日本映画

か


怪人二十面相 三部作
(1954)
3
2004年9月
明智小五郎が渡米中に怪人二十面相から超原子炉の設計図を奪うと犯罪予告が送られてくる。少年探偵団は設計図を守ろうとするが怪人二十面相にまんまと盗まれてしまい・・・
第一部「人か魔か?」、第二部「巨人対怪人」、第三部「怪盗爆砕」の三本構成で計120分くらいでしょうか?最初短編集かな?と思っていたらちゃんと一つの物語として成り立っていました。不思議なのはこれテレビドラマみたいだけどちゃんとした映画だと思うんですけど当時どうやって40分程度の短編を公開していたのかというところ、きっと何かの作品と同時上映だったのかな?
第一部は明智がアメリカに渡米中って設定なのでほんの少ししか出てこないのでメインは少年探偵団の行動となっているんで、少年探偵団の中の小林少年を中心に二十面相との設計図をめぐる攻防を見て、これは小中学生の男子がきっと熱狂したんだろうなぁって感じました。
第二部以降は明智と二十面相(二十面相の素顔がアイメイクバリバリでもろ悪役ですという感じが笑えます)の攻防に重点が置かれるわけですけど
明智は思いっきり少年探偵団を利用していてたまにこれでいいんか?と思うところが多々ありましたけど最後は何気に事件解決しちゃうんですよね。明智ったら子供を使うしたたかさもあったんですね。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若杉英二
(明智小五郎)
ちゃっかり事件を解決しそうな探偵役にユアン・マクレガーあたりで。
沼尾釣
(怪人二十面相)
クリスチャン・ベールは目バリメイクは似合いそうです。


海賊八幡船
PIRATES
(1960)
3
2006年11月
堺港の貿易商の息子鹿門はある日、突然現れた八幡船の男達に八幡船の跡取りだと告げられる。鹿門は信じなかったが偽八幡船に妹の小静が連れ去られたことを知り八幡船に乗り込む決意をするのだが・・・
八幡船と書いてばはんせんと読むそうで、八幡船は貿易船のことのようで、貿易商の息子だったと思っていたら実は海の男だった!とい大川橋蔵の海洋アクション。
最後は偽八幡船との対決がもちろんあるのですがそこに行くまでの橋蔵を中々認めようとしない岡田英次とのしだいに深めてゆく男の友情と連帯感。その妹で藤原紀香にどことなく似ている気の強い丘さとみとの恋愛模様やら途中休憩に立ち寄った無人島で土人に襲われるも味方につけて偽八幡船との戦いで一緒に戦ってくれたりと
クライマックスに向け飽きさせない作りがまさに和製パイレーツ・オブ・カリビアンといっか感じでこの時代は日本映画も思いっきりエンターテインメントしていたなと感じながら楽しく鑑賞しました。なんてったって本当に船を造ってドンパチやっているというからすごいし本物は迫力が違います。船と船とがぶつかりあってますから。
最後も仲間は誰一人死ぬことなく橋蔵の本当のお父さんを殺した敵に復讐をしてめでたしめでたしと何もかもハッピーエンドというところが二枚目だけどちょっと軽い感じもしなくはない橋蔵にぴったりだし、岡田英次も橋蔵とは違ったワイルドな感じがカッコよかったなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
(「パイレーツ・オブ・カリビアン」の出演者で)
大川橋蔵
(磯野鹿門)
主役はオーランド・ブルームで。
岡田英次
(村上新蔵人)
ワイルドなところもあるジョニー・デップで。
丘さとみ
(寿賀)
気が強いところがキーラ・ナイトレイとかぶっていました。


怪談
(2007)
3
2007年8月
煙草売りの新吉はある日三味線の師匠の豊志賀と出会いやがて二人は愛し合うようになるのだが世間の目を気にした新吉は別れ話を切り出すのだが・・・
中田秀夫監督による本格的な怪談話。
最近のジャパニーズホラーは「呪怨」系のお化け屋敷感覚のドッキリものが多い中、この怪談は怨めし系のおどろおどろしいまさしくザ・怪談といった感じのストーリー重視の古典的な内容で逆に新鮮でした。
黒木瞳はどうでもいいかなと思っていたのですが三味線の師匠という役どころで長唄を歌うシーンはちゃんと歌えていて感心しました。
でもやっぱり話が盛り上がってくるのは黒木瞳が情念を持ちつつ死んでからで、次々と尾上菊之助と関係のあった女たちが呪われていくところで井上真央なんてずぶ濡れになったり逆さ吊りになったりと月9女優が体を張ったり麻生久美子は耐え忍ぶ幸薄系で木村多江は黒木瞳の妹役というテレビで見る役とは違った役どころは映画でしか観られないですね。
唯一、尾上菊之助に惚れずにある秘密を握って菊之助を脅すという悪女役が瀬戸朝香なのですがこれが中々よかったです。もちろん最後は痛い目に遭うのですが、菊之助を自分の思うがままにしたと思いつつ自分が危うい立場になると平気で菊之助を売ろうとする悪女っぷりは観ていて楽しかったです。やっぱり悪女がといるのといないのとでは面白さが全然違うと思います。
それとこの映画のよかったところは
最近の日本映画は無駄にお笑い芸人が出てきて嫌なんですが今回は村上ショージが出ているくらいで演技もふざけてないで真面目だったところが他のメジャーな映画も見習って欲しいなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
尾上菊之助
(新吉)
色々な世代にもてそうなヒース・レジャーで。
黒木瞳
(豊志賀)
ニコール・キッドマンにやってもらいたい。
井上真央
(お久)
感じのいい娘さんという感じのアンナ・パキンで。
麻生久美子
(お累)
耐え忍ぶ感じが似合うジェニファー・コネリーで。
木村多江
(お園)
妹役はナオミ・ワッツにお願いしたい。
瀬戸朝香
(お賤)
悪女はやっぱりファムケ・ヤンセンに。


怪談海女幽霊
GHOST OF THE GIRL DIVER
(1960)
3
2010年8月
とある島で船主が海に引き込まれる事件が発生し、やがて島の権力者が行方不明になる事件も発生。島民の間では幽霊の仕業と噂になり・・・
新東宝ならではのサスペンス。
島の権力者が次々と殺されていくという展開、どこかで観たような内容だなと思ったら、金田一シリーズですねこれは。島の外から来た警部が事件を解決するスタイルもそっくりで、実は新東宝知らず知らずのうちにちゃんとしたサスペンス作っていたんじゃないかと思いきや、そこは新東宝、海女を盛り込むことによってサスペンス度が一気に下がったのがいかにもという感じでした。
1時間もない短編なのに無駄に海女が海に潜るシーンが多いし、なぜか海女同士のキャットファイトありとお色気シーン満載で本編の恨みから来る連続殺人事件なんてどうでもよくなっています。
海女の水着?が女囚が着ているような下着で色気もあまりないところが妙にこの世界観にマッチしてしまうところが新東宝クオリティという感じがしました。
極めつけは
水中で一人殺されるのですが、何故か水中なのに血が口から滴っています。というシーンに笑ってしまいます。水中なので動きはスローだったのでみんなゆっくり動いて演技したのかなと思うと何だか微笑ましくさえ思えました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
明智十三郎
(池田高志警部補)
クライヴ・オーウェンあたりにお願いしたい。


怪談片目の男
(1965)
4
2009年7月
社長の恩田晃一郎が水死体で見つかった。恩田の妻の美千子、妻と不倫関係にあったカメラマンの下田、会社の専務とその秘書。そしてかつて社長に車にはねられて密かに面倒を診てもらっていた車椅子の雪子が遺産相続のため謎の弁護士から呼び出されるのだが・・・
西村晃が異聞を死に至らしめた人々に復讐をしていくサスペンス。
妻とその愛人、会社を乗っ取ろうとする専務と秘書二組がそれぞれ社長を殺そうとしていたと明らかになっていく展開と、次々と怪奇現象が起こり一人一人と命を落としていく登場人物。そして純真な車椅子の女性と雰囲気としては江戸川乱歩の原作みたいなトリックのある復讐ものという感じがしました。
出てくる妻役の中原早苗は美人ではないのですが度胸がありそうでふてぶてしく何となくリアル。そしてその愛人が川津祐介という配役で川津祐介はこういうちょっと現実離れした上流階級のサスペンスがよく似合います。そのせいかどことなく「黒蜥蜴」っぽい印象もちょっとだけ受けました。
西村晃の殺されっぷりと死体の演技もすばらしく、水の中から水死体で発見された時の目の見開きようといい、殺された時の瞬きひとつしないなりきりっぷりはあっぱれですし、次々と殺されていく出演者の皆さんの死に様もバリエーションに富んでいて飽きさせません。
ネタバレ→
西村晃が実は双子だったというとんでもないオチはやっぱり「黒蜥蜴」ちっくだったし、なんといっても純情そうな車椅子の女が実は遠くに歩けていて金を長年騙し取っていて最後に西村晃を殺そうとケリを入れたりと←大どんでん返しもありでエンターテイメント精神溢れる映画になっていて楽しかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
西村晃
(恩田晃一郎)
最近のイメージでは怒ると怖いリーアム・ニーソンで。


怪談せむし男
HOUSE OF TERRORS
(1965)
3
2007年9月
夫が精神病院で急死し唯一残された別荘を相続した芳江はさっそくその別荘にやってくるが遺産目当てで義父の圭介も翌日その別荘にやってきた。そんなかれらの世話をせむしの男がするのだがやがて別荘に奇妙な出来事が次々と起き始め・・・
怪しげな洋館風別荘で西村晃の怪しげで哀しそうな表情のせむし男に悪霊に取り付かれた別荘に遺産や自分の地位を虎視眈々と狙うあくどい登場人物たちといった色々な要素がごっちゃになった東宝のとんでもホラー。
とにかく
西村晃のせむし男っぷりがはまっていて家の中なのになぜか未亡人の芳江がカラスに襲われるのですが、飛び回るカラスを素手で捕まえて息の根を止めたりしてカッコよくさえ思えてしまします。
怪現象が次々と起こる別荘で未亡人とその遺産を狙う医者の義父、死んだ夫の手切れ金を狙う元愛人やら義父を失脚させようと企む義父の部下と色々と昼ドラのような展開が繰り広げられていくのですがどれも唐突にエピソードが始まるのがいかにもという感じがします。
極めつけは本当に唐突に霊媒師がやって来て夫の死の真相を霊媒し始めるのですがこれが鬼気迫る感じでこれが一番迫力ありました。
よく分からないけど惨殺された外国人美女の亡霊とか出てくるのですが結局最後に明かされる別荘の呪われた原因はネタバレ→
せむし男の双子の兄が米兵に恋人と共に殺されてその怨念がせむし男に乗り移って別荘に来た人々を取り殺す←というオチなのですがこの時代ならではのとんでも系作品として観る分には十分楽しめます。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
西村晃
(せむし)
怪演が似合うクリストファー・ウォーケンで。
楠侑子
(宗方芳江)
美しい未亡人という設定がありそうなシャーリーズ・セロンで。


怪談昇り竜
(1970)
5
2004年4月
立花一家二代目の立花明美は出入りの際組長の郷田を斬りつけたがその時誤って郷田の妹藍子の目を斬ってしまう。刑期を終えた明美は再び組を仕切るが次々と子分が怪死し始める。明美は自分が呪われている確信を持つのだが・・・
石井輝男監督の作品ってバイオレンスとエロスとグロテスクさってのかなぁ?そういうジャンルは間違いないというイメージの監督なんですけど、今回のこの作品は全てが混ざっていてしかも梶芽衣子主演ときているからつまらないなんてことはありえないし、
なんってったって仁侠映画に怪談映画がミックスされた内容に座頭市がミックスされたすごい内容の作品なのです。
梶芽衣子の姐さんぶりはもはや安定の域に達していて、「若輩者ではありますが・・・」云々と自己紹介するシーンじゃ、何をおっしゃるこちらの方こそ若輩者ですと心の中でつぶやくのでありました。
両目を斬られて姐さんを恨む藍子が密かに殺しの特訓を5年間し続けて女座頭市ともいえる剣使いになっているところもすごい設定だけど、その藍子の手下のせむし男みたいな奴が背中の皮をはいだり生首をもてあそんだりとまさに恐怖映画も真っ青な見せ場もありとまさにエンターテインメント。
主題歌ももちろん梶芽衣子本人が歌い上げます「昇りぃー竜ぅー」と。(天城越え風に)
石井輝男監督今年で80才という年齢でありながらいまだ現役。この和製タランティーノ(勝手に命名)作品もこれからいろいろ観ていこうと心に誓うのでした(「ねじ式」とか「地獄」とか1960年代の地帯シリーズとかね)
ハリウッドバージョンはこの人で!!
梶芽衣子
(立花明美)
ちょうど「キル・ビル」のDVDを購入しユマ・サーマンルーシー・リューだなと感じのです。
ホキ徳田
(剛田藍子)


怪談本所七不思議
(1957)
3
2010年8月
人間に捕まりそうになっていった狸を旗本の小宮山家の主人が助ける。その狸は小宮山を守ることを誓う。そんなある日、甥の権九郎が現われ小宮山を乗っ取ろうと企み・・・
新東宝の怪談と復讐をミックスしたような映画。
狸が化ける妖怪はチープなんですが内容は家を乗っ取ろうとする天知茂とかつて天知茂の昔の女だった今の主人の嫁の腹黒い策略が腹黒くてドロドロした内容になっていて結構面白いです。
これも
天知茂の悪役っぷりの一言に尽きます。上手すぎるんですよね、こういう役。あと天知茂の愛人役をやった山下明子という人の表情がとにかく悪女ですと言う感じがして、主人を闇討ちしてその訃報を聞いたときに悲しい顔をした後に見せるほくそえんだ顔が最高にいい表情でした。
ということで最後に復讐を遂げる家の息子の印象が薄すぎるのですがとにかくこれはあくどい二人が面白すぎるからしょうがありません。
本所七不思議と言われるだけに「置行堀」「送り提灯」「送り拍子木」「狸囃子」という狸が人を化かすあれこれも盛り込まれているのですが全部紹介しようとして矢継ぎ早すぎるのがもったいなかったです。
最後は狸に化かされた天知茂が
ハリウッドバージョンはこの人で!!
天知茂
(小宮山権九郎)
最近腹黒い役が多いパトリック・ウィルソンで。
山下明子
(おさわ)
悪女役も似合いそうなダイアン・クルーガーで。


花影
(1961)
4
2009年4月
人のいい葉子は男に尽くしては別れを繰り返す生活を送っていた。そんな葉子はある決意をして・・・
大蔵貢の怒りを買って、新東宝で不遇時代を送らされていた池内淳子本格復帰第一作目だそうです。ちなみにタイトルの花影は「かえい」と読みます。
この映画に出てくる男たちが成瀬巳喜男映画に出てくる男たち並みにダメな感じなのですが(この映画の監督は川島雄三)、最初の男、池部良はさわやかな見た目とは裏腹に煮え切らないし、高嶋忠夫はぼっちゃんなのでわがままな感じでちょっと世間知らず。骨董の先生の佐野周二はいい線いっているかなと思ったのですが、骨董品がそう売れるわけもなく次第に偽物を売り渡すような落ちぶれた骨董の先生になってしまって観ている方が切ないです。
大本命の三橋達也は池内淳子のために旅館の女将をしてもらってまともな生活を送ってもらえるように手配するのですが、佐野周二のニセ骨董事件が発覚してそれもなくなってしまい人生に絶望を感じた池内淳子の最後の決断は・・・みたいな内容なのですが、とにかく男運のない年増のホステスを池内淳子が好演。親友で池内淳子を自分の店で面倒を見るバーのママ役の山岡久乃も上手くこれ、
批評家たちが喜びそうな内容も手伝って、現在だったら池内淳子と山岡久乃の二人は主演と助演にノミネートされる勢いの内容だなと感じました。
それに池内淳子はとても上品なので水商売系の役をやってもそうは見えないところがすごいなと思います。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
池内淳子
(足立葉子)
ジェニファー・コネリーにお願いしたい。
佐野周二
(高島謙三)
骨董の先生という役もいけそうなハビエル・バルデムで。
山岡久乃
(戸田潤子)
姐御肌のコートニー・コックスで。


顔役暁に死す
(1961)
4
2005年5月
アラスカの仕事から久しぶりに父が市長を務める町に戻ってきた佐伯次郎だったが、父は何者かに暗殺され町は地元の半田組と新興勢力の後藤組が激しく対立する暴力都市となっていた・・・
父親の死の真相を探るうちに事件の対立する暴力団の抗争を煽ってしまう内容なのですが、半田組の親分にちょっと間の抜けた田中邦衛にとその幹部に計算高い悪役の印象の強い中丸忠雄。後藤組の親分には見るからにエリートという感じのする平田昭彦で幹部は人情派の中谷一郎とバランスがよくって特に幹部の中丸忠雄と中谷一郎が相手を陥れようとしたり加山雄三を味方につけようとしたりこの二人が組長になった方がいいんじゃないの?と思うほど活躍してくれるから観ていて楽しかったです。
中谷一郎がやくざなんだけどいい奴で決闘する時は一対一みたいな感じで仁義を守って時には中丸忠雄に囲まれた加山雄三を助けたりして「独立愚連隊」の時もそうでしたけど
一見敵かなと思うんですけど実はいい奴だったというパターンが多くてさすが風車の矢七だと男気あふれるその姿勢がすっかり気に入りました。
加山雄三もアラスカ帰りで腕っ節が異常に強すぎるというところが気になったのですが面白いのが父親のセクシーな後妻のネグリジェ見て鼻の下を伸ばすというシーンがあるんですけど本当に鼻の下伸ばしちゃって笑いました。やんちゃの中にかわいらしいボケみたいな要素があって新しいやんちゃ像を発見しました。
「沖縄やくざ戦争」と同じでフィルムの保存状態が悪くって、オープニングの市長がケネディ暗殺とそっくりな方法で殺されるという肝心なところが飛んでしまって話は面白いだけに残念でした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
加山雄三
(佐伯次郎)
ジュード・ロウがお茶目な事しちゃった雰囲気がありました。
中谷一郎
(松井)
実際のショーン・ビーンは絶対いい人だと思う。
中丸忠雄
(西条)
トラヴォルタにも似ているけどハビエル・バルデムにも似ていることに気がつく。



SWEET REVENGE
(1959)
4
2009年5月
肉体的に衰えが隠せない剣持は妻の郁子に隠れて病院通いをしていた。そこで娘の敏子の恋人でインターンの木村から何か熱中できることを見つけことを勧められる。剣持は郁子と木村を近づけさせ自ら嫉妬をすることで若さを取り戻していくのだが・・・
谷崎潤一郎原作のクレイジーな愛憎劇。
同じ谷崎作品の「瘋癲老人日記」は変態だけれど笑える傑作になっていましたが、同じ谷崎作品でもこちらは陰湿な恋愛ゲームと言う感じでドロドロとしたのが好きな人にはいいかもしれません。
登場人物全員が一癖あるというか何か企んでいるところが面白い。
中村鴈治郎は性欲を取り戻したくて、京マチ子に酒を飲ませて(酒を飲むと風呂で卒倒する)倒れた全裸の京マチ子を開放する仲代達矢の姿を見て嫉妬から来る興奮を楽しんだり。京マチ子の中村鴈治郎の心臓が危ういのを知っていてわざとその術中にはまったかに見せてショック死させようと企んだりしてこの夫婦一見いい感じなのですが相当きています。
仲代達矢も出世のために好きでもない叶順子と結婚しようとしたり京マチ子と危うい関係に積極的に陥ろうとするし、叶順子も中村鴈治郎と京マチ子の危ない性生活を覗き見てしまっても、仲代達矢と京マチ子の関係に感づいても涼しい顔をして生活しているしたたかさ。オマケにお手伝いさんの北林谷栄までおかしいんです。この家族どこか狂っているという感じがテンションあがります。
衝撃的というか意表を突く終わり方もすごいのですが、
なんといっても京マチ子のこれでもかという全裸に脱帽。胸はさすがに出すことが出来ない時代なのでたくみなカメラワークで隠しているのですがそれでも京マチ子の肉感敵エロスは十二分で当時の人はよく工夫して撮影しているなぁと感心するのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
中村鴈治郎
(剣持)
バート・レイノスルがやったら面白そうです。
京マチ子
(郁子)
ジュリエット・ビノッシュにお願いしたい。
仲代達矢
(木村)
計算高い役が似合いそうなライアン・ゴズリングで。
叶順子
(敏子)
シニカルな感じのマギー・ギレンホールで。


隠し砦の三悪人
THE HIDDEN FORTRESS
(1958)
4
2005年4月
一儲けしようと太平と又七は戦争に参加しようとするも秋月家すでに山名家の戦いは終わっていた。そんな二人は戦いに敗れた秋月家の黄金を見つけたのだがそこに真壁六郎太という男が現れて二人に更なる黄金のありかを匂わせて・・・
50年代〜60年代の映画を観ているといつも気なる藤原釜足という名前。名前はわかっているんだけど顔がいつもわからずじまいだったのですが、今回はメインのキャラということでようやくどんな顔なのかわかりました。なるほど確かに見たことある顔でこれだけでも観た甲斐があるのですがそれ以上にコミカルで楽しかったです。
この映画、百姓コンビの太平と又七が「スターウォーズ」のC-3POとR2-D2のモデルになっているらしいのですがなるほど言われてみると本当その通りですね。こちらの方がやはり人間なので強欲で金の分け前のことで喧嘩ばかりしているけど隙あらば金を盗もうと時には結託したり勝手な行動で仲間を窮地に陥れたりしてこんな奴らが知り合いだったら腹立つだろうなと思うんですけど強欲さ加減が桁外れなんで憎みきれないところがあって、実際にもこういう憎みきれない人いるんだよなぁと思ってしまいました。
三船敏郎は強欲な太平と又七を利用して金と雪姫を早川領へと連れて行く忠義を尽くす凄腕の侍という役どころなんですけど愛想がないから雪姫にちょっと信用されていない節があるけど最後捕まって処刑されさうになる時ようやく人間らしいところを見せて雪姫も本当は感謝していることを告白するところはやはり感動します。
三船n笑い方が「ワッハッハ!」という悪党笑いなのがすごーく気になったのですがこの豪快さが三船っぽいところでもあるなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三船敏郎
(真壁六郎太)
豪快なこイメージのラッセル・クロウで。
千秋実
(太平)
ベン・スティラーオーウェン・ウィルソンの面白コンビにお願いしたい。
藤原釜足
(又七)
上原美佐
(雪姫)
勝気な姫というところがキルスティン・ダンスト的で。


隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS
THE LAST PRINCESS
(2008)
3
2008年5月
山名に攻め込まれ没落した秋月。秋月の軍資金を探す山名に奴隷のように使われていた武蔵は隙をついて逃げ出すがその途中で秋月の金を偶然発見して・・・
黒澤明監督の同名作をリメイク。
最近リメイクされた「椿三十郎」よりは面白そうだし、特撮も良さそうだったので観ましたが、オリジナルと比べなければ結構楽しめました。
リメイクと大々的に宣伝してしまうとどうしてもオリジナルと比較されて散々なことを言われてしまうからどうせだったら「隠し砦の三悪人」なんてタイトルをつけずに観た人が何となく「隠し砦の三悪人」と雰囲気にていたよねぇなんて言われるくらいにしておいたほうが絶対いいと思うのですが・・・
話の大筋はオリジナルと大体同じですが決定的に違うところはオリジナルでは百姓コンビの千秋実と藤原釜足がボケ担当で三船敏郎が突っ込みという構図で絶妙なバランスだったのに対し、今回は百姓にあたる松本潤も突っ込みに回っていたしどうしても阿部寛もヒーローというか主役のポジションなので主役は二人いらない。と思ってしまうところが評判の悪いところなんだなぁと感じました。
実際、阿部寛が良かったので松本潤は別にいてもいなくても変わらないとも思いましたし・・・でもそこはさすがジャニーズでくさい台詞が似合うんですよね。
宮川大輔が一人ボケ担当になってしまうのですがこの役は天然さが必要でガメツイけれど憎めないキャラでなくてはならないように思えるのですが、天然というより計算してボケているという感じなので痛い目に遭ってももうひとつ同情できないところが今一歩でした。
と、オリジナルと比べるといくらでも言いたいことが出てくるのでいいところを書くとすると、やっぱり阿部寛に尽きると思います。あんなに目がギョロギョロしていたっけ?と思いましたがとにかく殺陣が軽々と刀を振るという感じではなく重量感のある剣をブンブンと振り敵を倒していくというところがものすごくカッコよかったです。(あと多分付け胸毛もポイントだと思います。)
ヒロインの長澤まさ、場面的に叫び気味に台詞を言うシーンがあるのですが、そういうシーンでは台詞が聞き取りにくかったです。この役はあまり知られていなくてもいいからちゃんと発声できる人がよかったなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
松本潤
(武蔵)
クリス・エヴァンスくらいボケの要素があったほうがいい。
長澤まさみ
(雪姫)
馬も乗りこなせそうなアンナ・パキンで。
宮川大輔
(新八)
どうしようもない役が似合うジェイソン・リーで。
阿部寛
(真壁六郎太)
ヴィゴ・モーテンセンにやってもらいたい。


影なき声
VOICE WITHOUT A SHADOW
(1958)
3
2009年4月
かつて電話交換手をしていた時に強盗殺人犯の声を聞いてしまった朝子。それから数年後、結婚した朝子は夫が連れてきた仕事仲間の男が電話の声の主だと気がついてしまい・・・
松本清張原作を鈴木清順監督で映画化。
巻き込まれがたサスペンスで南田洋子が天才的な聴力を持っていて今は失業中の夫を支える妻を好演。新聞記者の二谷英明は結婚前に職場にいた南田洋子を助ける役がさわやかです。
話の出だしも快調で、殺人者の声を聞いてから数年後、無職の夫が仕事仲間と連れてくる愚連隊の宍戸錠が犯人と気がつき宍戸錠も南田洋子が交換手と気がつき消そうとするまでがとにかくテンポが良くてスリリング。これからどう展開していくのかと規定に胸膨らませていたらあっけなく宍戸錠が殺され、夫が殺人犯として挙げられてしまい話は思わぬ展開に。
この想定外の展開は鈴木清順らしいというか原作と鈴木清順の持ち味にぴったりだったと思います。
序盤は幸薄げな人妻が似合っていた南田洋子がメインで中盤以降は犯人探しをする二谷英明がメインという全然雰囲気の違った感じの内容に鳴っていて個人的には最初から最後まで南田洋子メインで行ってくれたらかなり好みの展開になっていたんじゃないかと思いました。
強面の宍戸錠に実は逆らえなかった仕事仲間が金子信雄と芦田伸介と宍戸錠に脅されているはずなのにこの二人のほうが胡散臭いというところがポイントでしょうか。どう見ても芦田伸介がボスで金子信雄が悪知恵のあるNo.2とかにしか見えなくて・・・
ハリウッドバージョンはこの人で!!
二谷英明
(石川汎)
記者役もいける感じのユアン・マクレガーで。
南田洋子
(小谷朝子)
出番が少なくても印象に残るレイチェル・ワイズで。


崖の上のポニョ
PONYO ON THE CLIFF BY THE SEA
(2008)
3
2008年9月
ある日、父親のの目を盗んで家出をした魚の子ポニョは人間の子供、宗介と出会い宗介のことが好きになってしまう。一旦は父親のフジモトに連れ戻されたポニョだったが・・・
大ヒット宮崎アニメの最新作。
観に行こうか行くまいか悩みましたが、世界でも評判いいらしいので思い切って観に行きました。
印象は普通でしょうか。よかったところは宗介のいかにもあの年代にある無邪気さがすごくナチュラルだったところが印象に残っています。何も考えずにポニョの魔法に歓喜いて大きくなった船で母親を探しに行く無邪気なところと、日本人にはものすごく違和感ある母親の名前をリサと呼び捨てというところが世界で評判いい理由なのかなぁと感じたりもしました。
肝心のポニョは人間の子供になっているときはいいのですがたまにすごい顔になるのと人間になりかける時にニワトリっぽい感じになって可愛くなかったですがそういうことは考えてはいけません。絵本のような内容だから。
お母さん役の山口智子はものすごく宮崎アニメにはまって様になっていて感心しました。それに比べて所ジョージ(長島一茂も)はどうなんでしょう。個人的にはあの棒読み加減が全くダメでフジモトが出てくるたびにポニョの世界観から現実に戻されてしまって困りました。声の出演にタレント使うのは結構だと思うのですが、雰囲気を壊すような人はやめてもらいたいなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
(今回はアニメなのでなし)


花実のない森
FOREST OF NO ESCAPE
(1965)
4
2008年6月
自動車のセールスマンの梅木は東京に変える途中、車が故障して立ち往生している江藤みゆきという女を乗せる。みゆきの美しさにとりこになった梅木だが、みゆきのファンだという男に今までみゆきに近づいた男はみな破滅したと聞かされる。ますます興味を持った梅木はみゆきに異常な愛情を注ぐ兄の楠尾という男がいると知り、恋人の節子を楠尾の家に家政婦としてもぐりこませ・・・
若尾文子主演の魔性の女風サスペンス。原作はいかにもと思っていたらやっぱり松本清張でした。
兄妹だろうと男ならみんな若尾文子の虜で、
連絡の取れないの若尾文子をホテルで何日も待ち伏せして「次いつ会えるか」なんてストーカーのようなことを言っても「私、約束はいたしませんの。」なんて軽くあしらう若尾文子はさすが様になっています。
園井啓介が若尾文子の素性を探っていくうちに明らかになる過去、そして次々と何者かに殺されていく若尾文子を愛した男たちという松本清張らしさ全開の展開が繰り広げられていくうちにどんどん面白くなっていきます。
園井啓介というのはこれだけ大映作品を観てきたにも関わらず全然知らない人だったのですがそれが意外と新鮮で恋人がありながら若尾文子にもちろん夢中になるわけですが、愛よりなんだか興味の方が強いというところがよかったです。恋人の江波杏子を女中として兄の田村高廣のところに潜入させるのはいくらなんでもやりすぎと思いましたが・・・
それにしても田村高廣が変質的な兄役でねちっこく若尾文子に付きまとうという役どころが斬新でいて怖いです。田村高廣というといい人というイメージしかなかったので衝撃的でしたし、船越英二も油断していたらなるほどねぇというところがあり、みんなそれなりに見せ場がありつつ主役である若尾文子のことを邪魔していないところがいいなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(江藤みゆき)
訳ありなミステリアス美女という役が多いイメージのエマニュエル・ベアールで。
園井啓介
(梅木隆介)
地味目ながらいい感じのアーロン・エッカートで。
江波杏子
(節子)
女中とか似合いそうなヘレナ・ボナム=カーターで。
田村高廣
(楠尾英通)
キレたら怖そうなジョン・レグイザモで。
船越英二
(浜田)
個人的にはウィレム・デフォーにやってもらいたい。


貸間あり
(1959)
3
2008年11月
大阪のアパート屋敷と呼ばれるところに住む何でも器用にこなす与田五郎のもとに津山ユミ子という陶芸家が仕事の依頼にくるがユミ子は屋敷の一室を間借りすることになり次第に二人は惹かれあうようになるのだが・・・
川島雄三監督の群像喜劇。
川島雄三作品といえば何となく男優ではフランキー堺が多く出演しているなぁという印象があるのですがフランキー堺はこの映画でもそうですが人がいい役が似合います。
フランキー堺を中心とした群像劇でアパート屋敷のゴタゴタに巻き込まれる様子を時に面白おかしく時にシニカルに描いていているのですが川島雄三作品らしく登場人物が一癖どころか二癖、三癖あるところが面白いです。まともなのは相手役の淡島千景と戦争時代は先輩だったけれど今はフランキー堺の弟子でキャベツ巻きなる食べ物やコンニャクを作っている桂小金治くらいでしょうか。
やたらと盛りのついたカップルがいて何かというとフランキー堺をものにしようとするところがなんだか怖い。特に闇市みたいな事をして手に入らないものはありませんという感じの
清川虹子なんて迫力満点。常にスリップ姿(という印象しか残っていない)でアパート屋敷を闊歩しフランキー境を見つけてはに迫るし警察に捕まる時も警官にケリを入れるところが強烈。
他にも金に目がない浪花千栄子に悲壮感漂う乙羽信子に蜂を飼って怪しげな勢力財を作っている山茶花究に無痛分娩を絶対したい市原悦子とか出ている人が豪華すぎます。
出来の悪い小沢昭一が大学受験を替え玉で受けてもらうよう色々接待するのですが本試験まで受けさせようとするものだからさすがにそれはまずいと断るとものすごい逆上っぷりで「ミザリー」モードに突入した小沢昭一はとても怖いです。
とそんなこんなで色々ありつつ季節は流れエンディングを迎えるのですが普通の監督はやらないようなハッとするような奇抜な終わらせ方をしていて川島雄三という監督はこの時代では大分特異な監督の部類に入っていたんだろうなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
フランキー堺
(与田五郎)
人の良さそうなブレンダン・フレイザーで。
淡島千景
(津山ユミ子)
しっかりしていそうなクレア・デーンズで。


ガス人間第一号
THE HUMAN VAPOR
(1960)
3
2007年7月
銀行強盗事件が立て続けに起き警部補の岡本は犯人を追いつめるが五日市街道のはずれで犯人を見失ってしまう。新聞記者の恋人京子と捜査を進めていくうちに落ち目の日本舞踊の家元、春日藤千代が事件に関係していると睨むのだが・・・
なんでも「美女と液体人間」、「電送人間」に続く東宝の「変身人間シリーズ」第3作らしいです。特撮は円谷英二だし、まさに「怪奇大作戦」テイスト溢れる大人のSFサスペンスという感じがしました。
宇宙飛行士を夢見る水野は肉体的に基準に達していなく仕方なく図書館の司書をやっていたのですがそこに究極の肉体を手に入れることの出来る人体実験のスカウトを受けるのですが実験に失敗してガス人間になってしまうという告白のタイミングが中盤以降にされて前半はただ藤千代がどうも事件に関連しているようだけど犯人じゃないし犯人は何のために強盗を繰り返すのか?というミステリアスな展開がただの特撮ものと一線を画している気がします。三橋達也と佐多契子の恋人同士のやり取りはコミカルでいいアクセントだったし。
今は経済的に落ちぶれた踊りの家元役が八千草薫なのですが今まで優しげでふわっとした印象が強かったのですが今回は日舞も舞い毅然とした態度で警察に捕まっても表情ひとつ変えずただ発表会だけのために踊りに専念するという八
千草薫のストイックな役どころは新鮮だったしやっぱりこの時代の俳優は踊りのひとつは余裕で踊れるものなんだなぁと感心しました。
一方的に金を寄付されていた水野の正体がガス人間だったと知ってもそれを受け入れ悲劇的な結果に終わることが分かっていても最後の舞台をやりぬこうとするクライマックスが切なかったです。
あと左卜全が八千草薫のじいやで鼓なんかを打ったりしているのですが泣き出しそうな顔をしているからいっそう切なくなるのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三橋達也
(岡本賢治)
ヒュー・ジャックマンの警官役も見てみたい。
八千草薫
(春日藤千代)
ナオミ・ワッツにやってもらいたい。
土屋嘉男
(水野/ガス人間)
ロバート・ダウニー・Jrあたりに哀しい役をやってもらいたい。


火線地帯
(1961)
3
2008年4月
度胸が重森組の目に留まりチンピラの伸一は重森組に入り早速敵対する梶川組の拳銃を強奪する命令を受けるが、梶川組の車は事故を起こしてしまい拳銃は簡単に手に入るが警察へ密告するという謎の電話が掛かってきて伸一は裏切ったと思われ重森組から追われる身となってしまい・・・
地帯(ライン)シリーズ第五弾にして最終作。
この作品のみ監督は石井輝男ではないのですが(脚本のみ)やっぱり何か今までの地帯ものとは違う感じがしました。
吉田輝雄が主役で主人公が巻き込まれていくところなどベースになりそうなところは同じような気がするのですが
舞台がすでにやくざの世界というところと吉田輝雄がキャラに合わない角刈りのチンピラというところが違和感があったのかもしれません。
組長の田崎潤の愛人が地帯シリーズには欠かせない三原葉子がお約束で登場して何故か吉田輝雄に一目惚れ。追われる吉田輝雄に色々と情報を流して助けてあげる肝っ玉姐さんという感じは相変わらずでした。
同じく地帯シリーズに常連の天知茂はよく言えばミステリアスでこちらも何故か吉田輝雄を助けて兄弟分もように一緒に行動を共にするよく分からない役どころなのですがとにかく服装と男気溢れるキャラクターがカッコよかったです。
全体的に地帯シリーズを観てみるとやっぱりシリーズ第四弾の「セクシー地帯」は別格の最高傑作だったんだなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
吉田輝雄
(伸一)
やんちゃな感じのライアン・フィリップで。
三原葉子
(ゆみ)
任侠っぽい作品にも出てみて欲しいペネロペ・クルスで。
天知茂
(黒岩)
頼りになりそうな兄貴という感じのダニエル・クレイグで。


家庭の事情
(1962)
5
2005年4月
妻を亡くして七年、定年退職して自分の貯金と退職金を合わせて250万円を四人の娘と平等に50万円づつ分けた三沢平太郎と娘達の恋愛模様をコミカルに描いた作品。
なんという豪華キャスト。これだけでもう十分なのに可笑しいから最高です。
最初のカットも田宮二郎から。とういうわけで田宮二郎の絡む次女のエピソードの感想から。今回、田宮二郎は何かにつけて愛を持ち出しては次女の叶順子から金を借りる怪しげな役。叶順子はもう仇っぽい役もいけるけどこういったちょっと怪しいと思っていながら男に貢いでしまうような役もはまっています。こんな次女に好きだかこそ意地悪しちゃう同じ会社で働く藤巻潤が田宮二郎の正体を暴いて最終的にめでたしめでたし。
長女の若尾文子は課長の根上淳と不倫をしているけどその横暴ぶりに嫌気がさして会社を辞め喫茶店を譲り受け経営開始。嫌がらせに来る根上淳を、店内の内装を頼んだ船越英二に守ってもらいめでたしめでたし。若尾文子の喫茶店なのに和服姿というところに相変わらずもうっとりします。
若尾文子に喫茶店を安く譲ったのが月丘夢路なんですけど、これが近所の世話焼きおばさんの杉村春子があろうことか父親の山村聡の再婚相手にと紹介した人。とさりげなくリンクしているところもいい感じ。
三女の三条魔子は家で唯一働きに出ていない娘で父親の会社の重役の息子と婚約していたけれど父親の定年を気に婚約解消。だけど第二の就職先の好青年、川崎敬三と付き合うことになってめでたしめでたし。
四女の渋沢詩子はしっかり者の娘で手にした50万円を元手に社内で金貸しをする始末。そんな金貸しも好調の中、同僚の川口浩の友人の結婚式で強引な結婚宣言にすっかりやられて結局結婚を決意してめでたしめでたし。
と90分ちょっとの上映時間で五人に最終的には恋のお相手がちゃんと出来ているテンポのよさにすがすがしさを感じます。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
山村聡
(三沢平太郎)
サム・シェパードは真面目でいいお父さんっぽい。
若尾文子
(三沢一代)
いい歳なのにいまだに可愛らしいケリー・プレストン
叶順子
(三沢二美子)
どうも男運のない役のイメージが強いマリサ・トメイで。
三条魔子
(三沢三也子)
レイチェル・ワイズは家庭的であってほしい。
渋沢詩子
(三沢志奈子)
キルスティン・ダンストはしっかり者に違いない。


加藤隼戦闘隊
(1944)
3
2005年8月
第二次世界大戦中に活躍した加藤健夫率いる加藤隼戦闘隊の姿を描いた作品。
戦争中に作られた戦争映画なんですがなにより驚くのが「陸軍省」プレゼンツってところですよ。
なんでも第二次世界大戦初期に加藤健夫が率いる「加藤隼戦闘隊」といわれるとても活躍した伝説的なチームの話に一応なっているんですが、内容はほとんど覚えていないというか物語性がほとんどなく待機中の兵隊さんたちの談笑とプロペラ機での戦闘シーンの連続(だったような記憶)で途中でちょっと寝てしまって気がつくとまた同じようなシーンの連続で途中で記憶がなくなっても大丈夫!?
途中、軍歌を作ったので聞いてください。みたな時なんて軍歌が字幕で出て一緒に歌えるような気配りだし、歌っている若い兵士も生き生きとしてなんか楽しそうで、まるで軍隊の宣伝映画みたいでした。
戦争中の戦争映画なんて観る機会がめったにないから戦後の映画と比べてみると日本が勝つという希望に満ち溢れていたから雰囲気がまるっきり違うし内容はともあれ貴重な経験をしました。
ちなみに特撮だけは今見てもすばらしい出来で調べてみたら特撮監督はあの円谷英二と知って大いに納得するのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
藤田進
(加藤健夫)
隼からなんとなくヴィゴ・モーテンセンを連想してしまいました。


哀しみのベラドンナ
(1973)
4
2007年1月
中世フランス、ジャンとジャンヌの婚礼の儀も滞りなく終わり二人は幸せに暮らすはずだったが領主に納める貢ぎ物がなくジャンヌが貢ぎ物となってしまい・・・
リバイバル上映の予告を観た瞬間からこんなの観たことないと衝撃を覚え一目惚れ。実際観てみると
水彩画タッチの絵がアニメーションする幻想的で斬新なビジュアルが素晴らしかったです。
内容も不条理にも次々と犯されていくジャンヌはそれにもめげずに夫のために働いて夫が出世できてよかったね。と思ったのもつかの間、税金の取り立てが上手くいかずジャンの手首が斬りおとされたりこれはアニメ版の「ドッグヴィル」かというようなハードで悪魔のイメージは男性器というアダルトな時代を完全に先取りしている内容で今観てもとても新鮮です。
後半、ついに悪魔と契約を交わして魔女になってつかの間、村に病が蔓延したときですら村の人の病を治してあげているのに領主とその妻の嫉妬によって酷い目にあうというジャンヌの人生いいとこなしでほとんど裸なのですがそれがラストのあれに繋げているところは作り方が上手いなと思いました。
声の出演はジャンヌが長山藍子、悪魔が仲代達矢というところも興味深いです。特に長山藍子はおしとやかな落ち着いた女性というイメージだったので体当たりの声の熱演に出来る女優の底力を見たという感じがするのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
(今回はアニメなのでなし)


壁の中の秘事
AFFAIRS WITHIN WALLS
(1966)
3
2008年3月
人妻のノブコはかつての仲間で被爆した男と不倫をしていて団地暮らしから飛び出すことを夢見ていた。一方その頃、向かいの団地に住む浪人生の内田はノブコの不倫を覗いていて・・・
一応主役のノブコは狭い団地で家事だけをする生活に嫌気が差していたりするごくノーマルな?主婦(女優が田中絹代をもっさりとした感じの純和風すぎるのが気になります)で働きに行きたいと旦那に言うと「俺の稼ぎじゃ物足りないのか!」なんて言われて結局働きにも行けないという一昔前ではよく見られた光景が繰り広げられていくのですがノブコの不倫相手が若い頃に一緒に反戦活動をしていた仲間というところや上の階のセレブ気取り名主婦が寂しさ余って自殺するふりしていたら本当に自殺してしまったという一見脈略がなさそうなところが後から効いてくる展開が若松孝二らしいと思いました。
後半、浪人生の内田がメインになってくるとどんどん不条理になって恐ろしくなっていくのですが、まずはネタバレ→
姉を殺し?←その後、ノブコの家に不倫を理由にして家に上がりこんで襲うわけでもなくただ話を聞いて欲しいみたいな展開にゾッとしました。
ラストも当時だと考えも付かない終わり方だと思うのですが今のおかしな世の中なら十分ありえる不条理な結末に若松孝二監督の時代を先取りした鋭い感覚を垣間見たのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
藤野博子
(ノブコ)
団地が似合いそうなマーシャ・ゲイ・ハーデンで。
野上正義
(内田)
こういう役はやっぱりジョヴァンニ・リビシにお願いしたい


ガマの油
(2008)
3
2009年6月
拓也は少年院から出所する親友のサブローを迎えに行く途中交通事故に遭ってしまう。意識不明の拓也に恋人の光から掛かってきた電話に出た父親の拓郎はとっさに拓也の不利をしてしまい・・・
役所広司話、題の初監督主演作品。
のっけから役所広司がハイテンションで気合入っていますといった感じでいきなり怪しい雰囲気を察知したのですが・・・初監督作品はこっち方面かぁ。このテーマで
普通に撮ればいい感じに感動しそうなのにシュールな仕上がりになっていてお客さんは結構年配の方が多かったように思えるのですが大丈夫かなぁと心配になってしまいました。
役所広司はデイトレーダーとして何億円と稼ぐつわもので住まいも日本ではないような宮殿みたいな豪邸に住んではいるのですが、家具もほとんどなくて生活感が全くないちょっと異様な雰囲気。
とちょっと変わった家族をさらりと紹介してからいきなり瑛太が交通事故に遭い「あなたが寝てる間に・・・」のピーター・ギャラガー状態に。ここから役所広司は宮崎あおい似の瑛太の恋人のふりと、少年院から出所したてのイモっぽいあんちゃんとの共同生活が始まるのですがこの二人が映画初出演にしては結構よかったです。(宮崎あおい似の子は暑苦しいけれど。)
何だかんだ言ってサブローとのロードムービーみたいな展開になるのですがサブロー役のあんちゃんは何となくどこかで見たことあるなぁと思っていたらK1選手でした。演技は上手いとは言えないのですがぶっきらぼうなところが感じが逆に味になっていてこの映画の中で印象深いおいしい役でした。
小林聡美が出ているのでそもそも観に行きましたが小林聡美は出番少な目ですがこの変な分いににも馴染んでいる感じはさすがでございました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
役所広司
(矢沢拓郎)
無精ひげという印象のクライヴ・オーウェンで。


神々の深き欲望
DEEP DESIRE OF GODS
(1968)
3
2008年8月
南のクラゲ島、原始的な生活を送る島民の中に近親相姦の疑いをかけられている根吉は鎖でつながれて生活を送っていた。そんな中、東京から刈谷という技師が調査のためにクラゲ島にやって来て・・・
閉ざされた孤島で起きるグロテスクな人間ドラマ。
沖縄の青い海に眺めのいい景色と一見平和な感じを漂わせていますが海にいるナマコや巨大なヤドカリなどが随所で大写しになってこれはただ事ではないという雰囲気をかもし出していると思ったらやっぱり一癖も二癖もある内容でした。
島に台風で壊滅的な被害が起きた原因は三國連太郎とその妹が関係を持ったからだと言って妹は連れて行かれ三國連太郎は罰として巨大な岩を始末させられる羽目になるというところが
閉ざされた島でなおかつ信仰心の深い人々ならではの制裁がとても残酷でグロテスクな仕打ちだと感じました。(当然、三國連太郎一家は村八分)
まともそうな長男も白痴の長女と関係を持っているようで島の若い連中からバカにされたりしてやっぱりこの一家は一癖も二癖あります。東京から来た来た、北村和夫も最初は奇想天外な島に最初は辟易していましたが、白痴の娘に迫られてなんだか島の生活がよくなって帰りたくなくなってしまったり小さな島なのに次々と色々なことが起きます。
3時間近くの超大作で見応え十分どころかグロテスクな人間模様に観おわった後はぐったりと疲れてしまいますが、三國連太郎の重厚な演技のおかげでついつい見入ってしまいました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三國連太郎
(太根吉)
ロバート・カーライルあたりにお願いしたい。


鴨川ホルモー
(2009)
3
2009年5月
京都大学に入学した安倍は帰国子女の高村と一緒にいるところ「京大青竜会」というサークルの歓迎会に誘われる。そこで出会った早良という同級生に一目ぼれした安倍は奇妙なサークルに入部するのだが・・・
オニ語が炸裂するコメディ。
誘われなければ絶対に観ないタイプの映画だし、予告編で観たオニのCGをみてこれはダメだなと思って観てみたのですがこれが想像以上に面白かったです。出ている俳優は大学が舞台ということだけあってみんな若いのですが、みんなよかったです。次第に本性がが出てくるビッチな芦名星だけちょっと違うかなとも思ったのですが時間が経つとこれはこれでありだと思えてきました。
それに何といっても山田孝之と栗山千明と親友役の濱田岳がによかったです。
山田孝之は「クローズZERO」シリーズのキリッとした雰囲気とは一転、ダサめな大学生を好演。オニを操る時も若干腰が引けているところがいい。幅広い役が出来る山田孝之は貴重な存在だと思います。栗山千明もゲロンチョリーを目をひん剥いてやるところ素敵でした。山田孝之とのダブルゲロンチョリーも息が合っていて楽しいです。
濱田岳のダサいTシャツの下にランニングを着てさらにヤバイ着こなしというところも今どきベタ過ぎて逆に新鮮。話自体もベタさでしたが。
恋愛の甘酸っぱい決着はホルモーでというところも嫌いじゃないですが、もし続編があるのであれば今度は大学対抗戦をメインとした話がいいなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
(今回はアダルトバージョン)
山田孝之
(安倍明)
はじけることも出来るジョニー・デップで。
栗山千明
(楠木ふみ)
ダサい格好が似合うユマ・サーマンで。
濱田岳
(高村幸一)
ちょんまげとか好きそうなクエンティン・タランティーノで。
石田卓也
(芦屋満)
ジョシュ・ブローリンにお願いしたお。
芦名星
(早良京子)
ライバルはもちろんダリル・ハンナで。


かもめ食堂
ROUKALA LOKKI
(2005)
5
2006年3月
フィンランドのヘルシンキでサチエは「かもめ食堂」という食堂をオープンするが客はさっぱりだった。そんなサチエはある日書店でミドリという女性と出会い・・・
初日舞台挨拶の三人を見てそう感じてテンションも上がってます。
小林聡美、片桐はいり、もたいまさこといったらもうほとんどファミリーみたいなものだから安心して観ていられるし楽しかったぁ。それぞれキャラクターが違うんですけど小林聡美が片桐はいりともたいまさこと出会うシーンなど本当面白くってほとんど奇跡といっていいほど相性がいいんですよ。なにか大きな事件が起きるわけじゃなくとゆるーい内容が繰り広げられていく様はまさに「やっぱり猫が好き」といった感じです。映画っていうよりテレビを観ている感覚なんですけどやっぱり好きです。
店の始めての日本かぶれの客が小林聡美にガッチャマンの歌詞を尋ねるんですけど「誰だ 誰だ 誰だ」のところしか分からない。しかも頭の中でこのフレーズがリピートしている状態というのも笑えるのですがふらっと立ち寄った書店のカフェでムーミン通の片桐はいりがいて小林聡美が唐突に「あのぉ、ガッチャマンの歌知ってますか?」と尋ねると「えぇ知ってますよ。」なんていって歌い上げちゃうんですよ。
しかも「誰だ誰だ誰だ空のかなたに躍る影白い翼の(タンタン)ガッチャマン」としっかり相づちを入れることの忘れない小林聡美。フィンランドでガッチャマンの歌というアンバランスさがいっそう可笑しさを引き立てます。
片桐はいりはそんな日本かぶれの青年(トンミ・ヒルトネン)に漢字の名前が欲しいといわれて「豚身昼斗念」とつけてしまう。普通ここまで名前覚えちゃいないけど「豚身昼斗念」と衝撃の当て字をされちゃ嫌でも覚えてしまいますよ。
荷物が届かないもたいまさことの出会いもそりゃあ楽しくて店を覗く今にも怒り爆発しそうなおばさんが今日もまた来てるわ。なんていって振り返るといきなりもたいまさこが・・・という図がこれまた楽しいすぎる。
荷物がないもんだから服を買いに行くもたいまさこだけど買ってきた服がウンガロの偽物みたいな度派手な服なのにぶっ飛び、しかもその格好で波止場で「あたしの荷物届いたかしら?」と独特の恨めしい口調で携帯片手に電話しているから最高です。
濃い二人相手にしたら普通影が薄くなるところ小林聡美は堂々と主役をやりきっている。ドラマにもたびたび主役に抜擢されるけどいつも感心します。それは何かというと小林聡美という人は彼女のエッセイなんかを読んでいても分かるのですが自分の世界に人を引き込むことがとても上手い人なんだと確信しました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
小林聡美
(サチエ)
コメディやらせると抜群のマリサ・トメイで。
片桐はいり
(ミドリ)
不思議っぽさ全開のリサ・クドローで。
もたいまさこ
(マサコ)
ダイアン・キートンあたりにやってもらいたい。


からっ風野郎
AFRAID TO DIE
(1960)
3
2006年10月
刑務所から出所した朝比奈一家の二代目の武夫。しかしさっそくかつて大怪我をさせた相良に命を狙われ武夫は朝比奈一家の息のかかった映画館に身を隠すすが、そこで働く芳江という女に出会い親しくなるのだが・・・
三島由紀夫主演のやくざ映画で、設定も出所したての二代目ということなのでバイオレントな内容になるのかなと期待していたのですが命を狙われ逃げ回ってばかりいる少々情けない役で想像とちょっと違いました。敵対する組の親分も根上淳と増村作品でけっこう見かけるけどちょっとやくざというイメージと違うし三島由紀夫も根上淳の娘を誘拐して金を儲けようと企むまぁある意味やくざ映画にしては、いいやくざも悪いやくざもなくやっていることは平等なんですけどそれがかえって個人的な三島由紀夫のイメージとかけ離れてしまっていてうーんという感じです。
共演は情婦に水谷良重、若尾文子のお兄さんに川崎敬三、仲間に船越英二におじさんは志村喬と
オールスターキャストなのですが三島由紀夫の演技が荒削りすぎるのもダメだったのかな。ラストシーンはそれが逆にいいはくりょくに繋がりましたけど。
そんな中、偶然出会うのがお馴染み若尾文子なんですけど三島由紀夫に殴られようが蹴られようが若尾口調で「殴りなさいよ!」と負けてないところはさすがだなと思いました。
あと本編とは全然関係ないけど三島由紀夫の裸は日本人離れして体つきでびっくりしました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三島由紀夫
(朝比奈武夫)
体型はジェイソン・ステイサム級でした。
若尾文子
(小泉芳江)
殴られても負けそうにないスカーレット・ヨハンソンで。


借りぐらしのアリエッティ
THE BORROWERS
(2010)
3
2010年8月
病気療養のために田舎の屋敷にやってきた翔はある晩、小人のアリエッティと出会い二人は次第に親しくなるのだが・・・
ホリデーシーズンの定番スタジオジブリの最新作。
アメリカがディズニーなら日本はジブリという感じでこの映画も夏休みではないけれどちょっとの間の療養でやって来た田舎町でのひと夏の経験というベースは同じでしたが洋風なおとぎ話的な感じがあってけっこうよかったです。異なる世界の交流みたいなところがジブリらしくて。
基本的には悪者的なものが出てこないので安心して小人の世界観を堪能することが出来るのですが、あえて言うならアリエッティがマチ針をゲットしてスカートに剣のように刺したのだから、これをもっと有効活用したシーンがあっても良かったんじゃないかなと思いました。
声は志田未来と神木隆之介を予告で観た感じだと大丈夫かなと思ったのですが、この映画にしっくりきていました。三浦友和も竹下景子も悪くなかったのですが
なんと言っても樹木希林が最高にはまっていてよかったです。おいしい所全部持っていっていました。凶悪になりそうなキャラクターをコミカルに演じてそれを回避していてさすがだなと思いました。逆にダメだったのが大竹しのぶ。キャラクターと声が合っていなかったかな。何となく騒がしいオバサンという感じになっちゃって。このキャラクターこそ倍賞千恵子あたりがやった方が良かったんじゃないかなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
(今回はアニメなのでなし)


カルメン故郷に帰る
CARMEN COMES HOME

(1951)
4
2005年11月
家出をしたおきんは東京でリリィ・カルメンと名乗りストリッパーとして活躍していたが芸術家として友達を連れて浅間山のある田舎に帰るのだが・・・
ちょっと天然系というかマイペースのストリッパー二人が田舎町で一騒動起こして帰っていく展開か「ロミーとミッシェルの場合」みたいなノリの映画でこれが日本初のカラー映画だったとは恐れ入ります。しかも木下恵介監督に主演が高峰秀子とか笠智衆やら佐田啓二とイメージ的にはすごい人ばかり出ているのにこの軽いコメディ感覚がまた驚きました。
高峰秀子はさすがにオペラの先生から発声法を習っていただけあって美空ひばり系の良く通る歌声で前々から観たいと思っていた甲斐がありました。東京から帰ってきたストリッパーなので歌もブギっぽいモダンでリズミカルな曲で歌って踊る様が最高ですごく発色のよい映像とマッチして楽しかったです。
歌と言えば昔カルメンが学生だった頃に憧れていた音楽の春雄先生(佐野周二)が戦争のせいで目が見えなくなってしまったけれど自作の「故郷」という曲を運動会で披露するのですがこれが鍵盤の黒いところ(半音)だけで作曲しているんじゃか?ってくらい暗い曲で運動会なのにすごくテンション下がります。しかも演奏中カルメンのストリッパー仲間のマヤ朱美のスカートが落ちてパンツ丸見えで運動会がめちゃくちゃになるわ二人は喧嘩するわ春雄先生は怒って帰るわでこんな運動会絶対嫌です。
で当然二人は仲直りしてイジイジしていてもしょうがないからストリップやろうかって展開になって金儲けのことしか頭にない村の悪者、丸十に言われてやろうとするのですが父親と校長先生の笠智衆は大反対で丸十を止めにいくんですけど、
丸十にキレタ笠智衆が微妙によろめきながら一本背負いをしちゃってこれは最高です。
この映画普通でも面白いのに初のカラーと高峰秀子の歌声と笠智衆の一本背負いと三大特典つきで得した気分です。
続編「カルメン純情す」というのもあるらしいのでぜひこっちも観てみたいなぁ。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高峰秀子
(リリイ・カルメン/青山きん)
自分に自信がたっぷりあって天然キャラをやらせたら天下一のリサ・クドローで。


華麗なる一族
(1974)
5
2004年2月
関西ではその名を知らぬものはなしといわれる万俵財閥。その主、万俵大介は自ら頭取を勤める阪神銀行は現在業界第10位。業界の上位を目指す大介は自分の子供を犠牲にしながらも徐々に勢力を拡大していくがその裏では愛人の高須相子による手腕が大きかった。
しかし長男の鉄平の勤める阪神特殊鋼で大事故が起こったことを境に万俵家の絆は悪化していき・・・
上映時間なんと約4時間という超大作。それなのに全く退屈せずに最後まで一気に観ることができたのはもう出演者が半端じゃないくらい華麗で、内容はもうこれ以上ないってくらいの腹黒い策略に策略のオンパレードだからでしょうか。実際の財界や銀行の合併なんかはほんとにほんの一握りの権力者のご機嫌で決まってしまうことがよーくわかりましたよ。
佐分利信と京マチ子の熟年ラブシーンは正直見たくなかったけど、京マチ子のすごいこと。表向きは家庭教師と執事で実際には大介の愛人だけどもうほとんど女帝に域に達していてすごい貫禄でした。それとは対照的な月丘夢路の何も言えない臆病な妻も印象的。最初は京マチ子にやられっぱなしの月丘夢路が最後にぎゃふんと言わせる一言が心憎かった。やはりこの手の作品は地味で真面目な女が最後に勝つのです。
物語は長男の仲代達矢の高炉建設とその資金を出す出さない親子の駆け引きとそれを取り巻く政治家や銀行のお偉いさんを中心に展開していくわけですけど、仲代達矢の行動が報われないのと彼の眼差しが切なくって心の中では仲代達矢を完全に応援モード。そんな中にあらわれるのが、鉄平に好意的なほかの銀行の頭取役の二谷英明だ。こんな親身になってくれる人は親でもいないってくらいいい人。こんな二谷英明も罠にかかってしまうんですよね。だんだん心底憎らしくなってくる万俵大介なのです。ちなみに妻役はちょい役で山本陽子という贅沢ぶりでした。
長女役に香川京子、次女役に酒井和歌子ときていて次男役がいきなり顔も眉毛も濃い目黒祐樹という大胆な配役にびっくりしつつも、その妻
中山麻理のおしゃれなこと、エルメスかどこかの高級ブランドのスカーフか?と思わせるようなスカートもばっちり着こなし、バービー人形みたいだった。現代にこんな人がいたら間違いなく惚れるなぁ。とこの二人だけが妙にゴージャスだった感じがします。
酒井和歌子の恋人役が北大路欣也なんだけどこんな大物達の中に入っちゃうと当時の北大路欣也も作業着を着させられてまだまだひよっこだったんだなぁってよくわかる。
ひいきの田宮二郎はちょい役だろうと思っていたらこれが大蔵省の官僚役でかなりの重要な役でうれしかった。しかも万俵に情報をながしつつ影では大蔵大臣に取り入って政界進出をもくろむ一番の腹黒い役で最後は田宮二郎ネタバレ→
一人勝ちを匂わせて←劇終了って感じが個人的には大満足なのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
佐分利信
(万俵大介)
金と権力といったらこの人、ジーン・ハックマンでしょう。
月丘夢路
(万俵寧子)
気弱な嫁はおまかせって感じのシシー・スペイセクで。
仲代達矢
(万俵鉄平)
切ない雰囲気のリーアム・ニーソンで。
京マチ子
(高須相子)
あの肉体は「ブルーベルベット」のイザベラ・ロッセリーニを思い起こさせるのです。
田宮二郎
(美馬中)
企みの役人はおまかせのゲイリー・シニーズあたりで。


川のある下町の話
THE STORY OF A RIVER DOWNTOWN
(1955)
3
2009年5月
インターンの栗田はある日、川で溺れた少年を助けその姉の吉田ふさ子という女性を知り合う。ふさ子は姉と弟の貧しい二人暮しでやがて弟が川で溺れたことが原因で肺炎になってしあまい・・・
根上淳と有馬稲子の純愛?もの。
一昔前のトレンディドラマをNHKでやったという感じでしょうか。
有馬稲子、貧しいだけじゃなく次から次と不幸の連続で「おしん」も真っ青という感じです。結核になってしまった弟が死んでしまうというまさかの展開。そして有馬稲子が住んでいる貧しい人の集落も病院建設のためにその土地を立ち退かなくてはならなくて、パチンコ屋に住み込みで働きに行ったら店の男に襲われそうになったりと踏んだり蹴ったりです。
根上淳はそんな有馬稲子に一目惚れするのですが根上淳には病院の院長?の娘に惚れられて何れは新しい病院の副院長に内定していて、さらには同期のインターンの山本富士子にも惚れられているというもてっぷり。そんな根上淳を見てあたしなんかいない方がいいわといわんばかりの勢いで隣町でホステスみたいな仕事に就くのですが、当然馴染めなかったのですがそこのボーイがいい人でいい感じになったのもつかの間、米兵に絡まれたところを助けに入ったボーイはあろうことか殴り殺されるというどこまで不幸なんだという展開が不憫でたまりません。
タイトルだけで見ると下町の人情ものかと思いきや、そんなこんなでついには精神を崩壊してしまう有馬稲子という展開にすっかり度肝を抜かれました。
こういう映画だと山本富士子は完全にライバルの恋路を邪魔するビッチな役になりそうなのですが、健全な映画なので有馬稲子のライバルでも変な横槍を入れてこないところもよかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
根上淳
(栗田義三)
真面目な役が多い気がするトビー・マグワイヤで。
有馬稲子
(吉田ふさ子)
クレア・デーンズにお願いしたい。
山本富士子
(井上民子)
グレイス・アナトミーにも出ているキャサリン・ヘイグルで。


川の底からこんにちは
(2009)
4
2010年5月
東京でOLをしている佐和子は全てに対して妥協していたがある日、実家の父が倒れ家業のしじみ工場を継ぐことになるのだが・・・
彼女にキレたら向かうところ敵なしといった感じの日本映画界の希望の星、満島ひかりのネガティブでポジティブなコメディ。
笑いましたよ。今どきの邦画で笑ったの初めてなんじゃないでしょうか。満島ひかりは期待を裏切らない女優ですよはっきり言って。
序盤のOL時代の格好が似合っていないし台詞のリズムもちょっとずれていて大丈夫かなこれ。と思ったのですがそんな心配後無用で次から次へと出てくる個性的名キャラクターに圧倒されて色々な心配をしている暇なんてありません。勢いで押しているのですがかと言って勢いだけじゃないところもよかったです。
満島ひかりの「中の下だからしょうがないんです」発言とか子持ちバツイチの彼氏の遠藤雅の人間的に最低っぷりとか可愛げのない女の子とか全てのシーンで突っ込みどころ満載で何を書いたらいいか困ってしまうのですが今回はやっぱりしじみ工場で働くおばさんたちに焦点を当てたいと思います。
おばさんらしい意地の悪さ全開で、満島ひかりのことが気に入らないし話し声が小さかっただけで「声が小さくて聞こえません。」とおばさんのボス。おばさんボスの執拗な嫌味は続きついには女狐呼ばわりされて大爆笑。そんなおばさんボスとも最終的に和解して新しい社歌を大熱唱。このおばさんなぜかしじみ工場で一緒に働く月島さんのことだけはかばうところなんかも面白かったです。
あと、おばさんおじさんたちのラブシーンが何故かふんだんに盛り込まれていて、えぇーとなるのですけどこれも面白かったです。
欲を言わせてもらえば、満島ひかりの持ち味感情むき出しシーンはもうちょっと早めに爆発してもらってもよかったかなぁと思いました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
満島ひかり
(木村佐和子)
中の下どころではなくなってしまったリンジー・ローハンで。
遠藤雅
(新井健一)
しょーもない男の役が多いヴィンス・ヴォーンで。


感染
INFECTION

(2004)
3
2006年7月
経営の傾いた古びた病院である夜全身火傷の患者の様態が急変するが医療事故が起き医師の秋葉たちはこれを隠蔽する。そんな中、内臓が溶け出す奇病の患者が運ばれてきて・・・
深夜の病院で医療事故を隠蔽した医師や看護婦達を襲う未知のウイルスの恐怖を描いたJホラーシアターの第一弾。
大して期待していなかったせいか最後はまぁこんなもんかという終わり方だったんですけど、中盤までは結構面白かったです。
人でも医療器具すら足りない逼迫した病院で医療事故に関わった医師たちに次々に異変が起きる内容なのですがネタバレ→
霊とか悪霊とかじゃなくて不安や罪悪感を恐怖に見立てているところがよかったです。
南果歩は規則重視の無機質な鬼婦長でやられかたが煮沸消毒する熱湯に腕ごと突っ込んで大絶叫するやら意地悪ナースの真木よう子のこれでもかと新人ナースを口撃したりして「呪怨」のハリウッド版では献身的な介護ボランティアの役だったり「パッチギ!」のスケバンと
役柄の幅が広くて真木よう子はやっぱりいいですね。絵に描いたような真面目キャラなんだけど負のオーラ全開という感じも木村多江の十八番出ましたという感じでこの映画ナースたちがよかったです。
それに病院を徘徊する痴呆症の老女草村礼子がベッドでジャンプしたり死体を隠している病室に突然現れたりしてある意味一番怖かったかもしれません。
モロ師岡の後輩いびりはあんまり本編と関係ないのと新人ナースの星野真里は演技が微妙で一人浮いていたのでここのところがなければもうちょっと面白かったんじゃないかなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
佐藤浩市
(秋葉清一)
医者といえばジョージ・クルーニー
高嶋政伸
(魚住晴哉)
微妙に情けないキャラなところがクライヴ・オーウェン的で。
南果歩
(塩崎君江)
鬼婦長が似合いそうなジェシカ・ラングで。
木村多江
(立花七恵)
負のオーラを感じるっジェニファー・ジェーソン・リーで。


関東緋桜一家
(1972)
4
2006年2月
純子引退記念映画ということで出演している人達がものすごく豪華です。いつもの面子に大御所の嵐寛寿郎と片岡千恵蔵まで加わり藤純子の組の手下に菅原文太やら伊吹吾郎もいるんですよ。おまけに木暮実千代まででていたりして・・・これは悪者がいつもの天知敏と出てきた瞬間にこいつは悪い奴と思わせるビジュアルの遠藤辰雄でどんなにあくどいことをやらかしてもそりゃあやられますよ。って感じのメンバーで内容云々というより藤純子の引退のためにこれだけのメンバーが集まったというところを観るだけでも価値があります。一言で表現すればみんなが友情出演みたいな感じなんです。
でもちろん一人歩きして夜道を襲われるシーンもあるのですが今回襲われるのが片岡千恵蔵であの千恵蔵御大が殺されちゃうのか?と一瞬焦りましたが凄腕の若山富三郎が身代わりになってくれました。若山富三郎も大物だけどやっぱり超大物の片岡千恵蔵はさすがに殺せなかったんでしょうかね?
健さんの任侠ものにちょくちょく顔を出している藤山寛美は今回悪いやくざ鬼鉄に賭博で金どころか旅館まで取り上げられちゃうマヌケなおぼっちゃん役なんですけど相変わらず面白くってこれが本物の芸人なんだなぁと思いました。
で最後はもちろん健さん、鶴田浩二に加えて緋牡丹博徒」なみの藤純子が大暴れして一見落着して健さんと旅立っていくのですが「皆様お世話になりました。」みたいなことを組の者に言うのと同時にスクリーンに向かって観客にも言う終わり方は純子引退記念映画というだけあってなんだか感慨深いものがありました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
(「昭和残侠伝 血染の唐獅子」とほぼ同じキャストなので今回はなし)


雁の寺
TEMPLE OF THE WILD GEESE
(1962)
4
2008年11月
南嶽の妾だった里子は遺言で僧侶の慈海の妾となったがそこには修行中の少年僧の慈念がいた。慈海の慈念に対する厳しい扱いを目にした里子は慈念を気づかうのだが・・・
由緒正しき寺で繰り広げられる官能サスペンス。
若尾文子とエロ坊主の三島雅夫が年甲斐もなくいちゃいちゃするコメディなのかなぁと思っていたらシリアスなサスペンスだったのですね。
若尾文子の色っぽい役どころはもちろん
三島雅夫の圧顔な坊さんがものすごく理不尽ではまっていました。普通にいい人の役もやりますけどこういうちょっとダメな人間をやった方が存在感ありるなと思いました。妾の若尾文子に対する甘ったるいでれでれした態度と修行中の小坊主に対する態度が正反対過ぎます。小坊主か奴隷か召使くらいにしか思っていないらしく、肥溜めの汲み取りもいちゃもん付けられるし、もらったマスカットをせっかくだからと若尾文子が上げようとすると「そんなものやらんでいい。これも修行のうちや。」とか言って絶対に思いやりのあるところを見せないでこういう理不尽なことする人社会に出ると意外に沢山いるなぁと思うこと間違いなし。
小坊主役の子も捨て子で育ててくれた家も貧しいので口減らしのためにこの道に入った過去があるので何も文句言わず働いているところがいじらしいと思っていたらものすごくうっぷんが溜まっていてネタバレ→
しれっとした顔で三島雅夫を殺して完全犯罪を成し遂げるところはちょっとハラハラして応援してしまう気持ち半分ちょっと怖いものがありました。
特異なシチュエーションでのサスペンスでしたが配役が見事にはまっていたのでとても緊張感溢れるないように仕上がっていてよかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(桐原里子)
無駄に色っぽい感じのするエマニュエル・ベアールで。
三島雅夫
(北見慈海)
理不尽なことをしそうな顔つきのジョン・ヴォイドで。
高見国一
(堀之内慈念)
若手注目株のジム・スタージェスで。


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