日本映画

ひ


東支那海の女傑
(1959)
3
2007年6月
終戦目前のアモイ。ナイトクラブの経営者、黄百花は密告容疑で逮捕されそうになるが横山大尉に助けられる。終戦を迎え横山大尉はダイヤを日本に持ち帰る極秘指令を受けるが中国の厳しい監視を逃れるべく海賊の手を借りる手を考え付くが海賊の頭はかつて横山大尉が助けた黄百花だった・・・
女海賊とこのタイトルから分かるように新東宝作品です。
かなりチープなんですが船首に竜のデザインが施されていて、いかにもアジアの海賊船ですという感じが雰囲気を盛り上げています。
ものすごく紳士的で頼りになる天知茂と女海賊が手を組んで日本にダイヤを持ち帰れるよう中国海域からの脱出を図る目的があるのですが、そんなことは置いといて天知茂の仲間の裏切り、女海賊の仲間の裏切りと海賊達の宿敵との決戦と目的と関係ないエンターテインメント性の高いエピソードが繰り広げられていっいたり
海賊達の衣装も確かにオリエンタルな雰囲気があるのですがアラビアンというか無国籍な雰囲気もあっていかにも新東宝っぽくて微笑ましいです。
当然天知茂と女海賊とのロマンスがあるのですがそこはプラトニックな関係止まりと白の海軍制服がもの似合う天知茂はものすごくストイックに見えて奇想天外な作品に出ていてもやっぱり渋カッコいいのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高倉みゆき
(黄李花)
女傑という言葉がぴったりなファムケ・ヤンセンで。
天知茂
(横山大尉)
白の軍服が似合うショーン・ビーンで。


ひかりごけ
LUMINOUS MOSS
(1992)
3
2009年7月
北海道の知床に訪れた作家をとある洞窟に案内した校長はここに生息するひかりごけにまつわるエピソードを披露して・・・
社会派監督の熊井啓晩年の作品で主役は三國連太郎が二役こなしています。
第二次世界大戦の後半、船長で漁師の三國連太郎は遭難し三ヵ月後に一人生還するのですがやがて人肉を食べて生き延びたのでは?という疑いをかけられるというエピソードを作家の先生に披露するという感じなのですが、漁師の仲間に奥田瑛二、田中邦衛に杉本哲太という顔ぶれ。
いきなり瀕死の杉本哲太が顔面蒼白で死んでしまい悩んだ挙句、杉本哲太の肉を食べることになるのですが田中邦衛は頑なに拒否。そうこうしているうちに何も食べていない田中邦衛も衰弱死と次々と死んでいき、奥田瑛二も良心の呵責に苛まれ自殺をしに吹雪が激しい外に飛び出そうとするのですが・・・みたい感じで回想されていき裁判で裁かれるわけですが、人を食べたことのない人間ではなく人を食べたことのある人に裁かれたいといい検事や遺族の怒りを買うのですが三國連太郎の言うこともへ理屈に聞こえるけれどまぁそういう気持ちも分からなくもないという
生き残るためにこういう行為はありかなしかというところで熊井啓らしさはあるものの社会派という感じはあまりしなかったです。
熊井啓作品は吸う作品しか観ていないのですが傑作はやはり「帝銀事件 死刑囚」とか割と最近では「海と毒薬」なんかがスリリングでよかったと思います。この映画にはそういった意味であまりスリリングな感じが感じられなかったので。
でも恐らく最後の映画出演になった笠智衆はいい味出していました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三國連太郎
(船長/校長)
こういう役をやっても嫌味にならなそうなモーガン・フリーマンで。


ひき裂かれた盛装
(1967)
4
2008年6月
株の買占め屋の佐倉は大会社の社長、納屋のパトロンのかおりに近づき情報を入手し共謀して次々と土地を手に入れていた。そんなある日、佐倉は一人の娘と出会い親しくなるがその娘は納屋の一人娘の倫子で・・・
欲望渦巻く大映のサスペンス。
最初、成田三樹夫が実業家というふれこみで登場したのでまともな役なのかなと思っていたらやっぱり法律すれすれで儲けている実業家という役どころでした。見た目が既に胡散臭いですから。(カッコいいですが・・・)と相変わらず成田三樹夫はちょいワル系で相変わらず良かったのですが、今回の見所は藤村志保です。
パトロン(もちろん訳あり)であるにも関わらず小沢栄太郎の情報を成田三樹夫に横流しして小沢栄太郎にばれそうになったら女の武器で切り抜けるといった完全に悪女系のキャラクターは
今までの清純派の藤村志保からは想像も出来なかったのですが、この岸田今日子が得意そうなこの役も藤村志保だと涼しげな顔で色々とあくどい事をさらっとやってのけるのでかえって新鮮でよかったです。
小沢栄太郎も娘の安田道代が成田三樹夫と付き合っていると知ってから消しにかかるところがいかにもという感じでこれまでも娘に限らず自分の不利益になる人物は殺し屋を雇って秘密裏に抹殺するというくだりは、いつの時代も大企業ならではというか大企業を敵に回すと怖いと思いました。
安田道代はドロドロとした展開の中ちょっとお転婆な娘さんといった感じで一服の清涼剤となっていてよかったです。
大スターでキャスティングすると成田三樹夫は田宮二郎、藤村志保は岸田今日子か京マチ子か若尾文子で安田道代役はこのままか野添ひとみあたりになりそうで、大映作品としては地味目なキャスティングでしたが話し自体は面白かったですし脱清純派をした藤村志保を観ることが出来ただけでも得した気分です。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
成田三樹夫
(佐倉恭)
危ない仕事が似合いすぎるヴィゴ・モーテンセンで。
藤村志保
(秋原かおり)
グウィネス・パルトローの悪女を見てみたい。
安田道代
(納谷倫子)
最近は色々な役をやるようになってきたナタリー・ポートマンで。
小沢栄太郎
(納谷嘉一)
憎々しい役ばかりになってしまったデヴィッド・モースで。


ひき逃げ
(1966)
5
2005年10月
山野モーターズの重役夫人柿沼絹子は男の子を轢いてしまうが愛人がいたためそのまま逃げてしまう。絹子の夫、久七郎は自分の地位を守るために自分のおかかえ運転手を自主させるのだが、目撃者が被害者の母親伴内国子に車を運転していたのは女だったと証言し国子はやがて絹子の存在を突き止め・・・
義母との確執を綴った「私の渡世紀」を始めエッセイを何冊かここのところ読みまくって高峰秀子のすっかり虜になって彼女のすごさを認識してちょうど観たかった「ひき逃げ」が上映されるということで観にいきました。
娼婦をした過去を持ち苦労ながらもようやく結婚して子供を生んで幸せになりつつも夫に先立たれ子供もひき逃げされたというついてない人生を送る女の役なのですが、子供が事故に遭ったという一報を聞いた時のギョっとして目がそれこそ三角になったり、子供が死んで自暴自棄になって酔っ払って歌を歌うシーンも昔、一流のオペラ歌手に歌を一から習ったというだけあって声も通っているし、ラストシーンのネタバレ→
半狂乱ぎみに横断歩道を渡る子供の手を引き安全を確認する迫力など←高峰秀子はすごいとただただ感心するばかりです。
そんな子供をひき逃げされた高峰秀子が司葉子の家に家政婦として入り込み復習を企てて、弟の黒沢年男を使って司葉子に脅迫めいた電話をかけ精神的に追いつめていく一方、高峰秀子はすでにいる先輩家政婦を追い出すような根回しをしてスリリングなのですが、この
緊張感のなかに司葉子の子供を殺そうと歩道橋から投げ飛ばしたり、ジェットコースターから放り投げたりととんでもない妄想シーンなんかの面白い要素があり成瀬巳喜男作品はやっぱりどれも面白いし、高峰秀子の徹底した庶民の暮らしという雰囲気に対して司葉子のこれぞ本物の金持ちといってもいいくらいの豪華な暮らしに身にまとう洋服なんかの対照的なところもよくできているなぁと思いました。
それに最後ネタバレ→
親子をガス漏れで殺そうといよいよ殺そうかと思ったら親子で心中していて逆に捕まる←などの展開は本当最後の15分くらいだと思うのですがもうひとつどんでん返し的な展開があって90分ちょっとの作品にこれだけよく綺麗にまとまったなぁとやっぱり最後まで感心するのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高峰秀子
(伴内国子)
ちょっと狂気的な役をやらせたら上手いジェニファー・ジェイソン・リーで。
司葉子
(柿沼絹子)
ブルジョア階級が似合うグウィネス・パルトロウで。
小沢栄太郎
(柿沼久七郎)
愛よりも金や権力が大事という役どころが得意なブルース・グリーンウッドで。


非行少女
(1963)
3
2005年12月
学校へも行かず酒場で酒を飲む若枝は東京から失業して金沢に戻ってきた三郎に励まされ再び学校に通い始めるのだったが・・・
和泉雅子はたくましいイメージだったのですが昔は美少女だったんですねぇ。こんな美少女が酒場で酔っ払らうわ、ハイヒールを盗むわで荒れた暮らししているけれど継母は嫌味を言うわ父親は仕事もしているんだかしないんだか良くわからない状態で酒びたりの生活だもんだからこりゃ非行にも走るなぁとこういう現象って生活環境の影響が大きいんですね。
唯一の理解者、三郎もいろいろ気遣ってはくれるけど今度は祭りに行く金欲しさに学校に忍び込んだことがばれて失望した三郎は親戚の養鶏場に住み込むけれど、追ってきた若枝は誤って養鶏場を全焼させてしまう運のなさ。
その後非行少女たちが暮らす施設に入るのですが個人的には結局誰も理解してもらえなかった前半よりも後半施設に入ってから人間らしさというか改心していく過程が好きです。最初は施設にもなじめずケンカ騒動を起こすけど、マラソンで村に出たときに村人達に中傷されて非行少女たちに連帯感が生まれるところなんかスカッとしましたし。
脇役も和泉雅子の叔母さんに沢村貞子だったり議員に立候補するから和泉雅子となんか付き合うなと三郎にいろいろ嫌味を言ってくる兄に小池朝雄だったりとインパクト強い人が出ていてちょっと得した気分になりました。小池朝雄なんて絶対選挙のときに不正行為していそうだけど真っ当な選挙活動していて、いつもとイメージが違うのも微妙に違和感ありました。
っていうか小池朝雄のイメージはこれでいいのだろうか・・・
ハリウッドバージョンはこの人で!!
和泉雅子
(北若枝)
キルスティン・ダンストの非行少女役を観てみたい。


非常線の女
DRAGNET GIRL

(1933)
5
2004年5月
タイピストとして働く時子は社長の息子から指輪を贈られるほど気に入られているが巧みな話術で誘いを断り貢物だけを受け取り、夜は街の用心棒をしている恋人の襄二の元に向かい遊びまわる二つの顔を持っていた。
そんなある日、襄二の元に宏という学生が子分として入ってくるがチンピラのようなな中間達と付き合う宏を心配した姉の和子は襄二に弟をまともになるよう説得してくれと頼み込む。そんな和子に襄二は引かれ始めていたが時子はそんな和子を見て襄二とまともな人間になろうとするのだが・・・
小津安二郎監督のサイレント・ハードボイルド映画
。家具から小物、衣装全てがモダンですばらしく、おしゃれなその世界にまず圧倒され、小津監督のイメージをひっくり返してくれた記念すべき作品。小津監督作品は昭和の下町庶民を描いた作品しかないとばかり勝手に思い込んでいたけど、こんなおしゃれなハードボイルド作品を撮る人だとは思いませんでしたよ。
物語はチンピラのような気まま生活をする時子らを中心に描いていくのだけど主人公の岡譲二がハンフリー・ボガードも真っ青にモダンなスーツを完璧に着こなしていて、今の日本人にこれだけの着こなしができる俳優がいるかと思うとあっぱれだ。
ヒロイン時子役の田中絹代がいろんな意味ですごかった。女チンピラ仲間に襄二といちゃつくところをからかわれて一言「張り倒すよ!」って台詞が普通なら(梶芽衣子系女優)かっこいい!としびれるところですけど、田中絹代ののっぺりとした大正顔で「張り倒すよ!」っていわれもその顔で言われても怖くないやいと感じ、こりゃ完璧ミスキャストだと思ったけど中盤セレブが着るようなドレス(これまた似合っていない)の右肩紐が多分偶然だと思うんだけど、はらりと落ちて無表情に直すシーンがおかしくってそれで全てが許せるという不思議な現象が起きたのでした。
後半は嫉妬した時子が和子のように堅気になろうと襄二に言い寄って激怒される展開に気分はすっかり襄二に感情移入。たとえて言うなら梶芽衣子が普通の主婦になりますってな展開で、だれも時子が堅気になることは望んじゃいないのです。だけど和子の弟の借金を返すために襄二はこれきりで時子と堅気になろうと決め時子の会社に強盗に入る。見事強盗に成功した襄二達に警察の追っ手が・・・今逃げれば間に合うもののネタバレ→
時子は何を血迷ったのか「捕まっちゃおうよ。」などとのたまうのだ。しかも何回も。もうこれがうっとうしくって襄二よそんな女置いて一人で逃げるんだよぅ。と思い本当に一人で逃げてよしよしと思っていたら時子め襄二の足を撃ちやがったよ。こうして二人は捕まり←劇終了となるのですが、おとなしそうな顔をしている女子ほど何をしでかすかわからないという教訓を得たのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
田中絹代
(時子)
クラシックな顔立ちのクロエ・セヴィニーで。
岡譲二
(襄二)
用心棒という言葉がぴったりなマイケル・マドセンで。


非情都市
(1960)
3
2010年5月
株の買占めをしている保科が殺される事件が発生し、新聞記者の三宅は独自に取材を始めた。三宅は事件の背後に暴力団が関わっていると睨むのだが・・・
松本清張っぽいサスペンス。
内容は全然違いますが、三橋達也がいかにもジョージ・クルーニーっぽい行動を取る(仕事はできるけど一匹狼で周りから若干けむたがられ気味)ので「フィクサー」に雰囲気が似ているなと感じました。あくまでも印象としてですが。
そんな三橋達也は今回、スクープのためならヤクザのアジトに潜入してボコボコに殴られるところまでは男気があってよかったのですが、逆にヤクザ側についている弁護士の平田昭彦にスクープやるから犯人を数日匿ってくれという取引をすんなり受け入れたり、恋人の司葉子にスパイの真似事をさせ、司葉子に感謝も心配もすることなくネタだけをゲットするというかなり最低な役どころを披露してくれて新鮮です。
そんな三橋達也はスクープ必死モードが加速してついには警察からも目をつけられ金融業会からも圧力をかけられて特ダネ間違いなしの記事もお蔵入りさせられて散々な目に遭う三橋達也。
欲を出してズルをすると痛い目にあるという教訓すら感じる映画でした。
三橋達也と司葉子の路上でいちゃつくシーンは様になっているのですが、司葉子の出番が少ないのが残念。もっと話しに絡んできたらスリリングになってサスペンスを盛り上げてくれた気がします。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三橋達也
(三宅哲夫)
やっぱりイメージはジョージ・クルーに。
司葉子
(並木千晶)
レイチェル・ワイズあたりにお願いしたい。


美女と液体人間
BEAUTY AND THE LIQUIDMAN
(1958)
3
2009年12月
夜の街で、銃声が響き渡り警官がやってくるがそこには衣服が脱ぎ捨ててあるだけだった。やがてその男の女が歌手の千加子ということが分かり張り込むのだが・・・
変身人間シリーズ第一弾。第二弾の「電送人間」第三弾の「ガス人間第1号」は鑑賞済み。
原爆の実験で放射能の影響を受けてしまった人間が液体人間として人々を襲うという設定がゴジラっぽいです。
液体人間が誰かに恨みを持って復讐するわけではなく、液体人間になってしまった人は凶暴になって単純に人を襲うという動物的な設定がなかなか斬新でした。
斬新と言えば、事件を捜査する刑事が平田昭彦、上司に小沢栄太郎、部下に土屋嘉男に中丸忠雄とみんな悪党面していて解決しそうな事件も悪い方向に向かいそうで気になって仕方がありません。そんな中、佐藤允だけはやpっぱりギャングの役でちょっと不憫に思えてきました。
平田昭彦が事件の捜査をしていると生物学者で平田昭彦の友人で生物学者の佐原健二が戸津前夜って来て放射能の影響を受けて突然変異した生物の仕業では?という説を唱えて強引に話しに絡んでくるところはまぁご愛嬌という感じなのですが、ヒロインの白川由美は大人向けの特撮映画のヒロインとしてはとても雰囲気があってよかったです。キャバレーの歌手という設定で歌はもちろん口パクなのですが口パクも見事に極めていたし、最後は佐藤允に人質にされ何故かスリップ姿で下水道を逃げ回るという体を張ったヒロインっぷりも見事でした。
しかし、ラストネタバレ→
下水道にガソリンをまいて液体人間を火攻め、町自体も火の海で液体人間よりもこのラストが一番怖いと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
佐原健二
(政田)
位目0次的にはジェームズ・マカボイといった感じでしょうか。
白川由美
(新井千加子)
狼男の映画でヒロインをやるエミリー・ブラントあたりで。


必殺仕掛人
(1973)
3
2008年7月
音羽屋からの依頼で殺しを請け負う藤枝梅安はある日、遊郭の女将のお吉とその愛人の殺しを引き受けるのだが・・・
必殺シリーズ初の映画化は田宮二郎が主役です。
「必殺仕事人」は何となくチームで殺しを請け負うみたいなイメージがあったのでこの仕掛人も同じようにチームで殺しをするのかと思いきや単独行動なのでちょっとイメージしていたものと違っていました。
田宮二郎の他に高橋幸治も仕掛人で彼も殺しの仕事を請けますがこちらも単独行動で最終的には二人それぞれのターゲットが何となくあくどい事で繋がっていはいるのですが個人的にはやっぱりチームで殺しをして欲しかったです。
田宮二郎の過去にも触れいていて子供の頃に生き別れになった妹がいるのですがそれがなんと今回のターゲットの野際陽子でお互い生き別れた兄妹がいるところまで分かっているのにそれに気がつくのか気がつかないのか・・・というやきもきする展開はよかったし、
野際陽子が旦那を殺して愛人といい思いをするといったこういうあくどいタイプの悪女も始めて見たので新鮮でよかったです。
仕事が終わって一安心と思ったら最後にまだ一ネタあったりするところもいいのですが、いいところを持っていくのは仕掛人のボス山村聡というところが今まで何もしていなかったのに見せ場を全て持ってってしまったようで田宮二郎がちょっとかわいそうでした。
田宮二郎の梅安は殺しの時には非情でそれでいて普段は三枚目的なところという田宮二郎のいいところが一粒で二度美味しい感じだったし、猛一人の仕掛人の高橋幸治は常にクールというところがイメージどおりで出演者はみんな良かったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
田宮二郎
(藤枝梅安)
存在は三枚目な感じのクライヴ・オーウェンで。
高橋幸治
(西村左内)
いつもクールなヴィゴ・モーテンセンで。
野際陽子
(お吉)
ファムケ・ヤンセンにぜひお願いしたい。


秀子の車掌さん
HIDEKO THE BUS CONDUCTRESS
(1941)
3
2008年12月
他社に客を取られ乗客の少ない田舎のバス会社で車掌をしているおこまはある日ラジオで聞いたバスガイドをアイディアに取り入れ運転手の園田とバスに活気を取り戻そうとするのだが・・・
少女時代の高峰秀子のアイドル映画。
監督と脚本が成瀬巳喜男でこれが高峰秀子との始めてコンビを組んだ作品ですがこの頃から高峰秀子はガッツがある感じで興味深いです。
バスが一台しかなくしかもおんぼろという危機的状況にあるバス会社が舞台ですが社長がものすごくワンマンで雑用専門の女の子を雇ったりして経営者としては散々なのですが滑稽すぎて面白く見えてしまいます。そんな社長に女のあたしがガイドのアイディア言ってもあれだからと運転手の園田に提案をお願いする賢い選択はさすが高峰秀子という感じです。
運転手役の藤原鶏太という人もいい人なんですがちょっと頼りないのですが
この時からすでに成瀬巳喜男の女が逞しく、男は社長も含め情けないというスタイルが確率されていたんですね。
途中、バスが事故を起こして高峰秀子がケガをしたり紆余曲折あっていよいよガイドを実践の初日にネタバレ→
社長はおんぼろのバスを売ってしまって、本人たちはそれを知らずに希望に満ちて仕事に取り組んでいるというエンディングが残酷で←この辺りも成瀬巳喜男らしいなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高峰秀子
(車掌・おこまさん)
イメージはエレン・ペイジといったところです。
藤原鶏太
(運転手・園田)
ちょっと情けない感じのスティーヴ・カレルで。


人肌孔雀
(1958)
3
2010年2月
山本富士子が七変化して復讐する時代劇。
あらすじはややこしいので省略するのですが、要するに悪い役人に父親か何かを殺された恨みを晴らすために町娘に変身したり剣士になったり大忙しという娯楽映画です。
市川雷蔵はたまに出てきて山本富士子のピンチを助けるナイスガイという役どころで、最初は二人のW主演かと思っていたら思いっきり山本富士子メインの映画でこんなに動き回る山本富士子は初めて見たのでものすごく新鮮でした。そして
主題歌も山本富士子が「人肌孔雀〜」と歌い上げていました。
悪代官は河津清三郎はいかにも頭が良さそうな感じの枠役なのですが、実際は部下がマヌケなこともあって山本富士子の変装に全く気がつかない抜けている悪代官だったりして全体的に本当に山本富士子がピンチになるってことがあまりないのでスリリングじゃなくてちょっと物足りなくて可もなく不可もなくという印象が強く残ってせっかくならもうちょっとはじけた設定で印象にのこるようにしてくれたらなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
山本富士子
(おしの/京極若狭之介/染香)
ニコール・キッドマンに七変化してもらいたい。
市川雷蔵
(奈須新八郎)
ロバート・ダウニー・Jrあたりにお願いしたい。


人肌牡丹
(1959)
3
2010年2月
山本富士子が七変化が楽しめる「人肌孔雀」の姉妹編的時代劇。
あらすじは「人肌孔雀」と同じでややこしいので省略するのですが、「人肌孔雀」の姉妹編的と言われているだけあってほとんど同じ内容で感想を書くのに困ります。
前作よりパワーアップしている点と言えば、山本富士子の七変化が全開は三変化くらいだったのが五変化くらいになって見た目にも華やかなのと悪代官が田崎潤に代わって山本富士子の変装には簡単に騙されずどんどん山本富士子が追い込まれてピンチというハラハラな展開の連続で娯楽作品としては前作より面白くなっています。
虚無僧に変装という無理目なコスプレもあり尺八で敵をおっぱらったりと体も張っていますが今回は、姫様スタイルもあり、街娘とか剣士のコスプレもあるのですがやっぱり山本富士子は芸者とか姫様みたいな格好が一番様になるなぁと思うのでした。
と言うことで今回は感想は短めです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
山本富士子
(深雪/虚無僧/小鈴/緋牡丹のお雪/仙石右近)
「人肌孔雀」と同じでニコール・キッドマンあたりで。
市川雷蔵
(十六夜の源三)
「人肌孔雀」と同じでロバート・ダウニー・Jrあたりで。


ひとり狼
(1968)
3
2004年12月
かつて伊三蔵は身分違いの恋をしていたが失敗してしまう。そんな伊三蔵はめっぽう腕の立つやくざになった。そんなある日故郷に戻ってきた伊三蔵は恨みを持つ男にかつての恋人由乃を人質にとられてしまい・・・
市川雷蔵後期の最高傑作と言われているらしい股旅物なんですけど、最高傑作と聞いてすごい期待してしまったのか案外普通に感じてしまいました。確かにスタイルとしては伊三蔵に感銘を受けたやくざの孫八が彼とのエピソードをあれこれ語る形式で話は進んでいく股旅物としては珍しい感じはしたけれど劇中、伊三蔵の食事のシーンで食べ終わった魚の骨を紙に包んで懐に入れてその場を去るのですがこの意味が分かりませんでした。こういった作法一つとっても
自分がもうひとつこの時代のやくざというものが理解できていないから傑作ぶりが分からなかったような気がします。
分からなかったと言えば伊三蔵と孫八が出入りで敵同士で戦うわけですけど途中、組通しに決着がついて二人の対決も終わるけど今まで真剣に戦ってきた熱いもってどこへ行っちゃったのと思わんばかりに二人とも談笑したりねぎらいあったりしてこの辺のやくざならでは?の仁義というか友情もたいなものイマイチ理解できませんでした。
ヒロインの小川真由美は確かに主人公の人生を狂わせるようなことをするけど、やはりもうちょっとファム・ファタール的な感じが欲しかった。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
市川雷蔵
(追分の伊三蔵)
ダニエル・デイ=ルイスは孤独な雰囲気が似合うような気がします。
小川真由美
(由乃)
お嬢様から貧しい役までいけるエマニュエル・ベアールで。
長門勇
(上松の孫八)
長門勇の人がよさそうなところを見てデヴィッド・モースを思い出した。


ひばり チエミ いづみ 三人よれば
(1964)
4
2007年1月
すっかり社会人となった学生時代の三人組みはある日、引退した恩師の清国先生に呼び出されるがお見合いを進められてしまう。焦った三人は恋人がいるふりをするのだが・・・
「ジャンケン娘」で出てきたジャンケン娘の歌や「ロマンス娘」にも出ていた宝田明も出ているし昔の回想シーンで学生時代を懐かしむシーンなどもあって三人娘シリーズの完結編だろうなぁと思うのですが三人娘の役名が全然違っていたり清国先生って清川虹子じゃないような気が・・・と色々気になるところはあるのですが気にしちゃいけません。
内容はお見合いをさせられそうになた三人がそれぞれ恋人をでっち上げる(美空ひばりだけは結婚目前の恋人、宝田明がいる)うちに本当に恋に落ちるというベタな展開ですが三大スターの歌はやっぱり上手かったし職業も料亭の若女将、TVディレクター、美容師とキャラに合っているところもよかったです。
三人を見ていると表現力が豊かだなぁと思うのは雪村いづみ。歌っている時の感じがとっても楽しそうでいい感じ。個人的に歌声が一番好きなのは江利チエミ。彼女のソロはMGMのミュージカル風で(雪村いづみも割りとそう)ハリウッドのミュージカルを意識して作られているのではないかなぁと感じました。
美空ひばりは歌は上手いんですが二人に比べるとやはり演歌ちっく。しかも美空ひばりだけ宝田明に高島忠夫と相手役が二人いる特別待遇なのは大スターだからなのかと思うのでした。
相変わらず宝田明とか岡田真澄に高島忠夫とか歌えそうな人が出ているのに男優陣は歌わせてもらえないところがやっぱり気になるのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
美空ひばり
(美川喜美枝)
格が違う感じのするキャサリン・ゼタ=ジョーンズで。
江利チエミ
(江崎とし子)
がっちり体型のレニー・ゼルウィガーで。
雪村いづみ
(月村恵子)
美容師とか似合いそうなグウィネス・パルトロウで。


ひばり捕物帖 かんざし小判
(1958)
3
2005年6月
姫という身分を偽って阿部川町のお七と名乗り十手あずかりに扮していた。そんなお七は江戸美人番付に出場した帰りにその一人が刺し殺されるという事件に巻き込まれる・・・
おてんばな姫が殺人事件を解決するという分かりやすい捕物帖ものなのですがこういう
シンプルな話であればこそスターというのは輝きを増すなぁとこの作品を観て感じました。特にそのことを感じたのは次ぎの被害者の女歌舞伎を守るために自分が歌舞伎役者に変装して実際に舞台で踊るのですがこういう踊りもしっかり踊れてやっぱり感心します。
途中、浪人の東千代之介と出会いお約束の展開で一緒に事件解決に乗り出すわけですけどこの浪人のキャラが大友柳太郎の「丹下左膳」みたいな豪快なキャラでどうも東千代之介という感じじゃなくてちょっとひいてしまいました。沢島忠監督は酔った時の東千代之介はこんな感じだからあえてそのキャラクターにした。と言っていましたが個人的に東千代之介は若旦那とか侍でもさわやか系のキャラでいて欲しかったと思うのでありました。
里見浩太朗も敵に利用されてひばり達を狙って失敗すると逆に用なしとみなされて逆に命を狙われてしまうという役どころで出て普通ならここでやられるところですが最終的にひばり達にも理解してもらえて未来のスターは扱いもちょっと違うんあだなぁと感じました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
美空ひばり
(阿部川町のお七)
ケイト・ブランシェットはこういう変装ものも得意そうで。
東千代之介
(佐々木兵馬)
ヴァンサン・カッセルとかちょっと荒くれた浪人みたいな役がはまりそう。


美貌に罪あり
BEAUTY IS GUILTY
(1959)
4
2008年10月
次女の敬子と花を栽培して市場に卸し生活をしているふさだったが菊江は密かに受けたスチュワーデスの面接に合格し出て行ってしまい、長女の菊江は早々に日本舞踊のために家を出ていたが、恋人の藤川のために金の無心に来て・・・
増村保造監督の超豪華な顔ぶれの女性映画。
杉村春子のの娘が山本富士子と若尾文子(異父姉妹)。山本富士子の恋人が勝新太郎、川口浩は若尾文子の恋人で、川口浩の妹が聾唖という設定で野添ひとみで密かに川崎敬三が好き。川崎敬三は花農家を手伝って新種の蘭を栽培中で本人も家族も山本富士子と結婚すると思い込んでいる。と文字にするとややこしいですが映像でみると分かりやすく出来ています。
とこれだけの登場人物を杉村春子、山本富士子、若尾文子視点でバランスよく描いているところが増村作品らしくていい仕事していますという感じです。
山本富士子と若尾文子はそれぞれ自分勝手で回りに知らず知らずのうちに迷惑をかけているのですが二人とも手痛い目にあって自分を見つめ直すところがいいですね。
山本富士子はさっさと家を出て日本舞踊をやって川崎敬三が自分のことが好きだと分かっているのにNoとも言わず勝新太郎と恋愛して結婚するようないけ好かない女なのですが、勝新が親代わりに育ててくれた人の反対を押し切って結婚したものだからたちまち売れなくなって勝新は自棄になって売れない芸人の妻的な状況に立たされてしまっても消して見捨てないところが大逆転で好感度アップ。
若尾文子も自由な生活をしている山本富士子をよそに家業の花栽培を恋人の川口浩と川崎敬三とで切り盛りして、金の無心に来た姉を批判するしっかり者の妹という感じで好印象だったのにスチュワーデスになってから奔放な若尾文子になってパーティ三昧で川口浩はほったらかしで可哀想でした。川口浩とのケンカもあるのですがこれがひっぱたき合いして仲直りというなんともパワフルな展開。
ラスト、見事夫婦の危機を乗り切った山本富士子と勝新太郎は斬新な踊りを舞台で発表することに成功するのですがこれが息がぴったり見応えあり、さらに実家で杉村春子と盆踊り?を踊るのですが
杉村春子の踊りがなめらかでしなやか。山本富士子についっていけているところに驚きと嬉しさがあるのでした。
川崎敬三は上手い具合に野添ひとみとくっつくというところが都合がいいのですが豪華な顔ぶれなのでこういうまとまりかたはすがすがしくていいと思います。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
杉村春子
(吉野ふさ)
何でも出来るメリル・ストリープで。
山本富士子
(長女菊江)
クールビューティーというところがかぶるニコール・キッドマンで。
若尾文子
(次女敬子)
ナオミ・ワッツのスチュワーデス姿を見てみたい。


緋牡丹博徒
シリーズ第1作

(1968)
4
2004年7月
堅気の男と結婚を控えた矢野組の組長がある日辻斬りに遭い殺されてしまう。結婚をあきらめた竜子は緋牡丹のお竜と名乗り各地の賭博場を訪れ父の仇を探していたのだがいかさまを見破ったため命を狙われてしまう。そんなお竜を助けたのが片桐直治という男だったのだが、彼こそお竜の父親を殺した犯人を知る男だった・・・
女任侠ものもたまにはいいんじゃないか(初めてだけど)ということでそのジャンルの中じゃ藤純子主演の「緋牡丹博徒」シリーズを借りてみました。任侠ものっていったら大阪とか関東が舞台のものしかほとんど観たことがなかったんですけど、このシリーズは九州は熊本が舞台なもんで方言も熊本弁
。藤純子が「どぎゃんしとっと。」的な台詞をバンバン使いこなし男世界を堂々と渡り歩く姿が様になっていました。
なんてったって今まで観た藤純子の作品は清純派を絵に描いたような役しか知らなかったので今回の任侠ものはすごく新鮮。(回想しーんじゃはいからさん風の清純派衣装もばっちりです。)和服姿での立ち回りもピストル構えて清川虹子や金子信男に啖呵を切ったりして姐さんぶりも板についてシリーズ化されたのも納得です。
この作品、仁義に関する作法が(緊急の用事の時は仁義を切るのを省略していいとか)今までに観た任侠ものにはないほどに丁寧に描かれているところが感心しましたよ。
緋牡丹のお竜の恋のお相手高倉健も藤純子と並ぶと本当に純和風って感じで渋かったー。高倉健って寡黙だからプラトニックな関係が本当にはまっていましたよ。
父の仇役の大木実は今まで何度が出演している作品を観たことはあったんですけどどうも顔が覚えられなかったんですが今回ようやく大木実という顔を覚えることが出来た・・・と思います。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
藤純子
(緋牡丹のお竜)
和服も似合いそうなナオミ・ワッツに仁義を切ってほしい。
高倉健
(片桐直治)
ショーン・ビーンあたりに寡黙なこの役をやっていただきたい。
大木実
(加倉井剛蔵)
キーファー・サザーランドはやっぱり悪役向きだと改めて思う。


緋牡丹博徒 一宿一飯
シリーズ第2作

(1968)
4
2004年10月
上州の農民は作物が不作のうえ高利貸しからの取り立ても厳しくなり生活に困りはてていた。その地域一体を仕切っている戸ヶ崎組の弟分の笠松が高利貸しに話を付けに行くのだがそれはこの地域を乗っ取ろうとする笠松の陰謀だった。その事を知ったお竜は急いで上州に戻るのだったが・・・
一人前になるために旅を続けるお竜の姿を描いたシリーズ二作目。
続編を観ましたけどやっぱり藤純子、凛としてよかったですわー。任侠のシリーズ物は大体内容がパターン化しているものでこれも例外にもれず「緋牡丹博徒」という型にはまっているんですけどこの手のジャンルはつくづく定番通りでなんぼという感じがします。
お竜の場合は礼儀をわきまえないやくざは許せないタイプの人間で、今回はなにかと世話になった戸ヶ崎組の弟分の笠松が卑劣な方法で組を全滅させた笠松に復讐するってのがおおむねの話の流れで、そこに無口だけど仁義はわきまえている一匹狼の鶴田浩二(前作の高倉健的な役どころ)が仲間に加わったりお竜をライバル視する女賭博師との賭博対決があったりして飽きさせません。
この女賭博師の旦那役に出ました西村晃。妻の尻に引かれて相変わらず小物的な雰囲気のかもし出し方はさすがですが、今回は心底妻を愛している中々憎い役どころでただ単に情けないだけじゃないところがよかったです。
藤純子の「緋牡丹博徒」テーマソングの相変わらずちょっと音程が外れた感じといい、味のある九州弁は観おわった後やっぱり真似したくなるのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
鶴田浩二
(風間周太郎)
礼儀知らずには厳しそうなショーン・ペンで。
天津敏
(笠松弥一郎)
頭脳派の悪役はやはりゲイリー・オールドマンか?


卑弥呼
(1974)
3
2009年9月
神の言葉を聴くことの出来るヒミコはある日、子供の頃に旅に出た腹違いの弟のタケヒコが帰ってきた。二人は恋に落ちるが同じ巫女のアダヒメもタケヒコのことを愛していてやがてヒミコの予言がタケヒコの影響を受けているのではないかと国の長が不信をいだき・・・
岩下志麻が卑弥呼に扮したATG作品。
神からのお告げを聴くときの白塗り卑弥呼が岩下志麻に似合いすぎています。そして
とにかく美形な草刈正雄が「もののけ姫」みたいな世界観にぴったりです。「火の鳥」にも確か出ていたと思いますが、草刈正雄は漫画的な美男子なので最近だと「MW」とかそういった一連の手塚作品があと30年くらい早く実写化されればよかったのになぁと思いました。
話のほうも絶大な影響力を誇る卑弥呼も草刈正雄という男を知ってその能力というか男に影響され求心力を失っていくのですが、そのあたりは「スコーピオン・キング」でケリー・フーがやった未来を見通せる預言者も同じことをやっていたので巫女が男を知ると不穏な空気が流れるというところは世界共通なんですね。
それに加えてもう一人の巫女の横山リエも草刈正雄が好きでなんとこっちとくっついて怒った卑弥呼は草刈正雄を拷問して追放という嫉妬心丸出してで卑弥呼も人の子なんだなと思いました。
話は分かりやすいといえば分かりやすいのですが、いかにも寺山修司の映画に出てきそうな白塗り集団が出てきて不気味でラストのあのシーンも白塗りなので余計に怖いものがありました。
そして本当の最後はあれほど卑弥呼のいる国はナンバーワンみたいなことを言っていてじつはちっぽけな存在だったという感じはハッとしました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
岩下志麻
(ヒミコ)
こういう神がかり的な役はケイト・ブランシェットで。
草刈正雄
(タケヒコ)
時代物をやると光るオーランド・ブルームで。


白夜の妖女
(1957)
3
2004年9月
高野山の宗朝老師が修行僧時代にあった不思議な体験を告白した・・・
宗朝はある日薬売りと出会い、分かれ道で薬売りは旧道に進み別れたのだがその旧道が危険と聞き薬売りの後を追うのだが道に迷った宗朝はようやく一軒の家を見つけ一人の美しい女と出会うのだが・・・
すっごく大雑把に表現すると、森の中で出会った女は特殊な能力を持った一族と契約して(というよりは白痴の男と結婚すれば不思議な力と不自由ない暮らしが手に入る)出会った男を家畜に変えて働かさせていたって感じの内容ですかねぇ。
そんな彼女は宗朝に恋をしてしまい家畜にするのをためらう。一方で宗朝も女の魅力に負けそうになるけどぎりぎりのところで我に返りこの一族の秘密に近づいていく・・って展で
最近こんなような内容の作品ばかり観ていたので少々食あたり気味で今一歩乗り切れなかったところはありましたけどちゃんと鑑賞したらそこそこ面白かったんだろうなぁなんて思いました。
最後も一族の長の怒りをかった女は捕まりそうになるのですけどここでネタバレ→
白痴の夫が助けてくれる←というエピソードはよかったです。
そもそも月丘夢路が観たくってこの作品観にいったのですが、「華麗なる一族」の気弱な嫁のイメージが強くって、お嬢様系のおしとやかな雰囲気しかイメージのなかったんですけど岩風呂に全裸で混浴する魔性系の役をやっていたなんて少々意外でした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
月丘夢路
(女)
魔性の女的妖艶さのキャサリン・ゼタ=ジョーンズで。
葉山良二
(宗朝)
トニー・レオンは僧侶役なんかもいけそうです。


冷飯とおさんとちゃん
(1965)
5
2004年10月
「おさんとちゃん」って何かと思ったらおさんANDちゃんってことでした。つまり冷飯ANDおさんANDちゃんの三つのオムニバスでした。
「冷飯」
武家の四男に生まれた大四郎は長男ではないため城に仕えることもできず冷飯として古書をコレクションし実家に居候する身でいたのだがある日、武家の娘に一目ぼれしてしまい・・・
いまでこそ結婚するとき長男はやめなさい。と言われる時代ですけど昔の武家の長男はすっごく優遇されていたんですね。どんなダメな奴でも城で働くことが出来たし好きな娘とも結婚することがし・・・逆に兄弟の多い末っ子として生まれてきた子は大変で特技がなければ城でも働けないし金持ちじゃなければ分家もされず結婚となれば婿養子、だから結婚しないで実家に居候で「冷飯」と呼ばれる存在になっていたみたいです。
「冷飯」を悟って「冷飯」人生を謳歌する人もいますが大四郎は結婚もしたいし夢もあるから「冷飯」でいることがつまらなくてたまらない生活を送っていて、一目ぼれした娘ぬいとも両思いと知った大四郎は喜んだのもつかの間、四男だから結婚はあきらめなければならない・・・くてちょっとすねてみたり、兄弟からもらったお金で行った事もない料亭で作法もわかないまま食事をしたりする無邪気な演技をする大四郎は微笑ましかったなぁ。そんな様子をこっそり見ていた城の老中にその人の良さと教養に目を付けられて婿の話が持ち上がり、さらに古書のコレクションを殿に見込まれ城で働く事になり大四郎に次々と幸せが舞い込んできてハッピーな気分になれました。最後も両思いのぬい(錦之助のお相手といったらでおなじみ入江若葉)と一緒になるし、老中役の大木実も本当とぼけた演技しちゃって全編通して楽しかったです。
「おさん」
大工の参太は嫁のおさんが夜結ばれている時に別の男の名前を叫ぶ奇妙な性癖に悩まされとうとう家を飛び出し旅に出る。道中おふさという女に出会い旅を続けるもおさんのことが気がかりで・・・
錦之助と新珠三千代の旅のシーンと三田佳子の一人芝居で見せる一風変わった話なんですけど「冷飯」の後だからすっごくテンション下がりましたけど、これだけで見ると切ないというかある意味ベッドで他の男の名前を呼ぶ女を許せるか?という結構きわどいラヴ・ストーリーでネタバレ→
逆上した男に殺されて結局二人は再会することなく終わりますが(参太と幽霊となったおさんは最後、愛し合っていたことを悟る)←今思えばよく出来ていましたね。
「ちゃん」
火鉢職人の重吉は職人としての仕事にこだわり、いまや薄利多売の火鉢業界に取り残されすっかり仕事がなくなり毎日よっぱらって帰ってきては家族に迷惑をかけていたのだが、ある夜重吉が家に連れて来た男に米や着物を盗まれてしまい・・・
嫁役の森光子も重吉がいくら酔っ払って帰ってきても決してとがめたりせずむしろ家族一緒にいられてよかったと思うような嫁で仕事がなければ嫁は内職して長男は料理屋に板前として働こうとする、貧しいけど家族で助け合って暮らそうじゃないかという姿勢がいいし、酔って連れてきた男に盗まれた時に家を出て死ぬ決心をした重吉に長男が言うんですよね。「ちゃんが出て行くならみんなで行こう。ちゃんが死ぬならみんなで死のう。家族なんだから。」みたいなこと言うんですがこれがまたさわやかな感動を巻き起こします。
人間って一人じゃ生きていけないんだな、家族ってやっぱりいいものなんだなと思わせてくれます。
時代の流れに取り残された職人が家族と幼なじみに励まされて最後は世知辛い世の中にある幸せを見つけるという心温まる作品でこのエピソードは見ていて本当に幸せな気持ちになりました。


3つのエピソードそれぞれ1時間なんですが3本の映画にしてもいいくらいそれぞれがよく出来ていてもう一度観たいと思える作品です。中村錦之助も茶目っ気のある末っ子から愛に苦労する大工から酔っ払いの職人までどれも無理がないところ、特に「ちゃん」での「全部飲んじゃったんだよー。全部つかっちゃったんだよー。」という酔っ払いの演技はこれ本当に錦之助?と思うほどでまるでコントの様。全く違う三役がすばらしくこの作品で決定的に錦之助にはまったことは間違いないです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
中村錦之助
(柴山大四郎/参太/重吉)
兄さんのオーウェンは面白いと思っていたけどここ一年で弟もなかなか面白い事に気がついたルーク・ウィルソンで。
三田佳子
(おさん)
ブリタニー・マーフィーはこの子大丈夫?と思わせるところがある。
森光子
(お直)
オリビア・ウィリアムスは貧しくても一緒に生活してくれそうで。


氷壁
(1958)
4
2005年2月
魚津恭太の親友小坂乙彦と一緒に雪山登山中に二人を繋いでいた新製品のナイロンザイルが切れて小坂は転落して行方不明になってしまう。魚津はザイルが切れた事を主張し、かつての小坂の不倫相手の八代美那子の夫が実験をする事になるのだが・・・
ちょうどこの前が「巨人と玩具」だったので観終わった後は物足りなさを感じたのですがじわじわとこの映画、よかったなぁと思えてきました。
最初は一度だけ山本富士子と関係を持った川崎敬三がしつこく言い寄って山本富士子が菅原謙二に相談してストーカー行為をやめるように促していたので、これは川崎敬三が菅原謙二に嫉妬に狂う映画なのかなと思ったら転落した友人の死は自殺なんかじゃなく本当にザイルが切れた事を証明しようと奔走する男の物語でした。
不倫や微妙な三角関係も上手くまとまっていると思ったのですが
何といってもタイトルにもなっている氷壁のシーンが45年も前なのにスケールでかくて驚いたしマスコミの自殺説やら殺人説まで事件を面白おかしく煽る姿はこの時からあったんだなぁと変に感心したりしました。
山本富士子の現代劇は始めてですが終始着物姿なんでこの人はやっぱり時代劇をやると活きる人だなぁと感じました。劇中ネグリジェ姿を披露してくれますがこのキャラクターのおっとりした性格もあってか「華麗なる一族」の月丘夢路を思い出してしまいました。
野添ひとみと山本富士子がすれ違うんですが野添ひとみは睨みつけ、山本富士子は町を彷徨うラストシーンがなんとも印象的で機会があったらもう一度じっくり観てみたい作品だなと思うのです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
菅原謙二
(魚津恭太)
マーク・ラファロは友情を裏切らなさそうで。
山本富士子
(八代美那子)
クリスティン・スコット=トーマスは美しい人妻を連想させます。
野添ひとみ
(小坂かおる)
意外と芯がしっかりしている役が多いレイチェル・ワイズで。


ピンチランナー
(2000)
1
2010年3月
モーニング娘。絶頂期に作られた駅伝とタイアップされたアイドル映画。
とあるサイトですごいことになっているというのを知って観てみたら本当にすごいことになっていてある意味楽しかったです。
主役はもちろん安倍なつみ。なぜか一人、陸上部でひとり毎日走る。後藤真希なぜかそんな陸上部に入りたがっていて、無人の陸上部の部室(とはいっても風が吹けば飛びそうな掘っ立て小屋)に行って「もしもーし!誰かいませんかぁー?」と元気だけが空回りしているある意味初々しい演技を披露。
市井紗耶香はバスケ部のパシリという役どころで学校の近くのいかにもなパン屋に買出しに行かされていったところ、そこのオバサン(失礼)が中澤裕子でこの人やっぱりこういう役どころなのねと少々不憫に思う。
飯田圭織はバスケ部で凄腕だけどキャプテンでもないのに威張っているから嫌われていて、保田圭は実は難病に冒されていていつ新でもおかしくないといいう設定の割には顔色はすこぶるよろしい。
そして矢口真里は幼なじみのサーファー(なんと)押尾学に付きまとううっとうしい今どきの女子高生という感じの設定です。
とそんなこんなでキャラクター紹介をダラダラとやっていたかと思ったら陸上部に雷が落ちて炎上。気絶した安倍なつみを必然的に押尾学が助けに行くのですが、陸上部に行くまでにに何故か悠々と歩いていくところがもどかしい。(走っていけという感じです。)
そんなこんなでついに7人集合という展開で何故か次々に陸上部に入部してあっという間に5人揃う強引さ。
見せ所ではもちろん安倍なつみが色々あっるのですが思った以上に演技がましだった市井紗耶香が準主役級のポジションゲット。父親の斉藤洋介に布団たたきで虐待を受けているという設定で引っ張ります。
一方ものすごい家に住んでいる安倍なつみの母親はというとゆっくり後姿から迫ってこれもしかしたら大物女優じゃないの?と思ったその時、振り返ったのはなんと松坂慶子(この頃は痩せていた)。何故か口が利けないという変な設定でこの二人のシーンは手話モード。
とそうこうしているうちに駅伝まで2週間となっていて練習全くしていませんけど。と思ったら昔のトラウマで走れなくなった安倍なつみ。父親に連れ戻されてメンバーから抜けた市井紗耶香とお決まりの人数が揃わないとかやっぱり戻ってきたというゴタゴタを繰り返していたら気がつけば駅伝次の日なんですけどという展開が強引。
そして駅伝当日。一人だったはずで無名のモー娘。高校の安倍なつみが何故か選手宣誓。そして中澤姐さんも一緒に入場行進していますが大丈夫でしょうか。モー娘。高校の隣はハロープロジェクト2・3とプラカードを持ったチームが並んでいて、抱き合わせ感丸出しというところも色々気になってしまいます。
市井紗耶香にいたっては虐待に立ち向かい「あたしだって人間なんだよ!殴られれば痛いし、血だってでるんだよ。」みたいな舞台女優も真っ青な台詞を吐き捨て父親の斉藤洋介を見限るという、それぞれの問題を克服して練習らしい練習をしないでようやく駅伝開始というところで一番目の後藤真希は走り出しこそ順調と思いきや競技場出た辺りで早くもわき腹押さえています。その他のメンバーも普通に辛そう。唯一違ったのはというか勘違いしていたのが飯田圭織でなぜか観客に手を振ったり笑顔を振り向いて走るという前代未聞の行動に。そしてたまにカメラが引くとモー娘。のファンがものすごい数で一緒に走っていてある意味すごいイベントムービーだなと思うのでした。
スタッフロールの後にオマケで当時入りたての石川、吉澤、加護、辻が出てくるのですが放送事故ですかというくらい演技が酷くて笑うしかありません。
映画としては本当ダメなのですが、ある意味もう一度観てもいいかな(いいのか)?というか誰かに見せてこの気持ちを共有したくなる思いっきり変な映画なのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
(登場人物が多いので今回はなし)


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