黄色い風土 (1961) |
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2005年11月 | |
週刊誌の記者若宮は取材のため列車に乗って熱海に向かうがその車内で訳ありそうな新婚夫婦と隣の席が偶然一緒だったカトレアの匂いのする女が印象に残りつつその日はホテルに泊まる。翌日偶然一緒のホテルに泊まった新婚夫婦の夫が自殺をし妻は行方不明となり若宮は独自に取材を始めるが現場には必ずカトレアの女の影がちらつき・・・ 原作松本清張ってことで普通じゃないところもあるけど石井輝男監督作品にしてはすごーくまともなんでちょっと物足りなさを感じてしまいました。石井輝男作品に対してちょっと感覚がマヒしてきているようでこんな自分がやばいです。 内容は巻き込まれ型サスペンスでどんどん真相に近づくにつれ本人も窮地に追い込まれる定番の内容で途中関係者が次々と殺されていくところは火曜サスペンス劇場ちっくなところはあるんですが、最終的に偽ドル札作りに行き着くところが微妙にスケールがでかくて後半につれ面白くなっていくところはさすがです。 最初の方ボーっと観ていたのがけなかったのですが最後あんた誰でしたっけ?というような奴が黒幕でそいつに自衛隊の射撃演習所に連れて行かれて砲弾の嵐の中命からがら黒幕を倒しつつ逃げたりミステリアスなカトレアの女佐久間良子なんて確か一言も台詞なしで通すところがすごく斬新でした。 あと週刊誌の編集長役が丹波哲郎なんですけどすっげーいい加減なところがやっぱりいちいちおかしかったです。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
鶴田浩二 (若宮四郎) |
ガブリエル・バーンは週刊誌の記者役とか似合いそう。 |
佐久間良子 (カトレアの女) |
シャーリーズ・セロンあたりにミステリアスに演じて欲しい。 |
飢餓海峡 A FUGITIVE FROM THE PAST (1964) |
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2004年10月 | |
昭和29年、北海道の質屋で一家が惨殺され放火される事件があった。その犯人とともに行動をしていた犬飼は台風直撃で混乱する道内から脱出するのだが犯人に襲われた犬飼は彼らを殺害し、青森へとたどり着くのだった。その時出会った貧しい芸者、杉戸八重に犬飼は手にした大金を置いて去っていくのだった。 それから10年後、樽見と名前を変えた犬飼は新聞に載るような立派な男になっていたがその記事を見た八重は感謝の気持ちを伝えに樽見を訪ねるのだが・・・ 戦後の貧困と混乱から一人の男が巻き込まれてしまった重苦しいサスペンス。観た感じだと、犬飼が青森に逃亡して八重に金を渡すまでの一部。(その間、刑事の弓坂は犬飼の存在を知り捜査をする)と犬飼からもらった金で借金を返し東京で生活を始め新聞で樽見を見つけるまでの二部。そして樽見と警察の行き詰まる三部の計三部構成になっているように見受けられました。 オープニングの迫力のあるおそらく本物であろう台風シーンや吹き荒れる強風のなかを逃げる犬飼たちなど映像的にも序盤からみせてくれるのだけど、やっぱり俄然面白くなってくるのは樽見を新聞で見つけた八重が樽見が犬飼なのどうかはっきりしていないけどいても立ってもいられなくなって樽見に会いに行くあたりからずっとサスペンス色が濃くなって見ごたえも十分でした。3時間という上映時間はちょっと長すぎて個人的にはもちょっとコンパクトだったら完璧だったんですけど・・・ 八重は純粋に昔受けた恩に一目合ってお礼を言いたかっただけなのだけど、成功した樽見は昔のことは消したい過去で樽見は戦後のどさくさにまぎれて身寄りのない女と結婚したりして過去のことは分からないように暮らしてきたのだ。だから突然目の前に現れた八重は邪魔なのだ。決して八重は揺るような事をする女じゃないことを頭の中で解っていても・・・ この辺の二人の考え方の違いっていうのかな?なんか分かるなぁ。振り返りたくない過去が表ざたになりそうな焦り、それが貧困だったという過去も背負っていたらなおさら・・・と樽見にすごく共感できました。 犬飼をずっと追跡していたくたびれた刑事役の伴淳三郎は喜劇役者だったんですけどそうは見えない役作りで感心したんですけど脚本家鈴木尚之氏のエピソードによるとあまりのプレッシャーで台詞が言えたと思ったら演技ができず、演技が出来たと思ったら台詞が言えず途中で降板したいと言われたそうですけどなんとか説得して撮り上げたそうです。スクリーンから見てはとれませんでしたけど色々と苦労があったんだなぁと思いました。 あとこの映画重要アイテムの「爪」は内田吐夢監督のものなんだそうです。(鈴木尚之トークショーにて) |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
三國連太郎 (犬飼多吉/樽見京一郎) |
貧しい時代の汚い役作りもばっちりな予感のラッセル・クロウで。 |
左幸子 (杉戸八重) |
サマンサ・モートンで。この手の作品の女優はあっさり系がいいのだ。 |
伴淳三郎 (弓坂吉太郎) |
ザ・追跡者のトミー・リー・ジョーンズで。 |
奇巌城の冒険 THE ADVENTURES OF TAKLAMAKAN (1966) | |
2009年6月 | |
大角は奴隷として売られそうなところを日本人僧侶の円済に助けられ、大角は円済と共に仏舎利を求めて旅に出ることとなる。やがて二人は誰も信用していない王の治める国にたどり着くのだが・・・ 「大盗賊」のような三船敏郎主演の無国籍冒険活劇。 というかほぼ「大盗賊」みたいな感じですが今回味方がなんと「大盗賊」では黒幕だった中丸忠雄です。今回は三蔵法師みたいな格好をしておしとやかな言葉遣いで三船敏郎と旅をするというらしくないキャラクターがおかしくてしかたがありません。 仏舎利とは釈迦の骨でそれがないと寺を作れないということで中丸忠雄ははるばる日本から何年も前からやって来ていているのですが意外とあっさり仏舎利が見つかってそれはさておき、三船敏郎が悪政の国にたどり着き何とかしようと三船敏郎らしい正義感丸出しの内容となっています。 そんな国を治める暴君は白塗り気味の三橋達也なのですが本当はいい人なんです。過去に何度か身内に裏切られたから人を信じられなくなっただけなんです。という設定で三橋達也ファンも安心の設定。そんな王様を利用してて国を乗っ取ろうとしているのが平田昭彦。「大盗賊」で中丸忠雄の役どころなのですがこれがぴったり。そして相変わらず上手いこと口車に乗せられて悪行を繰り返すのは佐藤允という定番スタイル。 と何だかんだやっているうちに三船敏郎が捕まって死刑になりそうになるのですが、仏舎利を日本に届けなくてはならないので体力のない中丸忠雄に代わって三船敏郎が仏舎利を届けに行くことに。その代わり戻ってこなかったら中丸忠雄が死刑になると言う「走れメロス」状態な展開に仰天。そして仏舎利を弟に渡すのですがこれが黒沢年男という三船敏郎と兄弟だなんて筋肉バカさ加減が最高で妙に説得力がありました。 「大盗賊」より後に作られたので当然三船敏郎が年を取っていて時折、武田鉄矢に見えるのがたまに瑕なのですがB級感溢れてなかなか面白かったのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
三船敏郎 (大角) | ジョージ・クルーニー暴れてもらいたい。 |
中丸忠雄 (円済) | ちょっと頼りない感じのジェームズ・マカヴォイあたりで。 |
三橋達也 (王) | アーロン・エッカートにお願いしたい。 |
平田昭彦 (宰相) | 結構悪い顔をしているレイフ・ファインズで。 |
危険な女 (1959) | |
2009年4月 | |
地方紙に小説を連載している杉本はある日、自分の小説を読むためだけに地方紙を買っている女性を見かける。杉本は新聞社の篤子に頼み込み女性の素性を突き止めさせ芳子というバーで働く女と分かるのだがその後、芳子は新聞を買わなくなってしまい・・・ 松本清張の「地方紙を買う女」を短編で映画化。 渡辺美佐子が影のあるミステリアスなホステスがはまっていてよかったです。1時間以内の短い作品ですが短い分サクサクとテンポ欲話が進んでいくところがこういった短編のよいところだと思います。 渡辺美佐子の周りで起きた一組のカップルの自殺。そして次第に明らかになっていく渡辺美佐子の暗い過去。渡辺美佐子の不幸話を観ていると不憫でしょうがなくなるのですが、渡辺美佐子を陥れた大滝秀治がものすごく性悪で殴ってやろうかと思うのですが実はこの性悪な大滝秀治が自殺したことになっていて、作家の芦田伸介はちょっと惚れているけれどもしや渡辺美佐子が犯人なのでは?と疑い始め新聞社の女の子に探偵まがいのことをさせて渡辺美佐子の過去を次々と入手して提供するのですが、並みの探偵より色々な調査結果を報告してくれてとても優秀な娘さんです。芦田伸介を好きというところは何だか納得いかないのですが。 芦田伸介もどちらかというと悪人顔なので劇中の作家という役どころより大滝秀治の役のほうが似合っているのでこの二人が思い切って逆の設定だったらもう少し面白かったのではないかと思います。 とはいっても松本清張らしい話の流れは面白く、ラストの渡辺美佐子の持ってきたサンドイッチに毒があるかもという疑心暗鬼な展開はスリリングでよかったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
渡辺美佐子 (潮田芳子) | ミステリアスな雰囲気のあるエマニュエル・ベアールで。 |
芦田伸介 (杉本隆吉) | こういう役はクライヴ・オーウェンがよく似合う。 |
傷だらけの山河 THE TYCOON (1964) | |
2007年11月 | |
実業家の有馬勝平の事業と女に貪欲な姿を描いた骨太ドラマ。 「華麗なる一族」の原点とも言われているこの作品、野心的な山村聡の冷徹な行動や人間関係も複雑で見応えがありました。 「華麗なる一族」は万俵大介を中心に本当に血の通った一族の愛憎劇が繰り広げられていましたがこの「傷だらけの山河」では本妻のほかに2人の愛人家族が登場して一人目の愛人の息子は父親の会社に入り金儲けを企むけれどそれを見抜かれ見放されライバル会社に入社サラには認知裁判を起こす過激っぷり。もう一人の愛人の息子は父親と関わりたくないので就職したら母親を引き取ろうとするも母親は首を立てに振らず悩み続ける息子。本妻の息子は父親の仕事を手伝うも神経衰弱になって自殺未遂を繰り返すといった具合にそれぞれの息子や家族が苦悩し父親に少なからずとも反抗しようともがく姿が印象的です。 父親の山村聡が温厚そうな顔をして会社内で仕事の重圧で自殺をした社員に対しての冷たい態度や神経衰弱になった息子に対して使えないからといってあからさまに毛嫌いする姿などとにかく冷徹。そのくせ若い子に対しては鼻の下伸ばして甘えるもんだから女の人が観たらこれだから男って奴は・・・と思うに違いありません。 そして若尾文子も出ています。役どころとしては売れない絵描きの川崎敬三(これがしょうもない男)の内縁の妻といった感じで若尾文子は会社で経理兼お茶くみといった典型的なOLなのですが、たまたまお茶を出しに行った時に貧乏臭いけれど美人の若尾文子を見初めた山村聡は早速愛人にするのですが愛人になったとたんいきなり毛皮を身にまとい高飛車の愛人に変身する若尾文子には笑わせてもらいました。若尾文子の出ているシーンだけ妙にコメディタッチでこんな重厚な話でもっと感想になるべきところは沢山あってタイトルにもちゃんと意味があるのに結局は若尾文子のことばかり。やっぱり若尾文子は最高です。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
山村聡 (有馬勝平) | 温厚そうな顔をしてたまに怖い役をやるモーガン・フリーマンで。 |
貴族の階段 (1959) | |
2009年7月 | |
一言では説明しにくいのですが日本映画専門チャンネルの解説にもある通り、二・二六事件を貴族の令嬢の視点で描いた大映ドラマ。 「貴族の階段」というタイトルから軽くコメディ調のドラマ化と思ったら殺伐としていて2月25日がどうのと言っているのでもしかしたらと思ったら二・二六事件が思い切り絡んできていて衝撃的。 主人公の氷見子役をやっている金田一敦子という人は知らなかったのですがいかにもお嬢様というセレブ感と世間離れしている感じは雰囲気にぴったり合っていました。この娘さんというか女学生たちがみんなセレブなので言葉使いが「〜でございます。」とか年上の叶順子のことをお姉さまとかセレブ口調なので聴いていて疲れて眠くなるなと思っていたら真面目な本郷功次郎が父親の森雅之を殺そうとする二・二六事件へのカウントダウンに入ることから面白くなってくるのですが、その前にもほぼ息子と婚約者同然の叶順子を森雅之が襲うという衝撃的なシーンがあって本郷功次郎というハイクラスな恋人役なのに結局はこういう目に遭う叶順子のポジション。相変わらず可哀想です。 兄の父親暗殺に感づいた金田一敦子は何にも感づいていないふりをして二・二六事件前夜に戻ってきた本郷功次郎の酒にたっぷり睡眠薬を入れ眠らせるという大胆な行動とか世間離れしていて感心しました。 ものすごく変わった歴史ものとして観ると斬新だし、後半も一気に面白くなるのですが、前半のテンポの悪さというか分かりにくささえなければもっと良かったのになと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
金田一敦子 (西の丸氷見子) | 大胆な行動をしそうなクリスティン・ベルで。 |
叶順子 (猛田節子) | 幸せな役をあまり見たことがないブリタニー・マーフィーあたりで。 |
森雅之 (西の丸秀彦) | ダニエル・デイ=ルイスにお願いしたい。 |
本郷功次郎 (西の丸義人) | 真面目なルックスのブランドン・ラウスで。(「スーパーマン」の人。) |
鬼畜 THE DEMON (1978) | |
2010年7月 | |
竹下宗吉とその妻のお梅は印刷屋で生計を立てていたがある日突然、宗吉の愛人菊代がやって来て隠し子3人をおいて行方をくらませてしまう。お梅は子供たちを怒鳴り散らし、やがて赤ん坊が弱り始めて・・・ 松本清張原作の有名なサスペンス。 前から観たいと思っていたのをようやく観ました。 オープニングの岩下志麻VS小川真由美の本妻と愛人の戦いがいきなりヒートアップして画面にくぎづけです。二人ともなめたらあかんぜよ的な雰囲気をかもし出しているので勝負的には互角だなと思います。 てっきり緒形拳が冷酷に次々と愛人の子供を殺していく話なのかと思っていたら、緒方拳は優柔不断で情けない男でむしろ岩下志麻の方が鬼畜というタイトルにぴったりな振る舞い。1歳くらいの末っ子が泣き叫ぶ中無理やりご飯を素手で口に押し込んでいて迫力ありすぎてビックリします。 と岩下志麻の激情型の性格と控えめな性格の緒方拳の対比も面白いのですが、松本清張らしい不幸の連鎖で犯罪を犯してしまうという設定がやっぱり冴え渡っているなと感じました。(印刷やが火事を出してしまったり、子供が欲しくても出来なかった岩下志麻の目の前に7年来の愛人が出てきてショックだったり・・・) クライマックス長男を殺すため旅に出かけた緒拳形でしたがやっぱり自分の息子なのか踏ん切りもつかず、酔った勢いで息子に話す緒形拳の悲しい生い立ち。ここのところやちょっとしたところから警察に捕まったり、崖もあったりとも松本清張度が高く、この辺の世界観が緒形拳と相性が良くて色々賞をとったということもうなずけます。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
岩下志麻 (お梅) | ニコール・キッドマンは意外とこういう役もいけそうな気がします。 |
緒形拳 (竹下宗吉) | クライヴ・オ-ウェンがやったらはまりそうなキャラクターです。 |
小川真由美 (菊代) | ペネロペ・クルスあたりにお願いしたい。 |
鬼畜大宴会 KICHIKU (1997) | |
2007年10月 | |
学生運動全盛期、ある組織のカリスマ的なリーダーが獄中で自殺を図り、残ったメンバーは実権を握っていたリーダー恋人雅美の常軌を逸した行動にやがて破滅へと向かっていく・・・ 公開当時、過激な暴力描写が話題になったインディペンデント作品。 リンチのシーンはすごいと聞いていてまぁそれは噂どおりすごかったのですが、ただそれだけって感じの内容で中身がなかったです。個人的には学生運動の過激派グループの内ゲバがしっかり描かれていてその上でリンチのシーンがあるのかと思っていたら内ゲバどころか学生運動のシーンすらなかったのでがっかりしました。 獄中にいるカリスマ的なリーダーは尊敬するけど実権を握っているのがその恋人というのが気に入らない年長のメンバーが追い出されてそいつが警察に垂れ込んだことがきっかけで雅美主導によるリンチが始まり何故か関係ないメンバーもリンチされて次々と死んでいくわけですが、雅美は常軌を逸脱していて狂ってました。 そんな雅美は最後白塗りメイクで何か寺山修司っぽいところも何となく好みじゃなかったです。 ビジュアルはは学生運動の雰囲気が出ていたのでもうちょっと内容があったらよかったのになぁと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
三上純未子 (雅美) | ブチギレ具合が「デス・プルーフ」のロザリオ・ドーソンという感じ。 |
君は海を見たか (1971) | |
2008年10月 | |
妻に先立たれた増子一郎は仕事が多忙で息子の正一の面倒を妹に任せきりの生活を送っていたが、ある日体調不良を訴えた正一は不治の病で余命三ヶ月と知り・・・ 天知茂が不治の病に冒された息子と向き合うドラマ。 割と後期の天知茂作品だと思うのですが70年代に入るとさすがに晩年という顔つきになっていました。 そんなことはさておき、仕事だけで子供のことなど二の次どころか三の次みたいな父親が突然自分の子供が余命三ヶ月と知らされて父親らしいことをしてやろうという涙なくしては観ることが出来ない、24時間テレビでやるような内容なのですが、天知茂のこういう役が斬新過ぎて泣いている場合ではないという状態の不思議な映画でした。 前半、息子に対しての非情さは天知茂らしいです。子育てを妹にまかせっきりで、体調不良を訴えた息子の検査結果が出ているっていうのに仕事を優先するような男なんです。美人の再婚約者が会社まで迎えに行って無理やり連れてきて病気発覚。みたいな完全に父親失格な感じの展開が一変して今まで父親らしいことをしたことないか奇跡を信じつつもできるだけ息子のそばにいてやろうと今抱えているプロジェクトを辞めてずっと家にいて釣に行ったり旅行に行ったりと恐ろしく家庭的過ぎる姿はすこし不自然で天知茂はやっぱり新東宝系の怪しい作品で悪役7に対して主役3くらいの割合で出ていた頃が一番いいなぁと思うのでした。 原作と脚本が倉本聰なのでヘビーな話でテレビシリーズは平幹二郎版とショーケン版があるようで平幹二郎版は本当にシリアスそうなのでちょっと観てみたい気がします。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
天知茂 (増子一郎) | ショーン・ペンあたりがはまりそうな気がします。 |
ギャング対Gメン GANG VS. G-MEN (1962) | |
2008年1月 | |
警察は暴力団の辰村が経営する三立興業にGメンを送り込むが次々と殺されてしまう。しかし確証がないため元やくざの東島に三立興業に接触するよう依頼をし東島は渋々了承し仲間を集めて辰村に近づくのだが・・・ かつて暗黒街にいた鶴田浩二と暗黒街のボス丹波哲郎が最終的に対決するアクションサスペンス。 面白いとは思っていましたが想像以上によかったです。元やくざがやくざに立ち向かうという内容ですが目には目をという感じで鶴田浩二ははアウトローを仲間に引き入れていれて捜査を開始するというところが面白く仲間になる奴らが一癖も二癖もあることろが個性的でいいですね。 車泥棒は運転担当、キレやすい刑事も仲間に加わったり忘れちゃならない鍵開けの名人ときて、腹違いの弟、千葉真一が無理やり仲間に加わったと思ったら兄が死んだのは鶴田浩二のせいと逆恨みする梅宮辰夫もなぜか仲間に加わったりして意外と和気あいあいというところも観ていて楽しいです。それにしても60年代の梅宮辰夫は不良番長のときとよりもスマートで劇団ひとりが二枚目になった感じで見ていて斬新でした。 ネタバレ→丹波哲郎のところに潜入していた千葉真一が正体がばれて殺されるという切ないシーンからクライマックスに流れ込むのですが仲間の裏切りがあったり次々とやられていったりで←娯楽作品なのに後半はちょっぴり切なかったです。 丹波哲郎は理想的な悪党の親分という感じで自分の親は殺すし逃げようとした幹部も容赦なく抹殺というところが非情でいいですね。最後の最後まで自らの手を汚さないところもボスっぽくてよかったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
鶴田浩二 (東島量次) | 見た目に迫力あるラッセル・クロウで。 |
千葉真一 (梶修) | やんちゃだねという感じのクリス・エヴァンスで。 |
丹波哲郎 (辰村重吾) | こういう役はショーン・ビーンがぴったりですね。 |
吸血蛾 VAMPIRE MOTH (1956) | |
2007年3月 | |
デザイナーの浅茅文代のもとに狼男のような口をした男から怪しげな小包を助手の寺越が受け取る。翌日、文代になりすましたモデルが殺されてしまい・・・ 池部良の金田一耕介という発想、今までになハードボイルドな金田一は金田一という感じは全くしないのですが、なんとも言えず斬新で新鮮でした。 狼のような牙を持つ謎の犯人と次々と殺されていくモデル達という内容は金田一っぽい感じはするのですが監督が中川信夫なので怪奇色が強いけれど新東宝の作品じゃないからどぎつくないという感じです。だけどここは中川信夫らしくころしたモデルをマネキンケースに詰めて事務所に送りつけたり、切断したモデルの足を見世物にしたりと色々と趣向を凝らしているところはさすがだなと感じました。 肝心の内容の方はこっちが話しについていけていないのかネタバレ→最初に謎の小包を受け取った徹ちゃんという、え!?という展開。最後に行くまでも狼男になりすましてデザイナーを脅す男達が一体何人いるんだ?ってくらい出てきて←雰囲気とデザイナーの文代の作品は全て自分のデザインではなかったなど設定とかはいいけど話が分かりにくいというもったいない仕上がりでした。 池部良はカッコよかったけれど出てくるのがかなり遅くてまだかまだかという感じでどちらかと言うとよせばいいのに事件を解決しようとがんばっちゃう千秋実とモデルの安西郷子とかの方が魅力的でした。 モデルっぽい感じはしないけど塩沢ときとか中北千枝子もいい味だしていました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
池部良 (金田一耕助) | ハードボイルドなショーン・ビーンで。 |
久慈あさみ (浅茅文代) | デザイナーとか似合いそうなダイアン・レインにお願いしたい。 |
吸血鬼ゴケミドロ KYUKETSUKI GOKEMIDORO (1968) |
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2003年12月 | |
とある旅客機が暗殺者の寺岡がハイジャックされるものの謎の発光体と遭遇し墜落する。生き残った10人の乗客の中に暗殺者の寺岡の姿もあったが彼はスチュワーデスの朝倉を人質に逃走する。しかし寺岡は不思議な光に吸い込まれ宇宙生命体ゴケミドロに憑依されてしまい・・・ 「キル・ビル」でユマ・サーマンが飛行機に乗って東京に向かうシーンの毒々しい空の色、チープな飛行機はこの映画からヒントを得たということで観にいったんですけどこの映画はっきり言って傑作です。昔の日本映画にこんなすごい映画があったなんて信じられません。 自殺願望、戦争やテロなんかの世界情勢や政治家の腐敗をところどころに織り交ぜながらも極限状態における人間のエゴ描きだした傑作です。 生き残るためには手段を選ばない政治家、出世のためにはその政治家に妻を抱かせる一流企業の重役、まともだったと思った宇宙生物学者さえも人間がゴケミドロに襲われるところを見てみたいということで生贄に同意する始末。唯一まともなパイロットとスチュワーデスとの彼らのやり取りが実にハラハラします。 そしてなんといってもゴケミドロに体を乗っ取られるテロリスト寺岡役の高英男の不気味なこと。言葉こそ発しませんけど、青白い顔で狙った標的は逃がさず血を吸うシーンはすごいものがあります。 ラストもネタバレ→ようやくゴケミドロから逃れ街にたどり着いた杉板と朝倉。しかし街はおろか世界はゴケミドロに征服されてしまっていた。←というダークに仕上がっていることに、昔の日本映画にはまりそうな予感がするのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
吉田輝雄 (杉板英) |
最近絶好調のオーランド・ブルームで。パイロット姿も決まりそうな予感。 |
佐藤友美 (朝倉かずみ) |
着こなし上手のシャーリーズ・セロンでスチュワーデスの衣装もばっちり。恐怖演技も実は結構いけるのです。 |
高英男 (寺岡博士) |
昔は暗殺者役もやっていたアントニオ・バンデラスで。 |
吸血髑髏船 LIVING SKELETON (1968) | |
2006年2月 | |
金塊を積んだ竜王丸が襲われ船員は皆殺しにあってしまう。それから3年後、殺された依子の双子の妹冴子は神父の明石に引き取られ暮らしていたが、ある日恋人の望月と海に行くと海中で骸骨を発見しさらに漂流する竜王丸の中から航海日誌を発見し・・・ 傑作「吸血鬼ゴケミドロ」に続く松竹の怪奇路線ものの第二弾ということなんですけどなんだか期待しすぎたせいかちょっと微妙な感じでした。 一応サスペンスちっくな仕上がりになているのですがなんで!?と思えるところが多すぎるのが「吸血鬼ゴケミドロ」のレベルに達していないところかなぁなんて感じました。 まずオープニングに西村晃と松岡きっこ(二役)が殺されるけど西村晃はお父さん役かなぁ?なんて思っていたら新婚夫婦ってところでえぇ?と思ったし最後なぜか竜王丸に死んだはずの西村晃が天本英世ばりのマッドサイエンティストになってたりするし、松岡きっこはどうやってやってきたのか竜王丸にいつのまにか乗船しているしていちいち突飛過ぎるところが多すぎて「吸血鬼ゴケミドロ」には遠くおよばない感じがしました。ネタバレ→最後もせっかく助けに来た地味な彼氏を海に突き落として自分は船とともに沈んでいちゃうし・・・← 二役やらせて一粒で二度おいしい松岡きっことか相変わらずの小池朝雄やらもの最初は心やさしい神父からいきなり怪演モードに入る岡田真澄とか一人一人は個性的だったので話がまとまりに欠けていたのは残念でした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
松岡きっこ (冴子/依子) | さわやかな感じのキーラ・ナイトレイで。 |
入川保則 (望月) | あのもっさとした感じがトビー・マグワイアっぽかった。 |
岡田真澄 (明石) | 神父姿が様になりそうなケネス・ブラナーで。 |
キューティーハニー (2003) |
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2005年3月 | |
アニメ「キューティーハニー」の実写版。 アニメの「キューティーハニー」は観たことはないですけどさすがに名前くらいは知っていたし、予告を観た感じだと何も考えずに観られそうだし、TSUTAYAが今レンタル半額だから観てみました。 実はこの映画パンサークロー四天王のゴールド・クロー観たくって借りたと言っても過言ではないのですが想像以上にゴールド・クローをやった片桐はいりが楽しかったし面白かった。観た甲斐あります。 メイクも白塗りと金塗りのツートンカラーで兜に鎧というルックスだし、ハニーにしてやられると「ぬおぉー!」とか「ちょこざいな!」とか男らし過ぎる片桐はいりは相変わらず思い切ったことするなぁと脱帽です。(彼女は以前ドラマでバニーガールの格好もしていた)男らしいキャラだけどしっかり爪には金のネイルアートしているところも芸が細かいなぁと思いました。 インタビューとか読んでも下半身が細く映るように日焼けしたのに白塗りされちゃった。とか「生まれて初めてTバックの下着を買いにゆきました。」の「ゆきました。」の部分が片桐はいりっぽくておかしかったです。 関係ないけど片桐はいりと伊藤かずえはどことなく似ていると思います。 予告を観たときこの映画、演技は大丈夫だろうか?と思い、佐藤江梨子はたまにあれ?と思うこともありましたが意外とちゃんとしていたし、最近のアニメ版と比べると市川実日子も村上淳もイメージにあっているとちょっと感心しました。 あ、市川実日子は相変わらず上手いなかと思ったのですが、特にちょっと戸惑った時の表情に磨きがかかったというような印象を受けました。 なんか片桐はいり観たさにDVD借りたたとはいえ感想が片桐はいりのことばかりになってしまいました。(彼女のおかげで楽しく鑑賞できました。) |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
佐藤江梨子 (キューティーハニー/如月ハニー) |
ドリュー・バリモアはこういうコスプレものが似合うのです。 |
市川実日子 (秋夏子) |
イメージはセルマ・ブレアそのまんまです。 |
村上淳 (早見青児) |
軽い感じのノリがオーウェン・ウィルソンっぽくて。 |
篠井英介 (シスター・ジル) |
見た目がジェレミー・アイアンズのようでした。 |
侠客列伝 (1968) | |
2006年2月 | |
明治の末期、賭博行為を禁止する新憲法が決まり関東と関西の親分衆は組合を結成するが結成式を取り仕切る清水一派は天神一家に難癖をつけられてしまい・・・ 清水の港町を舞台に天神一家の港乗っ取りを企む罠に清水一派が巻き込まれていく話なのですが序盤に登場する清水の親分が回りくどい嫌がらせを受けてついにはキレて天神の親分に斬りつけるあたりは浅野内匠頭と吉良上野介の関係で理不尽だからと最終的に斬り込んでいくあたりまさに任侠版「忠臣蔵」といった感じでちょっと趣向が変わっている感じがしました。結局相最後は同じ感じなんですけどね。 それといつもと違うのは藤純子の相手役が健さんじゃないんですよね。長門裕之が猛アタックしていてもそっけなくされていたけどまさか長門裕之が大逆転して藤純子をゲットするのか?と焦りましたけど鶴田浩二だったんでなんとなく一安心。藤純子の相手役は任侠ものでは健さんか鶴田浩二クラスの人じゃないとしっくりきませんね。 清水の姐さんが桜町弘子だったのですが桜町弘子といえば中村錦之助作品でお姫様役のイメージが強かったので最初姐さんって違和感あるなぁと思ったのですが彼女が若かったのって50年代だったんですよね。そう考えるとこの役も納得できました。 あと破天荒すぎて破門になった清水の荒くれ者に若山富三郎だったのですが笑わせどころを押さえていてさすがだなと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! (健さんはとりあえず省略) | |
桜町弘子 (お仙) | 姐さんという役も余裕でいけそうなキャサリン・キーナーで。 |
若山富三郎 (河野忠七) | 腕っ節は強そうなラッセル・クロウあたりで。 |
侠骨一代 (1967) | |
2006年2月 | |
これはものすごく楽しい任侠コメディでした。 オープニング、健さんと大木実は親友なんですけどこの二人がなんと初年兵の役ですよ。これだけでも笑えるのに健さんってば母親(藤純子)を想って「お母さん」と涙するし、一人張り切りすぎてみんなに迷惑かけちゃう天然系の役ですよ。しかも理不尽な先輩兵にキレて乱射するし。 で、兵隊辞めて天涯孤独になった健さんは職もなく自殺しようと川に飛び込んだりもするけど川が浅すぎて死ねないという不器用すぎるにもほどがあるという展開に大爆笑ですよ。しょうがないから乞食なんかもやってみたりして最終的に志村喬のところで働くことになるのですが乞食時代の仲間を次々雇い入れる懐の深いところが偉いけれどみんなに紹介するときに「こいつ乞食の○○。」ってストレートすぎる紹介のしかたに不器用さを感じずにはいられません。しかもここはさすが健さんで、ものすごいカリスマ性であっという間に血もつながっていないのに跡継ぎになってしまいます。 藤純子は母親役と芸者役の一人二役で健さん死んだ母親を想って藤純子のもとに通い続けるけど藤純子は何にもしない健さんに惚れちゃうすれ違いな関係といういつもと違う展開が新鮮でした。最終的に事情を知った藤純子は健さんに母親心を抱いて金の工面をしてくれたりするのですが何かっていうと牛乳一気飲みしているのが関係ないけどものすごく気になりました。飲みすぎて牛乳口から溢れていたし・・・ あと志村喬は大御所なのですけど相変わらずすっとぼけたところがあって楽しかったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! (健さんはとりあえず省略) | |
志村喬 (坂本喜之助) | 20年経っても見た目があまり変わらなそうなポール・ジアマッティで。 |
共犯者 (1958) | |
2009年7月 | |
セールスマンの内堀はある日同業者の町田に銀行強盗の話を持ちかけられ見事に成功し二人はお互い他人として生きていく約束をして別れた。それから5年後、内堀は家具会社の社長となり雅恵との結婚を控えていたが、町田のことが気に掛かり調査員の竹岡を雇い町田の現在を調査するのだが・・・ 松本清張原作のサスペンス。 完全犯罪達成後に思いもよらず成功を手にしてしまった男が被害妄想に陥り神経衰弱ギリギリに陥っていく様は根上淳がにぴったりです。銀行強盗をしている時も怖気づき気味でほとんど仕事は高松英郎という情けなさぶりも発揮しそれから数年後、根っからの心配性の根上淳は今の高松英郎が社長の自分のところへゆすりに来るのではなかろうかと心配で仕方がないので素行調査をしてくれる人を新聞で募集するのですがそれが船越英二。 船越英二の報告が来るたびに高松英郎は落ちぶれてそして誰かを探すかのように自分の住んでいる九州に近づいてきているらしいという報告で婚約者の叶順子をほったらかして発狂寸前みたいな展開がスリリング。 最後もネタバレ→根上淳の調査依頼を逆手に取った船越英二の狂言による恐喝というオチで高松英郎は確かに落ちぶれたけど立派に立ち直っていたというところまでは良かったのですが、クライマックスで三つ巴の決闘で何故か船越英二だけ生き残りこれからは真っ当に暮らしていこうと決めたのでした。←というラストが何だか納得いかず惜しい。ここは普通にネタバレ→根上淳だけでも生き残ってもらえれば←大分印象も変わったのになぁと思うのでした。そして相変わらず叶順子は男運がないというか家柄はいいけれど幸せになれない系の役でございました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
根上淳 (内堀彦介) | 小心者系なジョン・キューザックで。 |
船越英二 (竹岡良一) | 雰囲気はグレッグ・キニアといった感じ。 |
高松英郎 (町田武治) | ちょいワルな感じのマット・ディロンで。 |
恐怖のカービン銃 (1954) | |
2010年8月 | |
大津たちは保安庁の経理課長を誘拐し小切手を奪い現金化させるのだが、課長に隙をついて逃げられてしまい・・・ 実在のカービン銃ギャング事件の主犯を天知茂で映画化。 46分の短編なのですが、この映画は天知茂の初主演作品となっています。初主演が悪党のボスと言うところがすでに天知茂のポジションが決まっていたようなものですがせめて初主演は警官ものとかをやらせてあげたかったです。 実録ものなのですが、ほとんど再現ドラマと言っていい展開で、実際のニュース映像と新聞が使われているのですが、実際の犯人大津と天知茂のルックスが違いすぎるというのは置いておいて、相手役が三原葉子というところも新東宝らしいポイントですよね。 そして天知茂は仲間を信用しきれず、カービン銃と現金を肌身離さず持ち歩いて仲間の信頼を失っていくと言う悲しい展開がいかにも天知茂らしいニヒルな感じがしていてよかったです。 後半、自首したり捕まった犯人のことをナレーションが語るのですが、なぜこんなことになってしまったのだろうか。的なことを妙に真面目なナレーションで言うものだから何だかおかしくて笑ってしまいました。 映画としてはもうひとつなのですが当時の割とリアルなタイミングでの再現映像としてはよく出来ていたんじゃないかと思います。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
天知茂 (大津) | ニヒルな感じのポールベタニーで。 |
巨人と玩具 (1958) |
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2005年2月 | |
キャラメル販売戦争に勝つために上司の合田が見つけた虫歯だらけの島京子をイメージキャラクターとして売り出すために新人の西は世話役を任せられるのだったが・・・ CMや新聞広告媒体や懸賞とありとあらゆる手段を使ってキャラメルの売り上げを伸ばそうとする企業の姿をシニカルに描いた増村保造監督の代表作ですごいすごいと評判を聞いていたけれど、オープニングも虫歯だらけの野添ひとみのショットが4分割、16分割と段々増殖していき最後は風で吹き飛ばされるオシャレさにこれに心つかまれ最終的にこほどまでに面白いとは思いませんでした。 この時代の懸賞を観ると宇宙服だったり、生きた動物や生活資金となんだか今よりスケールが大きいようでうらやましい気がしました。しかも当時こういうTVがあんまり普及していないから宇宙服を着たイメージキャラクターが宣伝カーに乗って街中を走り回ったりしていたんですね。 貧乏だった島京子の家族が京子の稼いだ金で裕福になっていくんですが風が吹けば飛ぶようなボロ屋敷に服だけは一流ブランドみたいなスーツをみんなが着ていて、服を買うより家を買えと思わず笑ってしまいました。 川口浩の「くちづけ」はそのまんま学生さんという感じではまっていましたけど今回の新人宣伝マンという役どころも観ているこっちがいらいらするほど若いというか青臭いんですよ。ライバル会社の西川峰子似の女社員に挑発されてぽろっと自社の懸賞をしゃべってしまうのを見ていると本当いらいらするんですけど、これがまた少年ぽさがのこる川口浩にしか出せない味なんですよね。だからライバル会社で働いていた親友が金のためにさっさと会社を辞めてネタバレ→島京子のマネージャー←になってしまったのを頭の中じゃこれが社会ってもんだと分かっていても納得できないところなんて説得力あるんです。 野添ひとみも今回の増村保造特集が初めてで4本しか観ていないんですけど長谷川京子にそっくりでちょっと勝気な娘の役が得意そうだなという印象だったんですが今回の役はコントでよくある前歯を黒くして虫歯だらけの貧乏な娘の役ですよ。お嬢さんといった印象の野添ひとみは思い切ったことしたなぁと感心しました。長谷川京子もこれくらいやってくれれば好きになるのになぁ。 この時代の映画を観ると高度経済成長の真っ只中(だと思う)の時代性と会社で権力を持つ人物の鶴の一声で何事も決まっていた時代だからこそ出来たすばらしい作品ていっぱいあるんだなぁとつくづく感心します。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
川口浩 (西洋介) |
「トロイ」なんかを観るとまだまだ青いなと思わせるオーランド・ブルームで。 |
野添ひとみ (島京子) |
オドレイ・トトゥは前歯を黒くした天然系のキャラは自然とこなせるはず。 |
高松英郎 (合田竜次) |
手段を選ばぬ男という感じのゲイリー・シニーズで。 |
キリコの風景 (1998) | |
2006年8月 | |
函館にやってきた村石は西川という男の運転するタクシーを借り切って函館のマンションを渡り歩きそこに住む住人達の罪を次々と浄化していくのだが村石の本当の目的は別れた妻、霧子を探すことだった・・・ 小林聡美に最近はまっているので観てみたのですが杉本哲太が函館の歪んだマンションの住民達を諭していくヒーリングムービーといった感じの奇妙な作品でした。 杉本哲太の役はかつて詐欺で消火器を売りつけて刑務所暮らしをしていたことがあり、務所暮らしで覚醒して人の素性が分かってしまう特殊能力が身につき自分の罪滅ぼしのためにも歪んだ人を諭すためにマンションを渡りあるくような男なのですが、マンションに乗り込む時の映像が妙に緊迫感があって変にスリリングだし小林聡美もなかなか出てこないしでこれは好きになれないかもと思いました。 中盤以降本格的に小林聡美が絡んできてからは雰囲気もようやく明るくなって楽しいとはちょっと違うんですけど作品にノレました。それもこれも小林聡美のおかげです。別れた夫、しかも詐欺で刑務所に入っていたような男を男友達感覚で「あんたもそろそろ別の人見つけなさいよ。」とサバサバした小林聡美節全開で彼女の出ているシーンはよかったです。 終盤も偶然タクシーの運転手の勝村政信が小林聡美の夫だったりもして彼女のバーで三人で飲んだりするシーン杉本哲太をめぐる変な掛け合いがクスリとさせてくれてよかったし。 ただ今回はバーのママという役なのですが小林聡美に水商売の役は正直似合わないしタバコ吸ったりするところも違和感ありました。バーのママだったら室井滋の方がはまっているなぁと思いつつ、俳優はいいけど役が合っていなかったり、癒し系?なはずなのに妙な緊張感と全体的に変なバランスだなと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
杉本哲太 (村石陽介) | 未練タラタラなところが「クローサー」のクライヴ・オーウェンを思い出させる。 |
小林聡美 (霧子) | サバサバしていそうなマリサ・トメイで。 |
勝村政信 (西川洋一) | 見た目はどことなくロマン・デュリスっぽい。 |
霧の旗 SWEET REVENGE (1978) | |
2009年5月 | |
兄が突然殺人の容疑者として逮捕されてしまった柳田桐子は兄の無罪を信じ有名な弁護士の大塚の元を訪れるが門前払いをされてしまう。弁護士事務所に偶然居合わせた週刊誌の記者阿部により再び大塚に弁護を依頼するが再び弁護を断られやがて桐子の兄は刑務所で自殺をしてしまい・・・ 松本清張原作の冷ややかな復讐劇。 三浦友和と山口百恵コンビの作品は初めて観たのですがこれが結構よかったです。この二人のコンビがどんなジャンルの作品に出ていたのか分からないのですが、スカッとしない暗い作品なのが帰ってよかったのかもしれません。 山口百恵の兄(関口宏)が捕まり、有名な弁護士の三國連太郎に頼みに行くも大物弁護士過ぎて三國連太郎はゴルフやらなんやらで全く取り合ってもらえず結局弁護してもらえず兄は獄中自殺。九州の片田舎で女工?として働いていた山口百恵は東京でホステスをして不憫な女の子の話かなと思っていたら、山口百恵には密かな復讐の計画があったという意外な展開に興味津々。 ホステス仲間に頼まれて男の浮気調査をしていたら偶然、三國連太郎の愛人宅でその男が殺されてしまい、山口百恵が何者か知らない愛人は犯人ではないことを証明するように山口百恵に頼み彼女もそれを了承する。しかし実際にはそんな女に会った事もなければ現場にも行ったこともないと警察で証言し、証拠品も持ち去って愛人が殺人犯なるように仕立て上げてしまう。そして当然三國連太郎が弁護につくわけですが山口百恵が関わっていると知って青ざめるわけですよ。 ここから二人の無罪となる証拠品を渡す渡さないの攻防があるのですが、山口百恵が涼しい顔をして淡々と自分なりの復讐をしていくところが怖いです。最後は・・・という感じなのですが妙な余韻が残る作品でした。 三浦和義は出ているシーンは多いのですが印象としてはなくてもそれほど問題ないかなと思いました。 山口百恵バージョンより前に倍賞千恵子バージョンがあるようで、弁護士は滝沢修、三浦友和の役どころは露口茂に愛人が新珠三千代でしかも監督が山田洋次に脚本が橋本忍ということでこちらもいつか観てみたいと思います。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
山口百恵 (柳田桐子) | ブライス・ダラス・ハワードにお願いしたい。 |
三浦友和 (阿部啓一) | 週刊誌の記者というガツガツしているような役が似合いそうなフレディ・ロドリゲスで。 |
三國連太郎 (大塚欽三) | こういう役はマイケル・ダグラスが合いそうです。 |
斬る (1962) |
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2004年12月 | |
父、高倉信右衛門が養父とは知らず今まで育ってきた高倉信吾はある日三年間の修行の旅に出て帰ってくる。やがて隣人の逆恨みを受け養父と妹を殺されてしまい仇を討つのだったが自分の出生の秘密を知ってしまい・・・ 三隅研次監督の剣三部作の第一作目。 後半というか最後終わり方が好きじゃない。ネタバレ→信吾が仕えた偉い人が騙し討ちにあって殺されてしまう。その異常を察知した信吾はなんと梅の枝で刺客を倒し主人の元へ向かい襲ってくる刺客を全員倒すんですけど、信吾は切腹しちゃうんですよね。←こういう武士道精神っていうやつがいまいち納得というか理解できないんですよね。まだまだ倒すべき相手がいるじゃないかと思ってしまうのです。 と最後はちょっと・・・と思ったんですけど、信吾の出生の秘密が徐々に明らかになる前半はよかったです。本当の父母は天知茂に藤村志保ですから。 藤村志保の役どころは侍女で殿の妾を刺し殺すというオープニングから魅せてくれるのですが、髪を振り乱し短刀を持って妾を追い回す鬼気迫った感じが今まで観たことのない感じの藤村志保が新鮮です。 天知茂もなぜか処刑になる藤村志保に子供を産ませることが出来れば子供が一歳になるまでは処刑が延期というようわからん命令を受け実行する変な役どころですが、処刑も自らの手で下すあたりは哀愁漂う天知茂だからこそ出来る役だなと感じました。 それにしても市川雷蔵はこの手の養父にまつわる役が多いけど雷蔵自身も実際養子にもらわれて15、6歳になるまで知らなかったというし、さらにまた養子に出たと言うからこっちの方がよっぽどドラマのような人生だなと思うのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
市川雷蔵 (高倉信吾) |
クリスチャン・ベールで。彼の新作バットマン、キャラクターの生い立ちの暗さが似ていそうで。 |
斬る (1968) |
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2005年6月 | |
やくざの兵頭弥源太と武士になろうと畑を売った田畑半次郎が寂れた出会う。その宿場で長年不満のあった藩主を若侍たちが斬る事件が起きるのだが次期藩主の地位を狙う鮎沢の陰謀だった。半次郎は鮎沢に雇われ若侍を倒しに、一方源太は若侍たちを守るために旅立つのだが・・・ 仲代達矢に高橋悦史、若侍たちのリーダーに中村敦夫というダークなイメージを持った俳優達がそろっているので重そうだなぁと思ったらこれが全くの予想外の正反対でダークどころかコミカルで楽しかったです。 仲代達矢はわけありのやくざで若侍たちを助けるのですがその若侍の中に中丸忠雄が混ざっていてこいつは終盤絶対裏切るだろうと思っていたら裏切るどころか仲間割れしている若侍を筋が通った説教をしてまとめちゃってある意味この作品のヒーローでもあったりするところに新鮮さを感じました。 岸田森は金のために若侍を狙うやくざものですが実はこのキャラもいい奴だったし、天本英世も藩の命令で若侍を殺そうとするけど最終的には見逃してあげるというみんないつもと正反対のキャラなんですけど本当新しい魅力をこの作品で発見しました。 東野英治郎も誘拐されちゃうんですけど別に気にする様子もなく常にのほほんとした感じだし高橋悦史に助けられて女郎屋に匿われるけど女郎屋初めてだから喜んじゃってここに住んでもいいくらいの勢いなところも楽しくてストレス解消にもってこいの作品なのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
仲代達矢 (兵頭弥源太) |
とぼけた演技もいけそうな雰囲気のジョニー・デップで。 |
高橋悦史 (田畑半次郎) |
土の匂いがするって感じがぴったりなジョン・レグイザモで。 |
疑惑 SUSPICION (1982) | |
2010年10月 | |
埠頭から車が転落し白河球磨子は車から脱出して助かるが夫は水死した。しかしこの夫が財閥で多額の保険金が掛けられていたかとが分かり球磨子は殺人の容疑で逮捕されて・・・ 松本清張贋作のサスペンス。 序盤から桃井かおりのテンションが高くて面白い。常に桃井節炸裂でふてぶてしいところが最高です。悪びれることなんてひとつもなくて警察のキレ気味の尋問にも冷静に対応。オマケになかなか下りない保険金に「何で保険金下りないわけぇ?」と食って掛かる悪女っぷりに惚れ惚れします。 記者会見を開いて失礼な質問をしてくる柄本明や事故を目撃して裁判で証言に現われた森田健作にも一発かましてまさに桃井映画なのですが、ここに岩下志麻が現われて二人の性格は正反対で衝突が多いのですがもう最強です。 ネタバレ→事件の鍵を握る夫の本当の中学生の息子が何かを知っていると感づいた岩下志麻が優しい口調ながらも裁判に承認として出廷するよう威圧気味。裁判でも最初は優しく尋問していたのに最後は何かドスが効いていてこれは知っていることを話さないと恐ろしいことが怒りそうな予感で中学生の息子も泣きながら真相を話していましたよ。← と向かうところ敵なしな二人ですが、桃井かおりを完全に黒と決めつけて報道する新聞記者の柄本明や桃井かおりの悪党仲間の鹿賀丈史が羽賀研二みたいなキャラクターで可笑しかったり、結婚相手の仲谷昇がかなり優柔不断だったりと脇役のキャラクターたちもこの二人にマッチするくらい濃くてよかったです。 次第に明らかになる桃井かおりの過去とか展開も松本清張らしくてこれは松本清張作品のなかでトップクラスの面白さだと思いました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
桃井かおり (白河(鬼塚)球磨子) | 悪びれないキャラクターのルーシー・リューで。 |
岩下志麻 (佐原律子) | 威圧的なジュリア・ロバーツで。 |
金環蝕 (1975) |
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2004年6月 | |
昭和40年、福竜川ダム建設工事をめぐる政界と企業の賄賂をめぐる内幕を描いた70年代の大作のひとつ。今回も政界の内幕ってことで渋い俳優で勢ぞろい。 監督はもちろん社会派山本薩夫監督です。DVD特典で当時の劇場予告編を観たんですけど、「白い巨塔」で医療界を「華麗なる一族」で金融界をと続きそして「金環蝕」で政界を斬るみたいなキャッチコピーが渋かったけど上手いこと言うもんだと思いました。 官房長官の星野をぎゃふんと言わせたい金融王の石原参吉と政界の内幕を暴きたい新聞記者の古垣常太郎、この二人に賛同する代議士の神谷直吉が事実上手を組んで追い詰めていくみたいな展開になっていくんですけどそう上手くいかないところがこの映画の面白いところでもあり、もどかしいところでもあるんですよねぇ。 いろいろ手がかりをつかんでようやくてって時に事件のキーポイントなる総理夫人のメモを渡した秘書が事故を装い殺されたりするんですよね。世間にしれちゃまずいことが公になりそうになったら暗殺までしたりするアメリカなみのその姿勢に日本も結構やるときゃやるねぇと感心してしまいましたよ。しかもラストはネタバレ→古垣はそそのかされた弟に殺され、石原は星野の罠によって逮捕される。神谷にいたっては金で買収された形で結局星野の一人勝ちって展開。星野がぎゃふんとなっていればすっきりして大満足なんですけど←現実もこうなんだよなぁとなんだか「金環蝕」のタイトルのまんま意味(外は輝いて見えるが中は真っ黒になっている様)が重くのしかかってきた感じがしました。 この官房長官の星野役が仲代達矢なんですけどやっぱりこの人は金が絡む作品がよく似合うなぁと思います。(他に「華麗なる一族」しか観たことないですけどね)今回の仲代達矢は一人不自然におしゃれで笑えますけどね。 三國連太郎もハマコー先生みたいな熱血漢というか問題児的な役で今では想像つかないけどなんかすごい迫力。「皇帝のいない八月」でもそうだったし昔の作品をちょっと調べてみたら三國連太郎って骨太な俳優だったんですね。 総理夫人役のマチ子はほとんどカメオ状態だったけど相変わらずマダムっぷりを発揮していて一安心。総理夫人なのに影では「あのババア余計な事しやがって。」とババア呼ばわりされているところが笑えましたけどね。 そうそう高橋悦史の弟役が峰岸徹でチンピラ風な役なんですけどワイルドでめっちゃかっよく、70年代のチンピラ役をやったような俳優は今はいないなぁなんて時代を感じるのでありました。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
仲代達矢 (星野康雄) |
悪い役人(しかもエリート)といえばこの人ゲーリー・シニーズでしょう。 |
宇野重吉 (石原参吉) |
ビジュアル的に宇野重吉は悪者風だったけど実際はそうでもないところがベン・キングスレー的で |
三國連太郎 (神谷直吉) |
笑顔がすでに問題児な装いのビリー・ボブ・ソーントンで。 |
高橋悦史 (古垣常太郎) |
地道な取材活動が「すべては愛のために」のクライヴ・オーウェンとかぶる。 |
銀座カンカン娘 GINZA KANKAN GIRL (1949) | |
2007年4月 | |
落語を引退した家に居候をするお秋をその親友お春。働かずにいては申し訳ないと思い仕事を探しに出かけたお秋はお春とともに偶然、映画に出演することになりそこで出会ったエキストラの白井に誘われバーで歌うことになり・・・ 「あの娘可愛いやカンカン娘〜」でお馴染みの高胸秀子&笠置シヅ子による昭和のミュージカル風コメディ。 戦後復興の真っ只中で知人の家の二階に間借りして暮らす様子を貧しいけれど辛気臭くなく明るく生きていこうという姿勢がとても前向きでスカッとした気分にさせてくれます。 高峰秀子と笠置シヅ子が有名なカンカン娘の歌を歌うのですが笠置シヅ子は声量があって歌が上手いのは知っていたのですが高峰秀子は「カルメン故郷に帰る」で歌ってはいたのですが笠置シヅ子と並んでも引けをとらずこれほど歌をしっかり歌えるとは知らずビックリしました。 高峰秀子の相手役は戦後のスター歌手、灰田勝彦。バーでチンピラ風の輩に絡まれてケンカしようと思えば勝てるのに「あんな奴と命のやり取りをするのが嫌なんだ。もったいないんだ。」と優等生的発言で一方的に殴られる後ろでさりげなくチンピラにケリを入れている高峰秀子、この人はやっぱり負けん気の強い娘さんとか似合うなと思いました。 引退した落語家の家で居候しているという設定なので終盤に落語も聞けてしまうわけなのですが落語もこうしてじっくり聞くと中々いいもので、この映画には知り合いに恩があるからといってその娘はおろかその親友までもを居候させたりして戦後間もない昭和の人情味が感じられるいい作品なのだなぁと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
高峰秀子 (お秋) | 歌も歌えるグウィネス・パルトロウで。 |
灰田勝彦 (武助) | こちらも歌える「X-MEN」のサイクロップスでお馴染みのジェームズ・マーズデンで。 |
笠置シヅ子 (お春) | 顔がマギー・ギレンホールという感じでした。 |
銀座化粧 GINZA COSMETICS (1951) | |
2008年7月 | |
息子と二人で暮らす雇われママの雪子はある日、店が人手に渡りそうになり手渡したくなければ25万円が必要になり雪子は25万円を作ろうとするが・・・ 成瀬巳喜男監督、田中絹代主演の人情ドラマ。 いつもよりちょっとだけ違う出来事(息子の行方が分からなくなったり、友達の男が東京に出てくるので町案内を頼まれたり・・・)が起きるのですが基本的には地味に時間は過ぎ去っていく感じで前半はちょっと退屈でしたが後半はいい感じでした。 中盤以降、親友の知り合いを銀座案内する羽目になった田中絹代は最初迷惑がっていたけれど何だかんだ言って結婚なんて夢見てしまうのですが子供が行方不明になって親友の知り合いの相手を若くて誠実な香川京子に頼んだらあっさり持っていかれて憤慨するところがちょっと怖かったです。いつも香川京子には幸せな結婚をしてもらいたいみたいなことを言っていたわりに自分の好きな人を持っていかれると・・・嫉妬は怖いです。いかにも日本的な田中絹代が嫉妬すると特に。 香川京子は結構色々な映画で見かけますがいったい何歳なんだろうかと映画を観るたびに感じます。 銀座の大通りがこれから発展していく時代の作品で和光がある銀座四丁目の交差点は今の面影がありますがそれ以外の場所は平屋とかまだまだ立ち並んでいて一歩道を入ると人が住んでいると今の銀座では考えられない光景があって感慨深いものがありました。 成瀬巳喜男作品は日本家屋のセットに趣があって好きなのですが、今回もそこのところはばっちりで、田中絹代の家も鏡台がひとつあるくらいの質素なの部屋なのですがそれがまた日本的でよかったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
田中絹代 (津路雪子) | ジュリアン・ムーアあたりにお願いしたい。 |
銀座の女 (1955) |
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2005年4月 | |
老後を一人身で過ごすことを心配する芸者屋の女将いくよとそれぞれ問題を抱えた芸者仲間達を描いた作品。 女将が偶然観た老人ホームをテーマにしたドキュメンタリー映画に偶然、世話になった昔の先輩芸者がホームで暮らしているところを見てしまい焦った一人身の女将のいくよは、生活費や学費は全て面倒見る代わりに息子になってくれる人間を探し出し実際に世話をしているという当時としてはかなり進んだ感覚の人間で感心します。当然裏切られるリスクはあるのに大胆にもこういう新しいものの考え方をして実行に移せるのはやっぱりこういう世界で働いているからなんだろうなぁと思いました。 普通を売りにして人気のある芸者の琴枝も実は兄が税務署に勤めているだけだから。とここだけを抜き取っても銀座という土地柄で当時から政治家やら大企業の重役なんかは銀座で遊んでいたんですね。 ともあれこの普通の芸者の琴枝を演じた乙羽信子が当然ながらめちゃくちゃ若いんですけどすごくキュートでよかったです。愛嬌もたっぷりあったし。 後半、いきなり放火サスペンスものになるんですけど、黒澤作品でこういう展開に慣れてしまっているので特に違和感は感じませんでした。というかこの時代は一つの作品で二度おいしいという作りがけっこうあったんだなぁと実感します。 面白いところはけっこうあるのに結局この作品もう一つのれなかったのですがこれはきっと芸者が主人公だからでしょう。芸者という雰囲気はさすがに古すぎて実感というかイメージが沸かなくて多分これが銀座のクラブのママとホステス仲間で話が進んでいったらまた印象は変わっていたと思います。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
轟夕起子 (いくよ) |
ミシェル・ヨーは姐さんと呼ばれるにふさわしい人物。 |
乙羽信子 (琴枝) |
キュートといったらヘザー・グラハムで。 |
銀座の恋の物語 (1962) | |
2008年3月 | |
ピアノ弾きの修二と同居する画家の次郎は一人前の画家になるまでは恋人の久子と結婚するつもりはなかったがついに結婚を決意し駅で久子と待ち合わせをするのだが・・・ 「心の底までしびれるような. 吐息が切ないささやきだから〜」でお馴染みの石原裕次郎主演の恋愛もの。 貧しい画家と洋裁店で働く恋人、ルームメイトが売れないピアノ弾きの親友と青春ドラマの要素満載と思いきや色々なことがごった煮になったすごい映画でした。 貧しさに耐え切れずジェリー藤尾が気がつけば偽酒造りに手を染めてしかも結構暗黒街でもいいポジションに出世して高級マンションに住んでいてピアノなんか弾いています。 一方でジェリー藤尾が道を踏み外すというジェリーらしい感じのエピソードがあったと思えば石原裕次郎の実家に朝丘ルリ子を連れて行こうとして駅で待ち合わせしていたら朝丘ルリ子が交通事故に遭って記憶喪失。昼ドラも真っ青な展開に分けが分かりません。 さらに江利チエミも出てきてお約束のように一曲披露。そうこうしているうちに偽酒の組織を追っている潜入婦人警官でしかも密かに石原裕次郎に恋してたというおまけ付き。ますます分けが分からなくなってきてタイトルの「銀座の恋の物語」に似つかわしくない内容がある意味興味深かったです。 あと朝丘ルリ子はこの頃はまだ目化粧がばっちりという感じではなくまだまだ清純派といった感じでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
石原裕次郎 (伴次郎) | 性格のよさそうなジェイク・ギレンホールで。 |
浅丘ルリ子 (秋田久子) | 強気じゃないスカーレット・ヨハンソンも観てみたい。 |
ジェリー藤尾 (宮本修二) | 「スパイダーマン3」ではダークサイドに堕ちてしまったトファー・グレイスで。 |
江利チエミ (関口典子) | 顔のパーツが大きいところがクレア・デーンズといった感じで。 |
銀座の恋人たち LOVERS OF GINZA (1961) | |
2008年6月 | |
小料理屋の娘、民子は親友の弘子に妻のある男性と愛し合っていると相談を持ちかけられるがその相手は君江の姉由子だった。君江も隣の喫茶店の若主人の光夫に密かに憧れていたが光夫は親友の君江の夫で・・・ 東宝の若手スター共演の恋の鞘当てもの。 出ている人が多すぎて誰が主役か分からないのですが一応観た感じ主役は団令子といったところでしょうか。舞台も銀座や月島あたりの個人的に馴染み深い町でまとまっているところがよかったです。 親友の付き合っている妻あり夫の妻が姉の草笛光子だったり、団令子も親友の旦那、宝田明に密かに恋心を抱いていたりと身近なところで絶交上等な映画ならでわの展開が繰り広げられていくのですがみんな結構身勝手すぎて笑えてしまいます。 草笛光子の旦那が三橋達也なのですが、洋服屋の若旦那で従業員の団令子の親友に手を出して勘当されたら、変にプライドか高いから就職先も見つからず親友にナイトクラブのホステスさせてヒモみたいな生活している最低な男だったり、宝田明の親友の水原弘も密かに嫁を好きだったりして汚い手で嫁をおびき出してなびかせるという姑息な手段を使ってこの映画に出てくる男たちはほとんどダメですね。 といって女たちはまともかというと、こっちもみんな自分勝手。ネタバレ→結局、宝田明の嫁は何だかんだ言って水原弘についていって団令子に宝田明との交際を応援したり、団令子も告白しようかなと思ったらいつの間にか宝田明と草笛光子がみなさん公認の中になって二人も相思相愛。ショックを受けた団令子のところにちょい役で出ていた食いしん坊キャラの加山雄三が実は団令子が好きでした。と衝撃の告白をして本人ラッキーなハッピーエンド。←団令子、それでいいのか?と思ってしまいました。結局まともなのは宝田明と草笛光子だけだったのでした・・・ | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
団令子 (津川民子) | ノーテンキな感じのヘザー・グラハムで。 |
草笛光子 (津川由子) | マリサ・トメイあたりにお願いしたい。 |
宝田明 (小野光夫) | 喫茶店のマスターも似合いそうなロバート・ダウニー・Jrで。 |