大当り三色娘 (1957) | |
2007年6月 | |
親友のエリ子とミチオはバイトでお手伝いをしているがある日、京須という青年がエリ子の働く家に下宿にやってくる。そんな京須の引越しの手伝いをしたのが大阪からやってきたトミ子でたちまと三人は仲良くなるのだが・・・ ひばり、チエミ、いづみの三人娘ものは「ジャンケン娘」「ロマンス娘」「三人よれば」とこの「大当り三色娘」の確か4作品あって一応話しにつながりがあるのですが、今回の作品だけはチエミが大阪からやってきた女の子で最初はひばりといづみの友達じゃないという設定で三人娘のパラレルワールドという感じです。 今回は初めから宝田明が好きなチエミ、勘違いで好きになってしまったいづみ、そしていつの間にか好きになっているひばりと宝田明がモテモテというシチュエーションなのですが最後は宝田明もひばりのことが好きでチエミもいづみにもそれぞれいいお相手がちゃんと見つかるという定番の終わり方でやっぱり三人娘の中でも格が違うなと感じます。 何より魅力的なのは脇役達が浪花千栄子や飯田蝶子から「青い山脈」に出ていた若山セツ子に伊豆肇と出演シーンはみんな少ないけどとにかくこれでもかという豪華さが観ていて楽しいです。 あとはなんといってもミュージカルシーンは三人とも上手いし画的にもカラフルで見応え十分で日本もミュージカルでMGMミュージカルに対抗できるのは三人娘のシリーズだけなんじゃないかと思います。 最後はハッピーエンドでなぜか三人で歌いながら水上スキーをやる奇想天外さも相まって楽しい作品なのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! (「チャーリーズ・エンジェルの面子で」) | |
美空ひばり (根室エリ子) | やっぱり一番ビッグなキャメロン・ディアスで。 |
江利チエミ (小林トミ子) | ムッチリ系のドリュー・バリモアで。 |
雪村いづみ (楠ミチオ) | スタイリッシュなルーシー・リューで。 |
宝田明 (京須肇) | イケメンのジュード・ロウあたりで。 |
大当り狸御殿 THE BADGER PALACE (1958) | |
2008年5月 | |
狸御殿のきぬた姫は狸吉郎と政略結婚させられると知り御殿を抜け出してしまう。困った家老は偶然街で女中のお黒がきぬた姫にそっくりなことを知り、お黒が姫に成りすます事になる。一方その頃、姫もお黒に間違えられて女中として働くことになり・・・ 美空ひばりと雪村いづみのオペレッタもの。 と言っても、一人二役で出ずっぱりの雪村いずみが事実上の主役となっています。 お転婆な姫と孤児で女中として働いている気の利く娘がお互い立場が入れ替わってしまいそれぞれ身分違いの恋をするという感じの内容で世界が人間の姿をしていますがタヌキの世界なので皆さん名前がタヌキっぽいところもポイントです。(養育係の千石規子も狸路局だったりします。) 姫が御殿を抜け出した直後に山賊に襲われるというハプニング。隙をついて逃げてはみたものの崖から落ちて気がつくと蜘蛛の巣に引っかかっている・・・というタヌキなんだから蜘蛛なんて平気じゃないか?と思ったりもするのですが、蜘蛛の女王の淡路恵子の突然の歌と踊りがあって食べられちゃうと思っていたらどこから来たのか旅の侍狸の山田真二に助けられて、山田真二は実は狸姫に憧れていたというおまけつき。 そんなこんなしているうちに姫は女中のお黒にそっくりだからさっさと働きなさいなんて宿屋の主人に言われるのですが、布団の上げ下げしたことがないものだから客の南都雄二が思わず手伝ってあげちゃったりもするのですが、実生活でも妻のミヤコ蝶々に叱られて夫婦漫才に突入というパターンが自然な流れで展開されて面白いです。 一方で御殿に入った女中のお黒はというと大名行列でなぜか姫の結婚相手の美空ひばりとビビッときていて当然お互い両思いに。だけど本当の姫じゃないから思い切って正体を明かしたら美空ひばりは「気付いてました。」と言ってクライマックスはもちろん二人でデュエット。こちらのパートは宝塚調でした。 世間に出たことのない姫がちょっと勘違いした行動をとるというところは雪村いづみにぴったりだったので全体的に楽しかったです。美空ひばりがやった婚約者は歌える宝田明とか岡田真澄なんかがやったらもっと面白かったかなぁなんて思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
美空ひばり (狸吉郎) | 見た目が男らしい体型のジェシカ・ビールにお願いしたい。 |
雪村いづみ (きぬた姫/お黒) | 歌も歌えるエミー・ロッサムで。 |
山田真二 (狸千代) | コスチュームものが似合うオーランド・ブルームで。 |
おーい中村君 (1958) | |
2006年6月 | |
サラリーマンの中村和夫は通勤途中に地下鉄で一人の女性に一目ぼれしたが奥手のため声がかけられない。そんなある日、和夫のもとにプレイボーイの部下中村二郎がやってきて彼い影響され告白を決意するのだが・・・ ♪おーい中村君〜は有名な歌フレーズですけど実際映画があったんですね。川崎敬三の中村君をはじめ部下も部長も中村君で中村君違いで恋もすれ違いといった感じで名前も分からず中々出会えなかったけどバーでケンカして留置所に入れられていたらマドンナの近藤恵美子は婦人警官だったというオチもあったりする内容のコメディでした。 これ44分の作品で映画としては短編作品クラスで余計なエピソードを削ってテンポ良く進んでいくのでテレビドラマを観ているような感覚で気軽に観ることが出来てよかったです。 川崎敬三はイメージとしては他人を羨んで恨めしそうにしているというイメージが個人的には強いのですが今回も真面目なんだけど仕事も恋も空回りして部下の中村君を羨ましく思ったりする一面を見せるのですがこれが暗くならず軽妙に演じていてよかったです。 部下に新人時代の田宮二郎が本名の柴田吾郎という本名で出演しているのですが要領よく仕事をこなしプレイボーイというこの時からすでに「悪名」や「犬」シリーズに通じるキャラクターをやっていたんだなぁと感心しました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
川崎敬三 (中村和夫) | 真面目という感じのエリック・バナで。 |
近藤美恵子 (日野明子) | 婦人警官とか似合いそうなマリア・ベロで。 |
柴田吾郎【田宮二郎】 (中村二郎) | お気楽キャラのオーウェン・ウィルソンで。 |
大奥 (2006) | |
2007年1月 | |
将軍の生母ととなった月光院を敵視する正妻の天英院は月光院を陥れるために彼女をかばう大奥総取締役の絵島を陥れようと歌舞伎役者の生島新五郎を近づけるのだが・・・ 深田恭子と貫地谷しほり主演のスペシャルドラマが映画版の大奥と繋がっているらしいということで一応観てから映画館に行きました。ドラマの方はイマイチでしたが何となく大奥のシステムが分かったのでまぁよしとします。 肝心の映画の方は仲間由紀恵が大奥総取締って若すぎて大丈夫かなぁ?と少々不安に感じていたのですがそれも気にならず。いきなりの松下由樹、高島礼子、木村多江、浅野ゆう子による仲間由紀恵いじめ。わざと足袋を汚して「足袋が汚れておりますぞぇ。」的なはんなりした京都弁でせせら笑う姿が怖いけど楽しすぎます。さすが全てお見通しの仲間由紀恵も耐えるだけしかありません。 個人的に気に入ったのは高島礼子の手先となっていろいろ絵島に対していろいろ仕掛けてくる宮路を演じた杉田かおる。絵島がいなければ多分大奥総取締役になれる才覚はあると思うけどなれなかった執念みたいなものが表れていてよかったです。絵島生島事件は有名だからオチを書いてしまいますが、絵島が大奥を追い出された後の総取締役は天英院派の宮路だなと思うのでした。 ネタバレ→ラスト月光院は絵島か間部詮房のどちらを助けるかで間部詮房をとり、絵島は最後まで月光院を守り抜く←そういったところを見ていると恋より友情というか任務をとった絵島は男っぽい性格だったんじゃないかと感じました。 全体的に仲間由紀恵も綺麗だったし上手くまとまっていたと思うのですが唯一の不満はミッチーを敵対する役は岸谷五朗じゃなくてこれこそ北村一輝の役で二人の役どころが逆だったらもっとテンション上がったと思うのになぁ。 あと江波杏子とか突然出てきたり、ナレーションが梶芽衣子というところもうれしかったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
仲間由紀恵 (絵島) | 悲恋ものといえばナオミ・ワッツ。 |
西島秀俊 (生島新五郎) | 影のある雰囲気のジム・カヴィーゼルで。 |
井川遥 (月光院) | 意外としたたかそうなシャーリーズ・セロンで。 |
及川光博 (間部詮房) | 何か企んでいそうな雰囲気のポール・ベタニーで。 |
杉田かおる (宮路) | ジェニファー・ジェイソン・リーにねちっこくやってもらいたい。 |
高島礼子 (天英院) | 演技派ケイト・ブランシェットで。 |
狼と豚と人間 WOLVES, PIGS & MEN (1964) | |
2008年1月 | |
貧民窟で育った黒木三兄弟。長兄の市郎は家を出てやくざの幹部になり、次男の次郎も家を出て一人残された三男の三郎はチンピラになっていた。そんなある日次郎は相棒の水原と4000万円を強奪する計画を三郎に持ちかけ見事成功するが三郎は金を隠してしまい・・・ 兄弟が足を引っ張り合い泥沼な戦いに陥るアクション映画。 高倉健、北大路欣也、三國連太郎は三兄弟に見えないけれどエネルギッシュでよかったです。強奪に成功したものの痴呆の母親を捨て自分だけ面倒を見た北大路欣也は恨みもあり強奪した4000万円を隠すのですが何も知らされず5万で引き受けた仕事が4000万の仕事だと知って大激怒。しかもそれは長男の三國連太郎の所属する組の金だったというところから兄弟の血で血を洗う泥沼の展開になっていくところが面白いです。 金のありかを吐かない北大路欣也に高倉健は仲間に拷問をして吐かせようとするけれど決して吐かない。チンピラ仲間指を潰されても屈しない信頼関係が熱いです。(石橋蓮司だけは想像通りひとりで逃げ出そうとして必死でしたが・・・)高倉健も涼しい顔してひどいことして今までのイメージとちょっと違うからビックリしました。 三國連太郎も偶然犯人が自分の弟だと知って陰で丸く収めようとするけれど結局組織に見つかり乗り込む羽目に。成り上がりでここまで上りあがってきたので失敗は許されないので必死なのですがこういう付いていない役が三國連太郎はとても上手いと思います。(出番は三人の中で一番少ないですが。) ネタバレ→ラストついに来た大路欣也の仲間を見捨てない姿勢に高倉健とよりを戻したところは感動的。三國連太郎にも一緒に戦おうぜと迫るも逆に全員殺され結局、金のありかも分からず、三國連太郎は貧民窟の住民達に石を投げつけられるという終わり方が何ともやるせないエンディングでよかったです。← 高倉健の油断ならない相棒の江原真二郎の狡猾さときたら素晴らしいものです。恋人の中原早苗も妙に落ち着き払ってアンニュイな感じでひるまないところなど脇役達も味があって久しぶりに蔑んでみられる人々の一旗上げたい系の野望映画を観たという満足感があったのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
高倉健 (黒木次郎) | 兄貴という感じのマーク・ウォルバーグで。 |
北大路欣也 (黒木三郎) | 裏切らなさそうなポール・ウォーカーで。 |
三國連太郎 (黒木市郎) | ロバート・ダウニー・Jrあたりにお願いしたい。 |
大阪の女 WOMAN OF OSAKA (1958) | |
2008年7月 | |
戦後の大阪、芸人たちの住む「芸人村」でお千は漫才師だった父親を養うために針仕事をしていた。そんなある日、東京から事業を始めるために幼なじみの宗二が戻って来て二人は結婚を意識するのだが・・・ 京マチ子主演のとことん不幸でとことんいい人な話。 最初から戦争未亡人で芸人ばかり暮らしている長屋のようなところに住んでいるというところから幸薄な感じが漂っています。 今回、京マチ子の本命は高松英郎なのですが商売を始めるために大阪に戻ってきて開店準備をしているときに女置き引き犯が警察から逃げるために勝手に高松英郎を旦那扱いするから、京マチ子は先走ってお父さんの中村鴈治郎が勧める船越英二と好きでもないのに結婚してしまうんですよね。 それでも京マチ子と船越英二はいい夫婦になって幸せに暮らしていたのに突然、船越英二は事故死。そして保険金の一時金を取りに行った中村鴈治郎はただでさえ酒癖が悪いというのに女置き引き犯に酒を飲まされ金を取られてしまい、さらに船越英二には内縁の妻がいて子供までいたというどこまで不幸なのだ、これ以上さらに不幸は続くのかという展開の連続で目が離せません。しかも長屋の芸人連中は京マチ子の受け取る保険金を当てにして色々勝手に夢膨らんでしまっていてお金って恐ろしいです。 こんな状況で一度も悲観的にもならずに怒りもしない京マチ子は天女のようでした。 しかし京マチ子とかかわりを持った人は次々に不幸になっていきます。高松英郎も店をオープンしたばかりなのに家事になるし、お父さんも酒で毎度失敗するし人はいいけれどサゲマンキャラだったのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
京マチ子 (お千) | 不幸もたくましさで乗り切れそうなケイト・ウィンスレットで。 |
中村鴈治郎 (鈴乃家半丸) | 見た目酒癖が悪そうなピート・ポスルスウェイトで。 |
船越英二 (三上米太郎) | イメージはロバート・ダウニー・Jrといったところでしょうか。 |
高松英郎 (宗二) | ジェラルド・バトラーにお願いしたい。 |
大番頭小番頭 (1955) | |
2010年8月 | |
大学卒ながら下駄問屋の番頭となった原野は大番頭の神埼の下につき仕事をこなしていたが、主の田村は下駄問屋という商売が嫌いで・・・ 池部良が大学出の番頭に。 下駄問屋の面接が早朝でしかも結構な数の人数が受けていてその中からそろばんは出来ないけれど大卒ということでこの先のことを考えて池部良が合格するのですが、昔ながらの問屋と大卒という組み合わせが戦後10年経ったという時代性を感じさせる映画でした。 池部良は大卒という設定ながら当時既に37歳くらいで相変わらず年齢不詳な魅力を放っていますが伊藤雄之助のグウタラ若社長っぷりが面白かったです。下駄屋が嫌いでしかtなく店を売ってナイトクラブか何かにしようと思っているのですがまんまと騙されているところが伊藤雄之助らしさが出ていて池部良を食っていたと思います。そんな騙される寸前のところを大学で法律を勉強していた池部良に助けられますます頼りにする伊藤雄之助なのですが、ちゃらんぽらんな性格が許せず辞めてやるという展開になるのが何となくその気持ち理解できると共感できました。 藤原釜足が店のことも伊藤雄之助んじょことも心配する大番頭役で出ているのですが、今まで観てきた藤原釜足作品史上、一番出番があったんじゃないかと思うくらいちゃんとした役どころで嬉しかったです。 伊藤雄之助の嫁の妹の姪が雪村いづみで、修学旅行を仮病で抜け出ししばらく店で厄介になる娘で登場。雪村いづみのところだけミュージカル調になるのはさすがという感じで当然、池部良のことが好きになるのですがあっさり振られてしまうところが新鮮でした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
池部良 (原野正一郎) | イメージは真面目そうなエリック・バナで。 |
伊藤雄之助 (田村房吉) | アダム・サンドラーにお願いしたい。 |
藤原釜足 (神崎善助) | 番頭役も似合いそうなスタンリー・トゥッチで。 |
沖縄やくざ戦争 (1976) |
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2004年7月 | |
本土復帰を目前に控えた沖縄では本土から進出してくるやくざに対抗すべく「沖縄連合琉盛会」を結成したのだが「琉盛会」の中では本土と手を組もうとする動きが強かったのだが、それをかたくなに拒否する国頭の行動が内部抗争を引き起こし三つ巴の戦いが始まるのだった・・・ 舞台が沖縄だからガングロメイクもさらに色濃くなってみんな暑苦しいー。特に松方弘樹の子分の中に尾藤イサオがいるんですけどただでさえ熱い沖縄の設定に尾藤イサオは暑苦しい、しかもやられ方も暑苦しいと三拍子そろって「キング・オブ・暑苦しい」の称号をささげたい。 松方弘樹は小さな組を持ってはいるけど千葉真一の弟分って設定なんですけど、千葉真一は完全に暴力大好きクレイジーな狂犬って感じになっちゃってこんな奴が親分には誰もついてこないよ(突然、三線を演奏させて踊りだしちゃうし・・・)と思ったら千葉ちゃんの頭脳派幹部やくざ地井武男に裏切られちゃってるしね。この地井武男もインテリ気取りの小憎らしい奴で早くやられちまえぃ!と思ったらちゃんと松方弘樹に止めを刺されてスッキリ。 本土の大物組長に梅宮辰夫なんですけど顔も体もはちきれんばかりである意味衝撃映像だ!ってことで主役の松方弘樹は役も可哀想な設定だったけど、周りのサブキャラが濃すぎて完全に影が薄くなっちゃって本当に可哀想だったなぁ。 ラストはぶちきれた松方弘樹と渡瀬恒彦がこの辰っつあんと成田三樹夫(ゴマすりキャラが相変わらず上手い)がのるプロも真っ青の操縦でボートに奇襲をかけるんですがフィルムの状態が悪くって結局最後どうなったのか分からずじまいなのが悔やまれます。ネタバレ→千葉真一のやられる瞬間もフィルムが飛んじゃっていきなり葬式シーンは←つらいものがあったしフィルムの保存はきちんとしましょうと教訓を残すのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
松方弘樹 (中里英雄) |
トム・サイズモアもこの手の役はぴったりで。 |
千葉真一 (国頭正剛) |
ウィレム・デフォーで。「スパイダーマン」のグリーン・ゴブリンになるときの一人芝居を思い出した。 |
梅宮辰夫 (海津義明) |
マフィアのボスと言ったらジェームズ・ガンドルフィーニで。 |
鴛鴦歌合戦 SINGING LOVEBIRDS (1939) | |
2006年1月 | |
貧乏浪人、浅井礼三郎は傘屋の娘春代に恋をしていたが隣の別荘に住む娘と親hが決めた許婚がいた。また春代も殿様に見初められてしまい・・・ あの片岡千恵蔵と志村喬が歌って踊ると知った時点でこれは観なきゃいけないと思っていて後で知ったのですが、これカルト的な人気があるそうですねぇ。 出だしから色んな職業の男達が歌を歌いつつお春の恋敵に告白するシーンはみんな歌の加減が微妙でちょっと痛いかも・・・と思いましたが殿様のディック・ミネが出てきて普通に歌っているのを見て殿様の骨董と女好きなキャラはバカ殿キャラだけど戦前にジャズ・ヴォーカリストと登場させて家来達がほら貝やら鼓を演奏すると瞬く間にオーケストラになるなんてイカしているなぁと思いました。 片岡千恵蔵は本当若くてシュッとしている感じがカッコよかったのですが、志村喬はこの人の若い頃はあったのだろうか?と思えるほどこの時代からすでにしょぼくれた感じが出ていてすごく不思議。しかも傘の売上金を全部趣味の骨董品につぎ込むダメさ加減も「醜聞」を思わせるキャラで志村喬って味があるなぁと感じました。 最後にネタバレ→麦焦がしが入っていた壷が本物の骨董品で全て丸く治まるかと思ったら、世の中金より愛みたいなことを説いて←全てハッピーで締めくくるってところもなんかめでたしめでたしという感じでよかったです。 麦焦がしってなんだろうと思って調べたらそのまんま大麦を煎って粉にしたもの。と出てきました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
片岡千恵蔵 (浅井礼三郎) | 浪人とか似合いそうなヴィゴ・モーテンセンで。 |
志村喬 (志村狂斎) | ちょっとくたびれた感じのウィリアム・H・メイシーで。 |
市川春代 (狂斎の娘お春) | 傘屋の娘が似合いそうなアリソン・ローマンで。 |
おしどり駕篭 (1958) |
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2005年6月 | |
左官屋の源太と矢場の娘小蝶は喧嘩をしながらもお互いを慕っていた。そんな源太、実は弦二郎君という若殿でお家の陰謀を知り急遽、国へと戻るのだったが小蝶も密かに跡を追ってきて・・・ 今回の美空ひばり特集でもこれが一番観たくって楽しみにしていたのですが、やっぱり粋でいなせな江戸っ子キャラの中村錦之助は痛快です。しかも顔がそっくりな弟の中村賀津雄と共演ってことでこの二人が共演すると面白さも倍増して、錦之助と賀津雄は本当そっくりなので劇中でも兄弟なのかと思ったら弟の賀津雄は舎弟でそんなのありえない。と思いながらそういうのをひっくるめてとにかく楽しかったです。 確か美空ひばりは錦之助と相当仲がよかったはずなので相性も抜群。ひばりが矢で錦之助の背中を撃って錦之助が「あいたたた・・・」みたいになる展開が何度かあったし、お互いを「おかめ」「ひょっとこ」と憎まれ口たたきあいながらもいざ二人が離れ離れになると急に寂しくなっちゃう・・・ってところの二人の距離感みたいなのがいい感じに伝わってきます。 月形龍之介は今回陰謀を企てた張本人で最終的にもちろん錦之助にばれて切腹しようとするのですが錦之助は命を助けて改心させちゃう。それでもってもともと城なんか興味ないからさっさと城を弟に譲ってひばりと一緒になっちゃう気前のよさ。こういう人情味あふれるキャラクター大好きです。 中原ひとみは結構錦之助の相手役とか務めたことがあるのですが今回はひばりに錦之助の相手役を持っていかれてしまったもんでなんだかやりにくそうで観ていてちょっと可哀想でした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
中村錦之助 (弦二郎君/源太) |
お気楽な感じのオーウェン・ウィルソンで。 |
美空ひばり (小蝶) |
歌も歌えるグウィネス・パルトロウあたりで。 |
中村賀津雄 (半次) |
オーウェンに続き弟のルーク・ウィルソンで。 |
中原ひとみ (お市) |
マリサ・トメイはちょっとした脇役をやらせるとすごくいい。 |
お嬢さん乾杯 (1949) |
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2005年12月 | |
自動車の修理で成功した石津圭三に華族の令嬢、池田恭子との見合い話が持ち上がる。圭三は身分違いと感じ仕方なく見合いをするが恭子の姿を観て一目惚れしてしまい・・・ お互い好きなのに育ってきた環境があまりに違うため騒動を引き起こす戦後間もない時期に作られた木下恵介監督のロマンティック?コメディ。 育ちが違うから聴いている音楽も原節子がショパンなら佐野周二は民謡だったりバレエを一緒に観にいっても佐野周二はつまらなそうにして帰りにボクシングを観にいってエキサイトししたりしてつりあわないカップルなんだけど両思いという今となってはほとんどベタな設定なんですけど昭和24年に作られていることを思えば時代の先端を行っていた気もします。 で、お嬢様育ちの原節子がボクシングを見て最初はびびっているけどそのうち結構ノリノリになったりするところとか相変わらずのかまととキャラは観ていて楽しいかったり華族でもない男と結婚するのが許せない原節子のおばあちゃんがさりげなく嫌味を言って佐野周二を困らせたりするところはおかしいのですが相手役が佐野周二ってところが普通すぎて、というか身を引く決心をして馴染みのバーでママと「お嬢さんに乾杯!」といって彼女の幸せだけを願うところなんかはものすごくいい人すぎてなんだか物足りないです。やっぱり原節子の相手役は笠智衆(違った意味でですが)とか仲代達矢が年下の彼氏をやって衝撃のキスシーンもあった「娘・妻・母」とか何かしらのインパクトがないとダメだなぁと感じるのでした。 あとラストは佐野周二の居所を聞きにバーにやってきた原節子にママが「惚れてるんだったら口に出していってごらんよ。」と言われて一旦は店を出かけるけれど振り向きざまに「惚れております。」と力強い一言。出た!原節子節!と言う感じで最後も当然のごとく見せ場をもっていく原節子は目が離せないのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
原節子 (池田恭子) |
こういうコメディっぽい作品はセルマ・ブレアにやってもらいたい。 |
佐野周二 (石津圭三) |
自動車修理業の青年社長という役どころがポール・ウォーカーっぽい。 |
お嬢吉三 (1959) |
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2005年1月 | |
あくどい旗本の恨みを買った三人の吉三は牢屋から出たその後お礼参りをして江戸を去るのだったがひょんなことから旗本の悪事を知った吉三達は再び江戸へ戻るのだった・・・ ちょっとガラは悪いけどあくどい奴らは見逃してはおけない三人の吉三が一騒動起こす痛快な娯楽作品に仕上がっていて思わぬ拾い物をしました。もう雷蔵作品には悪役やってよし味方をやってもよしでおなじみの伊達三郎が悪い旗本でいきなり登場しているんですが相変わらずいい味出していました。 ぐっと面白くなってくるのは吉三達が江戸を離れて箱根の温泉で借金のかたに売られてしまう娘(これが中村玉緒)の世話を頼まれるあたりから。最初は無理やり抱こうとするけど事情を知りしかも昔の幼なじみだったと気がつきなんとか助けようとするあたりは世間のはみ出し者なんだけどこういう人間こそ実は人情味がある設定はいつ観てもいいものです。 お嬢を取り合うお民とお加代の勝気な女達もいい味出していて、最初はお嬢はあたしのものよと言わんばかりの意地の張り合いが最終的に吉三達の手助けをしたお民は捕まってしまうけどお加代はそれを逃がしてやるちょっとした女同士の友情みたいなのもいいエッセンスとなっていて楽しかったなぁ。 ラストも「弁天小僧」とは対照的に本当に軽やかに終わり痛快なので個人的には大変好みでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
市川雷蔵 (お嬢吉三) |
ひょうひょうとした感じがヒュー・グラントにぴったりでした。 |
島田竜三 (お坊吉三) |
チンピラ感覚のジョン・レグイザモで。 |
北原義郎 (和尚吉三) |
怪しげな坊さんにぴったりなジョン・C・ライリーで。 |
おとうと YOUNGER BROTHER (1960) | |
2009年1月 | |
げんには弟の碧郎がいて姉弟仲はよかったが弟の素行は日に日に悪くなる一方だった。そんなある日、碧郎はついに警察に捕まってしまい・・・ 岸恵子と川口浩の姉弟愛。監督は市川崑。 当時20代後半だった岸恵子は女学生に見えないのですがとにかく綺麗過ぎて困ります。 家族構成が父、森雅之。母、田中絹代。姉、岸恵子。弟、川口浩というすごい面子が繰り広げる家族のドラマなのですが、田中絹代は後妻という設定。リウマチで体が思うように動かないこともあり家事は岸恵子に頼みっぱなしで常にイライラしておまけに狂信的ともいえるキリスト教信者で何かと言うと宗教を持ち出して家族みんなを困らせる気難しい母親といううっとうしい役どころも見事に演じてやっぱり田中絹代はすごいと感じました。前半はこの田中絹代と子供たちとの角質と弟のやんちゃっぷりに手を焼きながらも仲良し姉弟という展開が繰り広げられ、後半は突如結核になってしまった弟とそれを看病する姉を中心に話が展開されていきます。 前半は田中絹代の空回りしすぎて家族に煙たがられる母親と岸恵子との確執がドラマとしては面白いところでありますが、弟の川口浩が悪気はないけれど何をやっても周りに迷惑をかけてしまうやんちゃっぷりは相変わらずはまっています。 後半は寝込んだ弟のおかげでようやく母親と家族のわだかまりが溶けつつも余命いくばくもなく人生って上手く行かないものだと感じました。 メインでは森雅之の台詞の少なさも印象的でしたが、田中絹代以上にキリスト教にのめりこんでいる岸田今日子が家のことにあれこれ口を出してくる嫌味な夫人役。看護婦には江波杏子と脇役も豪華で見応えのある家族ドラマでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
岸恵子 (げん) | きれいなお姉さんという感じのキーラ・ナイトレイで。 |
川口浩 (碧郎) | ダニエル・ラドクリフあたりにお願いしたい。 |
田中絹代 (母) | 演技派のメリル・ストリープで。 |
森雅之 (父) | あまりしゃべらなそうなウィリアム・H・メイシーで。 |
おとし穴 PITFALL (1962) | |
2010年11月 | |
山を降りてきた子連れの炭鉱夫はようやく仕事にありつくが、案内された場所に行く途中にスクーターに乗った謎の男に殺されてしまい・・・ 勅使河原宏監督の不条理なドラマ。 勅使河原作品はATG系なのでちょっと苦手かもしれないと思って観始めたのですが、これが観たことのないタイプの映画で面白かったです。北九州の人っ子ひとりいない山の中で彫っている井川比佐志が夜逃げ同然でちょっとだけ賑わっている街に出てくるオープニングから妙に凄みがあって良かったです。 そんなこんなでようやく仕事にありついたと思ったらいきなり田中邦衛に殺されてしまうという展開にはじまったばかりなのにこの先どうするのだろうかと思っていたら、幽霊になって井川比佐志が復活。 田中邦衛に殺されるも、その場を見ていた佐々木スミ江がいるのですが、こちらも謎の殺し屋の田中邦衛が大金で偽証をさせて幽霊になった井川比佐志はどうにも出来ないもどかしい状況に陥る展開とやがて瓜二つの炭坑組合のリーダーが命を狙われていることが判明する展開が新鮮。その間に佐々木すみ江が殺されて幽霊になっていくところも面白いです。 後半は組合リーダー同士の激しい対立が明らかになってきてネタバレ→結局リーダー同士で謎の殺人犯にに狙われていると情報共有するところまで修復しようと思っているのですが、結局殺し合い。そして全て子供が井川比佐志やら佐々木すみ江というメインキャストが死んでいくところは全て息子が見ていたというトラウマ必須という展開もがシニカルでブラックでとても印象的でした。← | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
井川比佐志 (坑夫/第二組合長) | 子連れといったらヴィゴ・モーテンセンで。(何となく) |
乙女ごゝろ三人姉妹 THREE SISTERS WITH MAIDEN HEARTS (1935) | |
2009年3月 | |
流しの三味線弾きで生計を立てている次女のお染、男と駆け落ちした長女のおれん、甘やかされて育った千枝子の三姉妹の姿を描いた作品。 原作は川端康成、脚本を成瀬巳喜男が担当。 色々と気苦労の多い次女が主役のようで、スナック?で「一曲弾かせてよ。」と客にせがむのですがほとんどと言っていいほど断られます。そしてたまに弾かせてもらったらスナックのホステス?に嫌がらせをさせられたり酔っ払いに触られたりと散々な目にあって同情したくもなるのですが、実際飲み屋に行って流しの歌手に話しに割り込まれたらイラッとしそうだし、なにしろ次女役の堤真佐子が大正顔で魅力的でないのが辛いです。 好きな男と駆け落ちした長女も最初は幸せだったのに相手が結核か何かにかかって不幸のどん底と全体的に辛気臭い感じです。唯一景気のよい感じの妹がもうひとつ売れない感じのダンサーなのですが当時のモダンな感じの風俗を感じることが出来てなかなか興味深いです。 ネタバレ→ラストは次女がいざこざに巻き込まれヤクザに刺されてそのまま・・・どうなっちゃったの?←という衝撃のエンディング。ここのところだけいきなりすごいなという強烈な印象が残るのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
細川ちか子 (おれん) | 最近演技力をつけてきた感じのするファムケ・ヤンセンで。 |
堤真佐子 (お染) | 流しの歌手とか似合いそうなミニー・ドライヴァーで。 |
梅園竜子 (千枝子) | お気楽なかんじのケイト・ハドソンで。 |
踊子 (1957) | |
2008年3月 | |
浅草で楽器担当の山野とその妻で踊子の花枝同じ劇団でレビューを行い貧しいながらも幸せな生活を送っていた。そんな中、妹の千代美が田舎からやって来て踊子になりたちまち売れ出すのだが・・・ 奔放な妹とそんな妹に振り回される姉の姿を描いたドラマ。 京マチ子のあまりにも自由奔放なせいかつっぷりに姉の淡島千景が苦労しっぱなしというまるで橋田壽賀子ドラマを観ているような気になりました。 京マチ子は当然のように売れっ子になっていくのですが手癖が悪くて淡島千景のところに居候しているにも関わらず指輪とかを盗んだりしてハラハラさせます。それだけならいいけれど、踊りの先生と関係を持っていきなり妊娠。船越英二は何で怒らないのかなぁ?と思っていたら同じ時期に船越英二も関係を持っていてもしかしたら俺の子かも・・・ということで黙っていたんですね。 結局、淡島千景は二人を許して子供を引き取るという菩薩みたいなとことんいい人で何だか気の毒になりました。 それに引き換え京マチ子は踊子をさっさとやめて芸者になったと思ったら今度は二号さんになりたい。といって愛人生活。これ計算してここまでやっているならまだましなのですが何も考えず天然でこういう自由な行動が出来てしまうからたちが悪い。淡島千景はよくもまぁこんなダメな妹を毎回許すなぁと最終的に感心してしまいました。 嫁の妹と関係を持ってしまう旦那はご存知船越英二。こんな最悪の不貞を働いても許されるのはどこか三枚目で愛嬌があるからだなと改めて感じるのでした。。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
淡島千景 (花村花技) | 苦労が似合うナオミ・ワッツで。 |
京マチ子 (千代美) | 一度ナオミと姉妹役は経験済みで自由な感じのするケイト・ハドソンで。 |
船越英二 (山野) | 三枚目の役もこなすロバート・ダウニー・Jrで。 |
鬼の棲む館 DEVIL'S TEMPLE (1969) | |
2008年3月 | |
遊女の愛人、愛染めと山寺で暮らす太郎の下に妻の楓が太郎と取り戻しにやって来るのだが二人は悪びれることなくいつも通りの生活を続けていた。そんな中、山寺に上人がやって来て説教を始めるのだが・・・ 人間のエゴ丸出しの愛憎劇。 勝新太郎、高峰秀子、新珠三千代、佐藤慶というここまでタイプの違ったタイプの顔合わせも珍しくてそれだけでも観る価値はあると思うのですがなんと言っても高峰秀子と新珠三千代がそれぞれ異なるタイプの怖い女を演じていて面白かったです。 高峰秀子の執念深く勝新太郎が自分の元に戻ってくることを信じて山寺に住み着いてしまう神経がある意味図太いストーカーっぽい女もうっとうしくて怖いのですが、一番すごいのは新珠三千代。自分の美貌と肉体の素晴らしさを熟知した上で今まで何人の男を落としてきたことかという遊び人な女で自分に絶対的な自信を持っていて決して悔しがったりせず終始何か企んでいて薄ら笑いを浮かべていて今までの新珠三千代像を一蹴する悪女っぷりは斬新でした。 中盤、偶然山寺にやってきた佐藤慶が勝新太郎と高峰秀子に説教し改心させかけるのですが新珠三千代が体を使って仕返しをします。佐藤慶はかつてファムファタールの新珠三千代によって人を殺め仏の道に入った因縁があって新珠三千代の妖艶さが勝つか佐藤慶の忍耐力が勝つかという坊さんにとっては恐ろしい展開なのですがネタバレ→結局新珠三千代の肉体が勝ち新珠三千代は仁王立ちで高笑い。←ここまで吹っ切れた演技を見るとすがすがしいです。 みんなアクが強いので勝新太郎が一番地味に見えるところも珍しかったです。 ほとんど山寺で話が展開され登場人物も4人だけなので舞台を観ているようでもありました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
勝新太郎 (無明の太郎) | 暴れん坊という印象のベニチオ・デル・トロで。 |
高峰秀子 (楓) | 実力派のエミリー・ワトソンあたりで。 |
新珠三千代 (愛染) | どんな役もこなすケイト・ブランシェットで。 |
佐藤慶 (高野の上人) | 真面目な感じのエリック・バナで。 |
鬼火 (1955) | |
2009年9月 | |
新しい地区の集金をすることになった忠七は夫が寝たきりの病のため何ヶ月もガス代が未払いの一軒の家の担当となる。その家の妻のひろ子はガスを止めないよう懇願するが忠七はガスを止めないためにひろ子と一晩過ごす要求をして・・・ 加東大介の怪談調な短編。 加東大介がとても人間らしくてよい。中北千枝子の家に集金に行って留守だけど財布が台所に置いてあってそれを一瞬取ろうとするけど踏みとどまり、鍋で財布を隠してあげるのです。そして他の集金人にこの家は留守だから無駄ですよ。なんて言って意外といい人。 中田康子のところでは実は主人とお手伝いの中田康子が不倫の真っ最中。偶然、見てしまって家の主人に難癖をつけられつつも不倫と知って、本妻にこっそり告げ口して仕返しということもやったりいたって普通の人なのですが、幸薄の美人妻津島恵子にクラッときてガス代立て替える代わりにうちに来いなんて言う加東大介。思いっきり魔が差していますが、銭湯行って特上の寿司を頼み津島恵子とのいい感じになっている妄想まで見て憎めません。加東大介は。 そんな津島恵子は結局、罪悪感いっぱいに家に帰るのですが、翌日は悲劇的なことに・・・という展開。が、50分ない映画なのでこれからという時に終わってしまいちょっと中途半端というか物足りなさが大いに残りました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
加東大介 (忠七) | 似たような見た目のポール・ジアマッティで。 |
津島恵子 (ひろ子) | 幸薄系のロビ・ライト・ペンで。 |
帯をとく夏子 (1966) | |
2009年4月 | |
温泉芸者で造船会社の社長の佐久間の愛人となっている夏子は、佐久間の再婚話や新しい女の話を耳にして別れを決意する。そんなある日、小学校の担任だった久保と偶然再会し・・・ 若尾文子が愛人生活におさらばして自立する映画。 この3年後に「千羽鶴」という映画(ちなみに共演も同じく平幹二郎)で同じように愛人役をやっていてものすごく「よろめき」が激しいのですがこの「よろめき」の片鱗を見せ始めた作品のような気がします。 別れようと思っていてもなかなか別れられないのですが意外としっかりしていて、男がいなければ生きていけない感じではないし、自分が興味のない男に対してはそっけない態度をするのでそれほど「よろめき」度も強くなく後期の若尾文子作品をあまり観たことがない人でも観やすいと思います。 若尾文子もよかったのですが女にだらしのない社長役の船越英二がやっぱり上手いと思いました。経営のために妹の月丘夢路が持ってきた縁談を受け入れつつ、ビルのガラスふきのアルバイトをしている江波杏子とも偶然であってディスコでハッスルするようなしょうがない男なのですがどこか憎めないところはやはり人徳です。これが川崎敬三あたりだったら最低な男になっていたと思います。 本命の平幹二郎は若尾文子との相性もそれなりにいいとは思うのですが、若尾文子の小学校の先生だったという設定が年齢的にちょっと無理があって観ていて違和感がありました。幼なじみのお兄さん位の設定だったらちょうどいいのになぁと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
若尾文子 (福岡夏子) | 「よろめく」演技もできそうなペネロペ・クルスで。 |
船越英二 (佐久間春夫) | マイケル・ダグラスにお願いしたい。 |
平幹二朗 (久保健二) | ちょっと頼りない役が多いビル・パクストンで。 |
おやつ (1955) | |
2008年1月 | |
日本映画専門チャンネルによりますと「昭和30年に子供のしつけ対策として全国の母親に向けて製作されたニュース映画。」だそうです。ということで20分ととても短い作品になっています。 いわゆる食育ものののドキュメンタリーなのですがこれが面白かったです。 一応、二部構成になっていて前半は子供の躾についてといったところでしょうか?昭和30年ということで男の子は坊主が前髪直線切りで女の子はほぼオカッパ。時代を感じます。小遣いをもって紙芝居屋さんの駄菓子を買う子供達の中に落ちている駄菓子をこっそりくすねる少年に「この子の行く末が心配です。」的な辛口ナレーションが冒頭から炸裂しています。駄菓子屋の流行が唾液で紙をなめて当たりハズレが分かる「なめくじ」やあんこ玉の中に当たりハズレがあって散々いじくり回した挙句食べてしまう賭博性の高いものが子供達の間で流行っているのをお母さん知っていますか?と警鐘を鳴らしています。 後半はおやつを与えるお母さん達に指導。おやつは子供の栄養う不足を補うものだから甘いものを与えればいいってものではないそうです。なるほど・・・。それに市販のものは体に有毒な色素が使われているし大手の製菓会社がいくら清潔にしていても下請けの内職が不衛生なこともあるので(内職ををしなければならない人の貧しさをフォローするコメントありで)なるべく手作りのものがいいそうです。ということで子供を持つ親にとっては色々と考えさせられるニュース映画なのではないのでしょうか? | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! (ニュース映画のため今回はなし) |
おろち (2008) | |
2008年9月 | |
世間を見つめ続ける謎めいた少女おろちはある日、門前家にたどり着き大女優を母にもつ一草と理沙のことを見届けることにする。しかし門前家の女は29歳になると顔が醜くなるという宿命があり、母親の葵の顔が崩れだし・・・ 楳図かずお贋作漫画を映画化。 一応ホラーになると思うのですが、全体的な印象は「何がジェーンに起こったか」とか「サンセット大通り」のように美や名声に執着する狂女系の話に近いなぁと感じました。原作を読んでいないので先の展開が分からなかったのがよかったのか、どんでん返しも上手く盛り込んでいてよく出来ているとは思ったのですがどことなく古臭かった気もしました。 が、何と言っても木村佳乃の映画なので多少古臭い感じがしても問題なし。母親役と娘役と一人二役をこなしていますが、さすが木村佳乃は二役余裕でこなしています。 噂の姉妹で殴り合いのシーン強烈過ぎて笑えます。29歳になって顔が崩壊し始める頃が近づいて神経衰弱気味になった木村佳乃のために中越典子が尺字を持ってきて蓋をあけたらなぜかコウモリが。わざとじゃないのに何故?と思う隙もなく、木村佳乃の態度が豹変して虐待がすごすぎます。そして水を持ってくるのが遅いといっては持ってきた水をぶっ掛けそして髪を掴んで部屋に連れ込んで折檻。ここまで来るとほとんどギャグの世界ですね。 感心したのは母親時代の出演映画でこれまた全然違う雰囲気を出していること。恐怖で絶叫したかと思いきや自暴自棄になったり感情のオンオフが自由自在で木村佳乃は格が違うと思いました。 谷村美月も二役やっていて人間の時は流しの歌手?なのですがこれが素で上手くて感心しました。猟奇的な映画に出ている印象が強いのですが普通の作品もかなりいけそうな予感。(役どころはちょっと大人をバカにした感じの役が合うと思います。) あと執事役の嶋田久作はこういう時代がものすごくはまり過ぎです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
木村佳乃 (門前葵/一草) | キルスティン・ダンストに熱演してもらいたい。 |
中越典子 (門前理沙) | しごかれ役が似合うブライス・ダラス・ハワードで。 |
谷村美月 (おろち/佳子) | 歌も歌えるエヴァン・レイチェル・ウッドで。 |
音楽 (1972) |
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2005年10月 | |
音は聞こえるが音楽はまったく聞こえないとう症状をもった弓川麗子という人物が精神科医の汐見の下にやってくる。汐見はやがて麗子の症状が兄にあると見抜くが・・・ 増村保造監督によるATG作品。ATG作品なだけにやっぱり一味も二味も違っていました。しかも原作が三島由紀夫だからなのか内容も濃かったです。 麗子が音楽が聞こえないと同時に不感症だったっていう設定にぶっ飛びますが精神科医の細川俊之が診察するたびに音楽が聞こえないのは嘘で次の診察じゃ聞こえないって言ったことが嘘だったみたいな展開にも笑えるし、麗子が妄想で先生と寝たと書いた日記を婚約者が読んで、「こんなハレンチな先生に麗子は治療させん!」と怒っていたのに数十秒後には先生にあっけなく説得されて「先生、麗子を治してやってください。」とまるで昼ドラのような急展開に笑っちゃいました。 病院の看護婦というか受付嬢も麗子以上に異常にミニスカだし、あの患者性格悪そうだわと言い放ったりするところや治療費が初診料5000円で診察料6000円って今の時代に置き換えても法外に高いのにこの時代じゃもっと価値的には高いんじゃないのだろうか?というところがいちいち気になるし、しかも麗子が催眠療法?からふと気がついて勝手に自己分析を始めると毎回先生に「勝手に決め付けるんじゃありません!」叱られるところもなんだかツボでこの時代のこういう映画っておもしろいなぁといつもながらに思いました。 この時代といえば婚約者の江上の森次浩司はウルトラセブンの人だそうで体格が変にしっかりしているのでベッドシーンとか妙に生々しいのもこの時代の特徴のような気がしました。体もテカテカしていたし・・・ ハサミが印象的に使われているのですがキャラが濃すぎていまいちなんでハサミなのか忘れてしまいました。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
黒沢のり子 (弓川麗子) |
エマニュエル・ベアールあたりにお願いしたい。 |
細川俊之 (汐見和順) |
ちょっと胡散臭さも感じさせるティモシー・ハットンで。 |
森次浩司 (江上隆一) |
がっちりしているブレンダン・フレイザーとか。 |
女が階段を上る時 WHEN A WOMAN ASCENDS THE STAIRS (1960) | |
2011年1月 | |
銀座で雇われマダムをしている圭子はマネージャーの小松と経営者に呼び出され売り上げが減ったことを責められていた。体を張ることの出来ない圭子は自分のやりかたで店を盛り上げようとするが・・・ 雇われマダムの切ない生き様を描いた成瀬巳喜男と高峰秀子という黄金コンビの女性映画。 年末に高峰秀子が亡くなるというショッキングなニュースを受けて元旦は高峰秀子主演作で追悼しました。水商売している女の人の幸せ探しっぽい感じで期待しては裏切られ、実家からは金の無心という状態は今の昔もちっとも変わっていません。この役が高峰秀子なものだから家族に金を当てにされてイライラが爆発するというところが似合いすぎています。家族に言いにくいこともズバッというところも高峰秀子らしくてよかったです。 そして高峰秀子を取り巻く男たちも豪華です。バーのマネージャーに仲代達矢、そして高峰秀子に憧れて誠実にアタックしてくる加藤大介、やっぱりこのコンビがしっくり来る森雅之に中村鴈治郎や小沢栄太郎とすごい顔ぶれです。 どの人もそれぞれ一癖も二癖もあって苦労する姿が切ないです。 そういえば劇中で実家の月島から通わないで高いアパートを借りて住んでいて、その理由が下町に住んでいると知らない間に庶民臭が身についてしまうからというプロらしい理由と、衣装は高峰秀子が自前の着物を着ているという部分のプロ根性が劇中と現実と交わって高峰秀子らしいなと思うのでした。 そしてほろ苦という感じで物語が進んでいくところも成瀬巳喜男作品らしかったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
高峰秀子 (矢代圭子) | シャーリーズ・セロンあたりにお願いしたい。 |
森雅之 (藤崎信彦) | 渋くて雰囲気のあるデニエル・デイ=ルイスで。 |
仲代達矢 (小松謙一) | 良識のありそうなアーロン・エッカートで。 |
女巌窟王 (1960) | |
2006年7月 | |
キャバレー「ブルー・ムーン」の踊り子ルミとエミの姉妹はある日兄が麻薬とは知らず支配人の荷物の受け渡しの仕事を引き受けるが金竜組に襲われ麻薬を奪われてしまう。支配人たちの怒りを買った兄は地下室に閉じ込められルミとエミは兄を助け出すのだが・・・ いきなりキャバレーで照明だけでも極彩色で濃厚でめまいがしそうなのに三原葉子と万里昌代の妖しげな踊りで始まり新東宝映画100%でクラクラします。 話も兄が麻薬と知らずに荷受に失敗したら容赦なく監禁。それを知った姉妹が助け出すも容赦なく殺されるし姉妹を助けたいいやくざもあっけなく殺されて本当、三原葉子に関わる男は吉田輝雄以外ほとんど死んでいくような気がします。 「女巌窟王」ってタイトルもそれだけでインパクトがあってすごいです。確かに洞窟で苦渋の日々(といっても2、3日)を送って別人に成りすまして復讐するってところは確かに巌窟王ですけど、無人島にたまたま通りかかったのが吉田輝雄ってところなんかもものすごく強引なところが楽しいです。洞窟生活でボロボロになったワンピースなんてビキニに作り変えて何気に無人島生活をエンジョイしちゃっているし。 洞窟でお宝をゲットした悪党どもに復讐し始める三原葉子はいきなりパーマをあてたマダムに成りすまし一気に老け込みます。三原葉子はやっぱりワンレン、ボディコンじゃないと年取って見えます。そして終盤もちろん正体がバレ追いつめられるのですがハイヒールで逃げる三原葉子がものすごく早くて笑えます。 最後もなぜか三原葉子と万里昌代の呪いのダンスで悪党をやっつけるステキな展開でやっぱり新東宝だなと思うのでした。 そしてなぜか吉田輝雄は二人の姉妹の復讐に協力して見た目とか全体的にへっぽこなのになぜか相変わらず強かったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
三原葉子 (ルミ) | 歌って踊れるキャサリン・ゼタ=ジョーンズにやってもらいた。 |
万里昌代 (エミ) | セクシー系レベッカ・ローミンにお願いしたい。 |
吉田輝雄 (英次) | 一見腕っ節は強くなさそうなキリアン・マーフィが強かったみたいな印象。 |
女吸血鬼 THE LADY VAMPIRE (1959) |
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2005年12月 | |
学者の娘、松村伊都子の誕生日に20年間行方不明だった母親の美和子が突然帰ってくるのだが美和子の姿は20年前と変わない姿だった。そのころ絵画展で特賞を受賞した絵のモデルが美和子そっくりだったことから伊都子の婚約者で新聞記者の大木民夫は調査を始めるのだが・・・ オープニング、池内淳子の誕生日に急ぐ婚約者の新聞記者が乗るタクシーが謎の女(三原葉子なんですけど)を轢いてしまい、タクシー運転手が「轢いちゃいました・・・」って一言。場内爆笑でこりゃとんでもない感じの内容だなと思ったらやっぱりおかしな内容でした。 池内淳子の母親が三原葉子で20年間なぜか若々しいってのは三原葉子のナイスボディを見せたいんだなぁってのがなんとなく分かるのでこれはまぁいいんですが天知茂の吸血鬼が普段はおとなしいけど満月になると凶暴化して狼男か!って言いたくなるし新聞記者に追い込まれた天知茂が偶然にも月を見てしまい凶暴化してそこら辺の女を吸血しまくりでやけくそです。 しかも天知茂がなんで三原葉子をさらったかっていうと彼女が天草四郎の末裔で島原の乱の時代に現代の三原葉子にそっくりの姫の血を吸ったらそのまんま吸血鬼になって何百年も行き続けているってぶっ飛びものの設定がよく分からなくってカルトな雰囲気がプンプンします。 それに凶暴な吸血鬼になっている時の天知茂は悲しいかなペナルティーのワッキーみたいでこんなへんてこな天知茂は見たくなかったですよ。面白かったけど・・・ 新東宝映画の作品ってけっこう奇抜なものが多いのですが池内淳子って売春ものを題材した「セクシー地帯」にしても怪談ものの「東海道四谷怪談」にしても奇抜な作品の雰囲気になじんでいるんですけどちゃんと清楚というかまともな印象ですごく不思議な人だなぁと感じました。 あと、三原葉子が吸血鬼になるから「女吸血鬼」というタイトルになっているのかと思いきや三原葉子が吸血鬼になるどころか女の吸血鬼一人も出てこなくってこのタイトルは結局最後まで謎なのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
和田桂之助 (大木民夫) |
地味顔なのに急成長しているジェイク・ギレンホールで。 |
三原葉子 (松村美和子) |
「ブラザーズ・グリム」の鏡の女王っぽくいつまでも若いという設定なのでモニカ・ベルッチを。 |
池内淳子 (松村伊都子) |
普通の娘さんという感じのアリソン・ローマンで。 |
天知茂 (竹中信敬) |
吸血鬼経験のあるスチュワート・タウンゼントで。 |
婦系図より 湯島に散る花 (1959) | |
2008年6月 | |
大学教授の酒井に育てられた早瀬主税は士官学校講師就職祝いの席で出会った芸者のお蔦と出会いたちまち二人は恋に落ちる。しかし教授の酒井に知られ主税は将来のために別れるように説得され・・・ 天知茂主演の悲恋もの。 とても文学的な香りのする作品で内容もものすごく可哀想なのですが新東宝作品なので何故かいちいち笑えてしまいます。 天知茂が似合わないキャラを演じていて演技もものすごく不自然なのですがお蔦に恩師の先生に早く報告してと言われても中々言い出すことが出来ず最終的には恩師の方が先に知ってしまい別れろといわれてあっさり別れるところが優柔不断すぎて一々「あぁ・・」なんて悲劇的にため息ついてはダメな決断をする天知茂に笑っちゃいけないけれど笑ってしまいます。 親代わりの恩師もものすごく理不尽で、新聞に載った二人が交際しているとは思ってもいないから職場の教授たちに二人が付き合ってたら仕事を辞めるなんて言い出して本当に付き合っていたいたものだから、天知茂に二人が付き合っていたら辞めなきゃいけないんだみたいな泣き言を言って別れさせるところは無茶すぎます。そもそも芸者のお蔦を紹介したの先生だし・・・ 密かに天知茂を想っている先生の娘が何となく事情を察して身を引くところがいじらしいです。香川京子みたいな娘さんです。 泉鏡花もので同じ感じの作品が三隅研次監督で主演は市川雷蔵の「婦系図」があるそうなのですが、こちらは本当に悲恋ものという感じでまともな内容になっていそうなのでぜひ見比べてみたいです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
天知茂 (早瀬主税) | 「トロイ」のオーランド・ブルームを思い出してしまいました、 |
高倉みゆき (お蔦) | 悲恋ものが似合いそうなクレア・デーンズで。 |
女死刑囚の脱獄 (1960) | |
2007年3月 | |
資産家の娘、今井京子は父親の決めた島明夫という許婚がいたが赤尾という恋人と結婚を誓っていた。そんなある日父親が毒殺され京子は殺人の容疑で死刑の判決を受けてしまう。面会に訪れた赤尾は明夫の犯行をほのめかし京子は復讐のために刑務所を脱獄するが・・・ 新東宝らしいタイトルのサスペンス映画。 相変わらず新東宝の映画は短いから展開が速くていいですね。ろくな取調べもしないでいきなり裁判で死刑になってしまうのはご愛嬌で、刑務所シーンはさすが女刑務所らしく?女同士の戦いとレズシーン(主人公はお約束どおりレズに目をつけられ体を狙われる)に脱獄を手伝ってくれるいい女囚とツボをおさえています。70年代になるとこういうシーンは露骨すぎるものもあるのですが、これは60年代で規制があったせいかこういうシーンも見せすぎず控えめでこれくらいが案外ちょうどいいです。 脱獄して明夫のもとに乗り込んだ京子は無罪を信じる明夫を見て真犯人は別にいるということで協力して赤尾のもとに向かうのですが警察の追っても迫っていて・・・という展開が繰り広げられるのですがこの刑事が新東宝ではお馴染み、さまーずの大竹を悪くしたような沼田曜一でまた悪徳刑事だろうと高をくくっていたら今回は京子の無実を信じるいい刑事で意外でした。 最後はあと2、3分しか残ってないけど解決するの?と余計な心配をしてしまいましたが強引に残りの2、3分で解決させてしまうところが新東宝らしいなぁと感じるのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
高倉みゆき (今井京子) | 囚人服も着こなしそうなペネロペ・クルスで。 |
和田桂之助 (島明夫) | いつも巻き込まれるクライヴ・オーウェンで。 |
寺島達夫 (赤尾荘一) | いい人そうだけど実は悪い奴だったという設定が似合うポール・ベタニーで。 |
沼田曜一 (宮田警部) | ゲイリー・オールドマンが「バットマン」で意外にもいい刑事だった時のよう。 |
女間諜暁の挑戦 (1959) | |
2008年11月 | |
元陸軍中尉の鈴木は三津井雪の命令で、重慶のスパイとされる人気京劇スター林晃彩に近づくため、岸井と名を変え晃彩に近づくことに成功するのだが・・・ スパイ大作戦も真っ青の新東宝の潜入スパイもの・・・ 間諜と書いてスパイと読む。ということで天知茂の上司の高倉みゆきが主役のようですが、実質的には天知茂と三原葉子が主役みたいなものでした。 そもそも天知茂がスパイに選ばれた理由がなかなの美男子だからという大雑把なところがいいですね。そんな美男子っぷりを活かして中国のスパイのボス(と思われる)三原葉子に接近してテロ情報をつかめという分かりやすい指令とうのも新東宝らしいくてグッド。 案の定というかお決まりのように天知茂の色気にやられて三原葉子は恋に落ちますがコロっとその魅力に参った瞬間の天知茂とたらほくそ笑むんですよ。この瞬間だけものすごく悪人面になるところが大いに笑えます。そしてほくそ笑んでいたくせにあっさり三原葉子にぞっこんになるところが天知茂らしくていいですね。 そんな天知茂らしいところといえば、三原葉子との関係に苦悩しつつもまんまとアジトに潜入成功したのに物音を立てて敵に見つかるんですよ。おっちょこちょいです。 三原葉子は中国の京劇スターという役どころなので中国語も話せば踊りも踊りますが、踊りは全然京劇の踊りとは違う感じでいつものキャバレーでセクシー踊るダンスが控えめで使用が華やかになったくらいですが踊りが結構あるので今回の三原葉子はいろいろと頑張ったなと思います。 一応主役の高倉みゆきは宝塚の男役みたいな格好をしてただ命令して、天知茂が裏切ったのでは?と上層部から疑われた時も私は信じています。みたいなことを言うだけなのでもうひとつ面白みにかけたかなぁ。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
高倉みゆき (三津井雪) | FBIとかの役も意外と多いローラ・リニーで。 |
天知茂 (岸井隆) | ラテンのイケメン、ロドリゴ・サントロにやってもらいたい。 |
三原葉子 (林晃彩) | アンジェリーナ・ジョリーにダンスを踊ってもらいたい。 |
女と三悪人 (1962) |
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2004年12月 | |
美人役者で座長の瀬川喜久之助には胡散臭い坊主の竜運和尚や浪人の鶴木勘十郎ら一癖も二癖もある男たちが惚れていた。そんなある日スリと間違われた流れ者の芳之助が一座に逃げ込んできて喜久之助はかくまうのだったが・・・ ここのところシリアスな市川雷蔵作品ばかりだったのですが、逃げ込んだ一座の女形のスターが駄々をこねて舞台に穴が開きそうな時に昔少し演技をかじっていたという芳之助が舞台に出て一躍人気者になるのですが、この時の出し物が「弁天小僧」だったり軽妙な展開でこの作品は楽しかったです。 すでに喜久之助に惚れている和尚と勘十郎は流れ者の芳之助にちょっとした嫉妬みたいなものを抱き芳之助に恨みのある劇団のスターと殺し合いをさせたりするけど最後ははみ出し者同士友情を育んでしまうしまうところがいい。喜久之助の借金を払った金が偽金でそれが元で芳之助はしょっ引かれてしまうのですが、本当に喜久之助が芳之助を愛していると知った二人は惚れた女のためだからと偽金を受け取った勘十郎はそれを作った和尚に出頭を促し和尚は了解する。世間からはちょっとした悪人に見られがちだけど根はいい奴こういう設定は観ていてスカッとします。 勝新太郎の偽金を作る生臭坊主具合は見た目から完璧で楽しかったけど、なんと言っても大木実がこんなにもいいとは思わなかった。観る前は雷蔵、勝新にはさまれちゃただでさえ微妙な存在感なのに完全に影が薄くなると思っていたのに大木実特有の何か企んでいそうで敵なのか味方なのかはっきりしないその持ち味が活かされていて雷蔵、勝新と対等の存在感を見せていたのには感心しました。 中村玉緒も雷蔵を一方的に好きになる飯屋の娘なのですが喜久之助に嫉妬するあまり芳之助の殺人を密告するという始めて見る役どころも新鮮でした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
市川雷蔵 (芳之助) |
ここのところ兄オーウェンなみに活躍が目覚しいルーク・ウィルソンで。 |
山本富士子 (瀬川喜久之助) |
すでにNo.1の風格のニコール・キッドマンで。 |
勝新太郎 (竜運和尚) |
ビリー・ボブ・ソーントンは胡散臭い役もよく似合う気がします。 |
大木実 (鶴木勘十郎) |
不思議と大作が次々と舞い込むクライヴ・オーウェンは大木実的で。 |
女奴隷船 (1960) | |
2007年7月 | |
敗戦色濃い第二次世界大戦末期、須川は密命を受け日本へ向かう途中敵機に撃墜され気がつくと女王が仕切る女奴隷船だった。しばらくすると女奴隷船は海賊に襲われ女王ともども海賊船に閉じ込められて・・・ 新東宝の看板女優?の三原葉子が悩殺するアクション?映画。 菅原文太が正義感溢れる熱血将校を主役で演じてはいるものの完全に三原葉子の作品でした。 女たちを騙してアジアに奴隷として売りさばく商売を生業としていて自分のことを自らクイーンと呼び、奴隷からもクイーンと呼ばれ恐れられているところも三原葉子らしくて笑えますが海賊に捕まった時にあっさり海賊のボス丹波哲郎に色気でせまり特別扱いしてもらう身替りの速さときたらさすがです。 そして密かに形勢逆転の機会を狙い菅原文太の味方をしたと思いきやそっけなくされたからといって再び丹波哲郎側につくという何回裏切っているんだという男は終始三原葉子に振り回されっぱなしでした。 新東宝の清純派?の三ツ矢歌子はとにかく真面目な娘さんでその純情さでなにかと菅原文太が構うので半分ヤケクソぎみになる三原葉子そしてラストはクイーンも女奴隷たちも力をあわせて海賊どもに立ち向かうというベタな展開もなんだかアトラクション的で新東宝らしい楽しさがあるのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
菅原文太 (須川) | 真面目な役が多いマット・デイモンあたりで。 |
三原葉子 (女王) | ボンド・ガール時代のファムケ・ヤンセンで。 |
三ツ矢歌子 (瑠美子) | いい娘さんという感じのブライス・ダラス・ハワードで。 |
丹波哲郎 (海賊の首領) | こういう時のボスはショーン・ビーンがいい。 |
女であること (1958) | |
2008年5月 | |
弁護士の佐山は弁護中で死刑宣告されている受刑者の娘の寺木妙子を預かり面倒を見ていたが、ある日佐山の妻、市子の親友の娘の三浦さかえが家出をして佐山家に転がり込んでくる。さかえの奔放な性格はやがて家族のバランスを崩していき・・・ 川端康成原作、川島雄三監督で森雅之、原節子が奔放な少女に振り回される映画。 香川京子が死刑囚の娘という役どころを演じているのですがこれがイメージにぴったりで死刑囚の娘なんだから恋もしてはいけないわ。なんて後ろ向きな心持なので若干病弱気味というところも相まって幸薄い感じが観ていて切なくなってさらに可哀想なエピソード満載で思わず応援したくなります。 そんな香川京子と正反対の久我美子が観ていて最悪でした。香川京子の飼っている小鳥に餌をあげても食べないからといって鳥かごを乱暴に揺らしたり、香川京子の父親のことを面白半分に聞いたりととにかくデリカシーがないのです。久我美子のこんな役は初めて見たのでさわやかで良い子そうだった久我美子がどうしちゃったの?と衝撃的でした。 香川京子が森雅之、原節子が気にかけられているのも気に入らなく久我美子が二人の気を引くためにキスをしたりもしてなんだかすごかったのですが原節子がものすごく冷静で森雅之にさかえちゃん(久我美子)にキスされたでしょ。あの子はそういう子なんです。と全てを見抜いているところはさすがだと思いました。 森雅之もあまりに奔放な久我美子の振る舞いに態度が一気に氷点下になるところが森雅之らしくてよかったです。(もちろん夫婦の仲もギクシャクします。) 原節子の昔の恋人役が三橋達也なのですが誰に対しても話の分かるものすごいカッコいいおじさま的な感じで和製ジョージ・クルーニーという印象を強く受けました。 あとさりげなく丸山(三輪)明宏がテーマソングを歌っていて本人もオープニングに登場。間接的に原節子と共演というかコラボレートというやつをやっています。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
森雅之 (佐山貞次) | 弁護士とか似合いそうなレイフ・ファインズで。 |
原節子 (佐山市子) | 凛とした感じのクリスティン・スコット=トーマスで。 |
久我美子 (三浦さかえ) | お騒がせでチャレンジングな役が多いエレン・ペイジで。 |
香川京子 (寺木妙子) | 明るい役もいいけれど幸薄い役が似合うブライス・ダラス・ハワードで。 |
女と味噌汁 WOMEN AND MISO SOUP (1968) | |
2008年10月 | |
女将から信頼のある芸者の千佳子は将来のために味噌汁屋を始めるがそんな時、母親の違う弟が千佳子の前に現われて・・・ 池内淳子主演の女性映画。 池内淳子、ただいま「渡る世間は鬼ばかり」に今シーズンからレギュラー入りしていますが見た目があまり変わっていないことが驚異的。若い頃はある意味、老け顔だったんですねぇ。山岡久乃や長山藍子も出ていていまから40年前の作品なのでいったい池内淳子はともかく、長山藍子は何歳なんだろうと気になって仕方がありませんでした。そういう意味では田村正和が母親が違う弟役で出てくるので田村正和も芸歴40年以上でこちらもいったい何歳なんでしょう。 川崎敬三が酔ってどうしようもなくなって自分の家に連れて帰って泊めるというお人よしにもほどがあるというしっかり者の芸者の池内淳子はいつの間にか両思い的な関係になりかけるも実は妻帯者だったり、医者の北村和夫に結婚を申し込まれてこれで将来も大丈夫と思ったら北村和夫の母親に芸者なんてとんでもないと破局。 同窓会で再会した佐藤慶はいかにも胡散臭いと思ったら本当に胡散臭いことになっていて、唯一気心の知れた同級生の田中邦衛も妻帯者という男運がとことんない女の話に仕上がっていてネタバレ→結婚がすべてではないと思いますがこういう真面目でしっかり者のキャラクターには最後、最高の相手が見つかって終わってあげてほしかったです。← それにしてもライトバンでの味噌汁屋これは結構いいアイディアで、今やっても結構儲かりそうだと思います。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
池内淳子 (室戸千佳子) | しっかりしていそうなジョアン・アレンで。 |
女の一生 LIFE OF A WOMAN (1962) | |
2008年12月 | |
明治38年、両親を失ったけいはある晩引き取り先の叔父の家から追い出され路頭に迷っていた。けいはピアノの音色が聞こえる堤家につい足を踏み入れてしまうがそれをきっかけに堤家の女中となるのだが・・・ 京マチ子主演のまさに女の一生もの。 さすがに少女時代の京マチ子は無理がありますが、こき使われた挙句に家を追い出されるという泥臭い過酷な人生を送る姿は京マチ子がどんな困難でも乗り越えられそうに思えてよく似合っています。 そんな京マチ子が堤家の次男の田宮二郎の取り計らいで女中として働き始め当然のように?恋仲になるのですが、堤家の長、東山千栄子に見初められ、気弱な長男と結婚して商売を盛り上げていってはくれないだろうかと言われ、恩を大事にする京マチ子は中国人をこきつかって儲けているような家を出ようと誘う田宮二郎の申し出より、世話になっている東山千栄子の申し出を受け長男の船越英二と結婚するのです。こういう時いつもいつも損な役回りをするのは船越英二なんですよねぇ。 となんだかんだ時が過ぎて東山千栄子が死んで京マチ子の時代が来るとこれまで以上に見せは繁盛してさすがなのですが当然のごとく家のもの(堤家の妹たち)からは色々言われ、娘の叶順子からも夫の船越英二にも出て行かれて孤独になるのですが商売だけは守り通そうとする強い姿がいかにも京マチ子という感じがして飽きさせません。そんなところに中国から急に田宮二郎(老けメイクが不自然)が戻ってくるのですが戦時中に反政府的な活動を行っていたので警察に捕まってしまいます。せっかく再会した二人なのにまた離れ離れみたいなメロドラマちっくな展開もありと盛りだくさん。 最後は空襲があり、終戦。全てを失った京マチ子ですがある奇跡があり希望を持たせるハッピーエンドになんだか退屈しないと思ったら監督は増村保造と知って納得するのでした。 興味深かったのが東山千栄子がいつもはいいお母さんという印象が強かったのですが商売の為なら鬼のようになる厳しい母親をその弟の小沢栄太郎がいやらしい役が多いのに家のことや京マチ子のことを心底心配するいいおじさん役をやっているところも面白かったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
京マチ子 (布引けい) | こういう役はアンジェリーナ・ジョリーが似合いそうです。 |
女の勲章 (1961) |
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2005年5月 | |
お嬢様育ちの大庭式子は自宅で洋裁教室を開いていたが生徒数が増えてきたため洋裁学校を開校し事業家、八代銀四郎のおかげで学校は軌道に乗るが、野心的な銀四郎は式子の弟子を口説き落とし始め・・・ 大映作品でこれに野添ひとみと山本富士子が加われば完璧なんじゃないか?という女優陣の豪華さがたまりません。しかも京マチ子の弟子達が野心的で相当したたかなのがすごかったし、なんといっても田宮二郎の心底嫌な役にびっくりしました。 若尾文子は繊維会社の社員と密かに肉体関係を持っていてファッションショーで使用する生地を手柄のように見せかけ出世を企さらには学校で使用する備品は安い物にして余った予算は自分の懐に入れるような野心的な女。 叶順子も仕事一筋で実は体を使ってでも出世したいタイプの女でラストの言動からするとおそらく一番薄情な女。 中村玉緒は一見ボーっとしているけど若尾文子の不正や叶順子の行動、田宮二郎が全員の女と関係している事を知っていたけど自分の得にならない事だからと言っていざという時まで彼らの秘密を握っているような人間で最終的に工場まで手に入れてしまう一番したたかな女で結局、玉緒の演技も場の雰囲気もって行きかたも含め一人勝ちのような気がしました。 京マチ子がお嬢様育ちという設定だからちょっとすっとぼけた感じがあって田宮二郎に無理やり抱かれそうになって恥らって微妙に抵抗していると「いい歳して何はずかしがっとんねん。」とか「35にもなって何言っとんねん。」とか抱かれるたびに歳のことを突っ込まれて笑えます。逆に無理やり抱かれそうになって「よしてよ。」と言うものの結局抱かれる若尾文子はいつもの気だるさが彼女らしくて相変わらずいいです。 ネタバレ→京マチ子は田宮二郎と手を切るために全てを譲渡する提案をするけど強欲な田宮二郎はそれを拒否し、結婚を誓った森雅之にも逃げられ自殺するという最後だけいきなりやるせない感じになるんですけど弟子達は本当の自分を取り戻し、田宮二郎を拒否し呆然と立ち尽くす田宮二郎の姿で終わるエンディングが印象的でした。← |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
京マチ子 (大庭式子) |
キム・キャトラルが抱かれる時に恥らったら面白いかも。 |
若尾文子 (津川倫子) |
意外と若尾文子っぽい感じもしなくはないソフィー・マルソーで。 |
叶順子 (坪田かつ美) |
仕事一筋の印象が強いサンドラ・ブロックで。 |
中村玉緒 (大木富枝) |
ボーっとしていそうでしたたかそうなリサ・クドローで。 |
田宮二郎 (八代銀四郎) |
次々と女優を口説き落としている印象の強いゲイリー・オールドマンで。 |
「女の小箱」より 夫が見た (1964) |
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2005年2月 | |
株式課長を任されている川代誠造は株を買占め会社を乗っ取ろうとする石塚の企みを阻止することだった。そんな多忙な夫に愛想をつかした妻の那美子は友達に誘われて行ったバーで経営者で株を買い占めている男、石塚と出会うのだが・・・ 前半は川崎敬三と田宮二郎の株買占めにまつわる攻防で、川崎敬三が田宮二郎の秘書江波杏子と付き合って情報を引き出すまではよかったが妻の若尾文子にばれて逆切れしたり、そのくせ若尾文子が田宮二郎と一緒のところを見た日にゃ暴力振るうわで川崎敬三ってこんなダメな男だっけ?と今までのイメージを覆されましたけどそんなことでは絶対泣かない若尾文子は相変わらず強いななんて思ったりしましたが、やっぱり今回は岸田今日子に尽きます。バーのママなんですけど出だしが暗がりからぬーっと出てくるからちょっとしたホラーですわ。御召し替えも役柄から多いのですがメーテル風の髪型、インパクトはすごいんですけど意外と似合っているから不思議です。 警察に捕まった田宮二郎を迎えに行ったものの一緒に出てきたのは若尾文子を影からひっそり見つめるあの視線、岸田今日子は内に秘めた情念の凄みを持たせたら右に出るものはいないんじゃないのかなと思います。最後なんて10年つくしたのに裏切った田宮二郎に「最後に抱いて。」と迫りその隙に刺してギリギリのところで生かしておくだけならまだしも、憎き若尾文子を痛めつけようと「強盗、暴行、顔を切る。」と淡々とした口調で脅しをかけるところが恐ろしいしそれを止めようとする重症の田宮二郎に「動くと死ぬのよ。」だって。無表情なところがますます恐すぎます。恐いんですけど観ている間、岸田今日子はすげーなと思い終始にやついてしまいました。 田宮二郎も根はいい人だから最後岸田今日子に別れを次げたのが失敗ですね。こういうタイプは黙って消えるのが一番なのです。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
若尾文子 (川代那美子) |
可愛らしいトラボルタの奥さんのケリー・プレストンで。 |
川崎敬三 (川代誠造) |
汚いやり口で相手を陥れる役が多いレイ・リオッタで。 |
田宮二郎 (石塚健一郎) |
最初は敵ぽいけど最後は愛に目覚める・・・みたいな役もいけそうなヴィゴ・モーテンセンで。 |
岸田今日子 (西条洋子) |
「危険な情事」のグレン・クローズを思い出し・・・ |
女の座 A WOMAN'S PLACE (1962) |
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2005年7月 | |
二人の息子、五人の娘がいる石川家に嫁いだものの長男で夫を亡くした芳子を中心に石川家に起きるさまざまな出来事を描いた群像劇。 出演者もめちゃくちゃ豪華で、笠智衆と杉村春子(後妻)夫婦の長女が三益愛子でその旦那が加東大介で娘が団令子。次女に草笛光子、三女に淡路恵子でその旦那が三橋達也。四女に司葉子に五女が星由里子。で次男が小林桂樹で亡き長男の嫁が高峰秀子というありえないくらいのすごい家庭に何事もないわけがなく、この映画「渡る世間は鬼ばかり」の原点はここにあると感じるような作品で面白かったです。そう思っていてたら鑑賞後の司葉子・小谷承靖監督トトークショーで同じような事を言っていたのでちょっとうれしかったです。(ちなみに司葉子は姉妹の中で唯一高峰秀子をかばうまともな役どころです。) この姉妹の中で一番面白いのは九州からやってくる淡路恵子、三橋達也夫妻。出てきた瞬間から胡散臭いなぁと思ったら案の定、職を失ったことを隠してちゃっかり石川家に居ついちゃって経営している雑貨屋で売られているタバコをちょろまかすようなダメ夫婦っぷりがちょっとムカつくんですけど、三橋達也の適度におちゃらけた性格が笠智衆に気に入られちゃって観ているこっちも憎みきれないところがなんかリアルでした。最終的に店も自分らの店のように振る舞って改造始めているし・・・ 次女の草笛光子もこの時から男よりか金というキャリアウーマン的な役がすでに定着していてかっこいいのですが、途中で杉村春子の実の息子宝田明に恋をするも宝田明は微妙に高峰秀子が好きなもんだから嫉妬のビンタをを喰らわせるという昼ドラ並の展開も混ぜているし、昼ドラ並といえばネタバレ→高峰秀子の息子が線路に飛び込み自殺する←という衝撃な展開もあり濃厚なドラマをすっかり堪能しました。 最初にも書きましたけど、これ「渡鬼」的なエピソードがいたるところに散りばめられているのがよく分かり(小林桂樹がラーメン屋だったり、高峰秀子が泉ピン子的な役どころだったり)、できれば連続ドラマでじっくりとこの家族の生活を観たかったなぁと思うのでした。 最初人物関係というか石川家の家族事情とというについて行くのが精一杯だったので機会があったらもう一度観たいなと思います。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
高峰秀子 (石川芳子) |
ジュリアン・ムーアあたりにこの耐える嫁というか不幸な嫁をやってもらいたい。 |
笠智衆 (石川金次郎) |
笠智衆同じく理想のおじいちゃんという雰囲気のアレック・ギネスで。 |
杉村春子 (石川芳子) |
人情味あふれていそうなアン・バンクロフトで。 |
女の中にいる他人 THE STRANGER WITHIN A WOMAN (1966) |
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2005年7月 | |
田代勲は知人の杉本隆吉の妻と不倫をしていたが誤って殺してしまう。田代を疑う者はいなかったが、精神的に耐えられなくなった田代はその事を妻の雅子に告白するのだが・・・ 成瀬作品のサスペンスはちょっと珍しいし嫌いじゃないんですが、個人的にはやっぱり家族や夫婦のごたごたした問題を取り扱ったホームドラマの方が成瀬作品を観ているという感じがして断然好きですね。 小林桂樹が三橋達也の嫁と不倫しているという設定がいつもなら三橋達也がやりそうなところですけどそんな役どころ小林桂樹がやっちゃうってところが新鮮でした。しかも今回殺人まで犯して容疑すらかからない状態なのにここは小林桂樹の人のよさ全開でたまらず新珠三千代だけじゃなく三橋達也にも告白しちゃうんですけど三橋達也このこと許しちゃうんですよねぇ。っていうか新珠三千代の自首したら家庭と子供はどうなるの?という意見に賛同して自主を止めるよう逆に説得しちゃうわけですよ。三橋達也夫婦関係は別段冷え切っていたというわけじゃないのになんだかここのところは共感できませんでしたね。 だけど最後のネタバレ→口封じのために夫の飲み物に毒を仕込む妻の新珠三千代←はこれまた成瀬作品でよく見かけるいやーな余韻を残した終わり方なんですけどこれがまた成瀬作品の魅力でもあると思うのでした。 小林桂樹や新珠三千代はよからぬ事を考えたりすると画面がエンボス調になって心の葛藤みたいなものを表現するところなどはスタイリッシュな雰囲気でちょっと斬新だなと感じました。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
小林桂樹 (田代勲) |
悪いことしても良心の呵責に苛まれそうなマシュー・モディンで。 |
新珠三千代 (田代雅子) |
エマニュエル・ベアールとかイメージぴったりです。 |
三橋達也 (杉本隆吉) |
いろいろかばってくれそうなショーン・ビーンで。 |
女は二度生まれる (1961) | |
2006年3月 | |
自由奔放な売れっ子芸者の小えんが様々な男達と出会い行きついた先は・・・ お金はないけど愛情いっぱいの山村聡、普通に体目的の山茶花究、ちょっと恋心を抱いてしまう藤巻潤やら寿司職人のフランキー堺と次々とというかほぼ同時進行して若尾文子の奔放っぽさというか小悪魔的な魅力全開でなんでも35種類の衣装をとっかえひっかえおめしかえする贅沢さで見た目にも楽しいです。和服も洋服も着こなせるってやっぱり強い武器だと思います。 劇中、芸者をやめて山村聡の愛人になるのですがアパートに「二号」と落書きされる嫌がらせを受けてもめげないところやネタバレ→山村聡が死んで芸者に戻ったとき←本妻の山岡久乃に乗り込まれて最初は穏便に対処していてたけどあまりに勘違いなことを言われ山岡久乃とついには大喧嘩になったりする気丈というか強気なところも若尾文子らしくって安心して観ていられます。それにいかにも神経質な本妻の山岡久乃は上手すぎるし、この二人がもめているすぐそばで平然と食事をしている芸者仲間達という見せ方がなんとも自然で感心します。 そんな若尾文子もちょっといいなぁと思っていた藤巻潤と座敷で再会するも外人の接待を頼まれてがっかりしたり、同じくちょっといいと思っていた寿司屋のフランキー堺も子持ちの女と再婚しワサビ農家に婿にいってしまったりと落ち込むような出来事が次々と起きるのですがここでめげるようなことなどなく新しく道を歩んでいこうというたくましさがあり、この転んでもただでは起き上がらないたくましさあってこそ若尾文子なんだなぁと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
若尾文子 (小えん) | もうちょっと若ければキャメロン・ディアスあたりがぴったり。 |
山村聡 (筒井清正) | 愛人にもやさしそうなリーアム・ニーソンで。 |
女は夜化粧する (1961) | |
2008年11月 | |
赤坂のギター芸者として生計を立てている小峰登子は建設会社の社長に見初められナイトクラブのマダムとなり瞬く間に有名になる。そんなある日、店にかつて知り合った音楽家の阿久津が成功して登子の前に現われ二人は瞬く間に恋に落ちるのだが・・・ お水の世界の頂点にいるマダムと才能溢れる音楽家という住む世界の違う二人の恋の顛末。 山本富士子、芸者時代から赤坂のナイトクラブのマダムに成り上がりますが芸者もマダムもさすがこなします。 美貌と商売の才能を見込まれて建設会社の社長の森雅之に体の関係なしならとマダムを引き受けるところがツンとした山本富士子らしいです。結局、森雅之と寝るけれど山本富士子は何ともお思っていないけれど森雅之はぞっこんになるというところもポイント高いです。 芸者時代もかなり売れっ子でベテラン芸者の村田知栄子の嫌味にも負けないところがスカッとします。そんな村田知栄子と言えば山本富士子をいじめている印象が強く典型的ないじめ役が似合って最後はもちろんギャフンとなって、村田知栄子が出てくるだけでテンション上がります。(「美貌に罪ありでも勝新の親代わりという役どころで山本富士子と勝新がくっついた時に相当嫌味を言っていた) 肝心の山本富士子と川口浩の恋路はというところは、二人とも違う世界で大成功して再会というパターンで川口浩はとにかくやんちゃで押しが強いところがいいですね。山本富士子が「今日は帰ってよ。」と言えば「イヤだよ。今日は帰らないもんね。」と返し。結局家に上がりこんだ川口浩がキスを迫ると「ダメよ、ダメよ。」と何回ダメと山本富士子が言ったことかと思いつつ熱いキス。この強引さ若いってすばらしい。 結局、若い川口浩が恋に溺れて仕事がおざなりになって音楽業界から干されそうになるのですが、ライバルの田宮二郎や恩師の上原謙マネージャーの多々良純とかみんな復帰できるように骨を折ってくれるんですよそれも何度も。一応許婚の叶順子も約束したわけじゃないからと二人の恋を応援したりなんかして悪い人が出てこない恋愛ものなのですtがこういうのに限って結局上手く行かなかったりするんですよねぇ。切ないです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
山本富士子 (小峰登子) | ちょっと冷たい感じのするダイアン・クルーガーで。 |
川口浩 (阿久津健) | やんちゃという感じがするヘイデン・クリステンセンで。 |