日本映画

ふ


プーサン
MR. POO
(1953)
3
2007年8月
税務署員の家に間借りしている数学教師のついていない日々を中心にそれを取り巻く人々を描いた市川崑監督の群像劇。
内田吐夢監督作品の群像劇「たそがれ酒場」っぽい感じもするのですがあちらは主役が誰っていうわけじゃなく酒場の一日を描いた作品に対してこちらは主役の伊藤雄之助に入れ替わり人が絡んでくるタイプの群像劇です。
伊藤雄之助はうだつの上がらない数学教師でとにかくやることなすことついていないという可哀想な男で、学生にはそれなりに人気はあるのですが学生に誘われてデモに参加したら新聞の一面に載ってしまい学校をクビに、職探しを頼りにしていた知人も頼りにならずついには無職。
密かに恋していた間借りもとの娘の越路吹雪は告白するどころか会社の同僚と駆け落ちに奥さんの三好栄子はさりげなく嫌味を言われる毎日といいところなんですが伊藤雄之助独特の存在感がシニカルな笑いとなっているところがよかったです。
共演者も間借りもとの家で唯一の理解者が藤原釜足に派出所の警察官が小林桂樹にクールな内科医が木村功で悪気は無いけど口が軽いいい看護婦が八千草薫に利益のことしかないあくどい学校の校長に加東大介だったりその他にも杉葉子や山形勲とちょっとしか出てこない人も沢山いるのですがこの
淡々と伊藤雄之助の不幸な日々を描いているだけなのにものすごい顔ぶれはやはり日本映画黄金期を感じずにはいられないのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
伊藤雄之助
(野呂米吉)
ついてない感じの顔つきのヒュー・ローリーで。


夫婦
HUSBAND AND WIFE
(1953)
4
2009年7月
東京に転勤となった伊作夫婦は家を探していたが最近妻を亡くした同僚の武村良太の家に運良く間借りすること決まるのだったが・・・
成瀬巳喜男監督お得意の夫婦の倦怠期もの。
成瀬監督の倦怠期ものは演じる人によってそれぞれ特徴が出るのですが、今回の夫婦は上原謙と大抜擢の杉葉子。上原謙に杉葉子というのは少々若すぎると思いましたがこれはまぁご愛嬌といったところでしょうか。上原謙はますます嫌な男っぷりが冴え渡り見ていてイライラしてきます。
序盤、実家にやって来た上原謙。楽しそうに家族と談笑する杉葉子を見て、俺は疲れているんだぞと言わんばかりに瞬く間に不機嫌になるのは序の口。三國連太郎の家に間借りしてからはそれがエスカレートします。
三國連太郎は杉葉子のことが好きなので上原謙は何かにつけて気が気でならないのですが、ある日曜日の出張から帰ってきたら杉葉子の妹の岡田茉莉子が来ていて何やら楽しそう。それだけで働いて来ているのに楽しそうにしやがってとここでまず不機嫌に。そして当然上原謙がこんな時間に帰ってくるとは思ってもいないので出前のラーメンも上原謙の分がないわけで杉葉子が気を使ってラーメンを持っていたら「いらない」と言ってラーメンをひっくり返して出て行きました。最低です。杉葉子は三國連太郎と二人きりになるとよくないと考え妹をわざわざ呼んで気を使っているよく出来た嫁なのですがとうとう実家に戻ってしまいます。当然です。
そして何だかんだ言って仲直りして新しい住まいに引っ越した時に妊娠発覚。と思ったら金がないからといって産婦人科に連れて行くんですよ。
スターなのにここまで冷酷な感じを出せる人は上原謙以外見たことありません。(褒めています。)
それに比べて三國連太郎はちょっと三枚目気味でしたが酔っ払い演技も見事で三國連太郎は相変わらずすごいなと思うのでした。(上原謙もすごいです。)
ハリウッドバージョンはこの人で!!
上原謙
(中原伊作)
すぐ不機嫌になりそうなエイドリアン・ブロディで。
杉葉子
(中原菊子)
健気そうなアン・ハサウェイで。
三國連太郎
(武村良太)
いい人そうなルーク・ウィルソンで。


瘋癲老人日記
DIARY OF A MAD OLD MAN
(1962)
5
2009年4月
脳溢血で体の不自由になった督助をある日息子の嫁、颯子が看護婦の代わりに介護したことをきっかけに奇妙な関係が始まり・・・
谷崎潤一郎原作を山村聡と若尾文子で映画化した変態映画。
若尾文子主演者で久しぶりの超大ヒット。笑いました。面白かったです。
とにかく若尾文子の小悪魔を通り越して悪魔のようなドSの振る舞い。しかしそれを心底喜ぶ山村聡の怪演っぷりを見せ付けられる画内容なのですが全てのシーンがインパクトがあっていいもの観させていただきましたという気持ちになります。
たまに見せる若尾文子のイケズな表情もたまりません。まさにはまり役。
性欲だけで生きながらえていると言っていいほど山村聡は嫁の若尾文子にぞっこんで自分の娘には3万円も貸さないのに若尾文子と接吻するために300万円の指輪を買ってあげたりするところ、というか体が痛いと訴えて若尾文子がどうすれば直るのと聞くと「接吻」と即答する山村聡ときたらあっぱれです。しかも若尾文子ときたら扉を開けっ放しでシャワーを浴びてさりげなく誘い出し、
足にだけ接吻を許しむしゃぶりつくように接吻する山村聡。接吻された若尾文子は「あー気持ちが悪い。」とか言って山村聡にケリを入れるわ顔面にシャワーを掛けるわで究極のSM関係が出来上がっているところが素晴らしいです。
究極と言えば、極めつけは若尾文子が「接吻してあげる。ただし離れた接吻ね。」といって唾を山村聡の口に垂らしたましたよ。この変態加減に笑うしかありません。というかもう一度観たいです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
山村聡
(卯木督助)
モーガン・フリーマンに怪演してもらいたい。
若尾文子
(颯子)
イメージに合うスカーレット・ヨハンソンで。


プール
(2009)
4
2009年9月
チェンマイに突然自分を残してこの地で生活し始めた母親の京子を訪ねてやって来たさよは京子がタイの少年と暮らしていると知り・・・
もはや定番となりつつある小林聡美ともたいまさこコンビのまったり映画。
「めがね」は癒されるけれどまったりしすぎたのですが、こちらは台詞も多めでまったりしながらもこっちの方が観やすい印象。
映画というよりチェンマイの観光映像に時折小林聡美たちの演技が入ってくるという感じで感動したとかそういう感覚より、チェンマイに行ってみたいという感覚が沸いてくること請け合いです。小林聡美の作る料理も美味しそうでよかったです。
小林聡美ファミリーと言ってもあながち間違いない出演者たちの演技は自然でよかったし、ボーイッシュなモデル出身で映画初出演の伽奈という女の子の母親が突然自分の好きなことをするために何もタイじゃなくてもというふてくされ気味な表情もなかなか良かったです。タイの男の子も素直でいい子そうでした。
小林聡美が時折、「人と人がいつも一緒にいることだけがいいことだとは限らないし。」とか「自分の好きな道を生きていけばいいと思う。」とか娘にいいこと言うのですが全然説教臭くなく気さくなところがとても魅力的でした。
それにしても小林聡美も大学卒業する娘がいるような役をやるようになってしまったんですねぇ。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
小林聡美
(京子)
気さくな感じのホリー・ハンターで。
加瀬亮
(市尾)
いい意味でぼんやりしている感じのケイシー・アフレックで。
伽奈
(さよ)
大学生役もまだまだいけそうなアンナ・パキンで。


複雑な彼
(1966)
3
2008年2月
森田冴子は飛行機の中でスチュワードの宮城の接客の素晴らしさに一目ぼれし後に宮城の様々な過去を知ることになるのだが・・・
田宮二郎主演のロマンチックコメディタッチの風変わりなドラマ。
普通じゃないところは三島由紀夫原作でなんと安部譲二の半生を描いているから驚きです。
日雇いで井戸掘りの仕事をしていたこともあるから井戸掘り君なんてニックネームを付けられたり、ボクサーだったり、パリでカメラマンをやっていて仲間をかばって逮捕歴もありという色々なエピソードが繰り広げられていくわけですが、
安部譲二が犯罪暦を隠してスチュワードをやっていたというドラマみたいな本当の話がにわかに信じがたいのですが本当なんですよね。しかも田宮二郎が演じているのでますます想像しにくいです。
田宮二郎は得意の英語を拾うしスチュワードっぽくさらに女好きでミステリアスというところはいかにもはまり役といってところで物語の前半の軽快な展開は全然三島由紀夫らしくないと思ったのですが、後半いきなり田宮二郎と相手役の高毬子が真実の愛に目覚めてからいきなり内容ががらっと変わって田宮二郎がネタバレ→
刺青があることを告白するのですが謎めいた組織のボスらしき男が高毬子に社会が許さないからおよしなさいといって別れて終わり。←ブルジョア階級の娘と若い頃に悪さしたやんちゃな男の恋の結末の描き方がとても三島由紀夫らしかったと感じたのでした。
それにしても話の展開のしかたが変な映画です。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
田宮二郎
(宮城譲二)
スチュワードが似合いそうなジュード・ロウで。
高毬子
(森田冴子)
お嬢様とか合いそうなケイティ・ホームズで。


復讐するは我にあり
(1979)
4
2005年8月
五人の殺害と詐欺で逮捕された榎津巌の数十日間の逃亡生活を描いた作品。
二人の男を殺し逃亡を始めるシーンから始まって刑事のフランキー堺に捕まって取調べを受ける姿勢もふてぶてしい榎津の一連の行動を観ているととにかくドライで凶悪犯という感じがするのですが榎津巌という男の生い立ちや逃亡生活がだんだん見えてくると人間らしいところもあるんですよ極悪ですけど・・・これ実録ものみたいなのですがやっぱりこういう事件って子供の頃のトラウマが引き金になるんですね。
面白くなってくるのは父親の三國連太郎と嫁の倍賞美津子が出てきてから。嫁の倍賞美津子を殴る蹴るのドメスティック・バイオレンスは当たり前なんですがそれよりすごいと思ったのが三國連太郎と倍賞美津子の嫁と義父との近親相姦的な関係。この二人の混浴シーンなんて危うい感じがしてなんだかハラハラしました。倍賞美津子の方は確実に三國連太郎を愛していますもん。「にっぽん昆虫記」もそうで今回は実の親子ってわけじゃないけど
今村昌平って近親相姦的なものを撮るのが結構好きなんじゃないかなぁなんて思いました。(今村昌平作品は2作品しか観たことないんですけどね。)
後半は職業を大学教授になりすまし小川真由美の経営するコールガールの呼び出しオッケーな宿に宿泊するのですが小川真由美の母親が競艇大好きなしょうもない母親なんですけどこれが清川虹子。緒方拳が怪しいと思ってはいるんだけど競艇代を貰えるもんだから緒方拳が犯人と気がついても逃がそうとするんですよね。しかも覗きまでしていてコールガールから気持ち悪がられていてそんな清川虹子が強烈なもんだから小川真由美がちょっと食われちゃった感がありましたがこの小川真由美が絡むエピソードはなかなかコミカルでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
緒形拳
(榎津厳)
ゲーリー・シニーズの凶悪なところを凝縮した雰囲気で。
三國連太郎
(榎津鎮雄)
いいお父さんという感じのロバート・デュバルで。
倍賞美津子
(榎津加津子)
ファムケ・ヤンセンが不幸な嫁をやるイメージ。
小川真由美
(浅野ハル)
アンジェリーナ・ジョリーとかはまりそうで。


梟の城
OWLS' CASTLE
(1999)
2
2010年4月
織田信長により伊が一族を皆殺しにされた伊賀の重蔵は10年後、秀吉の暗殺を命じられ里を離れるがやがて伊賀を離れた風間五平が行く手を阻み・・・
司馬遼太郎原作の忍者映画。
中井貴一が凄腕忍者というのが斬新そして鶴田真由もイメージとは正反対の最初は騙すはずが本当に中井貴一のことが好きになってしまいしかも阿片だか何かの薬物中毒という設定が面白いし、上川隆也の上手いんですが
無駄に2時間超えしているせいか、いいところもたまにあるのですがそれが長続きせず全体的にはパッとしない印象でもったいなかったです。割りと最近の時代劇の映画によくある悪いパターンだなと感じる、エピソードが細切れという現象がこの映画にもあったと思います。
そして脇役が見事なまでに無駄に豪華。服部半蔵に根津甚八から始まって火野正平、中尾彬、中村敦夫、筧利夫に何故か豊臣秀吉がマコ・イワマツさんに北政所に台詞が一言もなく1分くらいしか出ていない岩下志麻ってちょくちょくでてくる脇役たちは見ていて見所はここかって言うくらい楽しかったです。
子供の頃から中井貴一に憧れていたクノイチの葉月里緒菜は純情な娘という無理目な設定で「SHINOBI」の沢尻エリカとかぶっています。というか葉月里緒菜は沢尻エリカの先駆けだなと思いました。
最後の上川隆也のエピソードはひねりが効いていてよかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
中井貴一
(葛籠重蔵)
ストイックな感じのヴィゴ・モーテンセンで。
鶴田真由
(小萩)
アクション経験もあるシャーリーズ・セロンで。
葉月里緒菜
(木さる)
スカーレット・ヨハンソンあたりにやってもらいたい。
上川隆也
(風間五平)
イメージはは何となくガイ・ピアースがぴったりな感じがします。


武士道残酷物語
(1963)
4
2004年10月
婚約者の人見杏子に計られた飯倉進は彼女を見舞いに行き、ふと先祖代々の日記に書かれた彼らの身に起きた残酷な出来事を思い出していた・・・
主君の不祥事を自ら切腹して救った飯倉次郎左衛門や主君の機嫌を損ねて閉門になりながらも主君が病死するや自らも後追い切腹する飯倉佐治衛門やら不条理な6つの死に様が描かれたオムニバス。
強烈に印象に残ったのが藩主の堀丹波守宗昌に見初められた飯倉久太郎。実はその藩主が男色だったというエピソード。60年代にこういうエピソードもあったんだななんて感心したりもしたけど、久太郎の悲劇は藩主に操を奪われるだけじゃなく藩主の元妾の荻の方(ってことは両刀ってこと?)と恋仲になったことがばれて去勢させられてしまうんですね。久太郎は死にはしないけどこれが1、2を争う残酷エピソードでした。
そんな久太郎と恋仲になるのが出ました、岸田今日子。
相変わらず「出たぁー!岸田今日子!」と言わずにはいられない存在感。いつも通りどこかおどろおどろしい雰囲気をかもし出しながらも独特な気品も持っている特異体質の岸田今日子、やっぱり彼女が出ると良からぬ出来事が起きますね、岸田今日子以外が・・・
出演者も現代の恋人役の三田佳子から水戸黄門でおなじみ東野英治郎や渡辺美佐子まで今となっては贅沢な配役で観ていて飽きないのですがなんといっても中村錦之助の一人七役でしょう。久太郎のような美少年って設定の役はちょっと無理がない訳じゃないけど少年から年老いた老剣士まで幅が広くやはり中村錦之助という人物、只者ではないとしみじみ感じるのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
中村錦之助
(飯倉進/飯倉次郎左衛門/飯倉佐治衛門/飯倉久太郎/飯倉修蔵/飯倉進吾/飯倉修)
ジュード・ロウは顔がきれいだから無理をして美少年から老剣士までこなしてくれそうで・・
森雅之
(堀丹波守宗昌)
男色の藩主が思いっきりはまりそうなアラン・カミングで。
岸田今日子
(萩の方)
顔は全く違うけど周りの男が不幸になる確率がかなり高いナオミ・ワッツで。


不毛地帯
(1976)
4
2005年8月
元大本営参謀の壱岐正は近畿商事に入社する。次期主力戦闘機選定をめぐるライバルの東京商事との戦いに壱岐は経歴を活かし政界とのコネを使いその手腕を発揮していくのだったが・・・
原作が山崎豊子で監督は山本薩夫だから当然内容は骨太なのは察しがついていたし3時間以上の超大作だから期待していて実際に観てみたら多分これは原作に忠実に描こうとしていてこういったスタイルになったように思えるのですが、仲代達矢が演じた主人公の壱岐正は何年もの間シベリアで抑留されていたという設定でそのために多少なりとも心に傷があるような男なのですが前半の半分近くがこのシベリア抑留時代を含め戦時中の彼の姿がしっかりと、時間をかけて丁寧に描きすぎているのでちょっと想像と違っていて不思議な作品でした。
面白くなってくるのはやはり政界、商社の思惑が複雑に絡まりいつのまにか仲代達矢がこの事件の中心的人物になってしまっていく中盤以降です。かつての仲間で自衛隊の丹波哲郎の力を借りて近畿商事に有利な展開に持って行っている一方で丹波哲郎は自衛隊の上層部が東京商事に肩入れしているので左遷や嫌がらせを受けたりと闇権力の前にどうすることもできない理不尽さを味わったりと
70年代超大作に観られる特有の展開が観ていてやるせなくなるのですが、やっぱりこういう政治家や大企業の権力に押しつぶされそうになったりするところは独特で好きなんですよね。
なんでもこれは「ロッキード事件」がモデルになっているそうでいくつかカットせざるおえないところがあったらしいですが劇中に出てくる企業が「ラッキード社」ですからねぇ・・・
ライバルの東京商事に登場するのが田宮二郎でポスターとかにもでかでかと載っていたので仲代達矢にどんな妨害工作をするのだろうかと期待していたらほとんど出番なしで豪華出演者達のうちの一人って感じの扱いが残念で、シベリア抑留時代を削って近畿商事と東京商事の激しい攻防をもっと全面に押し出せばもっと面白くなったんじゃないかと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
仲代達矢
(壱岐正)
ニコラス・ケイジあたり主演でやっちゃうような雰囲気がある。
丹波哲郎
(川又空将補)
ベニチオ・デル・トロが知り合いだったら何かと頼りになりそうで。


プライド
PRIDE
(2008)
5
2010年1月
名家で名門の音大に通う麻見史緒の家にハウスクリーニングにやって来た出会った音大生の緑川萌。そんな中、史緒の父親の会社が倒産してしまう。やがてイタリア留学のかかったコンクールに出場した史緒は萌と争うことになってしまい・・・
少女漫画の実写化。
この映画、絶対好きだから観てと言われて観たら面白かったです。原作の漫画は全く知らないのですが漫画をそのまんま実写化しましたという感じで全体的にこの映画の世界観が狂っているところが面白いです。
「愛のむきだし」で好演した満島ひかりがステファニーのライバルで登場。貧乏な娘なのですが性格がものすごく悪いです。せっかくオペラのコンサートに連れてきてもらったのにいきなり性格が豹変してステファニーに敵意むきだし。コンクールでもステファニーを陥れる極悪非道っぷり。ステファニーのみならず自分をバカにした新山千春も陥れるのですが、この映画に出てくる人はみんな一癖あるのできっちり仕返しされるところも面白いです。
満島ひかりが高島礼子のクラブに働かせてもらおうと思ったら門前払い。しかし客の長門裕之のゲロを手で受け止めてめでたくホステスになったり相変わらず身体を張っていて笑えます。
それになんといっても水の入ったコップにツバを吐き「どうしても私に歌って欲しかったら、この水飲んでよ。」とステファニーに迫る姿が似合いすぎます。
主役のステファニーも相当不憫なのですが、見た目が松坂慶子のようにがっちりしすぎているので全く可哀想という感じがしないところとか、豪邸からワンルームに引っ越したのにお嬢様ベッドが部屋にデーンと置いてあったり、お嬢様なのに昭和っぽい喫茶店でお茶していたら渡辺謙の息子と満島ひかりがやって来て世間は想像以上に狭すぎるところとかこちらもいちいち笑えます。
そのほかにも何故か女装で母親の高島礼子のクラブでピアノを弾く渡辺謙の息子とか臭い台詞が似合う及川光博とかホットショコラを連呼する由紀さおりとか全てが笑えてもう一回観てみたいと思わずにはいられないのでした。
2回目のコメント
2010年7月
2回目を観ましたが相変わらず面白い。そして漫画の台詞をそのまま言っているので実写にするとものすごく違和感があるのですがそれを含めて面白いのですがその中でも新しい発見があるところが素晴らしいです。
高島礼子のクラブでステファニーと満島ひかりが「A Song For You」をデュエットするわけなのですがいつの間にか後ろで及川光博と高島礼子が見守っているという素敵な構図を教えてもらい爆笑です。(笑うところではないのですが)
満島ひかりの二重人格気味の性格もスイッチが入った時の顔もよく観ると今にも舌打ちしそうな表情で最高です。がそんな満島ひかりは貪欲でこの映画に出てくる人は悪気はないのですが余計なことを口走ってしまいがちなのですが、相手が不利になりそうな情報を仕入れたときのちょっと嬉しそうな顔をして、陥れていく様も何度観ても敵は回したくないキャラクターなのですが面白いです。
出番が少ないですが及川光博の秘書役の新山千春がものすごく冷たい性格で改めていいなと思いました。一度は満島ひかりにやられるのですが後半きっちり仕返しをして勝ち誇った感じになるところも素晴らしい。助演女優賞ものだと思いました。
あとはなんといってもラストのライブシーンで歌う「あなたと歌うと」の歌詞が「あなたのことは許せない。顔を見るのもイヤ。」と満島がケンカ腰で歌うと「でもあなたは来てくれた。ここに。」と寛大なステファニー。すると「あなたのために来たんじゃない。ここが私の立つところだから。」と一方的な敵意をむき出しで歌っていますが歌っていくうちに笑顔になっていくところがお互いの実力を認め合ったライバルという感じですがすがしいです。
漫画だとこの後がまだまだあるそうなので是非続編を作ってもらいたいです。それか同じキャストで連ドラにしてもらったらさらに最高だと思います。
前回★4つつけましたが★5つに格上げです。もう一回みたいです。
3回目のコメント
2010年12月
飲み会やるたびに観ています。まさか一年で3回も観ることになるとは思いもしませんでしたが毎回楽しすぎてまた観たくなる不思議な魅力がこの映画にはあるのです。
ステファニーもいいのですがやっぱり満島ひかりのハングリー精神むき出しのキャラクターがいいですよ。
キレモードに入る時の瞬間を今回はじっくり見たのですが、黒目が大きくなるというか瞳孔が開いて焦点が合わなくなるというか、そんな感じになるので今キレたという感じが分かるのですが、満島ひかりのキレ芸は職人の域に達しているなと思いました。
それと相手の弱点を偶然知った時の「ははーん」というj感じの悪巧みする感じの表情とかも最高です。
及川光博のことはあまりちゃんとチェックしていなかったのですが、ステファニー流血事件で病院に駆けつけてきた渡辺大に「ハイエナのようだな。」と素敵な台詞を言っていて爆笑。人のことハイエナ呼ばわりするのはマンガの世界そのまんまですがこういう台詞が似合ってしまうところもすごいです。高島礼子の「場末のバー」発言もそうなのですが。
それと高級クラブで満島ひかりに歌うチャンスが巡ってきて歌うのですが、何故か沖縄の歌という突っ込みたいところは山々なのですが歌のシーンが見所なので問題なし。クライマックスも「A Part of Me」も何度聞いても飽きません。
これを機会に満島ひかり、一枚くらいアルバム出して欲しいです。出たらもちろん買いますので。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
ステファニー
(麻見史緒)
アン・ハサウェイあたりにお願いしたい。
満島ひかり
(緑川萌)
悪い顔が似合いそうなミーガン・フォックスで。


FLOWERS フラワーズ
FLOWERS
(2010)
2
2010年6月
資生堂のシャンプー「TSUBAKI」に出ている6女優が豪華共演のドラマ。
蒼井優の娘が竹内結子、田中麗奈、仲間由紀恵、そして仲間由紀恵の鈴木京香、広末涼子というありえない家族構成で勢いがありそうな感じですが全体的に豪華すぎてパッとしません。
蒼井優は父親が勝手に決めた結婚に納得行かず結婚式当日に逃亡して、進歩的な考えを持ってます。とか、田中麗奈は編集者で働く男勝りなキャリアウーマン(エロ小説家の長門裕之担当)ですが、この時代に女性は働きにくく周りから面倒くさいと思われて苦悩したり、仲間由紀恵は子供を産んだら自分の命は危ないと知っていてそれでも産むと決意したりと
とにかく女性映画度100%という感じの内容なのですがどのエピソードも薄っぺらいのでびっくりしました。それに竹内結子、田中麗奈、仲間由紀恵は三姉妹なのに仲間由紀恵だけ他の二人と絡みがないというのもありえないと思いました。
鈴木京香も何だか彼に振られただけでもダメージが大きいのに妊娠発覚。それでも子供を産んでシングルマザーになります。みたいな展開も押し付けがましくてついて行けません。
唯一感心したのは仲間由紀恵の旦那さんがV6の井ノ原快彦なのですが、その後の井ノ原快彦の役を平田満がやっているところはよく思いついたと思いました。
この手の映画は、豪華なのはいいのですが全員平等に時間を割り振ると必ず失敗するということを教訓にしてもらいたいです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
蒼井優
(凜)
レトロな顔つきのエレン・ペイジで。
鈴木京香
(奏)
見た目も似ているレイチェル・ワイズで。
竹内結子
(薫)
ちょっと不幸な役と言ったらジェニファー・コネリーで。
田中麗奈
(翠)
気の強い役が合うケイト・ハドソンで。
仲間由紀恵
(慧)
こちらも幸薄そうな役が似合うケリー・ラッセルで。
広末涼子
(佳)
母親役が意外と行けそうなズーイー・デシャネルで。


ブルークリスマス
BLOOD TYPE:BLUE

(1978)
4
2005年6月
京都国際科学者会議で兵藤教授はUFOの存在は絶対という発表をしやがて行方不明になってしまう。日本国営放送の南一矢は彼の失踪について調査を始めるが、世間ではUFOを見ると血液が青くなるという噂が広まり始めていた・・・
UFOを目撃した人間は血が青くなってしまう。という内容を聞いて最初とんでも系かと思っていたら、確かにカルト性は十分に高かったんですが政治的な内容が濃いしっかりとした作品なのでびっくりしました。
一応勝野洋が主役ってことになっていますが、前半はほとんど登場しなで記者の仲代達矢がメイン。二部構成的な作りが黒澤明作品っぽいなぁと思いました。
というわけで前半は仲代達矢の教授探しが中心となっているのですが、それとは別に週刊誌の記者に新人女優の恋人が血が青いと相談されてそれをつい上司に漏らしてしまうのですが、そのあたりから政府とか絡んで謀略や陰謀めいた出来事が次々と起きて一気に壮大な展開になっていきます。
青い血の人間は密かに排除しようと政府がそれも世界的に動きだしていてこの女優もパーティで麻薬の不法所持の濡れ衣を着せられ女優声名を絶たれてしまったり、世間で青い血の子供が産まれたら抹殺したり、血が青いというバンドグループの乗った飛行機が墜落するなど「X-FILES」っぽい展開がちょっと恐いです。しかも
子供の抹殺命令を下すのが天本英世と岸田森というある意味正しいマッドサイエンティスト像の二人の役どころがすばらしかったです。
後半は政府の命令で特殊部隊員の勝野洋が青い血の人間を排除する任務に葛藤をしながらも恋人の竹下景子も実は血が青くて・・・という展開なのですが、 この政府のやり口が汚いんですよ。集団恐怖を植えつけて青い血の人間を迫害しようとする政府が。これを映画が始まった一番最初に竹下景子が観ているナチスの番組とリンクしているところに感心したのでした。
勝野洋がたいがいいのにちょっと優柔不断で竹下景子の血が青いって気がついた時点で二人で逃げればいいのに、ネタバレ→
最後竹下景子を殺してから逆上するから怒るのちょっと遅いよ。←と思ったのですがこれがあの切ないラストにつながっているんだろうなと思うと納得できました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
勝野洋
(沖退介)
特殊部隊員にぴったりのカール・アーバンで。
竹下景子
(西田冴子)
ドリュー・バリモアは床屋の娘が似合いそう。
仲代達矢
(南一矢)
レイフ・ファインズあたり記者役にちょうどいいかも。


プルーフ・オブ・マイ・ライフ
PROOF

(2005)
3
2006年1月
天才数学者の父を失くし精神のバランスを崩したキャサリンのもとに父の教え子ハルが現れ彼は世紀の発見となる数式が書かれたノートを発見するが・・・
舞台劇の映画化でグウィネスの評判がものすごくいいし今年日本でもブレイクしそうなジェイク・ギレンホールが共演だからこれはチェックしとかなくてはと思い観にいきました。
才能があるのに情緒不安定で周りの人にわめき散らすグウィネスは鬼気迫る感じが伝わってきて今まで見たことない雰囲気で確かに評論家からものすごく評判いいなぁっていうのは分かるし、それを黙って受け止めるジェイク・ギレンホールも好青年でよかったです。
世紀の公式がどうのこうのとか劇中に出てくる
何かの公式も○○+1の何乗とか言われても1って何乗にしても1は1何じゃないの?と数学のことはさっぱり分かりませんが家族の葛藤がすごかったので難しい数学のことはあまり気にならなかったかな。
いちいちお節介を焼く姉のホープ・デイヴィスも最初は妹のためと言いつつ弱っている妹の意見を聞かず自分のスタイルを押し付けてなんて無神経な姉だろうとイライラしましたが、最後まで見ていくと妹に父親の面倒を看させてしまったという負い目から出てくる行動なんだと思うと多少うっとうしくても家族っていいもんだと思います。
日本人バージョンはこの人で!!
(数学つながりで「博士の愛した数式」出演者で)
グウィネス・パルトロー
(キャサリン)
ほとんどすっぴんでもいけそうな深津絵里で。
アンソニー・ホプキンス
(ロバート)
もちろん寺尾聰で。
ジェイク・ギレンホール
(ハル)
絶対怒らなそうな吉岡秀隆で。
ホープ・デイヴィス
(クレア)
姉というより母親だけど浅丘ルリ子は面倒見がよさそう。


不連続殺人事件
(1977)
3
2004年9月
戦後まもなくの時代、矢代寸兵に知人の財閥の歌川一馬から屋敷への招待状が届いた。屋敷には総勢29人が集まっていたがその中一人の作家が殺されてから次々と殺人事件が起きて・・・
なんだか「不連続殺人事件」というタイトルが赤川次郎的な雰囲気が感じられて軽い感じのミステリーを予想していたらとんでもなくどろどろした感じのミステリーってことはバンバン伝わってきたのですがなにせ登場人物が屋敷にいる人たちだけでも29人だから誰が誰だか分かりません。次々に死んでいく屋敷の者や招待客も刺殺だろうと毒殺だろうと説明されても本当に顔と名前が一致しません。
歌川家の長が毒殺されたときはプリンに大量のモルヒネが混入してました・・・って言われてもどうでもよくなってきます。
招待状を受け取った田村高廣が探偵の小坂一也と一緒に謎解きするかと思いきやとっちゃん坊やの小坂一也一人に汗だくで捜査させて田村高廣は高みの見物で何もしないのかい!という突っ込みの入りつつ、一人無法者の内田裕也がむちゃくちゃやっていたけど俺様流という感じ格好よかったです。最後はネタバレ→
実は犯人だった内田裕也が同じく犯人で自殺した夏純子の元にいくときの台詞が「最後に側にいってもよいではないか。」といきなり舞台的になったのは笑いましたけど。夏純子もさりげなく青酸カリを飲んだつもりなんでしょうけど思いっきり分かりやすく飲んでました青酸カリ。
最後も連続殺人事件がいかにして不連続殺人事件になったかと探偵の小坂一也が一生懸命説明してくれるんですけどこの説明も長すぎてどうでもよくなってしまいましたよ。結局はネタバレ→
「愛」←のためだったんでしょ?
ハリウッドバージョンはこの人で!!
夏純子
(歌川あやか)
若奥様という言葉が似合うエマニュエル・ベアールで。
内田裕也
(土居光一)
キャラクター的に無法者っぽいヴァンサン・カッセルで。
小坂一也
(巨勢博士)
今のところとっちゃん坊やと言えばトビー・マグワイアでしょう。


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