バーバー吉野 (2003) | |
2006年3月 | |
小さな田舎町の子供達はみんな町に一軒しかない床屋、バーバー吉野のおばちゃんがカットするオカッパ頭の「吉野刈り」にする風習があったがある日東京からサカガミ君が転校してきて・・・ 東京から転校してきたサカガミ君の影響で町の風習「吉野刈り」にバーバー吉野の息子ケイタとその仲間達が吉野のおばちゃんに革命を起こす内容で、コケシのような頭の子供しかいない町にジャニーズ系で茶髪にオシャレーなパーマをかけているサカガミ君はみんなに「早く吉野刈りにした方がいいよ。」などと言われるけど「髪型を統一するなんて人権侵害だよ。」とか小生意気な理屈をいって最初はかわいくないのですがケイタとその仲間達と仲良くなってからは子供らしく見えて頑なにオシャレな髪型をキープしようとする姿を応援したくなります。 何か知らないけれどものすごいオーラで町の人も一目置く存在バーバー吉野のおばちゃんもたいまさこが黙っているわけもなくあのてこの手でサカガミ君を吉野刈りにしようと企むところが怖いです。ついには学校の前で待ち伏せしてサカガミ君をハサミ片手に「待ちなさーい!」なんて言って追い掛け回すんですよ。しかもしっかりとスローモーションで。妖怪髪切ババァといった趣で軽くホラーの世界入っていて怖いです。もたいまさこ。しかも普通だったら逃げ切るじゃんサカガミ君。だけどこの映画みごとにシティボーイのサカガミ君も吉野刈りにされてしまって二度恐ろしいです。 主人公のケイタももたいまさこに吉野刈りうんざりだよとキレたらもたいまさこはあののっそりしたイメージから一転俊敏な動きに変わり「髪型気にするなんて10年早いんだよ!一丁前の大人になってからにしなぁ!」と巻き舌気味で一喝するのです。機嫌が悪いときはつぶらで細い目に画に書いたようなへの字口で仁王立ち。 最後町の子達に吉野刈り実は嫌だったと告白されてショックを受ける姿は少々可哀想な気がしましたが、もたいまさこは絶対敵に回したくないタイプの人間だなぁと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
もたいまさこ (吉野良子) | こういう役はグレン・クローズに怪演してもらいたい。 |
廃市 THE DESERTED CITY (1984) | |
2009年8月 | |
大学生の江口は論文を書くために旧家を紹介されそこで娘の安子と出会う。やがて旧家の複雑な家庭環境が明らかになって行き・・・ 小林聡美主演の大林監督作品。 旧家に訪れた大学生のひと夏の思い出を妙にサスペンスタッチの音楽で盛り上げる不思議な内容でものすごくいいと言っていた人がいたので期待して観たのですが、肌に合いませんでした。後半までこれという出来事が起こらないまったりとした自然の風景がメインな感じ。 小林聡美はさすがに声が若いと思いつつ、いつもと違うお嬢様敵なキャラなのでなんだか「やっぱり猫が好き」で桜田淳子の真似をするシーンを思い出してしまいちょっと笑いそうになってしまいました。 中盤ようやく謎めいていた姉の根岸季衣が出てきたなと思ったら妄想癖の強い辛気臭い暗いお姉さんでちょっと怖いです。旦那の峰岸徹もあまりにマイナス志向すぎる根岸季衣にうんざり。そして峰岸徹は浮気をするのですがその相手が品のいいマダムだなと思っていたらあの入江若葉ですよ。そして小林聡美のお婆さん役がなんと入江たか子というこんなところで入江親子に出会えると言うサプライズ。内容は好きではないのですがこれだけでも観る価値あったと思いました。 そして小林聡美といえば「転校生」から何かと共演の多い尾美としのりも当然出ているのですが、船頭の役で山下規介が小林聡美と楽しそうにしていると物陰からじーっと二人を見つめているという何とも気味の悪い役どころが結構はまっていました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
小林聡美 (貝原安子) | まだ女子高生役もいけそうなエレン・ペイジで。 |
山下規介 (江口) | 好青年のザック・エフロンで。 |
根岸季衣 (貝原郁代) | ちょっと陰のある感じのミシェル・ウィリアムズで。 |
ハイハイ3人娘 (1963) | |
2007年12月 | |
今日子、千恵子、悠子の仲よし三人組のうち今日子のもとにある日「死ぬほど好きです。」という謎の電話がかかってきて三人は電話の主が教師の飯田とにらむのだが・・・ ひばり、チエミ、いづみに続く?新3人娘ものといったところでしょうか。先生(高島忠夫)が私のことが好きで怪電話をかけてきているのかしら?なんて一方的な勘違いを軸に話は展開されていくのですがいまだったらそんな噂が同級生の耳に入ったらたちまち変な噂が流れそうで当時は平和だったなぁと感じました。 見た目は三人ともそれぞれ個性があったのですが性格分けがいまひとつだったのでちょっと期待はずれです。 メインが中尾ミエというところはいいのですが性格がひばりにチエミの豪快なところを足した感じで別に三人娘でなくてもよいのでは?と思えてきます。期待していた伊藤ゆかりはかろうじていづみな役どころですが大食いで何か空気感が違っていたし園まりに関してはあまり存在価値がなかったかな?と感じてしまい、キャラクターの性格付けが下手でとてももったいなと思いました。 「スリーファンキーズ」という男子グループが相手役っぽくなっているのですがみんな顔が同じに見えてしまい誰が誰だかよく分からないという状態に。中尾ミエのお兄さん役に植木等が出ていて後半はクレイジーキャッツの歌があったりしてバンドやGS系が流行り出してきたんだなぁという時代の流れを感じ取ることは出来ましたが・・・ | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
中尾ミエ (間宮今日子) | しっかりしていそうなマンディ・ムーアにやってもらいたい。 |
伊藤ゆかり (天野千恵子) | 突飛な行動をするブリトニー・スピアーズあたりで。 |
園まり (江藤悠子) | メインじゃないとなかなかいい味を出すリンジー・ローハンで。 |
HOUSE ハウス HOUSE (1977) |
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2004年7月 | |
父親の再婚を知りショックを受けたオシャレは友達をつれて夏休みに羽臼おばちゃまの住む田舎に遊びに行くのだがおばちゃまの家で一人また一人と友達が姿を消していき・・・ 大林宣彦初監督作品にしてアイドルホラー映画?でしたけどすいません、このノリについていくことができませんでした。なんか出てくる女子高生たちほとんどが言葉の最後に「〜でござる」、とか「〜なのだ」とかつけちゃう不思議系のキャラで個人的に苦手なんですよね。しかも極めつけは「もう、アフターGなんだからぁ。」っちゅう台詞。Gの後ってことはHってことでしょ?あぁエッチなんだからぁ。ってことがようやく解り頭がクラクラしましたよ。 他にも登場人物の名前がオシャレとかファンタとかで父親もオシャレって呼んでるよ、マジっすか?って展開が盛りだくさんで肝心の家が人を喰うところに行くまでにすでにこの映画の流れに完全に乗り遅れてしまいました。 肝心の人が喰われシーンはというと意外とちゃんとしていたっていうか、生首になったりピアノに喰われて体がバラバラになったりして結構残酷。 そんなこんな言ってってるうちにどんどん友達が喰われていく訳だけど1/3の割合で脱いでるんですよね。これってアイドル映画だよね?ヌードありなのしかも池上季実子までもが脱いでいた。さすがにほんまもんのアイドル大場久美子の脱ぎはなかったけどアイドル映画に裸、これ一番びっくりしましたわ。 池上季実子当時18才だったみたいだけど全然見えないところがすごい、なんか杉本彩がセーラー服着たみたいなんですもん。大場久美子はアイドルらしくキャーキャー言いながらもしっかり最後の方まで生き延びていました。そうアイドル映画なのにネタバレ→誰一人として生き残らない←ところや南田洋子のおばちゃまの名前が羽臼華麗(ハウス・カレー)てのはなかなかやるなと思ったけどやっぱりこのノリついていけないと思うのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
池上季実子 (オシャレ) |
若いのに貫禄十分のスカーレット・ヨハンソンで。 |
大場久美子 (ファンタ) |
アイドルってルックスのシリ・アップルビーで。 |
神保美喜 (クンフー) |
若くしてカンフーの使い手、チャン・ツッイーで。 |
南田洋子 (羽臼華麗) |
ジュディ・デンチの怪演を見てみたい。 |
ハウルの動く城 HOWL'S MOVING CASTLE (2004) |
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2005年1月 | |
偶然魔法使いのハウルに出会ったしまったソフィーは荒地の魔女の怒りを買い老婆の姿に変えられてしまう。ソフィーは街を出てハウルの城に住み込むのだが・・・ 盛り上がりが前作の「千と千尋の神隠し」と比べると弱いとか言われているみたいで世間じゃきっと賛否両論なんだろうと思い観に行きましたけど意外とよかったです。いや正直、ソフィーがたまに元の姿に戻るのはなんでか?とか最後もネタバレ→当然のようにソフィーは元の姿に戻るんですが、そのきっかけが分からない←とか結構分からないところもあったわけですよ。だけど不思議と「千と千尋の神隠し」より楽しめました。何でしょうねきっと美輪明宏のおかげでしょうか?そういえば「もののけ姫」にも美輪明宏出てましたもんね。(と言いつつクレア・デーンズが吹き替えたハリウッドバージョンを観たのですが・・・) この映画の最大の不安材料だったキムタクの声もキャラクターとマッチしていたのか全然悪くなくって驚きました。髪染めに失敗して駄々をこねるキムタクにとってはおもろいシーンは相変わらず俺様的な演技でダメだったですけどね。 倍賞千恵子の声も悪くはないけどさすがに少女のソフィーは厳しいです。個人的にここは小西真奈美にやってもらって少女と老人のメリハリをつけてもらいたいところ。元に戻りかけるところなんか二人でユニゾンすれば効果絶大になると思うのになぁなんて思ったりするのでした。 それにしてもマルクルの声をやった神木隆之介って今一番売れっ子の子役でしょ?このこ子の芸達者振りとタイトルにもなっているハウルの動く城の城が動くシーンには舌を巻きました。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! (今回はアニメなのでなし) |
破戒 (1962) |
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2004年12月 | |
部落出身ということを隠して小学校の教員をしている瀬川丑松は差別を受けている部落出身者を見て見ぬふりをして生きていたのだが、町に現れた部落解放運動家の猪子蓮太郎に出会った事をきっかけに丑松の葛藤は次第に強くなっていき・・・ 原作島崎藤村、監督市川崑で共演が三國連太郎に船越英二、岸田今日子ときているからテーマが重いのは分かっていたし実際テーマが部落差別だからこれは観終わったあと後味悪いんじゃないかと思ったけれど全くそんなことはないいい映画でした。 父親の言いつけ通り自分の出生を隠して生きていることに後ろめたさ、特に部落差別者が医師を投げつけられたりしているところを見てしまうといたたまれなくなってしまう気持ち、そこに現れた猪子蓮太郎という解放運動家に自分の正体を明かすも親友の土屋銀之助は部落民を軽蔑しているので後一歩のところで自分の出生を明かせない葛藤など、丑松の心情が手に取るように分かるよく出来た映画だなと思うのと同時にこれって現代で学歴とか金があるとかないとかで差別する人の精神と同じだと思いますけど、こういう考えで生きている人が改めて理解できないと感じました。 もちろん終盤は丑松の出生がばれそうになるのですが丑松はばれる前に小学校のに辞表を出して生徒達に土下座をして誤るんですよね。この時丑松は部落民の教師がいた事を頭の片隅にでも記憶しておいてください。的な事を言って泣き崩れるのですが生徒はまだ子供だから部落民だからとかいう差別がなくて一緒に涙するところやが感動的だし土屋が丑松の苦悩を知らずにいた事を詫びるシーンは感動的だし、最後旅立ちの時に生徒全員で見送りに来るところはただでさえ感動的なのにそのうちの一人が「これ卵、母ちゃんが先生にって・・・」といってゆで卵を渡すシーンを観るとつくづくいい話だったなぁと感じます。こういった文芸物を観ると原作を無性に読みたくなります。 この作品も配役のバランスが絶妙で苦悩する青年は市川雷蔵にはまっているし、三國連太郎は何でも上手いと思うけど今回の自ら部落出身と名乗り出て解放運動するような革命家的な役も上手くてうなりました。船越英二も哀れな男をやらせると光るし、藤村志保はこれが初めての大役だったはずなんですけどこの時からすでに人を外見や階級で差別しないまっとうな人間の役を演じられる片鱗をうかがわせているところは感心しました。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
市川雷蔵 (瀬川丑松) |
やっぱり苦悩が似合うジム・カヴィーゼルで。 |
長門裕之 (土屋銀之助) |
チャーリー・シーンは案外いい人そうで。 |
藤村志保 (お志保) |
エミリー・ワトソンは人を差別しないい人のような気がします。 |
三國連太郎 (猪子蓮太郎) |
こういった解放運動が似合いそうなリーアム・ニーソンで。 |
薄桜記 (1959) |
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2004年12月 | |
異なる流派の丹下典膳と中山安兵衛の友情と安兵衛との決闘を断りかつての同門の恨みをかった典膳の顛末を描いた時代劇。 この薄桜記、評判のラストの殺陣を観るのが目的だったのですがやはり評判どおりすごかったです。片腕を失い足には銃弾を受け寒空の中、庭に横たわりながら襲ってくる敵を死に物狂いで倒していくその様子は今までに見たこともないけれど最後の力を振り絞ればこうなるかもしれない、ある意味時代劇じゃ見せてはいけない最後の部分を薄桜記で市川雷蔵は見せたところがえらいと思います。でもこの雷蔵は確かに儚くも美しいという言葉がぴったりと言う感じがして女性のファンが多いのに頷けました。 なのでラストの殺陣はよかったのですが正しい行動をすればするほど周りから恨みかって奥さんを手込めにされたり、片腕を斬られたりしてそこから来る雷蔵のかもし出す独特のねっとりした情念みたいなものがどうも今のところ好きになれず観ていてちょっと辛いんですよね。 勝新は惚れた女の千春を雷蔵に持っていかれちゃうけどやっぱりふられても観ていてこっちの方がカラッとしていいですね。 あと中山安兵衛が赤穂浪士の一人で後に堀部安兵衛となるあたりびっくりしまして忠臣蔵外伝みたいな感覚で観ましたけどこの堀部安兵衛のエピソードって本当なのかな? どうでもいいけど丹下左膳同様腕を失うし丹下という姓は不幸だなと感じるのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
市川雷蔵 (丹下典膳) |
美形つながりでジュード・ロウで。 |
勝新太郎 (中山安兵衛) |
ここのところ伸び盛りのカール・アーバンあたりで。 |
麦秋 EARLY SUMMER (1951) | |
2006年4月 | |
北鎌倉に東京で秘書の仕事をする間宮家の紀子は結婚適齢期を過ぎ家族に何かと心配されるがそんな紀子の元に結婚話が次々とやってくるのだが・・・ 「晩春」「麦秋」「東京物語」と小津監督&原節子の紀子三部作(勝手にそう呼んでます)の2作目なんですがこれが紀子三部作では一番面白かったです。「晩春」は近親相姦的な終わり方、「東京物語」は寂しい感じの終わり方でしたけどこれは紀子の身の振り方は同じは同じでもさわやかめに締めくくられていて感慨深い中にも後味もすっきりしていてよかったです。 それにしても原節子の処世術の上手いこと。結婚話が持ち上がると得意の微笑で見事にかわすこと。間宮家には兄夫婦の息子達がいて、これがいかにも昭和のガキという感じで子憎たらしいけど味があるタイプで原節子がちょっと注意しようものなら「うるせぇ。」なんて言われるけど「まぁ。」と得意の微笑みを浮かべるだけでこの人怒ったことないんじゃないかと思わせるほどのものすごい寛大な心の持ち主。そして相変わらずのかまとと振りが最高で普通の女優が同じことやったら28歳のいい大人がかまととぶってんじゃねぇよと言いたくなるものですがそんなことを言わせないある種の迫力をもった原節子はすごいです。さすが永遠の処女と言われていることだけのあります。 そんな原節子の親友の淡島千景とのやり取りも「ぶつわよ。」「嫌よ。」「ぶん殴るぞぉ。」「嫌だったら。」みたいな流れの相変わらずの繰り返しの台詞の後い突然始まる鬼ごっこやら、この結婚していない独身組みと既婚者二人との結婚についてのからかいあいの時にいちいち「○○なんだものねぇ。」「結婚していない人に言われたくないわよ(ここで軽くタメが入って)ねぇ。」という「ねぇ」の応酬がいちいち笑えてこれはコメディとして認識していいんですよね。 そして原節子は最後ある決断をするのですがこれあまりに唐突過ぎて一人で決めちまって本当に大丈夫かい?と気分はすっかり兄さんの笠智衆気分なんですが、原節子はどこから来るのか「絶対に幸せになれると思う。」ものすごい自身。やっぱりすごいです。 それと閑静な鎌倉の自宅から勤務先の東京のモダンなギャップ。東京のシーンを観ると無声映画で恐ろしくモダンだった「非常線の女」を彷彿させ小津監督はやっぱりモダンな人だったんだなぁと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
原節子 (間宮紀子) | リサ・クドローで徹底的にコメディにしてほしい。 |
笠智衆 (間宮康一) | ちょっと真面目な雰囲気もプラスしてトム・ハンクスで。 |
淡島千景 (田村アヤ) | 勝気な親友役は「フレンズ」でも相性抜群のコートニー・コックス・アークエットで。 |
白線秘密地帯 (1958) | |
2008年5月 | |
トルコ風呂でトルコ嬢が絞殺される事件が起きる。刑事の田代は殺人現場に特殊なチケットを見つけ捜査を開始するが翌日、男の変死体が川で見つかり・・・ 石井輝男監督の地帯(ライン)シリーズの記念すべき第一作目。 この一作目はフィルムの損傷のせいで15分映像が消失しているおかげで今までDVDになることはなかったのですがDVDのラインシリーズコンプリートBOXの特典ディスクとして収録されていて念願叶って観ることができました。 今で言うソープ嬢殺人事件の陰には売春組織があった・・・という地帯シリーズお約束の展開がありつつ三原葉子に天知茂も出ています。三原葉子は警察にしょっ引かれて宇津井健に色目を使うお得意の役どころなのですが事件の鍵を握る重要人物です。そんな三原葉子は単独で売春行動しているので組織の女に絡まれてキャットファイトというシーンが素敵です。 天知茂も売春組織のリーダーですがネタバレ→実は中堅クラスで本当のボスは他にいて捕まりそうになったら自殺してしまう中途半端な約なのですが←三原葉子とともにフィルムが消失しているのがこの二人に絡んだ話の核心に繋がるところや真犯人のところがばっさり無くなっているので話も掴みづらかったですし、二人の役どころも中途半端に見えてしまいとても残念でした。 特典ディスクなのでしかたがないのですが、完全な形で観ることができればかなり面白かったと思います。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
宇津井健 (田代刑事) | 刑事だったらもうひとつ頼りにならなそうなトビー・マグワイヤで。 |
白痴 THE IDEOT (1951) |
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2005年4月 | |
白痴と自ら名乗る無邪気な青年の亀田は列車の中で赤間という遺産で金持ちになった男と知り合い意気投合する。赤間は政治家の愛人の那須妙子という女に夢中だったが亀田も写真を見るなりたちまち虜になってしまう。そんな中、親類の娘綾子は純粋な心の満ちぬしの亀田に行為を寄せるのだったが・・・ 「白痴」というタイトルから主人公が迫害されつつも強く生きていく内容なのかなぁと思いきや、一言で表すなら愛憎渦巻くドロドロとした昼ドラのようでした。 これは森雅之と原節子であるからこその絶妙なバランス感があったと思います。原節子は今回の黒澤監督特集で2作品鑑賞しましたけど、ら完全に自分の中の原節子像が破られました。なんていうんですかビッチなんですよ。今回も白痴の森雅之が好きなんだけどこんな汚れた私にはふさわしくないからとライバルの久我美子に結婚してやってくれと押し付けがましく手紙を書いたと思ってみれば最終的には森雅之に自分か久我美子のどっちか選べと迫るような女に豹変するし恐かったです。 それにしても原節子は画面に映ると三船敏郎と並んで映っていても一人サイレント時代の女優のように見えるから不思議だし、現代に彼女のように眼に力のある女優っていないし今後も現れないんじゃないかなぁと思います。 森雅之も初めて観た映画が夏目漱石原作で新珠三千代共演の「こころ」の印象がずーっと残っていたので今回の白痴役ははまりすぎているのだけどこんな危うい感じの人だったっけ?と思ってしまいました。 久我美子の役も森雅之が好きだからこそ嫌味を言ったり逆ギレしたりするこれまた困った女で登場人物にまともな奴はいないのか?と思ったら三船敏郎が原節子が好きなのに対し彼女は森雅之が好きというむごい状態にありながら森雅之の事を妬んだり陥れたりしないところはさすがだなぁと思いました。ネタバレ→結局最後おかしくなって原節子を殺しちゃって自分も凍死しちゃうんですけどね。← ともあれ黒澤作品で昼ドラ的なものが観られるとは、なんだか得した気分です。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
原節子 (那須妙子) |
アンジェリーナ・ジョリーにぜひともお願いしたい。 |
森雅之 (亀田欽司) |
精神的に何かがある役を得意とするジョヴァンニ・リビシで |
三船敏郎 (赤間伝吉) |
好きな女が友達に惚れたとしても友情は壊れそうもないベン・アフレックで。 |
久我美子 (大野綾子) |
ダイアン・クルーガーは金持ちの娘でいけずな役もいけそうで。 |
博徒七人 (1966) | |
2007年9月 | |
片目の柏木半次郎は刺客に狙われていたが刺客の一人片腕の鉄砲松と意気投合しやがてお澄という女から用心棒を依頼されるが二人はそれを断り井戸政の用心棒になるのだが・・・ 博徒七人というくらいだから博徒が七人出てくるのですが全員肉体的不具者という今では考えられない設定の映画であります。オープニングが一人一人得意の武器でポーズをとるという紹介の仕方が戦隊ものっぽくてカッコよかったし、これだけ人数がいると誰が誰だか分からなくなるのですがこの映画はみんな肉体的に障害があるので分かりやすく出来ていてよかったです。 内容は主人公が実は悪い奴の用心棒になってしまい、陰謀に気がつき(途中でもちろん悪い奴の分かりやすい陰謀もあり)いい奴の方と手を組みやっつけるといういたってオーソドックスなのですが脇役達がいい味出しています。 特に上手いのが藤山寛美。いつもお笑い担当みたいなポジションで今回も女たらしで桜町弘子のだいじな指輪を女郎にあげちゃうような役のですがコミカルなので憎めないところがいいんですよね。 西村晃はやくざ者を嫌う医者で常にやくざ者に毒づいているのですがなんだかんだ言って、鶴田浩二のことを気に掛けているところが男の友情とはちょっと違うけれど男気を感じられてよかったです。 大木実(顔に大やけどを負っている)もこういう主役との敵対しているけど最終的には分かり合えるという役をやるといい感じになるし、片足の大坊主の山本麟一や盲目も待田京介も役にぴったりで後半になると障害があるなんてことが気にならなくなって単なる娯楽作品になっているところがすごいと思いました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
鶴田浩二 (柏木半次郎) | ダニエル・クレイグあたりに片目のやくざをやってもらいたい。 |
藤山寛美 (鉄砲松) | コミカル担当といえばバーニー・マック。 |
大木実 (兵隊安) | 血の気の多いラッセル・クロウで。 |
桜町弘子 (お澄 ) | 任侠の世界でも堂々としていそうなサルマ・ハエックで。 |
幕末太陽傳 (1957) |
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2005年12月 | |
品川の遊郭で金も持たずに豪遊する佐平次は結局この遊郭で下っ端の居残りとして働くことになるが持ち前のずる賢さから次第に頼りにされる存在になるのだが・・・ フランキー堺のすっごいお調子者のしかもずる賢いキャラクターが生理的になんか嫌だなぁと思って観ていたんですが話が進むにつれこの映画の中の遊郭で働く人たちが佐平次を必要としていくように次はどんな悪知恵で酔っ払った嫌な客を出し抜いていくのだろうと気になってしまって結局この佐平次というキャラが魅力的に見えてくるから不思議です。やっぱり頭の回転が速い人は人間的にも魅力があるんだなぁと思いました。 落ち目の女郎の左幸子は相変わらず上手くて見ていて楽しいし、売れっ子女郎の南田洋子は初めて見たけれどこれがまたシャープな感じでキレイなんですけどどこかしたたかでいい味だしていました。しかもこの二人が取っ組み合いのケンカを長回しのショットで5分くらいやっているのもすごいんですがとにかくセットが恐ろしくすばらしいんです。遊郭の一階の廊下から中庭でそしてさらに二階に移動して遊郭の全体像がはっきりと分かるのですがこれがセットというより本当に存在した遊郭で撮影したんじゃないかというくらい完璧なセットに目がくぎづけになってしまいました。 そんな女郎屋の夫婦が金子信雄と山岡久乃というすごい組み合わせだし左幸子の唯一の味方の菅井きんとか脇役が充実しているのでこういう人たちを見ているだけで楽しかったです。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
フランキー堺 (居残り佐平次) |
お調子者って印象のアダム・サンドラーで。 |
左幸子 (女郎おそめ) |
乱闘とか案外似合いそうなヘレナ・ボナム=カーターで。 |
南田洋子 (女郎こはる) |
意外としたたかそうなペネロペ・クルスで。 |
パッチギ! (2004) |
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2005年2月 | |
松山康介はある日担任から朝鮮高校へ親善試合の申し込みに行くように言われ仕方なく朝鮮高校へ行くがそこでキョンジャという生徒に一目惚れしてしまう。しかしキョンジャは朝鮮高校の番長リ・アンソンの妹だった・・・ 時代は60年代後半の番長やらスケバンがおそらく横行していた時代の青春ものなのですが舞台が東京でも大阪でも広島(これはやくざか)でもなく京都が舞台というのが新鮮だったし朝鮮高校というのも目新しくて大変楽しかったです。 氷川きよし風の塩谷瞬が演じるところのちょっと気弱な高校生の松山康介が主役なのですが彼のエピソードより石原軍団顔の高岡蒼佑が演じる朝鮮高校の番長リ・アンソンのエピソードが熱くって個人的にはリ・アンソンが主役やという気分で鑑賞しました。もうケンカのシーンとかすごいんですよ。ケリとか本気で顔に当たっているガチンコ勝負なところが痛そうなんだけど観ていて笑っちゃうほど気持ちがいい。アンソンもケリ喰らっていて痛そうだったしこの本物感がいいんですよね。アンソンの仲間のスケバンもビジュアルにインパクトあるけど彼女もケンカに飛び入りして飛び蹴りかましたりしてこの喧嘩上等の精神がたまらなくいいんです。 最後もネタバレ→朝鮮高校VSその他高校の鴨川での大乱闘。この乱闘中に桃子が出産してアンソンが病院に駆けつけるのですがここで決闘も引き分け。おそらくここからは想像ですが「子供が生まれてめでたいから今日のところは引き分けにしようや。」と言ったに違いないと想像すると←手の付けようのない荒くれ高校生達だけどこういった人情的なところはしっかりある不良にだから最後のこの決着の付け方は胸が熱くなりました。 よかったといえばアンソンの彼女桃子を演じた「こちとら自腹じゃ!」でどんな映画でもほぼ三ツ星つけて満足してくれるいい娘でおなじみの楊原京子ちゃんの演技は普段の彼女からは想像できないほど上手くて驚きました。他の主要メンバーも全然知らなかったのですがみんな演技上手かったなぁ下手にテレビに出ている人よりかちゃんとしているから感心しました。 普段は日本映画と言えば70年代以前に作られたものしか観ないのですが、ぜひにと言うタレこみがあって観に行きました。実際観る前は井筒監督の作品は観た事なかったですし、おすぎもめちゃくちゃ褒めちぎっていたので正直怪しいと思っていたのですが今のところ今年一番の面白さで今年のベスト3に入りそうな勢い。井筒監督を完全に侮っていましたよ。「こちとら自腹じゃ!」じゃこんなん映画とちゃうわとか言いたい放題言って了見の狭い人だなぁと思っていたのですがこれさえなければいい監督ですね。井筒監督は。 あ、主人公の松山康介や肝心の「イムジン河」について何も書かなかったけれどおそらくもう一度くらいはこの映画観そうだからその時に彼の部分の感想を書こうと思います。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
塩谷瞬 (松山康介) |
ちょっとボーっとしていそうなクリス・クラインあたりで。 |
高岡蒼佑 (リ・アンソン) |
イメージ的には「パラサイト」のころのジョシュ・ハートネットか? |
沢尻エリカ (リ・キョンジャ) |
普通な感じのアン・ハサウェイで。 |
楊原京子 (桃子) |
ケイト・ボスワースをなぜか連想してしまった。 |
初春狸御殿 ENCHANTED PRINCESS (1959) | |
2010年1月 | |
ひょんなことから狸御殿に迷い込んだ泥右衛門とその娘お黒だったが、狸吉郎とのお見合いが嫌で逃げ出したわがままな姫きぬた姫とお黒が瓜二つだったためにお黒はきぬた姫に成りすますのだったが・・・ 「花くらべ狸道中」の原点のミュージカル。 市川雷蔵が主演かと思いきや完全に若尾文子の主演映画でした。がしかしなぜか若尾文子だけは歌わないというところもポイントです。 かつての大泥棒を父に持つ、若尾文子は人間を騙すのに嫌気が差している純情な田舎狸と狸御殿に住む狸が醜いからいつも美しい人間に化けている超高飛車な姫狸と二役やっているのですがどちらもいい。特に高飛車な姫に若尾文子らしさが出ていて着物も七変化といった感じでゴージャスです。 そんな衣装に予算を費やしたおかげかセットは狸シリーズでは恒例のものすごいチープさが漂っていて「花くらべ狸道中」でも体育館みたいなところで歌って踊っていると思ったらこの時からすでに体育館みたいなところで水谷良重から中村玉緒まで次々と雷蔵の相手をして歌っていました踊っていました。(多分歌は吹き替えですが) そんな中、狸御殿の家老役の中村鴈治郎も歌うのですがものすごく下手すぎて笑ってしまいました。 内容の方は入れ替わった真面目な若尾文子と市川雷蔵が本当に好きになってしまったところに本物の若尾文子が帰ってきて泥棒の父親の菅井一郎は姫を消そうとするという御伽噺ちっくな展開。いい若尾文子は姫の若尾文子と入れ替わってネタバレ→父親に刺されるというヘビーな展開に。昔から若尾文子のことが好きだった薬売り狸の勝新太郎の傷薬のおかげで無事でした。そして改心した姫の若尾文子も市川雷蔵と結ばれてめでたしめでたしでした←という終わり方に本当にみんないいの?と思ってしまいましたが歌と踊りがメインだからこんなものなんでしょうか。 あと、本編と関係ないところで女の河童が出てくるのですが黄桜のCMの女の河童そのまんまという大胆な衣装が一番印象に残ったのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
市川雷蔵 (狸吉郎) | 実は歌えるパトリック・ウィルソンで。 |
若尾文子 (きぬた姫/お黒) | スカーレット・ヨハンソンにやってもらいたい。 |
勝新太郎 (栗助) | 豪快でも歌えるジェラルド・バトラーで。 |
泥右衛門 (菅井一郎) | ロクデナシな感じが似合うレイ・リオッタあたりで。 |
華岡青洲の妻 THE WIFE OF SEISHU HANAOKA (1967) | |
2009年12月 | |
美しく世間でも評判の華岡青洲の母、於継に見初められて嫁いだ加恵。最初の数年は青洲が不在ながら加恵は於継に温かく迎えられていたが青洲が戻ってきてから二人の間に確執が生まれ・・・ 嫁姑の意地のぶつかり合いも壮絶な麻酔薬誕生秘話。 母親が高峰秀子、嫁が若尾文子というこの上ない幸せ者ですよ雷蔵は。と思っていたら嫉妬渦巻くドロドロした展開で若尾文子も高峰秀子も怖いです。正直、高峰秀子を相手に若尾文子は大丈夫であろうかと思っていたのですがとんでもない高峰秀子と同じレベルの演技を披露していて見くびっていてすいませんという感じですが、これは監督が増村保造なので若尾文子のよさを100%以上引き出したのかもしれません。 嫁ぎ先の布陣も舅が伊藤雄之助、雷蔵の妹に渡辺美佐子と原知佐子。そして語りは浪花千栄子となんとも豪華なところも密かに見逃せません。 二人が嫁姑の熱きバトルを繰り広げている中、下手すれば陰が薄くなりがちな市川雷蔵も存在感を失っていません。二人のいさかいを知っているのか知らないのか、市川雷蔵は麻酔薬の研究に没頭するのですが、本物の猫の口を無理やり開けて薬を飲ませるシーンは衝撃的。本当に猫が嫌がってましたから。そして副作用で変な動きをするようになっていまった猫とかグロテスクというか残酷でした。 後半の麻酔薬飲み合い合戦のシーンも女の意地と意地がぶつかり合って、一方が上手く行くと喜ばしいことなのにもう一方は素直に喜べない人間の愚かなところとかも増村保造らしい見せ方になっていいたと思います。ネタバレ→最後、高峰秀子には睡眠薬程度の弱い薬を処方していたというオチを知ったときの高峰秀子の絶望感もあっぱれでやっぱり上手いと思うのでした。← | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
市川雷蔵 (華岡青洲) | レオナルド・ディカプリオあたりにお願いしたい。 |
若尾文子 (加恵) | 美人でしっかりしているイメージのシャーリーズ・セロンで。 |
高峰秀子 (於継) | 姑だったら怖そうなグレン・クローズで。 |
花くらべ狸道中 (1961) |
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2004年5月 | |
狸の世界での選挙が始まり、文福党の党首による策略により徳島党の党首は負傷する。江戸に代わりの者が行かなくては文福党の党首が大王になるため雷吉狸と新助狸が弥次、喜多に化けて江戸に向かうことになるのだが文福党の党首の娘きぬたがあの手この手で邪魔をして・・・ 市川雷蔵と勝新太郎という組み合わせのなんともゴージャスな映画、しかもミュージカルってことでかなり期待したんですけど最初ははっきり言ってがっくりしたっていうかあせった。大スター二人の共演とそのほか豪華共演者の人件費で予算を使い切ったのか、なにこのセット?小学校の学芸会レベルじゃないかい?という感じでスターにこんなセットで何させるんじゃい!もしかしてMGMのミュージカルを意識しているつもりなのか?と一瞬腹も立ったがこれは突っ込みどころを見つけては楽しむ作品と気づきようやく普通に観ることができた。 市川雷蔵と勝新のデュエットにびっくりするけど雷蔵、勝新と歌っているときはそうでもないけどソロになるとかなり微妙になるんでなんか切なかったー。今までのすらりとした印象が一気にひっくり返っちゃった。勝新も白塗りすると浅香光代のようになっちゃうんだけど突然昔の少年隊か!と突っ込みを思わず入れたくなるような衣装にラテンの暑苦しいメイクで「アイ・ラブ・ユー」とはなんともお茶目すぎて観てよかったと思うのでありました。 邪魔するセクシー狸のきぬた(たぬきの逆さ読みか)もシースルーのランジェリーで悩殺ものでセクシー担当はOK。雷蔵の真面目な恋人狸たよりちゃんも最後はたよりになる行動で(だからたよりなのか)一件落着という強引な展開でなんかすごいもの(色物)観たって感じと貴重なものを観たっていう不思議な感情が残るのでありました。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
市川雷蔵 (雷吉狸) |
オーウェンのように軽くなさそうなところがポイントのルーク・ウィルソンで。 |
勝新太郎 (新助狸) |
ジャック・ブラックのはちゃめちゃさとが必要なのです。 |
中田康子 (きぬた) |
まさに小悪魔的なエリザベス・ハーレーで。 |
若尾文子 (たより) |
生真面目さな雰囲気漂うオリビア・ウィリアムスで。 |
花つみ日記 (1939) | |
2008年10月 | |
関西の女学校に東京から佐田みつるという女の子が転校してる。置屋の娘の篠原栄子はたちまちみつると意気投合し親友になるのだが・・・ 高峰秀子の女学生もの。 ちょうど第二次世界大戦が始まった頃の作品なのでまだ平和な印象を受けました。 当時今で言うところのアイドルだった高峰秀子が親友になった転校生とのケンカや仲直りを通じてちょっと大人に成長する感じのオーソドックな青春ものですが女学生たちがみんな素直で学校が荒れていないところがいいですね。厳しいながらも慕われる先生ももちろん出てきて主役の二人の悩み事もしっかりサポートするところが現代じゃ滅多に見られる光景じゃないなぁと思いました。 そして置屋の娘ということで仲直りしないうちに舞妓さんになってしまい離れ離れになってしまい中々仲直りができないという少女漫画のような展開が用意されていますが、高峰秀子が密かに親友のお兄さんにが戦争に行くことを知って舞妓の格好をして千人針を道行く人にお願いするところなどは時代性を感じました そんなドラマの舞台がが関西なので高峰秀子も関西弁。たしか関西の人ではないのにものすごく流暢に関西弁を操るところがさすが高峰秀子10代のころから演技が上手いと関心しました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
高峰秀子 (篠原栄子) | 舞妓の格好もしてくれそうなダコタ・ファニングで。 |
清水美佐子 (佐田みつる) | ダコタちゃんよりちょっとだけ美少女?のアビゲイル・プレスリンで。 |
花ひらく 眞知子より A FLOWER BLOOMS (1948) | |
2009年6月 | |
大学に通う眞知子は家族からしきりに結婚を勧められうんざりしていた。そんな眞知子は福祉活動をしている友人を訪ねたときに紹介された関という青年は裕福な家の眞知子に冷たい態度で接してきて・・・ ブルジョワな過程の娘の高峰秀子が本当の意味での自立をするまで?を描いた内容で、金持ちを毛嫌いする上原謙に何故か高峰秀子が惚れてしまい振り回されてしまうのですがとにかく上原謙が最低なんです。 貧しい人のために金持ちから金を取り、貧しい人のために使うという志は立派なのですが、ニコリともしないのでただでさえ、冷たい印象で金持ちを蔑んでいるので性格も悪く見えます。 そして最後、婚約まで行ったかなぁという所でも、無理やりキスを迫るし、しまいには高峰秀子の親友を妊娠させていて、彼女だったらこの活動のために子供を堕ろすであろいうという考えを持っているような見た目が冷たいだけでなく性格も最悪みたいな感じで観ていてイライラを通り越して感心しました。と、こんな役の印象が強いので未だに上原謙の魅力がよく分かりません。 金持ちで大会社の社長の藤田進は高峰秀子に振られてしまいますが、不景気で会社が賃金アップできないと分かると財産を投げ出して従業員の給料を払うという男気溢れた行動が好感度高いです。そしてこの時代には珍しくスキー旅行に行くのですが、色々あって猛吹雪の中を飛び出した高峰秀子を追いかけて遭難しかけたところを助けて翌朝自分はさっさと帰るという行動に好感度アップです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
高峰秀子 (曽根眞知子) | まだまだ女子大生役がいけそうなアン・ハサウェイで。 |
藤田進 (河井輝彦) | 社長が似合うロバート・ダウニー・Jrで。 |
上原謙 (関三郎) | 初めて見た時は冷たい印象だったポール・ベタニーで。 |
花嫁のため息 (1956) | |
2006年8月 | |
結婚式を無事済ませた新婚の船山敬太・芳子は二人の夜を迎えようとしていたがそんな時、敬太の悪友大山が突然転がり込んできて・・・ 大映の短編作品で50分ちょっというのも気軽に観ることが出来る新婚初夜を迎えようにも何かしら邪魔が入って迎えられない新婚コメディでいつもは男を振り回す役の多い若尾文子が今回は清純な新妻役です。 これはアメリカでスマッシュヒットだったオーウェン・ウィルソン、マット・ディロン、ケイト・ハドソンの「You, Me and Dupree」のはきっとこんな感じの映画なんだろうなって印象でようやく邪魔がいなくなったと思ったら別の邪魔が入るみたいな展開はちょっとイライラするんですけど楽しかったです。 新婚家庭にお邪魔しちゃう悪友は船越英二。悪気はないんだけど場の雰囲気を察しないで新妻の若尾文子にワイシャツ新しいのありますか?なんて図々しいことも言って根上淳も断ればいいのになんとなく断れずに家に泊めたりしたりする気持ちよく分かります。 こういう断りにくいことをびしっと言ってくれるのがいつもは口うるさく何かと世話をしてくれる近所のおばさんだったりするところも古きよき日本の風景といった感じがします。 船越英二がやっと帰ったと思ったら今度は根上淳の恩人のおじさん東野英治郎が転がり込んで最終的には一緒に東京にやってきた国の人と新居で大宴会。若尾文子もさすがに「なんだか泣きたくなっちゃう。」と弱音を吐きますが自分が新妻の立場だったら確実に家を出て行くなと思います。宴会の前に若尾文子は昼間に東野英治郎と悲しいかな二人で遊園地も行って絶叫マシン系にも乗ってなんだかものすごく不憫でした。 もちろん丸くおさまって終わるのですが最後の演出はちょっと気が利いていてにやりとしました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! (「You, Me and Dupree」の出演者で) | |
根上淳 (船山敬太) | マット・ディロンで。 |
若尾文子 (船山芳子) | ケイト・ハドソンで。 |
船越英二 (大山) | そしてもちろんオーウェン・ウィルソンで。 |
東野英治郎 (河村太平) | ついでだからマイケル・ダグラスも。 |
薔薇の葬列 (1969) |
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2005年10月 | |
ゲイバーの人気No.1のエディはバーのママ、レダの恋人で経営者の権田と関係を持つのだがやがてレダに二人の関係がばれてしまい・・・ 伝説の?新宿二丁目映画「薔薇の葬列」をついに観ました。一応、経営者の権田をめぐりゲイのママとNo.1が嫉妬心をあらわにしながら衝撃の結末を迎えるのですがそこはATG作品、普通に話が進んでいるのにそこにゲイボーイにいつからこの道に入ったの?とかそういうインタビューが入るところが今でも新しすぎてついていけません。 それにしてもピーターのメイク特につけまつげはほとんどギャグですか?と思えるくらいわっさーとしていてマッチ何本乗るとかよく言うけどマッチどころかマッチ箱が乗るくらい濃すぎるところが衝撃的です。そんなばっちりメイクを落とすと一気に貧相な顔になってしまうピーターとも学生服姿なども見せてくれたり、ゲイバーのママもメイク落とすといきなり劇団ひとりみたいになってやっぱりこういう素の部分は見てはいけないなぁと思いました。 見てはいけないと言えばピーターの裸。ブリーフ姿とかもありましたけどこういうドラァグクイーン的な人の裸って実際見てしまうと開けてはいけない扉を開けてしまった感はあります。 最後、店も経営者の権田も手に入れたピーターだったけれどネタバレ→権田がピーターの実の父親だったという「オールド・ボーイ」的な←本当衝撃な展開に焦っていたら突然あの淀川センセーが日曜洋画劇場なみに出てきて「怖いですねー。」だって。もう今まで観てきたこと全てぶっ飛びましたよ。恐るべし淀川センセー。しかも最後血みどろだし色んな意味で衝撃的という言葉がぴったりな映画なのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
ピーター (エディ) |
化粧映えしそうなアシュトン・カッチャーで。 |
土屋嘉男 (権田) |
普通に男臭いビリー・ボブ・ソーントンで。 |
小笠原修 (レダ) |
「三人のエンジェル」のパトリック・スウェイジをちょっと思い出した。 |
張込み THE CHASE (1958) | |
2007年9月 | |
質屋の強盗殺人犯の一人を捕まえるために逮捕した共犯の男の情報から過去に別れた女、横川さだ子の元に現れるのではないかと刑事の柚木と下岡はさだ子の住む家の前の宿をとり張込みを始めるが・・・ 野村芳太郎監督の松本清張サスペンス。 高峰秀子が出ているので前々から観たかったのですがようやく観ることができました。 高峰秀子は画面には結構出ているのですが張込まれている役なので台詞があまりなくてちょっと物足りない感じでしたが銀行に勤めている男の後妻となって表向きは普通に暮らしているけれどケチな旦那のおかげで毎日同じことの繰り返しをして生気ない生活をしている不幸な妻というのがはまっていました。 この映画だと運良く高峰秀子が住んでいる家の正面に宿があって1週間ほど部屋をとるのですが事件の性質上販売員と身分を偽っていて宿の女主人や女中は仕事に来ているのに毎日寝てばかりいると警察に通報されたりと刑事の張込みの大変さを重点に描かれているのと舞台は佐賀県なのですが当時ののんびりとした風土がいい感じにミックスされてよかったです。 後半犯人が現れずあきらめかけた時にネタバレ→高峰秀子がついに動き出し犯人(田村高廣)と接触するのですが、高峰秀子は犯罪者だと知らないから今の家庭を捨ててでもついて行く覚悟は出来ているのに突然の逮捕で夢も無くしてしまうのですが高峰秀子のこの感情の持って行き方はやっぱり上手かったです。← 刑事役は大木実でこの淡々とした張込みに合っていました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
大木実 (柚木隆男) | 大木実は日本のクライヴ・オーウェンです。 |
宮口精二 (下岡雄次) | 老刑事とか似合いそうなマイケル・ケインで。 |
高峰秀子 (横川さだ子) | やっぱりこういう役はナオミ・ワッツです。 |
遙かなる男 (1957) | |
2008年3月 | |
日本各地を回る養蜂屋のトラックに忍び込みとある牧場にたどり着いた八郎は真っ当に生きるために蜂屋に弟子入りし、牧場主の長女弘子とも親しくなるがそれを妬む牧童頭の野島が嫌がらせを始め・・・ やくざものが真っ当な暮らしを求めて牧場までたどり着いたもののそこには嫌がらせをする牧童頭やら池部良を消そうとするかつての仲間たちがやってきたりとする池部良主演の西部劇タッチのアクション映画? やくざをやっても「青い山脈」のような学生をやっても相変わらずさわやかで池部良は好感度が高いです。 それに引き換え牧場で大きな顔をしている堺左千夫のお山の大将っぷりがすごいです。出戻りの新珠三千代を何としても嫁にしたくて色々気を引こうとするのですが新珠三千代は堺左千夫の人間が小ささや汚さを見抜いているので相手にしなくて逆に池部良と親しくするからやきもち妬いて嫌がらせの連続。自作自演で馬がいなくなったのは池部良のせいにして追い出そうとしたりやくざに居所を告げ口したりする最低のやり口はここまで来るとあっぱれです。 新珠三千代も相変わらず気丈というか気が強い女という役がよく似合っていて冒頭いきなり出会ったばかりの池部良を冷たくあしらってさらに平手打ち。新珠三千代の気の強さは「大砂塵」のジョーン・クロフォードを思い出しました。 この映画には蜂屋の娘と牧場主の息子の身分違いの恋もあってもちろんヒステリックなお母さんに反対されるのですがその母親役は沢村貞子ではまりすぎて笑ってしまいます。もうヒステリックなお母さんといったら沢村貞子に勝る人はいるのかと思わず考えてしまうのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
池部良 (八郎) | さわやかなチンピラみたいな役が似合いそうなポール・ウォーカーで。 |
新珠三千代 (弘子) | 気が強そうなダイアン・クルーガーで。 |
堺左千夫 (野島) | やっていることが小さい悪党が似合うスティーヴン・ドーフで。 |
ハワイ・マレー沖海戦 (1942) |
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2005年8月 | |
休暇で帰省した海軍兵学校の生徒に憧れる従弟の友田義一がやがてマレー沖海戦で活躍するまでを描いた作品。 「加藤隼戦闘隊」と同じ戦争中に作られた戦争映画ですがこちらは純粋な東宝映画だからストーリーがあって「加藤隼戦闘隊」より退屈はしませんでした。さすが東宝ということで原節子も出演。というか原節子が戦争映画に!ということでどんな役で出ているかが気になって観に行ったんですけどね。 で、原節子の役どころは主人公の姉さんという役どころでしたが彼女は1920年生まれだから当時22歳。確かに若いんですけど顔も声も変わってないところがさすが原節子。しかも従弟が帰省してくるとき妹と一緒に頭にリボンなんてつけておめかししているだけでもちょっと笑えるのに「リボンなんかつけてきちがいみたい。」的な発言をされてさらに笑いました。これだから原節子が出ている作品はやめられません。 肝心の主人公の少年の成長過程なんですけど「加藤隼戦闘隊」と同じで出兵するまでがどうにも単調に思えてやっぱり眠くなってしまい気がつくと訓練から帰省してまた訓練に戻っていてという展開であんまり記憶にないんですよね。最後成長した主人公と従弟が活躍するのがマレー沖海戦と真珠湾攻撃となんですけどこれまた円谷英二の特撮がすばらしくて映画の内容より原節子と特撮だけが印象に残ってしまったのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
伊藤薫 (友田義一) |
まだまだ若手のオーランド・ブルームで。 |
ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐 (1960) |
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2005年8月 | |
真珠湾での勝利からミッドウェイ大海空戦での大敗までを描いた作品。 一人の中尉を中心に描かれていて一連のアメリカとのお馴染み真珠湾からミッドウェイまでの戦いが描かれている訳ですが、これ東宝の映画なもんで10年後に作られた「激動の昭和史 軍閥」とかぶるところ、例えば三船敏郎が「軍閥」の時は山本五十六だったけどこっちでは五十六の右腕的存在だったり円谷英二の特撮もどこかで観たことあると思ってよく考えてみたらほとんど同じだったりでなんだか混乱するというかこう真珠湾からミッドウェイ関連の作品を立て続けに観ると新鮮味がないから正直もういいかなぁなんて思ってしまいました。 鶴田浩二も夏木陽介の上官役で登場していて最初は一体どんな活躍をするんだろうかと期待していたらなんだか知らないけれどあっけなく撃墜されちゃって鶴田浩二の扱いがもったいないけどこの扱いある意味贅沢な使い方ですねぇ。仲間の佐藤允は相変わらずやんちゃで勢いがあるという感じでこれはよかったし、最後、魚雷が命中して沈没しかける潜水艦とともに沈んでいく三船敏郎はいつものようにカッコいいなぁと思うところはありましたが夏木陽介が主役というところが何となくリアリティはあるけれど華やかさに欠けるという気がして少々物足りなかったのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
夏木陽介 (北見中尉) |
ポール・ベタニーあたり普通に軍隊にいてもおかしくない感じがして。 |
晩菊 LATE CHRYSANTHEMUMS (1954) | |
2005年7月 | |
金貸しをして生計を立てている倉橋きんを中心にかつての芸者仲間達の日常を描いた群像劇。 独身で恋愛よりも金という主人公のきんは昔の芸者仲間のぶとたまえに金を貸しては期限が迫ると激しく取り立てるような性格だし、子供離れ出来ない病弱なたまえは息子がパトロンをしている事に悩んでいるような辛気臭い感じの幸薄感じ。そんなたまえとなぜか同居しているとみは掃除婦をしているけど競馬に金をつぎ込んで負けちゃ娘に金をせびるしょうもない女。唯一まともなのはたまにきんから金を借りるけどちゃんと返済しておでん屋を夫婦でやっているのぶだけですよ。 主人公のきん(杉村春子)の冷徹さもすごかったけど、博打が大好きなとみもビッチで別次元としてすごかったです。きんに金を借りると取り立てがムカつくからきんからは何があっても金を借りないポリシーを持ちつつ、昔はきんより人気のあった芸者という前歴を持ち出して「金貸しババァ」と陰口を叩くところなんて面白かったけど、金とおばさん同士の妬みは恐いなぁと思います。 きんものぶがいない時にはもちろん悪口を言うしのぶがきんの家にやってきた時も何か取られやしないかと鋭く目を光らせているところが恐いんだけど、恋はしないと言っては割には昔熱烈に恋愛をした上原謙が訪れてきた時に何時間化粧しているんだよ。とお茶目なところもあったりして料理も豪勢に振る舞うけれど上原謙の目的が金を借りに来たと知った途端、手のひらを返すように冷たくなるところが金に徹底していて逆に爽快でこの役をやった杉村春子はやっぱり天才的だなぁと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
杉村春子 (倉橋きん) | 見るからに恐いグレン・クローズで。 |
沢村貞子 (中田のぶ) | 唯一まともな印象のこの役はメリル・ストリープあたりに。 |
細川ちか子 (小池たまえ) | ミア・ファーローは幸薄そうで。 |
望月優子 (鈴木とみ) | 金なんて使ってなんぼという豪快そうなイメージのウーピー・ゴールドバーグで。 |
反逆のメロディー (1970) | |
2006年8月 | |
哲は淡野組に所属していたが組は解散され、今は刑務所に入っている腹違いの兄が組長の立花組に戻ってきたが警察と癒着している新手の暴力団の矢東会が勢力を伸ばしていた・・・ もろ1970年代と言った感じの日活ニューアクション。顔ぶれも原田芳雄、地井武男、藤竜也とパワフルだし、梶芽衣子も出ています。 最初は敵対している愚連隊の地井武男と立花組に因縁を持つ鉄砲玉的な藤竜也が和解して新手の暴力団に挑んでいくような内容なのですが、原田芳雄は素肌にジージャンでカッコいいし、地井武男は相変わらずインテリ系だし、藤竜也はいつも通り凄みがあって三人キャラがかぶっていないところがいいし、見た目だけでも何か最強という感じがして気持ちがよかったです。 藤竜也はなぜか子犬を連れているのですが子犬とのツーショットはものすごく違和感ありました。 梶芽衣子は出番少ないし相手役が地井武男というところに不満がのこるのですが、追われている藤竜也をかくまったり、最後の殴りこみに行くときも検問があるからあたしが銃を持っていた方がいいとか言って銃を預かったり、恋人の地井武男をしっかりサポート。ネタバレ→結局殴りこみに行く前に殺されてしまうのですが遺品を原田芳雄の所に持っていった時に「もうあの人の顔も憶えていない。」なんて強がっているけど背中で密かに泣いていたりする細かい演技や←、衣装もわき腹がパックリ開いた野良猫ロックの時と互角のいかした格好で出番は少なくても魅せる所はしっかり魅せている梶芽衣子はさすがでした。 あとこういう日活ニューアクションって結構、暴力団と関係ないけど主人公とひょんなことから仲良くなる不細工目なキャラが出てくるのですが、今回は佐藤蛾次郎。雨上がりの蛍原の髪型をチリチリにしたような風貌でお笑い担当なんですけど、ダイナマイト片手に一人で敵地に乗り込みボコボコにされたり、水辺で一人数曲切なげな歌謡曲を歌ったりしてツボを抑えているところもなかなか楽しかったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
原田芳雄 (塚田哲) | 素肌にジージャン来ても大丈夫そうなヴァンサン・カッセルで。 |
地井武男 (星野) | インテリの極道者もいけそうなガイ・ピアースで。 |
藤竜也 (滝川政次) | 変な威圧感があるラッセル・クロウで。 |
反逆児 CONSPIRATOR (1961) | |
2006年9月 | |
劣勢の状態で家康の子、信康は大逆転の勝利をし織田信長に認められる存在になるのだがあまりに出来すぎるためにやがて信長から疎まれる存在になり・・・ 中村錦之助が類まれなる才能と今川と徳川の血筋を引いているばかりに織田信長に命を狙われた信康を演じた悲劇もの。 前半、武田軍に勝利して織田信長の前で舞う踊りはさすが中村錦之助という感じで見ごたえ十分なんですけれど今回何よりすごかったのは信長の娘で嫁の徳姫と、そんな織田家に滅ぼされた今川家で信康の母親、築山御前の女同士の争いがとても怖いです。 徳姫役は恨めしい感じが上手い岩崎加根子。そして築山御前は杉村春子なんですが杉村春子なんて姫が妊娠したら流産するように毎晩怪しげな呪術を行っているし、今川家を復活させるべき侍女を送り込み男の子を産ませようと策略したりするのですが極めつけは信長やら姫をとわら人形で呪い殺そうしてそのときのメイクが目の回りに金粉をどっさりつけてこんな岸田今日子ばりの杉村春子の怪演は貴重でした。 岩崎加根子も杉村春子と顔を合わせれば嫌味のひとつやふたつ言われるのは分かっているのでちゃんと切り替えして逆にぎゃふんと言わせたり言わされたりとこの映画で大奥のはしりを観たという感じでした。 と錦之助そっちのけで女の戦いが目立ってしまってもっと錦之助が観たかったなぁとちょっと物足りなかったのですが、最後は結局切腹させられる運命になってしまい介錯は家来なんだけど昔から兄弟のように育ってきた服部半蔵たちで本当はやりたくないけど知らない奴に介錯されるんだったら俺達がやった方がいい、とはり錦之助の映画らしく男の友情が色濃く出ていてやっぱり泣けました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
中村錦之助 (三郎信康) | エリック・バナは悲壮感という言葉が似合うと思う。 |
岩崎加根子 (徳姫) | 恨めしい感じのジェニファー・ジェイソン・リーで。 |
杉村春子 (築山御前) | ミア・ファローはわら人形とか呪いのグッズが似合いそう。 |
晩春 LATE SPRING (1949) |
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2005年11月 | |
大学教授の曾宮周吉は何かと仕事を手伝う娘の紀子が婚期を逃しそうになっているのを心配するが紀子は結婚より周吉のそばにいる方がいいと言う。そんなある日、周吉の妹まさは紀子に結婚話を持ってくるのだが・・・ 噂には聞いていましたがめちゃくちゃファザコン的内容で強烈でした。今観るとこんなにも危うい感じの映画が日本にもあったんだなぁ、しかも小津作品でと思うとやっぱりすごいです。 再婚したおじさんに向かって「まぁ、おじさまったら不潔!」とお見合い話が出てくる前の前半はいつもの原節子口調でかまととかますところとかおかしいし、後半見合い話と笠智衆の再婚話が持ち上がりかなりの苛立ちを抱えていてすっごい視線が恐ろしくキツクなるこのギャップはやっぱり原節子ならではだなと感心しました。 笠智衆との相性も抜群でだから小津作品でこの二人はいろいろと競演してこられたんだとも感じました。しかしこの二人の作品を競演したしないに関わらずいろいろ観ていくたびに大物俳優なのにおかしな二人に見えてきてこの絶妙なコミカルさが笠智衆と原節子の魅力なのではないかと感じるようになりました。 そして忘れちゃいけない杉村春子も財布を拾って後で届けるからと懐にしまいつつ、笠智衆に突っ込まれたりする掛け合いも最高にコミカルだし、結婚式当日に原節子の部屋に忘れ物はないかもう一度戻ってくるさりげない叔母さんの気遣いみたいなこまかなところとか見ると杉村春子っていい!といつもながら思います。 笠智衆に原節子に杉村春子と後期小津作品の常連がそろった作品で笠智衆と原節子は初競演だそうで、小津作品はサイレント映画は結構観ていてトーキーは「長屋紳士録」しか観たことがないという変な観かたをしていて本格的に有名どころの小津作品初鑑賞といってもいい自分にとってはちょうどいいものが観ることができました。 あと、親友の月丘夢路とのくだりでちょっと気がついて象徴的だったのは原節子が嫁に行くか行かないかの話題で、夢路:「いつ行くのよ。」原節子:「行かないわよ。」夢路:「行っちゃいなさいよ。」原節子:「いやよ。」夢路:「行っちゃえ、行っちゃえ。」と5,6回繰り返して最後に原節子がキレ気味に「ぶつわよ!」と言ったり、月丘夢路特製の手作りケーキを夢路:「食べなさいよ。」原節子:「いらない。」夢路:「手作りなのよ。」原節子:「お腹いっぱいなの。」って感じのやりとりが何回か続いて「長屋紳士録」の時も感じたのですが小津作品って結構しつこさギリギリの繰り返しが特徴なのかなぁと感じました。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
笠智衆 (曾宮周吉) |
キャラクターのイメージはウディ・アレンっぽい。 |
原節子 (曾宮紀子) |
こういう役をキルスティン・ダンストにやってもらいたい。 |
杉村春子 (田口まさ) |
親戚の世話を焼いていそうな顔つきのジェシカ・ラングで。 |
氾濫 FLOOD (1959) | |
2009年4月 | |
画期的な接着剤を開発して瞬く間に化学会社の重役になった真田佐平の周りには彼の名声を利用しようととする人間が次々と集まってきて・・・ 佐分利信が散々な目に遭う佐分利信残酷物語。 佐分利信を中心とした群像劇なのですが、佐分利信の妻が沢村貞子でその娘が何故か若尾文子。同級生は叶順子でその幼なじみが川崎敬三と他にも若尾文子の踊りの先生が船越英二に佐分利信の昔の浮気相手が左幸子とものすごく豪華。 内容はものすごく嫌な感じで進んでいくので最初から最後まで後味が悪い感じなのでラース・フォン・トリア好きにはたまらないかもしれません。 商品の売れ行きが悪くなってきて遊んでばかりいる社長にプレッシャーをかけられ、戦争時代の浮気相手の左幸子は子供が病気だからと遠まわしに金を要求。しかし子供は全くの健康体だったり、仲間からは愛人との手切れ金がいるから金を貸せと厚かましいにもほどがあるというエピソードが次々に出ていてイライラします。 それに川崎敬三が今まで観てきた中で最低な男を演じていて痛い目に遭えばいいのにと思わずにはいられません。幼なじみの叶順子と結婚を考えていながら若尾文子が佐分利信の娘と知って将来のためにさっさと乗り換えるなんていうのは当たり前。若尾文子なんて始めてのデートで個室でいきなり往復ビンタでDVどころの話じゃありあせん。殴られて川崎敬三と恋人となるなんて若尾文子もどうかしているのですが・・・ 生真面目な奥さん沢村貞子もジゴロの船越英二に口説かれその気になるも暴言を吐かれてあっさり捨てられてこの家族が不憫で鳴りません。 一応、家庭を顧みない佐分利信がいけないみたいな雰囲気になっているのですが、佐分利信のキャラクターが深く掘り下げられていないので沢村貞子がグチを言ってもただのわがままにしか聞こえないところがもったいなかったです。佐分利信もへこむエピソードがこれでもかと続くのに顔色ひとつ変えないので何を考えているのか分からないし、この役は佐分利信というより山村聡の方が断然はまっていたと思います。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
佐分利信 (真田佐平) | 苦悩する約が似合うデンゼル・ワシントンで。 |