから若杉英二がギラギラしていてこれは引くと思っていたら変態行動がエスカレートしてもう笑うしかありません。佐野史郎が「ずっとあなたが好きだった」でやった冬彦さんや「誰にも言えない」の麻里夫さん並のインパクトです。橘ますみを見つけては「愛してるんだよ〜ん」トイレに入っては「してるところ見てて。」とか逆に橘ますみがトイレに入っていたら「してるところ見たい。」って観ているこっちが頭がおかしくなりそうです。
そして一日に二回は抱いていると思うのですが、無理やり抱くので毎回服を引き裂かれて洋服代がと変な心配をしてしまいました。
当然のように妊娠してしまう橘ますみにいきなりそっけなくなる若杉英二。しかたなく子供を堕ろしている間に今度は東京ゲイボーイズとSMプレイと意味不明。ハイヒールに酒を注がれて飲んでますから、この人ここまで来ると何でもありです。
と、散々な目に遭っても何故か別れられない橘ますみですが、まともな恋人、吉田輝雄がいるんです。朝焼けのまぶしい道路の真ん中で熱いキスを交わしたりなんかもしてますが。そんな吉田輝雄と最終決戦するクライマックスは爆笑必至。
この変態度満点の映画色々な人に観て欲しいなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若杉英二
(深畑)
レイ・リオッタがやったら面白いと思います。
橘ますみ
(典子)
チャン・ツィイーに似ているような気がしました。
吉田輝雄
(吉岡)
ポール・ベタニーあたりにお願いしたい。


江戸の名物男 一心太助
シリーズ第1作
(1958)
5
2004年11月
徳川家光の行列を乱した子供をかばった一心太助は御意見番の大久保彦左衛門の目に留まり、気に入られた一心太助は彼の元で「日本一の男になる」夢を実現すべく働き始めるのだった・・・
中村錦之助が得意の一人二役を演じた江戸っ子人情時代劇。人が死なない時代劇もいいものです。ということでこの映画には悪人が出てこないのが珍しいですね。家光を子供の頃から面倒見てきた御意見番の彦左衛門も何かと幕府のやり方に口をだして役人達に煙たがられはするものの彼を陥れようとしたりする人間が出てこないので純粋に一心太助という気持ちのよいまでにまっすぐな人間が江戸でそれこそタイトル通りの名物男になっていく様子を楽しめたのがよかったです。
屋敷で新米のいなかっぺの腰元お仲が家宝の皿を割ってしまいお仲が斬られそうになると太助は残った皿を全て割って、これで俺だけ斬られれば他に斬られる奴はいない。と彦左衛門にまくしたてて彦左衛門ばかりではなく屋敷の者に感心されるあたりは観ていて気持ちがいいし、お仲も太助に惚れて訛りをがんばって直そうとするんだけど興奮すると訛りが出るあたりも楽しいです。
これがきっかけで屋敷中の女に惚れられた太助は屋敷をでて魚屋を始めるのですが新参者の太助は魚河岸の連中に相手にされずしまいには一対何十人の大喧嘩。それを喧嘩両成敗として仲裁に入った彦左衛門のおかげで太助はたちまち魚河岸で一目置かれる存在になったりするあたりは自分の中で眠っていた江戸っ子魂が目覚めたような気がします。
終盤、太助の策に乗せられていささかやりすぎた彦左衛門は家光に叱られてしまい、家光の成長を喜ぶと同時に自分の時代は終わったと感じて寝込んでしまうのですが家光に見舞いに来てもらおうと太助は無謀にも直訴しにいくんですよね。家光に。それで家光も彦左衛門を父親のように慕っているから参勤交代ばりの行列で屋敷に見舞いに来ちゃうんですが本当えー話だなぁと思うと同時にさわやかな感動の嵐ですよ。
ずーっとこの世界に浸っていたいと思う映画がごくまれにあるんですが一心太助の世界はまさにそれで3時間でも4時間でも観続けられる楽しさがあるのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
中村錦之助
(一心太助/徳川家光)
ベン・アフレックは殿様は似合わないけど魚屋の兄ちゃんはめちゃくちゃ似合いそうで。
月形龍之介
(大久保彦左衛門)
若者を見守る役はモーガン・フリーマンにおまかせ。
中原ひとみ
(お仲)
リース・ウィザースプーンはいなかっぺもいけそうで。


一心太助 天下の一大事
シリーズ第2作
(1958)
5
2004年11月
恋人おとよを奪われたと落ち込んでいる幸吉という男と知り合った太助はそのことがきっかけとなり大久保彦左衛門の所有する空地召し上げの陰謀に巻き込まれるシリーズ2作目。
白黒も味があってよかった1作目と変わってカラーになった続編は見た目ににも鮮やかで笑いあり涙ありの痛快娯楽作品で楽しかったなぁ。
幸吉の話をろくに聞きもしないで彦左衛門が奪ったと勘違いして屋敷に乗り込む勘違いっぷりの序盤から太助らしい早とちりで笑いをとり、仕方なく幸吉を男にするため自分の家に住まわせる江戸っ子なところが観ていて相変わらず気持ちがよかったし、太助の近所に越してきた男勝りな良恵という女が太助にほれて恋人となったお仲のライバルになるあたりも楽しいです。
幸吉というキャラクターも年中奪われた恋人のことばっかり考えては落ち込む日々の中、魚屋になって太助を兄貴と慕ったり一人で恋人おとよのいる屋敷に忍び込んだり人間的に強くなっていくところも微笑ましかったな。
後半、川勝丹波守の策にはまって空き地を取り上げられることになった彦左衛門は家光の命令ならばと黙って受け入れ、家光も彦左衛門を気遣って生涯わがままを許すという条件付きで命令を下すけど、太助は黙っていられず川勝の妨害をして彦左衛門に叱られついに出入りを禁止されてしまう始末。親心で出入りを禁じた彦左衛門と親を思う気持ちで行動を起こした太助の心のすれ違いが泣かせます。
普段は彦左衛門を煙たく思っている家光の側近松平伊豆守も川勝の悪事を知って太助のピンチを知りながら迷っている彦左衛門に「これこそ天下の一大事ですぞ。」と言って二人を何気なく仲裁するところも泣けたし、太助と彦左衛門が抱き合うところなんて親子じゃないけど本物以上のと父と子の関係を垣間見てこういった人情話っていいなと思うのです。
最後は魚河岸連中VS木場の連中での決闘なんですけど乱闘の前にみこしで戦うってところが江戸っ子ぽくて粋だなぁなんて思いました。しかも
太助の着ているはっぴが魚屋らしく伊勢海老のぱっぴ。これが背中に巨大な伊勢海老が張り付いたようなデザインでとても斬新でかっこよかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
田中春男
(幸吉)
ちょっと情けない役はデヴィッド・アークエット向きで。
丘さとみ
(良恵)
ジェニファー・ガーナーは町娘みたいな素朴な役が合いそうで。
山形勲
(松平伊豆守)
ショーン・ビーンは悪役が多いけど実際は絶対言い人だと思う。


一心太助 男の中の男一匹
シリーズ第3作
(1959)
5
2005年1月
お仲との婚礼の日を迎えた太助だったが当日も大乱闘をする始末。無事婚礼を済ますも太助の家には居候するものが次々と増えて新婚生活どころではない。そんなある日魚河岸を乗っ取ろうとするものが現れて・・・
新婚当日から彦左衛門の用人の隠し子二人が転がり込んだと思ったら今度はお仲の友達二人が転がり込んできて新婚生活どころじゃないと普通なら可哀想だと思うけど錦之助と中原ひとみのコミカルなコンビだから単純に楽しいし新婚なのに困った者は見捨ててはおけないとしかたなく居候を許しちゃう江戸っ子精神がいいです。
と前半は彦左衛門が奉行らしくない振る舞いをしている奉行に喝を入れたりいつもながらの展開を楽しめるのですが、後半ネタバレ→
太助にも家光にも父親的存在だった天下のご意見番大久保彦左衛門が病気で急死しちゃうんですよね。←当然このエピソードは当然泣けるのですがそれ以前に家光が彦左衛門に長生きしてもらいくて狩に誘わなかったり「じいや、じいや。いつまでも生きていて欲しいのじゃ。」とつぶやくシーンは心底彦左衛門のことを思っているところが伝わってくるし、彦左衛門も太助が遠くから一人前の男になったのを見届けて静かに帰っていく後姿などお互いがお互いを大切だということが感じられてさわやかに泣けてきます。
ネタバレ→
彦左衛門亡き後←あくどい奉行と商人が手を組み魚河岸を乗っ取ろうとする(魚河岸の取締の松前屋五郎兵衛を陥れる)けど太助一人の力じゃどうにもならないところを助けるのが山形勲が演じるところの松平伊豆守。シリーズ当初は彦左衛門を煙たがっていたけどいつの間にか彦左衛門の精神を受け継ぎしっかりお裁きをするところなんて見直しましたよ。
何でも一生懸命に物事を解決しようとする太助を見ていると明日はがんばろうという気にさせてくれるこの一心太助シリーズは何度でも観て景気付けしたくなる素敵なシリーズだと思います。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
大河内傳次郎
(松前屋五郎兵衛)
この魚河岸の取締、実は殿様だったという設定。ここのところなんでもやってくれるアンディ・ラウにお願いしたい。


家光と彦左と一心太助
シリーズ第4作
(1961)
5
2006年1月
次期将軍家光が毒殺されそうになり、大久保彦左衛門忠教は瓜二つの家光と一心太助を入れ替えることにするのだが・・・
新年一発目の邦画はやっぱり中村錦之助作品がめでたいということで内容もハッピーな一心太助シリーズを鑑賞。シリーズ四作目でキャストが一新されているし彦左衛門が家光の幼少時代を回想したりで江戸っ子の太助が出てくるまで結構時間がかかったりしてあれ?と思ったのですけど最終的にはこれぞ一心太助という感じで満足しました。
今回は太助と家光が入れ替わるということで当然、いつもの太助や家光と違うぞって感じでお仲は家光を太助だと思っているから頭がおかしくなったと思い元に戻るようにとミミズの黒焼き飲ませたり、寝言で知らない女の名前を言ったときはすりこぎで頭を殴ったりでてんやわんやの大騒ぎで楽しいです。
太助の方も家光になりすましたのはいいけど喧嘩もできないで退屈だし、病床の徳川秀忠に代わって執務をこなすことになるけど字が読めないからばれそうになるはおまけに命は狙われるはで散々な状態だったりもするけどこれがまた滑稽で楽しいです。
太助は家光の弟、忠長が怪しいとにらんでものすごく冷たい態度をとっていたけど最終的に忠長は家光のことを守ろうとしていたことを知って太助は感動のあまり大号泣。この太助いや
中村錦之助の人情味溢れる泣きっぷりが一心太助の魅力のひとつですけど今回は弟、忠長が本当の弟、中村賀津雄ってところが感動を倍増させます。
中村錦之助の正反対の一人二役にも感心するのですが兄弟で号泣しあえるところにも感心してこ錦之助、賀津雄兄弟は個人的に伝説の兄弟なのであります。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
中村賀津雄
(徳川忠長)
人のよさそうなマット・デイモンで。


一寸法師
(1955)
3
2009年9月
作家の小林章三はある晩、小人を見かけ気になり後を追うのだが逃げるように走り去る小人が人間の腕を落とすところを見てしまう。別の日ファッションショーで使われていたマネキンの腕が人間のものであると分かり現場から逃げる小人は以前見かけた男で・・・
江戸川乱歩の原作を新東宝が映画化。
新東宝らしい怪しい雰囲気全開で実際一寸法師役の和久井勉も同じ新東宝の「女吸血鬼」なんかに出ています。登場人物とか事件のトリックなんかは完全に探偵小説風で明智小五郎とかシャーロック・ホームズが好きな人は好きなのではないでしょうか。
小人がマダムに一方的に片思い。金持ちの娘の失踪。探偵が次々を明かしていく真実とか面白そうな要素が盛りだくさんで実際話もよく出来ているなと思うのですが、
探偵の助手ではないのですがそんな存在の宇津井健がとにかく色々から回りしすぎててうっとうしいです。実は宇津井健もマダムのことが好きで小人に敵意むき出し。そしてあまりに敵対心を出しすぎるものだから先生に叱られます。
宇津井健はどちらかと言うと真っ直ぐだけどまだまだ青いというイメージだったのですが、今回はそれが行き過ぎていてしかも小人だからといちいち差別してらしくなかったです。
あと、新東宝ということで、無意味に研究員みたいな役どころでほとんど台詞のない天知茂とか、妙にギラついている丹波哲郎とかちょっとだけ出てくる大物が気になって仕方がないのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
和久井勉
(一寸法師)
ミニ・ミーのヴァーン・J・トロイヤーで。
二本柳寛
(旗龍作)
シャーロック・ホームズをやるロバート・ダウニー・Jrで。
宇津井健
(小林章三)
エイドリアン・ブロディあたりにやってもらいたい。


いとはん物語
(1957)
4
2008年10月
大阪の老舗の奥義や扇屋の三姉妹の長女だけは妹たちと違い醜い容姿をしていた。ある日、お嘉津がからかわれていたところ番頭の友七に助けられたちまち友七のことが好きになってしまい母親は結婚話を進めるのだが友七にはお八重という心に決めた相手がいて・・・
「ブスの瞳に恋してる」シリアスバージョン?
京マチ子の特殊メイクのブサイク面がとにかくすごい。おかめで出っ歯という見た目は最初、京マチ子ということに全く気がつきませんでした。ここまでやるとは京マチ子底力のすござというか見直しました。
「いとはん」というのは関西地方でお嬢さんという意味ですがそんなブサイクなお嬢さん京マチ子は金持ちの娘さんですが性格がものすごくいいところがまた健気なところがまた切ないんです。
鶴田浩二も見た目のことは関係なく京マチ子に接するからそりゃ当然恋しちゃうというのは分かるのですが京マチ子の母親の東山千栄子はそのことを知って鶴田浩二の兄の加東大介に結婚話を持ちかけてお互いいいこと尽くめなので鶴田浩二が知らない間にどんどん話が進んでいってしまうところが厄介です。
そんな鶴田浩二の相手が下働きの小野道子というところがまた地味なところもポイントなのですが小野道子もいい人で、本当に愛してくれていると知っているから裕福で性格のいい京マチ子のところに婿に行ってください。なんて言うんですよ。
悪い人が出てこないのにこんなにも苦しい展開の映画も珍しいし、ラスト鶴田浩二がネタバレ→
京マチ子をふって小野道子を選ぶというところも意外で←ものすごく印象に残る作品なのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
鶴田浩二
(友七)
ジョニー・デップの普通の好青年役を観てみたい。
京マチ子
(お嘉津)
ジェニファー・コネリーにブサイクメイクをお願いしたい。
小野道子
(お八重)
下働きしていそうな役が似合いそうなマギー・ギレンホールで。


稲妻
LIGHTNING
(1952)
4
2008年7月
バスガイドの清子は4人兄姉の末っ子である日、次女の夫が浮気をしている現場を目撃する。それと同時に長女が縁談話を持ってくるのだが乗り気になれなれず・・・
林芙美子原作のドロドロしたドラマ。
4人兄姉がそれぞれ父親が違うという設定からして目が離せませんが、出てくる人物がそれぞれ色々なことに欲深くてドロドロせずにはいられませんという展開が林芙美子らしいイジワルなところがいいですね。
いきなり二番目のお姉さんの旦那が急死するのですが保険金を姉と兄が狙っていると思いきや母親までも私だって少しは都合つけてもらいたいよ。とかいって末っ子の高峰秀子意外はなんだか人の不幸によってたかってすごいなぁという展開が序盤から繰り広げられていきます。二番目のお姉さんはまともなんですがいかせん、気が弱いものだから強欲な家族に攻められてとても可哀想です。そうこうしているうちに死んだ旦那の愛人が赤ん坊をおぶってきて、いくらか保険金をくださいなんていうんですよね。終いにお金をもらえなくなりそうになったら逆切れして、出るとこ出てもいいんですよ。なんていうから二番目のお姉さんは不憫です。(と感じ悪い愛人役が中北千枝子というところもいつもと違う役なので新鮮でした。)そして内気な姉の代わりに愛人にズバッとものを言うシーンはごもっともで爽快でした。
高峰秀子も災難で無理やり結婚話を持ちかけられるのですがその相手が小沢栄太郎ですよ。金回りがいいのだけが取り柄で高峰秀子が結婚すればぐうたらして無職の兄も仕事がもらえて姉も金回りのよさを利用しようとして打算ばかりで誰一人として高峰秀子の幸せを考えていないところが世知辛いです。
小沢栄太郎は表情からしていやらしいですが姉と堂々と浮気をしておきながら高峰秀子に迫る図々しさはあっぱれです。
とうとうこんな家族に耐えられなくなったので家を出て一人暮らしを初めて隣の仲の良い兄妹(根上淳と香川京子)と親しくなってささやかな幸せを感じることができるところがすがすがしくてよかったです。
母親役の浦辺粂子もすばらしく高峰秀子に産んでくれなんてなんて頼んでないなんて言われてさすがに涙するのですが、「一番いい子だと思っていたのに、一番悪い子だよ。親を泣かせて。」みたいなことを言って二人は仲直りするシーンもグッときます。
林芙美子原作ものを何本か観ていますが逆境に立ち向かうヒロインはやはり高峰秀子が一番だなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高峰秀子
(小森清子)
林芙美子作品にぴったりな感じのするエレン・ペイジで。


犬神家の一族
(2006)
2
2006年12月
信州の犬神財閥の遺言状が恐ろしい事件を起こすに違いないと弁護士の助手は探偵の金田一耕助に調査を依頼するのだが・・・
市川崑監督が自身の作品を30年ぶりにリメイクしたという不思議な企画。この冬、日本映画が豊作の中、評判がイマイチでこけっちゃっているみたいなので期待はしていなかったのですが珍品でした。
金田一シリーズは断片的には何となく観たことはあってちゃんと観たのはこれが初めて。「犬神家の一族」はテレビでやった稲垣吾郎版をちょっと観たことがあるのでオチは知っていたし話も面白いんだろうけど俳優達が微妙でした。
次々と人が殺されて狂ったり悲鳴を上げたりするシーンの連続なのですがみんな狂った演技と悲鳴がなっていなかったです。石坂浩二も菊人形のシーンでの絶叫あれでいいの?と思ってしまいました。
そんな中、唯一悲鳴と狂った演技がまともだったなぁと思ったのがさすが「呪怨」でならしただけのことはある奥菜恵。狂った松坂慶子に吹っ飛ばされてふすまをぶち破るところは唯一リアルでみんなこれくらいのレベルで発狂してもらうとよかったと思うのですが・・・
そのほかにも尾上菊之助がドーラン塗りすぎとか死体の作りが安っぽいとかいろいろあったのですが個人的には話の中心とならなくてはならない石坂浩二と松嶋菜々子に求心力がなかったところでしょうか。
それにしても松坂慶子、寿司のドカ食いやら仮面から肉がはみ出ているとか肩幅がっちりしすぎているとか・・・とにかく松坂慶子が色んな意味で強烈でした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
石坂浩二
(金田一耕助)
フケが似合ってしまいそうなクライヴ・オーウェンで。
松嶋菜々子
(野々宮珠世)
華奢なイメージのウィノナ・ライダーにやってもらいたい。
尾上菊之助
(犬神佐清)
いい人なんだけどどこか陰のあるエリック・バナで。
富司純子
(犬神松子)
貫禄あるヴァネッサ・レッドグレーヴで。


宿無し犬
シリーズ第1作
(1964)
4
2004年4月
鴨井大介が母の墓参りに高松に来てみるとそこはゴルフ場になっていた。宿に帰った鴨井はやくざに囲まれた一人の美女、麻子を助けるがやくざを蹴散らしたときには麻子の姿はもう見あたらなかった・・・
「犬」シリーズ第一作目。
一言で表現するなら「悪名」シリーズのモートルの貞や清次がそのまま単独でスクリーンに飛び出したって感じでしょうか。「悪名」シリーズじゃ田宮二郎の方が断然好きなのでこの「犬」シリーズは当然のごとく個人的に大ヒット。
女は好きだけど銃はそれ以上に好きって微妙に設定が違うけど基本的には清次と同じようなキャラクターだから安心して楽しめます。
執拗に鴨井を追い続けるもどこかユーモラスな刑事役の天知茂がいい味出していていたけど、座頭市シリーズの記念すべき第一作目でスマートな浪人だったけどこんなくたびれた感じはなかったよなぁと思いつつ演技の幅広さに感心するのでした。
江波杏子も得意の?クールな都会の女(最初は主人公に目もくれないけど、最後は惚れる)役がこれまた見ていて安心なのです。こうしてみると改めて1960年代って映画スターってものがちゃんといて日本映画の黄金期だったよなぁと思うのです。
この映画の最後、鴨井とやくざ達との撃ち合いになるんですけど当然一人勝ちするわけなんですけど、天知茂がついに追い詰めるけど言い訳を言わず素直に捕まるところが斬新なのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
田宮二郎
(鴨井大介)
コミカルなところも見てみたいジュード・ロウで。
天知茂
(木村準太)
くたびれた刑事役がよく似合うゲイリー・オールドマンで。
江波杏子
(唐沢麻子)
クールなイメージのユマ・サーマンあたりで。


喧嘩犬
シリーズ第2作
(1964)
4
2004年4月
刑務所での暮らしもそれなりに謳歌している鴨井大介は小吉という男にすっかり惚れこまれる。出所した鴨井は先に出所した小吉を訪ねるが、佐々木という新聞記者にしつこく暴力団について質問されていた。小吉の妻、町子が暴力団にとられてしまったと知った鴨井は天地組に乗り込むがあっさり町子を返してもらいうが刑務所での腕を知る天地組の親分の小森は工事現場の監督をするように頼んできて・・・
「犬」シリーズ第二段。前作の最後で逮捕されたからオープニングは刑務所の中ってところがちゃんとあるのがいい。
刑務所で小突かれるる小吉、あぁどこにでもいるんだねこういう出川のようないじられキャラ。だけど鴨井はそんな小吉を馬鹿にすることなく逆にかばってやったりもする。だから鴨井は全ての人たちに人望が厚いさわやかチンピラなんですよね。
そんな小吉を訪ねた鴨井がいざこざに巻き込まれるんですけど、ここで出会うヒロインが天地組のボスの情婦のゆかりなんですけど、やっぱり田宮二郎には都会のクールな女っていうか素っ気ない感じの女がよく似合う。相手にされないところをめげるわけでもなく何度もアタックするところが微笑ましいんですよね。かわいい系の女じゃこうはいかないし、逆に見向きもしないと思う。田宮二郎は黙っていても女がよってくるタイプのナイスガイだから。
個人的にこの手のやくざものって悪役が全部同じに見えちゃって誰が誰だかわかんなくなっちゃうんですよね。今回も暴力団を取材する記者が工事現場に潜入していたなんて最後になってようやく気がつく始末・・・(大ボスと中ボスクラスはさすがにわかるけど)でもまぁ最後は悪を蹴散らすって感じですっきり終わるからいいのです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
浜田ゆう子
(毯沢ゆかり)
ナスターシャ・キンスキーあたりのクール系で
山下洵一郎
(佐々木敬明)
イーサン・ホークが新聞記者をやったら結構いけるかも。
海野かつを
(小吉)
強面キャラもいけるけど意外といじられキャラもいけそうなルイス・ガズマンで。


ごろつき犬
シリーズ第3作
(1965)
4
2004年6月
バイクを悠々と走らせている鴨井は途中事故を起こし途方にくれていると三沢葉子と名乗る女に助けられる。葉子は鴨井に命を狙われているのでそいつを倒してほしいと依頼される。さっそく大阪に戻った鴨井は腐れ縁の木村刑事からバー「スミレ」に手がかりがあると教えられ乗り込むのだが・・・
新宿のTSUTAYAで田宮二郎の「犬」を発見してさっそく鑑賞していたのでありますが全9作のうちなぜかこの3作目の「ごろつき犬」だけがなく半ばあきらめかけていて4作目の「暴れ犬」を観てしまおうと思っていたのですが、「ヴェロニカ・ゲリン」を恵比寿に観にいったときにTSUTAYAをのぞいたらあったんですよ「ごろつき犬」。もううれしくって後先考えずそっこうで借りましたね。
今回は古巣?の大阪に帰るということで一作目で登場した天知茂が再び登場。もうこの天知茂のくたびれた刑事役が味があって最高なんですよね。鴨井が銃を不法所持していることはよーく分かっているけど鴨井が決して悪事を働くような男じゃないことを知っているからこそ見逃すところが男気溢れていて好きだ。鴨井に「しょぼくれ」なんて呼ばれても一向に気にしないところもまた器が広くっていいなと思います。ラストなんて鴨井にとび蹴りされても笑って許しちゃうしね。自分なら顔は笑って心で恨み節状態ですわ。この映画を観て
10年後は「しょぼくれ」のような味のあるちょっと面白い大人になれたら楽しいだろうなぁなんて思うのでした。
女優陣も「悪名」シリーズでおなじみの水谷良重、江波杏子。田宮二郎とは縁もゆかりもある二人なので相性ばっちりで見ていて安心。江波杏子は相変わらずクールでいい女だったし水谷良重もいけずなキャラが楽しいんだけどこの人洋服は似合わないかな?やっぱり水谷良重は和服だなと思うのでありました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
水谷良重
(三沢葉子)
困っているふりして男を口説くのが上手いエマニュエル・ベアールで。
江波杏子
(柴田まゆみ)
魔性の女風に見えてまともなキャラが実は多いエヴァ・メンデスで。


暴れ犬
シリーズ第4作
(1965)
4
2004年8月
安宿で知り合った病弱な林という男から拳銃をさばいてくれと頼まれる。鴨井は何者かに襲われ林は殺されてしまう。そんなある日知り合いが盗んだバックから小型拳銃が出てきてその持ち主、香住弘子にナイトクラブの用心棒を頼まれるのだが・・・
今回しょぼくれ刑事こと天知茂が出ていないんであまり期待していなかったんですけど思った以上に楽しめました。
序盤はミヤコ蝶々が大阪のおばちゃんをいつものように好演。宿代を払わない鴨井にボロクソに言ったり小突いたりできるのはミヤコ蝶々しかいませんて。
誰を呼ぶにも「ちょっと兄ちゃん。」って言うんだもんガラ悪いっす。でも愛嬌あるから許せるんですよねミヤコ蝶々。
中盤以降は天知茂の代わりに鴨井を追い回す土井刑事が登場。人相占い?の心得があって鴨井に何かと予言をしてはさりげなく事件を解決に導く不思議な刑事で天知茂にはやっぱり負けますけど思ったほど悪くなかったです。
それに草笛光子もナイトクラブのオーナーって40年前から経営者の役やっていたんですよね。弟を殺された犯人探しを鴨井を利用して仇を討たせようとする役でこの頃からすでに貫禄十分。草笛光子っていったいいくつですか?こんな草笛光子に利用されていたと知った鴨井は黙ってそれを許す。そう女も愛すがコルトはそれ以上に愛すがテーマの鴨井=田宮二郎はかっこよかったですわ。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
草笛光子
(香住弘子)
エリートな女性像のキャサリン・キーナーで。
大坂志郎
(土井刑事)
ビリー・ボブ・ソーントンなんか怪しげな刑事にぴったりかと。


鉄砲犬
シリーズ第5作
(1965)
4
2004年11月
九州でやくざにからまれていた小玉一夫を助けた鴨井大介は一夫から大阪にいる母親に30万円を渡して欲しいと手渡され大阪に帰る。鴨井は飲み屋で酒を飲んでいたが天敵の木村刑事を見かけ気をとられているうちに手製のコルトが入ったカバンを置き引きに盗まれてしまい・・・
やっぱり「犬」シリーズにしょぼくれの天知茂これですね。基本的には
競輪の八百長にまつわる事件に巻き込まれるという展開があるものの田宮二郎と天知茂の掛け合いを見ているだけで十分満足。しかもこのシリーズの常連で名前を変えては登場する三枚目で太っちょの彼女役の坂本スミ子がやや強引に田宮二郎にことある事にちょっかい出してきてくるから笑えます。
ラストも港で一夫の妹照子が人質に取られているところを取り戻した愛用のコルトでこっそりやくざを海に撃ち落とす華麗なる銃さばき!天知茂も田宮二郎が撃ったのを知りながらも「勝手に落ちたんだよなぁ。」なんてとぼけたふりをして全く粋な事してくれますよ天知茂は。こういった敵対する職業の中にも鴨井と木村のどこかお互い必要として信頼しあっている関係は時に悪態をつきあったりしてもいい仲間みたいな感じがしてちょっと憧れます。
「悪名」とか「犬」シリーズとかを観ているとちんぴらややくざや銃がこれでもかと出てきますけど、映画の中じゃほとんど人は死なないし最後もほとんどが痛快なエンディングをむかえるから日本も戦後は何かと物騒だったと言われているけど現代に比べれば案外平和だったんだなぁなんて思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
山下洵一郎
(小玉一夫)
チンピラ関連の役がよく似合うジョン・レグイザモで。
姿美千子
(小玉照子)
やくざな兄貴をもった不幸な妹には幸薄系のセルマ・ブレアで。


続・鉄砲犬
シリーズ第6作
(1966)
4
2005年3月
ある日、京子という女に出会った鴨井大介は彼女に誘われて古美術運搬の用心棒を引き受けるのだったが・・・
前作「鉄砲犬」の続きか?と思わせておきながら全くの別物。「続・鉄砲犬」ってタイトルにしなくてもいいじゃないかと思いつつ、久しぶりに観た「犬」シリーズはやっぱり楽しかったです。残念だったのはテーマ曲がモダンでジャズっぽいいつもの曲じゃなかったので最初いつもの「犬」シリーズと違うんじゃないかとちょっと焦ったのと贔屓にしている天知茂の出番が少なかったところくらいで、いつもの田宮二郎と天知茂の掛け合いはもちろん、大阪のおもろい女という感じの坂本スミ子がいつも以上に話に絡んでくるし、三人の掛け合いシーンなんか本当おかしかったなぁ。
天知茂のしょぼくれ刑事なんてシリーズ当初は逮捕に躍起になっていたけど今はすっかり減らず口を言い合う関係になっているし。
坂本スミ子といえば毎回ぽっちゃりした外見に似合わないホステスやストリッパーなんかの職について、しかも偶然にもそれが田宮二郎が絡んでいる事件と関係あるやくざのところで働いて何かと手助けするナイスキャラなんですがこの坂本スミ子扮する玉子の母親が上京するからとファッション・モデルを偽るところやその芝居にのっかって玉子を助ける田宮二郎とか今回は坂本スミ子がヒロインじゃないの?と思うくらい出ずっぱりで
ちょっとしたやくざ映画というよりチンピラ映画なんですけどほとんどコメディな感じでこれぞ「犬」シリーズの醍醐味だなと感じました。
久保菜穂子は一見ミステリアスな美女という役どころでしたがよーく見るとやっぱりこの人男っぽい顔だなぁと改めて感じたのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
坂本スミ子
(玉村玉子)
ファニーという言葉がぴったりなドリュー・バリモアで。
久保菜穂
(京子)
は男っぽい感じがするディナ・メイヤーあたりで。


野良犬
シリーズ第7作
(1966)
4
2006年5月
東京にやってきた鴨井大介はある日車にはねられた少女を助ける。少女は兄を訪ねて東京にやってきて鴨井は彼女の兄の風間正一を探すことになるが、風間は殺人未遂の容疑で刑務所を出所したばかりだった・・・
「犬」シリーズ7作目。今回はしょぼくれ刑事こと天知茂がは出ないし成田三樹夫が出ているっていっても8作目で悪役やっていて今回もどうせそうなんだろうなぁとあまり期待していなかったのですが、はめられて監禁された成田三樹夫を救い出す意表をついた作品で面白かったです。
田宮二郎と成田三樹夫が手を組むなんてめったに見られるものじゃないですよ。
捕まっているといっても結局、田宮二郎の投げ入れたナイフをきっかけに自力で脱出してしまうところはさすがというか強くて当然の成田三樹夫といった感じで「犬」シリーズとしては田宮二郎と見せ場を二分する珍しい作りとなっていて新鮮でした。
毎回登場するキャラは微妙にちがうけど玉子役の坂本スミ子は見かけもキャラも三枚目に徹して相変わらず田宮二郎との絡みは面白いし、シリーズ後半になって登場してきた藤岡琢也も三枚目でいい味出しているし個人的に田宮二郎が好きというのもあるのですがシリーズを重ねても中だるみすることなく逆に鴨井大介というキャラクターが映画の中でどんどん有名になって手助けしてくれる新聞記者やら謎めいたナースなど人物も増えてきたりしてこれだけ毎回、娯楽の要素が入って悪役が影が薄い回があってもこれだけ面白いシリーズってめったにないんじゃないかなぁと感心するのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
成田三樹夫
(風間正一)
成田三樹夫のイメージはショーン・ビーンです。
坂本スミ子
(玉村玉子)
三枚目キャラで自分に自信たっぷりというところがクイーン・ラティファっぽい。


早射ち犬
シリーズ第8作
(1967)
5
2006年2月
東京にやってきた鴨井大介はマネージャーの常さんと流しの歌手でバーを回り稼いでいた。そんな中同じアパートに住む白タクの山本五郎が九十九会組長白井金造を大阪まで乗せることになるのだが・・・
7作目がなかったのですが約一年ぶりにどうしても観たくなって観たのですが相変わらず「犬」シリーズは面白かったです。しかも今回のゲストは成田三樹夫や伊達三郎と悪役としてはもってこいの二人は出ているし藤岡琢也に財津一郎、江波杏子まで出ていてシリーズ史上もっとも豪華な顔ぶれでテンション上がります。しかも田宮二郎と相性ばっちりのしょぼくれ刑事でお馴染みの天知茂もおなじみ坂本スミ子も出ていて久しぶりにこのシリーズもいつも以上に盛り上がります。
話の内容は白タクをしている小沢昭一が殺人犯に仕立て上げられてしまって真相を追ううちに新興宗教を隠れみの暴力団が関係しているらしいと気がつきなぜかしょぼくれ刑事の天知茂も加わって黒幕を追いつめていくわけですが、江波杏子がジャンキーになって暴力団と関係を切りたくても切れない役で序盤ちょっとだけ出てきて贅沢だし、天知茂は田宮二郎が拳銃を部屋のどこに隠しているか察しているのにあえてそれを言わずいけずなそぶりを見せて田宮二郎をやきもきさせたりお互い憎まれ口を叩き合ったりしてやっぱり天知茂との掛け合いは最高です。
それに最後の対決は九十九会No.2の成田三樹夫とその手下達で当然手下達は全滅でそのあと田宮二郎は追いつめるのですがその時の
成田三樹夫の捨て台詞が「お前のために九十九会は俺一人になってしまった。」ってこんな臭すぎる台詞言えるの成田三樹夫しかいないよ。しかも真顔でってところがまた笑えて「犬」シリーズ1、2を争う面白さなんじゃないかなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
小沢昭一
(山本五郎)
ちょっと情けない感じのヴィンス・ヴォーンで。
藤岡琢也
(常さん)
ちょこまかしているところがダニー・デヴィートっぽかったです。
成田三樹夫
(原)
こういう敵役はやっぱりショーン・ビーンにお願いしたい。


勝負犬
シリーズ第9作
(1967)
5
2006年9月
常さんと競艇の予想屋をしている鴨井は偶然にも殺人事件を捜査中の木村刑事と出会うが出会ってすぐ二人のすぐそばで殺人事件が起きてしまい・・・
「犬」シリーズも悲しいけどいよいよこれにて完結。
藤岡琢也の妙な相棒や毎回、玉村玉子と役名はおなじだけどキャラ設定が違う坂本スミ子とお馴染みのメンバーの絡みも相変わらず面白いのですが、シリーズ最後の作品だけあって鴨井大介としょぼくれこと木村刑事の最大のピンチ。
しょぼくれの事件をどういうわけかいつものように手伝うはめになるのですが凶器の拳銃が無音、無煙、無光の拳銃だからどこから弾が飛んでくるか分からず苦戦するし、常さんは鴨井に間違えられて撃たれたりして周りの人たちもピンチです。
そしてしょぼくれも撃たれてこっちは本当に生命の危機でいつも悪態ついている鴨井もシリーズで始めて涙を見せたと思うのですがこのシリーズを全部観ている人は絶対鴨井と同じ気持ちになってしょぼくれ死なないでくれと思ったと思います。
輸入玩具会社の令嬢という設定のヒロインに姿美千子、ネタバレ→
その令嬢の父親をアメリカで殺害して社長になりすまして新型拳銃の闇取引を企む犯罪暦のある男に浜田ゆう子扮する社長秘書。←とサスペンス的な要素もあって内容も充実していて最後を締めくくるにはもったいない感じ。まだまだ「犬」シリーズはいくらでも続けられそうだからもうちょっと続編作ってもらいたかったなぁ。
田宮二郎は「悪名」シリーズで勝新太郎と名コンビを組んでいたけど「悪名」の方は兄弟分的ニュアンスでそれはそれで好きなのですが、個人的には「犬」シリーズの天知茂とのコンビの方が悪態付き合っていても心の中ではお互い頼りにもしているし信じてもいて男の友情度が高くてこっちの方が好きだし
60年代のシリーズものはいろいろ観てきましたが「犬」シリーズが田宮二郎と天知茂がレギュラーでゲストで成田三樹夫も出てくれて個人的にはオールスターキャストだし、都会的なモダンな雰囲気も相まって一番好きです。
このシリーズ願わくばDVD-BOX販売してくれないかなぁ。そうすれば絶対買います。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
永田靖
(中沢道彦)
すっかり悪巧みする役が定着したデヴィッド・モースで。
姿美千子
(中沢律子)
令嬢というイメージがいまだに強いアン・ハサウェイで。
浜田ゆう子
(立川弓子)
ファム・ファタールなレベッカ・ローミンで。


異母兄弟
STEPBROTHERS
(1957)
4
2008年12月
陸軍大尉の鬼頭には二人の男児がいて病の妻がいた。そんな鬼頭のもとに女中としてやってきた利江だったが手籠めにされてしまい身ごもってしまう。やがて妻が病死し世間の目を気にした鬼頭は子供を産んだ利江を妻にするが扱いは女中のままで産まれた子供たちも目の敵を受けて・・・
三國連太郎の酷い仕打ちに耐える田中絹代の半生を描いた骨太ドラマ。
これはキャスティングの勝利。三國連太郎の非情なまでに偏った愛情を本妻の息子たちに注ぐ絶対権力者とただ耐えるだけの後妻の田中絹代の上手さはさすがでしたが子役たちもよかったです。田中絹代も二人男の子を産むのですがこの二人が異母兄弟として本妻の長男次男に馬鹿にされ虐げられて体力的にも二人にも到底かなわないのですが、上の二人の兄弟がしたの二人の兄弟を毛嫌いするのはやはり母親の愛情のせいか。
正月、相変わらず女中のように働かされている田中絹代は女中や子供たちとカルタ取りなんかをしてみんなものすごく幸せそうで楽しそう。そんな団らんを影からこっそり見ている次男がいつもは威勢がいいのにこの時は悲しそうな表情をしているシーンがあり、上の子二人もそう悪くはないんだと思わせるシーンも巧みだなと感じました。
子供も大きくなっ手からのエピソードでは、末っ子役が中村嘉葎雄。病弱で戦争に行かずちょっとした機械をいじるのが好きなやさしい青年なのですが、女中の少女高千穂ひづると歌などを歌っていたら運悪く三國連太郎が帰宅。そのまま井戸に連れて行かれ水をぶっ掛けられ罵られ、それをかばった
田中絹代もまとめて水を頭からぶっ掛けられてこんなに体当たりな演技が出来るんだと感動を覚えました。三國連太郎も最後の晩年まで当時はまだ30代だというのにそれらしく見える演技力というか役作りも最高で本当この二人でなければこの映画ここまで強烈なインパクトは残らなかったんだろうなと感心するのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三國連太郎
(鬼頭範太郎)
ベニチオ・デル・トロあたりがぴったりな感じがします。
田中絹代
(妻利江)
演技派ケイト・ブランシェットにお願いしたい。


刺青
(1966)
4
2005年2月
真面目な質屋の番頭、新助は質屋の娘お艶と駆け落ちをするのだったが親切を装った夫婦に騙され新助は命を狙われお艶は背中に女郎蜘蛛の刺青をむりやり入れられ芸者として売られてしまう・・・
若尾文子は後ろから斜め45度で振り返るいつもの「若尾文子」像なのでとても安心して観ることが出来ました。やっぱり若尾文子はバックショットが魅力的だなと思います。しかも今回は背中に女郎蜘蛛の刺青付きでさらに魅力がアップという感じがして増村保増監督特集の最後を締めくくるにはこの作品で正解だったように思えます。
若尾文子は相変わらず芸者に売られてもたくましく生きていきその世界ですぐに売れっ子になるそのたくましさと順応性のよさに感服します。現代社会にこんなOLがいたら間違いなく出世してると思うし、商売やっても成功しそうな感じもして時代を先取りしていた人なんだなと思います。自分も結構周りに順応するのは早いと思いますが、この映画を観てちょっと見習わなきゃいけないなと思いました。
ラストもネタバレ→
彫り物師が刺青に刃物を刺して全てが終わるのですが、若尾文子を支配していた女郎蜘蛛が死んだから彼女も死んだ←と解釈できる終わり方は文芸作品らしくってよかったです。
長谷川明男は相手役にはやはり地味な印象が残りますが市川雷蔵作品で本当に真面目な青年役でちょくちょく見かけましたのと同じで今回も真面目な役。この人は大映の真面目青年担当なだったんだなぁと思いました。
藤原礼子が若尾文子を陥れる夫婦で出てくるのですが姐さん風のキャラクターはさすがに板についているし、こういう仇っぽい役もいいなぁなんて改めて藤原礼子の魅力を再認識しました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(お艶)
背中に女郎蜘蛛の刺青が絶対似合いそうなアンジェリーナ・ジョリーで。
長谷川明男
(新助)
真面目な印象が強すぎるジム・カヴィーゼルで。


色競べ五人女
(1958)
3
2007年6月
歌舞伎の女形で絶大な人気の尾上丑之助は人気がありすぎてある男に命を狙われるが間違えて父親を殺されてしまう。その後、継母から言い寄られるも番頭に見つかり誤って番頭を殺してしまう。丑之助は罪を償うために日当と名を変え僧侶になるが殺害現場を見ていた柳全に脅されてしまう・・・
いかにも新東宝といった感じの愛憎劇。
天知茂が出ているので観てみたら出演シーンは少なくて内容も女断ちして仏門に入った人気役者が再び女に溺れていくどうしようもない男の姿を描いた一種のコメディかと思いきや登場人物の色々な欲が絡み合った内容でした。
仏門に入る前の前半は色々な登場人物が後半部分に色々と影響を与える伏線のようになっているのですが、誰が誰なのかよく分からないし、小さなエピソードが細切れ気味なので話の全貌が見えなくてこれは作り方にちょっと問題があるかなと感じました。
仏門に入って日当となる後半に入ってからは話が見えてきて面白くなってきます。
継母と駆け落ちしようとした時に偶然家に押し入った強盗の長十郎(柳全)に弱みを握られて男娼みたいなことさせられるすごい展開になるのですがここで日当の虜になるのが
新東宝作品には欠かせない三原葉子なのですが彼女を見るとやっぱり新東宝という感じがします。
いよいよ捕まりそうになると柳全に脅されていたはずの日当がなんとか二人が捕まらないように知恵を出し合って協力しあっているところも面白い。
出番の少なかった天知茂は鬼平っぽい役で最後はおいしいところをさらっていってくれて個人的には満足。ラストは悲恋を象徴する悲しい終わり方なのですが終わり方が変なので笑っちゃうといういかにも新東宝らしさが溢れているのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
和田桂之助
(尾上丑之助/延命院日当)
女装もOKのキリアン・マーフィーで。
小倉繁
(岩田長十郎/延命院柳全)
完全に裏では悪い事をやっているポジションに落ち着いたデヴィッド・モースで。


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