口裂け女 A SLIT-MOUTHED WOMAN (2006) | |
2008年2月 | |
「口裂け女」の噂の発祥の地で再び噂が流れた街で子供の失踪事件が起きる。そんな中、教師の山下の目の前で生徒が口の裂けた女に連れ去られ同僚の松崎と共に生徒の行方を追うのだが・・・ 昔懐かしい「口裂け女」伝説をモチーフにしたホラー。 水野美紀の口裂け女役に期待して観たのですが期待以上によかったです。とにかく残忍な口裂け女になりきっているところがいいです。口裂け女の人間時代?のシーンも描かれていて三人の子持ちで何かというとすぐ暴力を振るう母親というキャラクターなのですが子供の殴りっぷりに迷いがないところがリアルでした。 口裂け女の時も普通の映画じゃやらなそうなネタバレ→子供の口をハサミで切ったり、別の子供はハサミでめった刺しで殺す←ところまで徹底しているところがこのご時世にすごいなぁと思いました。 当然、佐藤江梨子や加藤晴彦も襲われるのですが無表情で倒れた二人にケリを入れ続ける水野美紀のここまでやるかという怪演ときたら一気にポイントアップですね。 主演の佐藤江梨子はバツイチ子持ちの教師という設定に無理があって絶叫演技もいまひとつ。さらに加藤晴彦は水野美紀にハサミで切り付けられたりネタバレ→アキレス腱をハサミで切られたりして(しかも両脚)←かなり痛いことやっているのですが演技自体がイマイチだから全然危機感が伝わってきません。佐藤江梨子はともかく加藤晴彦のほかに別の俳優はいなかったのかと思わずにはいられません。水野美紀が素晴らしかっただけに残念です。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
佐藤江梨子 (山下京子) | 意外な役にもチャレンジするアン・ハサウェイで。 |
加藤晴彦 (松崎昇) | 最近絶好調のケイシー・アフレックで。 |
水野美紀 (松崎タエコ) | 実力のあるケイト・ブランシェットがやったらものすごく怖いと思います。 |
くちづけ (1957) |
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2005年2月 | |
宮本欽一は父親に面会するために拘置所に行ったのだがその時、同じ理由で拘置所に来ていた白川章子という娘に出会う。二人は意気投合しお互いの住所を渡して別れるのだったが・・・ 増村保造監督のデビュー作。 金が払えない章子に黙って金を差し出し去っていく学生の欽一。その後を追う章子と出会い始まるこの作品。章子を金の力でなんとか自分の物にしようとして付きまとう写真家の息子や欽一の父親と離婚して今では宝石商として成功している母親やお互い父親の保釈金に奔走したりと根本には金の問題が絡んでいて始めは絶対なにか良からぬことが起こると予想していたのですが意外にも青春映画でした。もろに昭和の青春映画なんですけどモダニストと称されるだけあって欽一の母親の住んでいるアパートメントも現代にも十分通じると思うし章子の住んでいる材木置き場が隣にあるような壁の薄そうないかにも昭和テイストをかもし出しているボロアパートでさえおしゃれに見えるから不思議です。 母親から父親の保釈金を条件付で借りた欽一、父親の拘留が長引きそうで金の使い道がなくなったので章子に渡そうとするけど交換した住所を無くしてしまい肝心な時に会えない欽一。その間章子は保釈金のために体を売ろうとしていてと・・・ハラハラするところもありとデビュー作なのにちゃんと出来ているなと感心しました。 ちょっとこの映画について調べてみたら川口浩と野添ひとみはその後結婚したのですが、この映画で母親役の三益愛子が川口浩の母親と知っていろんな意味でデビュー作ですごいの撮ったなと思うのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
川口浩 (宮本欽一) |
この映画の欽一同様社会にちょっと不満がありそうなジェームズ・フランコで。 |
野添ひとみ (白川章子) |
クレア・デーンズは貧乏な家のしっかり者という役をやらせたらはまりそうで。 |
口笛を吹く渡り鳥 (1958) | |
2009年11月 | |
流れ者の雁の伊太郎は旅の途中で医師の卜斎とその娘、おせつと出会う。卜斎は粗野な伊太郎を毛嫌いするが、おせつは伊太郎に惹かれていた。そんなある日、正義感の強い伊太郎は町の権力者に騙された母娘を助けるのだが・・・ 長谷川一夫の旅がらすもの。 もうベタすぎて困りそうなところなのですが、大スター長谷川一夫だからこそ許されるベタさ加減が逆に新鮮な気持ちにさえさせてくれます。オープニングでは役人に騙された中村玉緒とその母親を助けるエピソードから始まり、さりげなく長谷川一夫はこんな感じの人ですよという人物紹介をしているところもいいです。 若尾文子も長谷川一夫に山道でよろめいたとkろを助けてもらうという甘ったるい出会いは置いといてヒロインとしての役目をしっかり果たしていてよかったですが、その父親が医者の笠智衆というところがインパクトがありすぎます。 あの台詞回しで長谷川一夫を毛嫌いするのものだから単なる感じの悪いおじさんになっていて笑ってしまいます。町でものすごい人望の厚い医者という設定も活きていないのもすごかったです。良くも悪くも小津作品そのままの棒読みっぽい笠智衆の台詞回しと、どちらかと言うと長谷川一夫の舞台っぽいの台詞回しがまったくかみ合っていない感じがシュールで面白かったです。 クライマックス、ベタに悪代官に囚われた若尾文子を助けに現われた長谷川一夫は当然の如く大立ち回り。ドサクサにまぎれて若尾文子に槍が飛んで来るのですがそれをさりげなく避ける若尾文子も相当レアなのですが、最後誰も死なずに綺麗に終わるところも何となく長谷川一夫っぽい感じがするのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
長谷川一夫 (雁の伊太郎) | ちょいワルなジェラルド・バトラーで。 |
若尾文子 (おせつ) | ブライス・ダラス・ハワードあたりにお願いしたい。 |
笠智衆 (亀井卜斎) | 義理のお父さんだったら怖そうなリーアム・ニーソンで。 |
沓掛時次郎 (1961) |
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2004年12月 | |
中村錦之助の「沓掛時次郎 遊侠一匹」を観た後ちょうど市川雷蔵祭で「沓掛時次郎」をやるのでこれは見比べてみようと思って観に行きました。内容は錦之助版ほぼ同じ内容だったのですが圧倒的に錦之助版の方が好きだなぁ。 話の筋はおおむね同じでしたけどちょっとした違いでこんなにも違うものなんですね。まず雷蔵版の方はいきなりおきぬと因果な運命の出会いとなる出来事から始まってしまうけど、錦之助版は時次郎という人物がどういう人間なのかをじっくり描いていてその後おきぬとの本筋のおきぬとのエピソードが始まるわけですけどやっぱり個人的にはこういった人物紹介的なエピソードをはさんでもらえるとうれしかったなぁと思います。 それに錦之助版はいったんおきぬと別れて再び偶然出会うまさに運命的な出会いがあるのだけれども雷蔵版はおきぬと最後まで旅をともにするところが大きな違いと言えば違いなんですけど、やっぱりこの偶然の再会というドラマティックなエピソードがいいんですよ。 宿のお女将が錦之助版が清川虹子、雷蔵版が杉村春子だったりと出演者は本当甲乙付けがたいのですが、ライバルと言われた東映の錦之助と大映の雷蔵を見比べてみると雷蔵はやっぱり生真面目な感じがするけど錦之助は愛嬌があるからやっぱり錦之助の方をひいきしてしまうのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
市川雷蔵 (沓掛時次郎) |
ちょっと暗くて真面目そうなホアキン・フェニックスで。 |
新珠三千代 (おきぬ) |
若いのに悲壮感漂うリリー・ソビエスキーで。 |
沓掛時次郎 遊侠一匹 (1966) |
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2004年10月 | |
渡世人の沓掛時次郎は道中おきぬとその息子、太郎吉と親しくなり途中まで一緒に旅を続けた。そして時次郎は鴻巣一家にわらじを脱ぎやがて鴻巣一家にたてつく六ツ田の三蔵を討つ仕事を引き受け三蔵に勝利する。三蔵は死に際、時次郎に妻に言付けを頼むのだったがその妻こそ道中で出会ったおきぬだった・・・ 後でいろいろ調べてみましたけどこの映画って股旅物の名作と謳われているようで、なるほど最近「沓掛時次郎」という言葉を偶然知っただけで内容も股旅物ということすら知らなかったんですけど面白かったです。斬られたらちゃんと?豪快に血が吹き出すところも以外でした。 序盤は気持ちは一人前だけど剣の腕はまるっきりダメな弟分の渥美清との掛け合い(ほとんど寅さんだった)を交えながら沓掛時次郎という人物像をさりげなく紹介しているところがいいですね。 中盤以降は殺してしまった三蔵の妻おきぬと息子太郎吉を連れて時次郎の故郷沓掛への旅が始まるわけですが、おきぬは時次郎の人柄を知っているし旦那もやくざの世界に生きる人間だったからいつか彼が死ぬという覚悟が出来ていたからそれほど恨んではいなくってむしろ感謝していて、自然と太郎吉と本当の家族のような暮らしをする毎日になるのですが家族のようでありながらお互いの心のうちを語らないプラトニックな関係がなんだか切なくてよかったです。 最後もおきぬの薬代のために自ら出入りに参加する姿は泣けますしネタバレ→結局おきぬは死に太郎吉とふたりで沓掛へ旅立つという姿に「子連れ狼」を見ました。← 道中おきぬをおってやくざがいろいろ聞き込みをするシーンで「小奇麗な年増を見なかったか?」って宿場の人に尋ねまわるシーン、池内淳子にぴったりな小奇麗な年増ってなかなか気の聞いたこと言うじゃあないですか。機会があったら使いたい台詞だなぁと感心しました。 それと時次郎の泊まっている安宿の女将の清川虹子は相変わらず肝っ玉母さんって感じが観ていて気持ちよかったです。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
中村錦之助 (沓掛時次郎) |
エリック・バナも一匹狼がよく似合います。 |
池内淳子 (おきぬ) |
小奇麗な年増な域に入ってきた、ケイト・ブランシェットで。 |
くノ一忍法 (1964) |
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2004年7月 | |
大阪城落城が目前にせまる中、真田幸村は豊臣の血を絶やさないため五人のくノ一たちに豊臣秀頼の子供を身ごもらせたが、それを知った徳川家康は五人の忍者にくノ一の殺害を命じるのだった・・・ 40年前にカラーでこんな奇想天外な忍者ものがあったなんて驚きです。しかもくノ一たちの戦い方がお色気なんですよね。敵の忍者をまさに「体」をはって倒すところが成人映画らしいんですよね。しょっぱなは「信濃忍法筒涸らし」とかいって敵の精力を吸い取って干からびさせたり「信濃忍法天女貝」で抜けなくしたりしてスゲーなって感じ。しかもこの忍法にかかってやられるのが山城新伍ってのがナイスなキャスティングだと思いますよ。 忍者の方もくノ一に化けたり男の体が欲しくてたまらなくなる忍術で負けずにくノ一を倒していってほぼ両者互角。そんな中、くノ一も人数が減ってきていろいろ四苦八苦するわけですけど、極めつけは「信濃忍法やどかりの術」で身ごもっている子供をくノ一同士で移しているよー。もうこの術さえあれば全然オッケーじゃん。忍者のリーダーも千姫に惚れて結局服部半蔵から千姫を守るけどイマイチ強そうじゃなかったし・・・ こんなくノ一たちをかばうのが野川由美子扮する千姫で、まさか野川由美子も脱ぐのか?なんてちょっと心配したけどそれはなく一人気高く気丈に振る舞って一安心。(なにが?)ネタバレ→生まれた子供を家康の元へと連れて行く←最後もすでに女帝の貫禄十分な野川由美子をみてちょっと恐かったのでありました。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
野川由美子 (千姫) |
若いのに貫禄十分のアンジェリーナ・ジョリーで。 |
首 (1966) | |
2007年10月 | |
第二次世界大戦中、ある坑夫が警察で取調べ中に急死する。弁護士の正木は関係者から調査を依頼され調べていくうちに死因の脳溢血がに疑問を抱き調査を進めていくのだが・・・ 小林桂樹が権力に立ち向かい事件の真相を追究していく熱血弁護士を好演したサスペンス。 戦争中の警察の横暴さや隠ぺい工作にも負けず坑夫の死の真相を暴いていく内容なのですが小林桂樹が熱血を通り越して事件のためなら何でもするという鬼気迫る感じでほとんど狂気の沙汰という精神レベルに陥っていくところが迫力満点。 見るからに性格の悪い検事役がはまっている神山繁にしてやられてムキになって無許可で死体を掘り起こし死因を自分の目で確かめようとするあたりから観ているこっちはハラハラするのですが法律を犯してまで死体の首を切り落とし東京まで持ち帰るシーンで特に首を列車に持ち込んだまではいいけれど警察の荷物検査と首が腐敗し始めて異臭を放ち始め絶体絶命というシーンではこんなにハラハラするのは久しぶりってくらい緊張しました。 こういう緊迫した感じの中に事情を知らされていないけど首を切ってくれた先生が飄々としていたりして笑いもあったりしてとても面白かったのですがこれって実話というところがまたすごいと思うのでした。 まさに事実は小説よりも奇なりという感じでしょうか? | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
小林桂樹 (正木ひろし) | 熱血漢がみなぎったポール・ジアマッティという感じで。 |
南風洋子 (滝田静江) | 炭坑の女将さんはジョアン・アレンとかにやってもらいたい。 |
蜘蛛男 (1958) |
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2004年9月 | |
女性のバラバラ死体が相次いで発見され世間を騒がせている中、美人姉妹が誘拐されるという事件が起きる。犯罪学のプロ畔柳博士に協力を仰いだ警察の捜査に探偵の明智小五郎も加わるのだったが・・・ 明智小五郎が登場しているものの少年探偵団が出てこなかったり、美術のスケッチの授業でよく見かける石膏の彫刻の中にバラバラ死体の一部を隠すという手口でちょっと大人向けの作品でした。 この映画も第一部と第二部に分かれていたけど、第一部で蜘蛛男の正体が明かされ、第二部は蜘蛛男を追い詰める展開になるのですが圧倒的に面白いのは前半ですね。最初に出てきた姉妹はもちろん助けられるのかと思っていたらあっけなく殺されちゃって蜘蛛男は次のターゲットを人気女優にしちゃうし、ネタバレ→蜘蛛男の正体は畔柳博士と想像つくんですが蜘蛛男は整形して逃亡するんですよね。←今でもこういう展開よく見かけるかもと思ったりもしました。 それに比べて後半のバレエ学校の生徒20人以上をまとめて誘拐はいくらなんでも大雑把すぎるでしょう。 今回の畔柳博士役の岡譲司といえば小津安二郎監督の傑作「非常線の女」の用心棒でかっこよかった人です。さすがに「非常線の女」から25年経つと面影なくってちょっぴり残念だったけど思わぬところで岡譲司を観られてうれしかったりもしました。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
岡譲司 (畔柳博士) |
博士とかの称号がぴったりな感じのリーアム・ニーソンで。 |
蜘蛛巣城 THRONE OF BLOOD (1957) |
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2004年5月 | |
謀反を起こした仲間を討ち取り蜘蛛巣城の近くの蜘蛛手の森に迷い込んだ鷲津武時と三木義明は森の中で物の怪に出会い「武時はやがて蜘蛛巣城の城主に、義明の子もまた城主になる。」と予言される。 妻の浅芽にそそのかされ蜘蛛巣城の主を討ち取り武時はついに城主になるのだが浅芽の欲望は満たされることなく次に城主になる義明の子の命を狙い・・・ なんでもシェークスピアの「マクベス」を戦国時代に置き換えた世界の黒沢監督作品なのですが、「マクベス」なんて全く知らなくっても十分に楽しめた(すごさを堪能)できました。ハリウッドでもジュリー・テイモア監督の「タイタス」なんてシェークスピアものがありましたけどこちらも残酷なんですけどその凄みは感じられると思いますよ。 内容は物の怪の予言と妻にそそのかされてトップに上り詰めた武将が結局また味方の謀反によって死んでしまうという話だけど、なんていうんですか、もうスケールが半端じゃないですね。蜘蛛巣城を含めた周りの城壁みたいなものまでちゃんと作っちゃっているところに昔の日本映画もハリウッド並のスケールのでかいことやってたじゃん。と感心してしまいましたよ。 物の怪も男だか女だかわからない老人風の容姿におどろおどろしいし、三船敏郎が幻覚で見る千秋実の落武者っぷりも不気味でホラーテイスト満載でこの映画はホラーなんだと気がついた。 しかし何といっても見所は世界の三船の鬼気迫る演技とラストに三船敏郎に向かって幾度となく降り注ぐ矢の嵐。ジェット・リーの「HERO」も真っ青な矢の雨っぷりはいったいどうやって撮影したんだろうと思うほど。このラストシーンだけでも観る価値あり!そんな作品なのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
三船敏郎 (鷲津武時) |
見事なやられっぷりといえばショーン・ビーンの右に出るものはいません。(しかも男前) |
山田五十鈴 (妻浅茅) |
和服が似合いそうで意外としたたかそうなリリー・テイラーで。 |
蜘蛛の街 (1950) | |
2009年12月 | |
不況の中、汚職事件の容疑者の真田が誘拐されると言う事件が発生する。いっぽうしがないサラリーマンの榊原は職を失い妻のツルヨに黙ってサンドイッチマンの仕事をしていた。そんなある日とある社長に儲けのいいサンドイッチマンの仕事の話をもらうのだが・・・ 宇野重吉の巻き込まれ型サスペンス。 宇野重吉ろ中北千枝子という夫婦もう見るからに貧しい、貧しいけれど幸せですという感じが十分伝わってくるナイスな配役。 内容はシンプル。優しい顔してあくどい事をやっている三島雅夫が誘拐した曲調にあまりにもそっくりな宇野重吉(二役)を見つけて誘拐した男に変装させ、自殺を仄めかすような行動をさせ本物は殺してやがて宇野重吉はそれに気がつき、悪党どもに家族の命を狙われるという話です。 三島雅夫は笑顔の下に時折ものすごい怖い顔をするのですが、意外と?いい人でいま問題起こすとヤバイから宇野重吉のことは手出しするなというのですが血の気の多い手下が宇野重吉のことを殺そうと躍起になるところがミソです。 中北千枝子も昭和の主婦の鑑みたいなキャラクターで夫の様子が最近おかしいかも?と薄々感づいていながらもその感情を押し殺して生活をするところなんかものすごくはまっています。 後半全ての事情を知った中北千枝子が宇野重吉を見張られているアパートから脱出させるための連係プレーなんかもこの庶民的な顔でやるから余計にスリリングになるところもよかったです。 二人の子供が天然パーマで全然似ていないハーフっぽいところがものすごく気になりましたが評判にあるヒッチコック的な内容で面白かったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
宇野重吉 (榊原六郎) | しがない感じのジョン・キューザックで。 |
中北千枝子 (榊原ツルヨ) | 普通の主婦も似合いそうなフランカ・ポテンテで。 |
三島雅夫 (社長) | やさしそうな感じでたまに悪役もやるモーガン・フリーマンで。 |
狂った野獣 (1976) |
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2004年7月 | |
8000万円相当の宝石強盗が話題になっている街なかで銀行強盗に失敗した谷村と桐野は偶然通りかかったバスを乗っ取るのだがそのバスに乗っていた速水や他の乗客に散々な目にあいながらも彼らは逃亡を続けるのだが・・・ ノンストップなバスの設定がヤン・デ・ボンの「スピード」風で面白かったー。っていうか「スピード」より面白いですこれ。何といってもバスの中だけで事が運ぶところがすばらしい。渡瀬恒彦はギターケースを持った謎めいた男の役でこやつは正義の味方なのか?と思わせつつ一度は脱出に成功した渡瀬恒彦がなんでまたバスに戻ってくるんだ?しかも窓から飛び込んでるしと思ったら正体はネタバレ→オープニングでほんの軽くふれる程度に話題に出た宝石強盗犯だったとは。(ギターケースに隠した宝石を取り戻しに来たのだ)←と伏線張り方も合格です。しかも運転手は心臓病という設定でもちろん途中発作で死んでしまうんですけど渡瀬恒彦の元テストドライバーという設定が効いて運転するんですよね。本当無駄がないと思いましたもん。乗客たちも個性的面白かったし。 渡瀬恒彦なんて中島貞夫監督によるとこの作品のために大型免許を取得したそう。しかもバスの店頭シーンも周りの反対を押し切りちゃんと自ら転倒させたところは恐れ入ったし、「鉄砲玉の美学」のキャベツの千切りも猛特訓して撮影に挑んだっていうからその努力家っぷりに渡瀬恒彦の高感度かなりアップしました。 川谷拓三も中島作品の常連だと思うんですけどしょぼいチンピラやらせたら日本一ですね。ほんとしょっぺー奴なんですけど愛嬌があって憎めないんですよね。今回だって人質のおばちゃんに叱られてたし・・・それに川谷拓三ってばクレイジーな迫力だけはあってある意味恐いけど腕っ節がめっきり弱いから渡瀬恒彦にボコボコにされちゃってっていうか本気で踏んづけられちゃってて笑っちゃいけないけど、どうしてもおかしくってやられっぷりが完璧なんですよね。 ラストも犯人と人質が変な連帯感ができちゃうところも笑えるけど、ネタバレ→隙を見せた渡瀬恒彦の宝石が人質たちにごっそり盗られちゃう←という意外な最後もよかったけど、彼女の台詞「私達の祭り終わっちゃったねー」みたいな事を言うんですよね。渡瀬恒彦は単に金だけじゃなく限界にチャレンジする男だったと知り決して後味は悪くなくむしろ爽快な気分になるのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
渡瀬恒彦 (速水伸) |
ギターケースといったらアントニオ・バンデラスで。 |
川谷拓三 (谷村三郎) |
川谷拓三はスティーヴ・ブシェミ的だと思う。 |
片桐竜次 (桐野利夫) |
腕っ節は確かに強そうなブルース・ウィリスで。 |
ぐるりのこと。 (2008) | |
2008年6月 | |
しっかり者の妻の翔子とだらしない夫のカナオ。カナオは法廷画家の仕事を初め、翔子も妊娠し幸せな日々を送っていたがある日突然子供を亡くしてしまい翔子は次第に心を病んでいき・・・ 木村多江×リリー・フランキー主演の夫婦の10年愛もの。 木村多江は確かな演技力があると思っていたので主演となれば観たいと思っていたのですが相手役がリリー・フランキーだからどうしようかなぁ。と思っていたのですが思い切って観に行ってよかったです。 木村多江は期待以上の演技をしていたし何よりよかったのがリリー・フランキー。「盲獣VS一寸法師」の時は何なんだろうかこの演技は。と思ったものですが、今回のカナオという役はリリーさんそのものではないだろうか?と思えるくらい自然体で演技なのか素なのか境界線が分からいのですがそれがものすごくプラスに働いていたと思います。一見合いそうにない木村多江とのコンビネーションも絶妙でよかったです。 オープニングの夫婦のどうでもいい会話。木村多江が鬱病から立ち直る時のリリーさんの優しさとおちゃらけ。鬱から立ち直る時など特別感動するということはなかったのですが、結婚とか夫婦ってこういうものなんだろうなぁという空気感がリアルなところがこの映画のポイントなんだと思います。既婚の人と未婚の人の感想はきっと違うのではないかと思いました。 法廷画家という今までにない職業を持ってきたことによって話しにも広がりが出来ていて法廷シーンも最近ではよく見かけるようになった連続幼女誘拐殺人事件とか地下鉄の毒ガス事件とかを取り上げてバブルがはじけた90年代初期からの世界観もよかったです。(特に連続幼女誘拐殺人事件の犯人を演じた加瀬亮が不気味でいい。) 木村多江の実家のゴタゴタについてはなくてもよかったかなと感じましたけど、倍賞美津子が息子(寺島進)の嫁にズバリいうところが相変わらずカッコよかったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
木村多江 (佐藤翔子) | やはりここはナオミ・ワッツで。 |
リリー・フランキー (佐藤カナオ) | ゆるい感じのジェイソン・リーで。 |
黒い家 THE BLACK HOUSE (1999) | |
2006年8月 | |
生命保険会社に勤める若槻はある日匿名で「自殺は保険金が下りるか?」との電話を受ける。その後、若槻を指名した顧客の菰田という家に行くがその家の息子の首吊り死体を発見してしまい・・・ 保険金詐欺を次々に企む夫婦に狙われた保険会社の顛末を描いたサイコ・ホラー。 これ大竹しのぶがすごいと噂に聞いていて一回観てみたいと思っていたのですがちょうどケーブルテレビでやっていたので観てみましたが笑っちゃうくらい怪演していてこれは観てよかったです。 保険金は自殺では下りないと思っていたのですが条件を満たせばもらえたりいろいろと保険についてちょっと知識がついたりもしてお得な作品なのですが大竹しのぶが本格的に出てくるまで夫の西村雅彦がそれなりに不気味に怪演していたのですがちょっと長く感じました。 やっぱり面白くなってくるのは黄色の色々なバリエーションの洋服で平山みきを彷彿とさせる大竹しのぶが出てきてから。趣味のボーリングの球ももちろん黄色。ストライク獲った時の無表情のガッツポーズがたまりません。常に目が死んでいて保険金が下りないことを逆恨みされた内野聖陽のことを調べ上げて手始めに怪FAXを送りつけてそのうち家に忍び込んで部屋を荒らすわ全く関係ない彼女の田中美里を新聞紙に包んで死体の散乱する不気味な家の風呂に監禁と怖すぎます。 最後の内野聖陽との一騎打ち?もマグロ解体するときのような包丁持って会社に乗り込んできて「ウォー!」とか「うぉりゃー!」の雄叫びしか記憶に残っていませんがクライマックスにはなぜか「乳しゃぶれ!」ってこれ楽しすぎます。 原作はちゃんと怖いみたいなのですが、大竹しのぶもの怪演も負けてないんじゃないかな?と思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
内野聖陽 (若槻慎二) | 真面目なイメージのエリック・バナで。 |
大竹しのぶ (菰田幸子) | ジェシカ・ラングもキレたら怖そうで。 |
西村雅彦 (菰田重蔵 ) | 動きが怪しいフリップ・シーモア・ホフマンで。 |
田中美里 (黒沢恵 ) | いつも何かに巻き込まれている感じのローラ・リニーで。 |
黒い画集 あるサラリーマンの証言 (1955) | |
2009年10月 | |
妻と二人の子供を持ち、有名企業の課長でもある貞一郎は同じ課の千恵子と不倫の関係で、ある晩千恵子の家から帰宅途中近所の保険外交員と偶然出ってしまう。翌日、その周辺で殺人事件が起き保険外交員が逮捕されてしまい、その男は貞一郎に会ったと証言するが貞一郎は不倫が明るみに出るのを恐れ、保険外交員とは会っていないと言ってしまい・・・ 松本清張の小市民サスペンス。 浮気がばれないためについた嘘がやがて大きなしっぺ返しになって帰ってくるという設定だけで後味の悪さを予感しましたが、想定どおりの感じで良く出来ている感じなのですがすっきりはしません。 小林桂樹も大きな企業の係長なのですが性格はちょっとわがままでその辺にいつおじさんという設定が綺麗にはまっていたなと思いました。 この映画何が怖いかって、ちょっと名の通った会社に勤めている人が不祥事を起こすとこぞって新聞ネタに取り上げられてしまい、社会の信用はがた落ちというところ。だから小林桂樹は思わず自分の保身のために嘘をついてしまうんですね。この辺はものすごい時代性を感じます。 浮気相手の原知佐子も割と今どきという感じがして引っ越し先で大学生の江原達治と知り合い、入り浸ってしまう原知佐子にやきもきするるも本人はいたって平気、なところはいつの時代も若者と中年の間では埋められないギャップがあるんだなと思いました。 全然関係ない江原達治が不倫をネタに脅迫を仕掛けてきて、この一見関係ない感じの出来事が小林桂樹をどん底まで突き落とすという展開は松本清張らしさが出ていたように感じました。 奥さん役の中北千枝子は夫が浮気しているなどとは思うことすらなく、保険外交員とその奥さんが気の毒で仕方がないという相変わらず地味な感じながらもこの奥さんの後日談を知りたくなるような存在感抜群の演技をしていて一番印象深かったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
小林桂樹 (石野貞一郎) | 気の弱い設定がぴったりなウィリアム・H・メイシーで。 |
原知佐子 (梅谷千恵子) | ダイアン・クルーガーあたりにお願いしたい。 |
中北千枝子 (石野邦子) | 普通の主婦も全然OKなマーシャ・ゲイ・ハーデンで。 |
黒い画集 ある遭難 DEATH ON THE MOUNTAIN (1961) | |
2009年11月 | |
ベテランの江田と登山経験のある岩瀬そして登山未経験の浦橋というとある会社の登山パーティは遭難し岩瀬だけが命を失い、岩瀬の姉の疑問により従兄弟の槙田と江田は再び遭難した山に登るのだが・・・ 松本清張の山岳ミステリー。 山岳ミステリーものは日本映画黄金期に結構作られていて「氷壁」もそうですが面白かった印象があるのですが、これは後半になるにつれてグッと面白くなっています。 前半は真面目キャラでおなじみ?の登山未経験の和田孝が追悼という形で山岳雑誌に載せた文章をもとに回顧形式で天候が悪かったし死んだ先輩も体調が妙に悪そうだったと書いて誰も悪くないように印象付ける展開。 がしかし登山初心者のものがいるのに割りとこなれていた弟だけが死ぬのはおかしいと単純な疑問を持った香川京子のおかげで一気にサスペンスモードにスイッチオン。実際に雪山でロケをしたみたいで迫力も抜群。 香川京子の従兄弟の土屋嘉男とリーダーだった伊藤久哉は同僚が死んだ場所に花を手向けに行くのですが、土屋嘉男は遠まわしに伊藤久哉に逆恨みを晴らそうとでも思っているのではないかと回りくどい嫌味たっぷりな言動をして伊藤久哉を追いつめていくところは妙に説得力があります。土屋嘉男は悪い顔をしているので。 ネタバレ→と思ったら自分の妻と不倫していた同僚を遠まわしに死に追いやるように計算した伊藤久哉の完全犯罪だったというすごい展開に。全てを土田嘉男に見透かされた伊藤久哉は土田嘉男を殺そうとするのですがその時の表情がいきなりダークになって怖いです。あの思いやりのある誠実そうな顔からは想像できない豹変っぷりにどんでん返しがおもしろかったなと思うのでした。← 最後も壮絶でありむなしくもある終わり方も好きです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
伊藤久哉 (江田昌利) | クリスチャン・ベールあたりにやってもらいたい。 |
土屋嘉男 (槙田二郎) | ちょっと悪い顔をしているラッセル・クロウで。 |
黒い画集 第二話 寒流 STRUCTURE OF HATE (1961) | |
2009年11月 | |
安井銀行の常務の桑山によって池袋店の支店長に抜擢された沖野は料亭の女将、前川奈美に頼まれた融資の話をきっかけに二人は親しくなるのだが・・・ 松本清張お馴染みの「黒い画集」シリーズ。 今までの「黒い画集」シリーズとはちょっと変わっていて殺人事件は起きないのですがとにかく池部良が気の毒すぎる、池部良残酷物語といった内容になっていて観終わっても嫌な感じが残っていてスッキリしません。 池部良の役どころとしては同級生ながら親の七光りで常務になっている平田昭彦扮に支店長に大抜擢され家に帰れば二人の子供もいるという良さそうな感じなのですが、妻とは完全に冷め切っていて子供もお父さんは家にいなくても別にという切ない感じでそこに現われた新珠三千代に当然ながらぞっこんになります。 がそんな美人の新珠三千代に一目会った女好きの平田昭彦の嫉妬心によって災難の連続。いきなり地方の支店長にされたりするのは当たり前で納得いかないというかこちらも嫉妬の池部良は二人の関係を探偵に頼んで素行調査。 案の定いつの間にか出来ていてその証拠を大株主の志村喬に知らせるが最初は乗り気だった志村喬も何故か激怒。ネタバレ→最終的に平田昭彦と敵対する派閥に新珠三千代に不正に融資していることを垂れ込み逆転勝利かと思わせといて闇の力で全てを葬りさられた苦い終わり方。やるせません。← 池部良は爽やか過ぎてもうひとつ悲壮感にかける気がしました。ここは小林桂樹のような人のほうが良かった気がします。逆に平田昭彦はパーフェクトすぎる配役で怖いくらいで、こういう役をやらせたら天下一なのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
池部良 (沖野一郎) | ユアン・マクレガーあたりにお願いしたい。 |
新珠三千代 (前川奈美) | 若女将が似合いそうなグウィネス・パルトロウで。 |
平田昭彦 (桑山英己) | ポール・ベタニーがぴったりです。 |
黒い十人の女 TEN BLACK WOMEN (1961) | |
2007年1月 | |
TVプロデューサーの風松吉は妻の双葉がありながら業界関係者9人の女と浮気をしていた。松吉のことをあきらめられない十人の女達は松吉を殺すことを思いつくが・・・ 市川崑監督の豪華女優陣共演で有名な作品をようやくちゃんと観ることが出来ました。 十人の女とはいっても半分はその他大勢といった感じで後ろでワーワーまくし立てるので実質的には五人の女ですけどそれでも、山本富士子、岸恵子、宮城まり子、中村玉緒に岸田今日子という異常に豪華な共演は観ていて楽しいものです。 それぞれキャラクターの性格も被っていないところもいいですね。中村玉緒はコマーシャル・ガールという役どころで他の愛人にケンカを吹っかけ取っ組み合いの激しいケンカをする気象の激しさで性格も悪く十人の中だと一番のトラブルメーカーといういつもおっとりしている印象があったから今回はとても新鮮でした。 岸田今日子はいつもどおり冷静なんだけどどこか恨めしい感じがするところが安心して観ていられます。 松吉は愛嬌と愛想があって仕事も出来る(多分)、そのくせ女達に殺されると分かったらうろたえてしまうというキャラクターが船越英二の他に誰がしっくりくか考えられないほどはまっていてドロドロした内容なんですけど微笑ましかったです。船越英二って自業自得で痛い目に会うキャラクターがぴったりなんですけど応援したくなります。 結局は妻の山本富士子と一番目の愛人岸恵子に躍らされてる節はあって宮城まり子ひとりが幽霊となってしまうのですけど本当に松吉のことを思っていたのは宮城まり子だけなんですよね。最後の岸恵子のシーンも印象的でこれ観れば観るほど新しい発見がありそうな作品だと思います。 あと十人の女達の名前が数字に関係している遊び心もいい感じです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
船越英二 (風松吉) | ハリウッドの色男ジョージ・クルーニーで。 |
岸恵子 (石ノ下市子) | 劇団の女優役にぴったりな感じのケイト・ブランシェットに願いしたい。 |
山本富士子 (風双葉) | しっかりものの奥さん役にはミシェル・ファイファーで。 |
宮城まり子 (三輪子) | いい人そうなマリサ・トメイあたりで。 |
中村玉緒 (四村塩) | ケンカも強そうなキルスティン・ダンストで。 |
岸田今日子 (後藤五夜子) | ここのところ活躍中のフェリシティ・ハフマンで。 |
黒い樹海 (1960) | |
2009年9月 | |
姉と二人暮しをしている笠原祥子はある日姉が山形の親戚の家に行くと言って旅立ったが翌日、全く別の場所で交通事故で死んだと連絡を受ける。姉の不審な交通事故死が気になる祥子は独自に調査を始めるのだが・・・ 叶順子主演の松本清張原作作品。 不幸な役をやらせたら天下一品の叶順子だけあってこの巻き込まれ型サスペンスは大映映画としては出演者は地味ながらも面白かったです。 謎めいた事故死をした姉の死の真相を追っていく叶順子に突きつけられtる自分の知らなかったもうひとつの姉の顔、そんな姉の事を知っていた姉の同僚の謎の死。交通事故に偶然居合わせた人に情報を聞きだそうとするとした矢先にその人物が誰かに殺されてしまったりとサスペンスのお手本のような展開。 姉の殺された同僚の弟という新聞記者の藤巻潤とタッグを組んで事件を追うのですがそんな藤巻潤とお互いこんな状況でもほのかな恋心が・・・という時に藤巻潤にも秘密があったりと次々といろいろなことが起こり飽きさせません。 明らかに怪しく最初から犯人度100%の根上淳は何故かオネエ言葉で叶順子にセクハラしまくりさらには女ったらしというよく分からない設定なのですが、クライマックスの性悪な正体が明かされた根上淳と叶順子との攻防はスリリングです。 オチというかきっかけも偶然の積み重なりで今回の事件が起きてしまったという松本清張らしいオチで」ございました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
叶順子 (笠原祥子) | 不幸な役が似合うジェニファー・コネリーで。 |
藤巻潤 (吉井正己) | ライアン・フィリップあたりにお願いしたい。 |
根上淳 (妹尾郁夫) | 一癖も二癖もあるフィリップ・シーモア・ホフマンで。 |
黒い乳房 (1960) | |
2007年1月 | |
母親が交通事故に遭い長女の村田桂子は自分の父親が殺人犯で刑務所に妹の芳子は実は父親が違い、大企業の社長であることを知らされる。桂子は妹に偽り財産を狙うのだが・・・ 新東宝の悪女映画。 出てきた瞬間からタバコを吸う姿ひとつとっても見た目は綺麗なんだけどどこか品がないというか裏の世界のやばい仕事しているんだろうなぁという雰囲気をかもし出していると思ったらやっぱりドル買いやら夜は当然飲み屋で働いているような女でこの桂子が次々と悪巧みをしてのしあがっていくところが悪女の極みといった感じでここまでくると気持ちがいいです。桂子の心の声もいいアクセントになっていました。 そんな姉とは対照的に看護婦として真面目に働くのは新東宝の清純派の池内淳子。偽って社長の家に入り込んだ姉は妹の池内淳子をいい気になって住まわせてあげるのですが、いい行いが自然に振舞えるから自然と本当の父親である社長や秘書の菅原文太に気に入られて姉は焦って嫉妬して妹までも殺そうとするところは昼ドラなみのドロドロさ。 大企業の中でも突然社長の娘が現れたからいろいろ画策したり、姉の付き合っていたチンピラも執拗に付きまとって話も一筋縄ではいかないところが新東宝らしさもあるけど斬新な部分もあって楽しかったです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
小畑絹子 (村田桂子) | 見た目、素行が悪そうなアーシア・アルジェントで。 |
池内淳子 (村田芳子) | 悪いこととは縁のなさそうなサマンサ・モートンで。 |
菅原文太 (谷口弘) | 社長秘書とか案外似合いそうなポール・ベタニーで。 |
クローズZERO CROWS ZERO (2007) | |
2009年5月 | |
悪名高い鈴蘭学園に転校してきた滝谷源治。源治は学園の制覇を狙い最大勢力の芹沢多摩雄に戦いを挑もうとするのだが・・・ 続編から観たのですがとても面白かったので一作目を観ました。 一作目を観ると色々と続編でちょっと分からなかったところもなるほどと思えるところがあって特に、桐谷健太にまつわるエピソードも満載で、小栗旬と幼なじみだけど今は山田孝之の仲間だったりセメダインのネタとか今回のケンカで出来たものかなと思っていたらそうじゃなかったり、勉強になりました。 アクションシーンは続編の法が派手ですが内容は一作目の方が源治が仲間を集めていく過程が描かれていて個人的に内容は一作目の方が好きかな。 続編ではすっかり山田孝之のファンになりましたけれど、一作目を観たらやべきょうすけの出番がもの多くてすごくよかったです。あの小者感漂うチンピラっぷりというかチキンっぷりというか三枚目のキャラクターがこんなにはまる人は滅多にいないんではないかと言うはまりっぷり。あの軽そうなところもものすごくよかったです。 クライマックス前、小栗旬に気合を入れるため?に腹にパンチを入れるものの小栗旬は「イテッ」と軽く言う程度で全然パンチが効いていないところとかもボケていますがちょっと切ない感じもよかったです。 高岡蒼甫は続編で出番が少なかったので一作目ではそれなりに出番があったのかなと期待していたらむしろ一作目の方が出番が少ない感じで残念。「パッチギ」の時から学ラン似合っていたのでもうちょっと出番があればよかったかなと思いました。 続編でいい味出していたゴリメンが一作目から笑かしてくれて最高でした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
小栗旬 (滝谷源治) | ユアン・マクレガーあたりにやってもらいたい。 |
やべきょうすけ (片桐拳) | 面白いニコラス・ケイジで。 |
山田孝之 (芹沢多摩雄) | イーサン・ホークもこういう役をやれば好きになれると思います。 |
クローズZERO II CROWS ZERO II (2009) | |
2009年5月 | |
源治が芹沢を倒して数ヶ月、かつての鈴蘭のトップだった川西が少年院から出所したことにより鳴海が率いる鳳泉との休戦協定が破られる事件が発生し・・・ 三池監督の「クローズZERO」シリーズ第二弾にして完結編。 前作を観ていないのですが映画の日に誘われて観に行きました。割と何でも観るほ方なので。 ということでスキンヘッド軍団はとりあえず今回初登場。前作で小栗旬が山田孝之を倒したというのは何となく分かっている程度で、前作は校内での精力争いが今回は学校同士の争いにパワーアップしたんだなと思って鑑賞したのですが大体そんな感じで前作を観ていなくてもほとんど問題ありません。 しかも期待していなかった分意外と面白かったです。面白かったというよりは雰囲気が70年代のやくざ映画に通じるものがあって音楽も頭脳警察風なテイストが個人的によかったのかもしれません。 こんなに胸毛がある高校生がいるわけがない。(しかも何人も。外人のハイスクールだっていません。)とか思っちゃいけないわけです。警察も教師も出てこないファンタジーな世界の話なのですから。 仲間意外に学校で求心力のない小栗旬が鳳泉相手に仲間が集まらず一人で乗り込むけれど最後はみんな来てくれるというベタでストーリー性もあまり感じられないのですがとにかく勢いがあるところがいいんですね。クライマックスの乱闘などスキンヘッド軍団が誰が誰だか分からないのが持ったいないのですがガチンコ感に溢れていて気持ちがよかったです。 あと、黒木メイサは余計かなと思っていたのですが、父親の岸谷五朗にやられて不機嫌な小栗旬との一連のやりとり。 黒木メイサに慰められて鬱陶しい小栗旬が「お前俺の何なんだよ。」 黒木メイサ「彼女のつもりだけど。」 小栗旬「彼女だったらやらせろよ。」 黒木メイサ「いいよ。」 小栗旬予想外の答えに「えっ。ちょっと今日は腰が痛いんで帰るわ。」 という意外とこういう事に関しては純情なんだという甘酸っぱいエピソードが素敵でした。 鳳泉のリーダーも愛嬌があって、目つきはギラギラしていておっかない感じはするけど案外愛嬌があって単なる野蛮人じゃないところがあって両者ともに仁義があるところにグッときました。 一作目観る気はなかったけれどこれは観なくちゃけないなと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
金子ノブアキ (鳴海大我) | コリン・ファレルあたりにお願いしたい。 |
クローンは故郷をめざす THE CLONE RETURNS TO THE HOMELAND (2008) | |
2012年3月 | |
殉職した宇宙飛行士の高原。彼はクローン技術によってよみがえるのだが、子供のころに事故で亡くした双子の弟の記憶がよみがえり・・・ 及川光博主演のSFドラマ。 これダンカン・ジョーンズの「月に囚われた男」のような感じでもあるのですが、それとは違って田舎町での過去のトラウマ的な内容が繰り広げられていくので何となくまったりとした感じがあっていい悪いは別として、これは完全に好みと合いませんでした。 何回眠気に襲われたか数え切れませんよ。もしかしたら眠りにいざなうヒーリングムービーとしてならいいかもしれません。「惑星ソラリス」的な感じで。 こういうジャンルのSFって本当にSFが好きな人がみると感心するんだろうなと思います。 個人的によかったのはお母さん役の石田えりですかね。存在感とレベルが全然違います。あと嶋田久作はやっぱり独特な雰囲気を醸し出していて和製ウド・キアーっぽい感じがあり嫌いじゃないんですよね。 記憶がほとんどないのでリベンジして観直したい感じです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
及川光博 (高原耕平) | 雰囲気はキリアン・マーフィーといった感じで。 |
黒線地帯 (1960) | |
2005年11月 | |
トップ屋の町田広二は売春組織の特ダネを追い女を追っていたが女占い師に導かれてとある宿に案内される。そこで町田は睡眠薬を飲まされ翌朝目覚めると隣に見知らぬ女が死んでいた。町田は容疑者となるが無実を晴らすため黒線の秘密を追い始めるのだが・・・ 石井輝男監督の一連の「地帯」シリーズの一本。以前観た「セクシー地帯(ライン)」が最高に面白かったのでこの映画も面白いはずと予想していたけれど予想通りの面白さでした。主役は天知茂だったし。 天知茂が手がかりを握る男を追っているうちに迷い込むマネキン工場。その中で行われている闇賭博とか、なんでいきなりマネキン工場?って普通の監督ならそんなことも思ったりもするのですがそう思わせないで、売春組織に麻薬とくれば裏で糸を引いている黒社会の存在は一歩大通りの裏に入るとそんなことが普通にありますよ。という感じをさらっと描いてしまうところを見ると石井輝男監督は残虐ものも得意みたいだけどこういったアングラ感も描かせたら一級という印象を受けます。 でマネキン工場で出会ったのがストリッパーの三原葉子。なぜか組織のことを知っていて最終的に天知茂の味方になるわけなんですけど三原葉子のすれっからしな役をやらせたら相当なものなんですけど、カラッとしていて天知茂がピンチの時もおまじないのような仕草をしてきっと上手くいく!と勇気付けるところとかすごく高感度高いです。 あとライバルのトップ屋、細川俊夫も途中で天知茂が容疑者だということに気がついたけど同業者のよしみで見逃してあげるところも男の友情って感じのにくい演出でよかったです。 あと1960年代の秘密売春組織って女の子が集まる人形教室も密かにそういう場所になっていたんだなぁとちょっと勉強になりました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
天知茂 (町田広二) | 「地帯」シリーズの天知茂の役はショーン・ビーンを定番にしたい。 |
三原葉子 (麻耶) | 「地帯」シリーズの三原葉子の役はむっちり系のドリュー・バリモアを定番にしたい。 |
グロテスク GROTESQUE (2008) | |
2009年9月 | |
デート帰りのカップルのアキと和男は突然男に襲われ気を失ってしまう。目を醒ますと二人は手足を縛られ拷問されるところで・・・ 確か、イギリスで18歳以上鑑賞禁止という要するに上映禁止になった日本の拷問映画。 どちらかというと「ホステル」よりな感じもしなくはないのですがこの映画は拷問する謎の男の目的が何だか分からないので、ただただ拷問シーンを見せられるいるだけという感じで内容がないのでこういうところが上映禁止になった理由だなと感じましたし、ストーリー性がないので観ていて辛いものがありました。内容がないので恋人の指を電ノコで切って切った指を糸で通して彼からのプレゼントとか言ってしまうところは異常なだけなのです。 ヒロインの女の子は可愛らしいのに指を切られたり腕を切られたりと大奮闘。「愛のむきだし」の時も思ったのですが最近の若い子は体当たりですね。あと拷問する謎の男の目つきが尋常なない感じでものすごく怖かったです。 人体破壊描写については欧米のスプラッターものと比べてもよく出来ていたと思うのであとはストーリー性があればもうちょっとなんとかなったんじゃないかなと思うのでいs田。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! (ストーリー性がないので今回はなし) |
黒蜥蜴 (1962) |
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2004年9月 | |
「黒蜥蜴」といえば丸山明宏(美輪明宏)ですが今回は京マチ子版の「黒蜥蜴」です。この京マチ子版を観て三島由紀夫が戯曲化した美輪版はいかによく出来ていたかということ。 早苗と黒蜥蜴の会話から始まり、肝心というか重要なところが抜けちゃっているんですよ。明智が偶然行った黒蜥蜴の経営する秘密クラブでの出会いが抜けていたり雨宮が黒蜥蜴の愛の奴隷となるきっかけのエピソードがごっそり抜けているので、最後に雨宮が黒蜥蜴に愛していながらも相手にされないから早苗とともに自ら剥製にされるような行動に出た時の「死んだら偽物の愛が本物の愛に変わる」てところが薄っぺらなものになっているんですよね。 京マチ子の黒蜥蜴は悪くはなくボンテージ衣装に身をくるみ鞭を打ったり、男装したりのミュージカル仕立てである意味とんでも系でむしろ京マチ子らしさというかが出ていて悪くなかったんですよ。活躍した手下に宝石を与えたりして気前よかったし。笑っちゃうのが「黄色のワニ」とか爬虫類の称号もつけてあげるのね。そんな称号いらないから宝石よこせっつーのと思ってしまいましたよ。 京マチ子はよかったけどそれ以外の配役がもうなっていないんですよ。早苗の父親もなにかっていうと金だの娘だのしゃしゃり出てきてうっとうしし、早苗もネタバレ→偽者の早苗を心配してアジトにやってきて捕まる←なんて間抜けなことやっているし、雨宮役の川口浩なんて印象ほとんどありません。 極めつけは明智役の大木実が全然ダメですよ。自惚れが強くって下世話なんですよ。しかも明智探偵事務所がちらっと出てくるんですけどそれが雑居ビルの一室で部下もいるんですよね。なんか夢が壊れたっていうのかなぁ。そんな現実的な明智小五郎なんて見たくなかったですよ。大木実は明智なんかの正義の役より悪党のNo.2あたりが適役だなぁと感じたのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! (丸山明宏版でやったので今回はなし) |
黒蜥蜴 KUROTOKAGE (1968) |
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2003年12月 | |
一億二千万円はくだらない宝石「エジプトの星」を狙って黒蜥蜴は宝石商の娘岩瀬早苗を誘拐する。しかし探偵、明智小五郎の活躍で早苗は無事戻る。それからしばらくして再び早苗が誘拐されてしまい・・・ 三輪明宏いや丸山明宏35年前から変わってませんねぇ、光り物が似合うところも雰囲気も声も全てが。三島由紀夫が丸山明宏のために書いたというだけあって、なるほどはまっていますし、今現在も舞台でこの黒蜥蜴を演じているということに納得です。 早苗誘拐事件を軸に黒蜥蜴と明智小五郎の騙しあいを中心に物語は展開してきますけど、警察の捜査や追っ手をあっさりやり過ごす黒蜥蜴の怪盗っぷりがルパンのようで痛快です。実際ルパンぽくスクリーンにでかでかと「T・O・K・Y・O東京」と表示させたりしてますしね。 登場人物も黒蜥蜴に愛されたいがために裏切り自ら剥製になろうとする雨宮や早苗の家の家政婦に変装して黒蜥蜴の暗躍を手伝う蛇使いの女。しかもこの蛇使い、本性を現したとき(蛇を使う時)目が金色に輝いたりもする。など強烈な人たちがじゃんじゃん出てきて楽しいです。明智小五郎役の木村功が黒蜥蜴と好敵手って設定にもうひとつインパクトにかけてたと思うんですけどね。ヒロインが松岡きっこってのもまたすごい、彼女当時はすごくみずみずしかったんですね。いまでいうと仲間由紀江みたいな感じですかね。 明智が仕掛けた罠ネタバレ→誘拐した早苗は桜山葉子というそっくりさんだった。←という強引な設定はいただけなかったけど、西陣織のソファーなど和と洋の強引なコラボレーション家具とかセットも舞台的でインパクトがあって興味深かったです。最後のほうの黒蜥蜴なんてベルバラみたいだったし。三輪明宏この先も黒蜥蜴を演じ続けてほしいと思うのでした。 |
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2回目のコメント | |
2004年9月 | |
池袋の新文芸座で「江戸川乱歩映画祭」が開催されていてまた「黒蜥蜴」を観る機会があったのですが映画館は美輪明宏ファンと思われるおばさま達で満員でした。 改めて観なおしてみると実際舞台になっていますが、よく出来た舞台を観ているような作品ですね。愛するがゆえに黒蜥蜴の奴隷になる青年、雨宮がどのようないきさつで黒蜥蜴の手下になったかのエピソードがちゃんと描かれているし、明智の台詞「追っているつもりが追われているのか。」黒蜥蜴の台詞「追われているつもりが追っていいるのか。」、はもって「最後に勝つのはこっちさ。」とかネタバレ→にせものの←捕まった早苗と雨宮の「にせものの愛が本物の愛に変わる。」なんて映画向きじゃない台詞を見事に取り入れる三島由紀夫はすごいと思います。 木村功も初めて観たときはずいぶんと地味な印象を受けたのですが、美輪明宏の十分すぎる存在感というかゴージャス感(西陣織のソファーとダイヤなんかの宝石和と洋のゴージャスなものが似合うのは彼しかいません)と対照的に普通のスーツ一丁で控えめな木村功の存在が改めて観たらいいバランスなんだと気づいてキャスティングもばっちりなんだなと思いました。 そしてつい最近、京マチ子版「黒蜥蜴」を鑑賞したのですが、それはまた後日ということで・・・ |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
丸山明宏 (黒蜥蜴【緑川夫人】) |
この役だけははまりそうな人っていないと思うんですけどあえて言うなら、レナ・オリンとかレベッカ・デモーネイあたりかな? |
木村功 (明智小五郎) |
紳士的で頭の切れそうなヒュー・ジャックマンで。 |
川津祐介 (雨宮潤一) |
ちょっと陰のある青年役にぴったりのジェームズ・フランコで。 |
松岡きっこ (岩瀬早苗) |
「アメリカン・ビューティー」の時のみずみずしさのミーナ・スヴァーリで。 |
黒の試走車(テストカー) シリーズ第1作 (1962) |
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2004年2月 | |
タイガー社が極秘で新車を開発しているが、試走中に事故を起こしてしまった。しかしこのことが新聞に掲載されたことにより情報が漏洩していることが発覚。企画部長の小野田と朝比奈はライバル会社ヤマトのスパイではないかと疑う。朝比奈はヤマトの本部長馬渡のなじみのバーに恋人の昌子を潜入させヤマトの情報を入手しようとするが・・・ なんでもサラリーマン・サスペンス「黒」シリーズとして当時結構人気あったらしいシリーズの記念すべき第1作目。 さすがに40年以上前の作品とあって試走車と書いてテストカーと読ませたり、車の名前が「パイオニア」だったりと時代を感じさせますが企業同士のスパイ合戦がとにかく壮絶なのです。 企画部って当時は産業スパイ部門だったのか?企画そっちのけでゆすりや脅しなんて朝飯前、ライバル企業の動向を探るのに隣のビルから会議を盗撮してそのビデオテープを読唇術で使って内容を探ったり、愛人との情事を盗撮して脅し情報を手に入れたり、新聞記者を使ってライバルを陥れたりする活動は敵も味方も含めてCIAも真っ青の活動内容で実際こんなことしていたらと思うとぞっとします。 朝比奈も最初は会社のためにと恋人の昌子に情報入手のためにライバル会社の企画本部長と寝ろと平然と言い放つ非情さ。昌子も「やってもいいけど、これをやったら私達終わりよ・・・」って言いたくなるのもわかります。「セクシー地帯」の時もそうだったけどこの当時はむっちりめで気が強い娘っ子がもてたのかなぁ?現在とは大違い。 ラストネタバレ→無事、ライバル会社に勝ち順調に売り上げを伸ばすタイガー社だったけど自分のしていることに嫌気がさし会社を辞め昌子とよりを戻す朝比奈。その二人を通り過ぎる真っ白な新車の「パイオニア」を見て、「あの車は真っ黒に汚れているよ・・・」←とつぶやく台詞に「黒」シリーズの意味が凝縮されていると同時に田宮二郎だからこそ許せるキザな台詞に感心するのでした。 体育会系の上司役の高松英郎や弱気な社長の息子役の船越英二という配役もばっちり決まっていてこれまた見所のひとつですよ。 |
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2回目のコメント | |
2005年2月 | |
「妻は告白する」と同時上映だったので一度観たけどついつい観てしまいました。一度ビデオで観た作品でもやっぱりスクリーンで観るとしゃきっとした気持ちで観られるからいいです。 一回目に観たのがちょうど一年位前なんですが邦画デビューして一年とちょっと。二回目も当然楽しめましたが知識もちょこっとついてから見直すと新たな発見がありますね。ネタバレ→船越英二を陥れる←バーのママが「巨人と玩具」で川口浩の彼女だった西川峰子似の人だったりするのを発見すると「あ、西川峰子似の彼女だ!」とちょっとうれしい気分になるんですよね。昔は映画が娯楽でじゃんじゃん作られては二本立てで公開されていたということで昔の邦画はちょくちょく見かける脇役の人たちの顔と名前を一致させるのが密かな楽しみでもあるのです。 今回の増村監督特集でたびたび高松英郎が上司役で出てて来るのですが、仕事をしていく上でこういう多少強引なんだけど頼りがいがある上司像に憧れます。憧れるんですけどあくまでも前半の高松英郎に・・・です。そうなんです、高松英郎って前半は後輩や新人君に本当親切なんですけど後半いきなり会社のためなら人が辞めようと死のうと関係ない非情というより狂気の沙汰とも思える言動するからこれさえなければ本当に理想の上司なのです。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
田宮二郎 (朝比奈豊) |
エリートがよく似合う、シュード・ロウで。 |
叶順子 (宇佐美昌子) |
むっちりと言ったらこの人、レニー・ゼルウィガーで。 |
高松英郎 (小野田透) |
体育会系のイメージのショーン・ビーンで。 |
船越英二 (平木公男) |
内気な役得意そうなジム・カヴィーゼルで。 |
黒の報告書 シリーズ第2作 (1963) |
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2004年3月 | |
食品会社の社長が自宅で殺害され、妻の愛人の人見が逮捕される。検察の城戸は人見を有罪にすれば出世は確実で人見の犯行であることは確実だった。しかし容疑者に凄腕の山室弁護士がついたことから城戸は窮地に追い込まれる・・・ 前作とは全く別物の「黒」シリーズ第2段。 宇津井健がもうさわやかすぎて検事というよりむしろ弁護士の方がいいんじゃないか?と思うほど。実際、宇津井健が激怒してもあまり怖くないんだもの。だけどこのお人よしで検事としての物足りなさが後半に聞いてくるんですよね。殺された社長にも愛人綾子がいて綾子は妻のみゆきとその愛人、人見を憎んでいて捜査にも協力的だけど、人見についた弁護士に買収されて法廷で偽証し城戸は完全に出鼻をくじかれる。と展開はわかりやすいけどなぜか物語に入り込んでいってしまうんですよね。 叶順子のふてぶてしさというか金に思わずなびいて偽証する(これが憎たらしい)なんて魔性っぷりも前作の「黒の試走車」のときよりパワーアップしていて魔性の女恐るべしと思うのでした。 悪徳弁護士役の小沢栄太郎がこれまた上手い。裏で証人を脅し、金でつり偽証で裁判のつじつまを合わせていく手腕の憎々しいこと。現代じゃこんな手法は通用しないと思うけど、昭和30年代後半の時代だったらこんな裏工作も通用したんだろうなぁとしみじみ思うのでありました。 終盤ネタバレ→人見は無罪になって城戸は物的証拠や新たな証人探しに奔走してついに証人を探し出し、綾子も偽証罪で捕まっていいから本当のことを話すというもすも時間切れ、城戸は青森に飛ばされてしまう。←という苦いラストもそんじょそこらの生ぬるい法廷サスペンスとは一線を画していていい感じ。「黒」シリーズは大人のためのサスペンスなのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
宇津井健 (城戸明) |
ジョン・キューザックで。いい人なんだけど気が弱い感じが。 |
叶順子 (片岡綾子) |
魔性の香りがプンプンするエヴァ・メンデスで。 |
小沢栄太郎 (山室竜平) |
悪徳がつく役はお手の者って感じのゲイリー・シニーズで。 |
黒の札束 シリーズ第3作 (1963) |
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2004年4月 | |
リストラが続くアジア化工で働くエリートサラリーマン桧山はある日以前取引のあった印刷会社の宮川から一千万円の偽札を作ったので百万円で買い取ってほしいと話を持ちかけられる。桧山は恋人の瑛子に事業を始めるという口実で金を借り信頼のおける大学時代の親友、石渡と二人で作戦実行する矢先石渡の妻千鶴子とその愛人山口に偽札のことがばれてしまい4人で換金することになる。初めはうまくいっていた換金作業もやがて警察の捜査の手が近くまで迫っているのだった・・・ サラリーマン・サスペンスシリーズ第三弾。このシリーズって企業人の矛盾や苦悩を描いた作品だったような気がするんですけど(第一作目は産業スパイ、第二作目は検事)今回はそんなところといえば冒頭のリストラ位であとはいかに偽札をさばくかというところに焦点をあてたこのシリーズには異色の作品。 桧山が事業を始めることを知った恋人の瑛子は店の常連客から金を勝手に借りてきて桧山に向かって「あなたを信じているから借りたのよ。」といったり浮気をしてるのにふとしたはずみで偽札を見つけた石渡の妻が強引に仲間に入ったりといるいるこういう女達という設定に若干ストレスを感じつつも偽札をさばく4人のチームワークが抜群にいいんですね。後から入ってきた千鶴子やその愛人山口の意見にだって聞いて順調事を進めていく。そう、くだらない仲間割れで破滅するそんじょそこらの犯罪映画とは違うんだぞってところが何といっても硬派なんです。x 偽札で一番効率がいいのは千円札なんだそうな。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
川崎敬三 (桧山賢二) |
トーマス・ジェーンで。この手の主人公はちょっぴり影が薄い感じがいいんです。 |
三条江梨子 (柏木瑛子) |
良妻賢母的だけどたまに世話焼きすぎみたいなところがありそうなエミリー・ワトソンで。 |
高松英郎 (石渡謙吉) |
妻の浮気に無頓着そうなジェイソン・パトリックで。 |
宮川和子 (妻千鶴子) |
いかにもって感じがするファムケ・ヤンセンで。 |
杉田康 (山口三郎) |
マット・ディロンで。なんか愛人顔のような気がする・・・ |
黒の死球 シリーズ第4作 (1963) |
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2004年5月 | |
かつては投手で今はスカウトマンの柏木は有能な高校球児菊川を見事獲得するが、その晩かつて自分の才能を見出してくれた恩師でライバル球団のスカウトマン浜田が自殺したと連絡が入る。 柏木はその事実が信じられず浜田の娘で婚約者のしず枝と独自に事件を捜査し始める・・・ サラリーマン・サスペンスシリーズ第四弾。とは言ったもののプロ野球のスカウトマンが主人公だから今回はサラリーマンぽくないんですよね。そんなことはさて置き今までの「黒」シリーズであったサラリーマンの苦悩の末に見たものは・・・的なテーマが今回一切見られなかったような気がするのは気のせいでしょうか?だっていつの間にか柏木が恩師ともいえるスカウトマン浜田の死を独自で調べ始めるって展開がなんか2時間ドラマのようだった。しかも結末はネタバレ→ホステスをめぐる痴話げんか的なことで殺されていた。(実際はもうちょっと複雑だけど)←という展開で「土曜ワイド劇場」的な内容(「火曜サスペンス劇場」的ではない)でちょっぴり不満。しかも「黒」シリーズではおなじみの主人公が苦い思いをするラストじゃなくてハッピーエンドってところが不満なのです。 そうそう主役の宇津井健なんですけどシリーズ第二弾の「黒の報告書」では検事役をやっていたけどなんか違うんですよねぇ。若かりし頃の宇津井健はさわやかでやさしそうな笑顔がやり手という感じにどうしても見えなくって。こういう役はもっと硬派で体育会系なイメージなんですよね、高松英郎みたいな人にやってもらいたかったな。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
宇津井健 (柏木茂久) |
体育会系俳優かヴァンサン・カッセルのような自分に自信ありますって主張しそうなタイプがいいと思う。 |
黒の商標(トレードマーク) シリーズ第5作 (1963) |
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2004年6月 | |
国際レーヨンの偽ブランドのワイシャツがスーパーマーケットに出回る。調査員の井出は調査を進めていくのだが何者かに殺されてしまう。会社は事故死として扱ってしまい納得できない杉野は単身で調査を進めていくのが・・・ 要するにシャネルの隣にチャンネルとパチものの商品が安く並んでいたのを調査するって話で、まぁ職業的にはサラリーマン・サスペンスシリーズの中では一番サラリーマン的な職業ですけどね。宇津井健も今まで検事、プロ野球のスカウトマンとらしくない職業だったけど今回の企業の調査員って役どころはそこそこよかったと思いますよ。 素材の強奪あり、殺人ありとますます土曜ワイド劇場的な要素が強くなっていてなんか自分の有給を使って調査したりするところなんかは少々強引な気が・・・ とはいえ凶暴な悪役に扮した高松英郎は相変わらずかっこよくていいですね。この人このシリーズじゃあるときは主人公のよき先輩、親友だったりと濃い顔でこなすこなす。宇津井健はこの人と並ぶと影が薄くなちゃってなんだか可哀想です。 出番が少なかったけど高松英郎の恋人役江波杏子もまたクールな悪って感じがいいんですよ。梶芽衣子のような悪っぽさなんですけど梶芽衣子は自分でナイフ片手に持って戦うキャラだと思うんですけど、江波杏子は男に戦わせるファムファタール的なところが魅力的なんですよね。結構やくざものとかに出演しているようなので長いお付き合いになりそうです。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
宇津井健 (杉野浩治) |
調査員がはまりそうなトム・ハンクスで。 |
黒の駐車場 シリーズ第6作 (1963) |
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2004年8月 | |
製薬会社の大手、丸木製薬は新社長に角沼が就任した。下請け会社の泉製薬は活気的な新薬を開発中で角沼に合併を打診されていたが慎重になっていた。そんな中、丸木の営業部長松崎が突然自殺をしてしまう。泉は恩人の松崎の自殺が信じられず記者の北見とともに死の真相を調査するのだが・・・ サラリーマン・サスペンス「黒」シリーズ2作目から5作目まで田宮二郎が不在でしたけど6作目にしてようやく帰ってきた。やっぱりこのシリーズは田宮二郎でなきゃダメですね。今回だって昔はやくざだったけど今では立ち直り小さな下請け会社の社長というキャラクターに無理がないですもん。 丸木の社長は政界と繋がっていて圧力をかけてくるわ、丸木のライバル会社吉野製薬の女社長が密かに新薬を狙っていているわで小さな下請け会社は大企業の間に挟まれて大変な思いをするという下請け会社の悲哀を描きつつも田宮二郎はくさらず社員の意見を取り入れてなんとか乗り切ろうとする姿がかっこいい。こんないい上司いないよね。 この吉野の女社長がまたしたたかでよかった。合併話を断られた女社長は新薬の資料を盗み密かに商品化までこぎつけてしてやったりしてやったり顔なんですけどネタバレ→製造工程をすでに特許申請していて女社長はくやしー!ていう←終わり方が痛快でした。松崎殺しの真犯人も捕まえてスーパーサラリーマンになってしまっているけど田宮二郎だからこそ無理がないんですよね。 新薬を開発する薬オタクの社員やらやくざあがりの社員がいたりと会社の部下達も個性豊かで今のところこのシリーズで一番好きです。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
田宮二郎 (泉田敬) |
部下から好かれそうなジョージ・クルーニーで。 |
藤由紀子 (北見典子) |
やり手の女記者にぴったりなキャサリン・キーナーで。 |
中田康子 (吉野夏子) |
ラストのそんなはずでは・・・な展開が「リディック」のタンディ・ニュートンを彷彿とさせ・・・ |
小沢栄太郎 (角沼満次) |
悪代官的なイメージのブライアン・コックスで。 |
黒の爆走 シリーズ第7作 (1964) |
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2004年11月 | |
凄腕の白バイ警官、津田拓也はある日スピード違反のバイクを追跡中その運転手が子供を轢き大怪我をさせて逃げられてしまう。恋人の由紀子と犯人探しをしているとあやしげなオートバイクラブがある事を知りそこのボス矢沢章夫の信用も得て身分を偽りクラブのメンバーになるのだが・・・ 正義感溢れる白バイ警官の田宮二郎が奮闘する黒シリーズ7作目。 婚約者をほったらかして周囲の反対を押し切り、白バイ警官なのに一人潜入捜査を行い解決しちゃうだけの内容。白バイ警官になった過去は語られることはなく、田宮二郎の演じた津田という生活についてもほとんど描かれていない極端に言えばフルコースを食べに行ったら前菜(きっかけ)とメインの料理だけしか出てこないようなある意味無駄を全て省きすぎた内容はいさぎよすぎて新鮮でしたけど無駄もある程度は必要なんだなぁと感じました。まぁ作品自体70分強の長さですからね。 メイン部分は暴走族をいかにして逮捕するかってところが見所なのですが、犯人の矢沢が元レーサーで矢沢自身が運営するオートバイクラブの主催するツーリングは何も知らないバイカーに盗品のバイクを目的地まで運ばせるのが目的という短い上映時間のなか意外ととしっかり練られていて感心しましたよ。 田宮二郎は相変わらず革ジャンをモダンに着こなしていてよかったけど犯人役で大映作品でちょこちょこチンピラ関連の役でよく見かける千波丈太郎も相変わらず渋かっこよかったです。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
田宮二郎 (津田拓也) |
ヴィゴ・モーテンセンは馬だけでなく白バイも乗りこなしてくれそうで。 |
千波丈太郎 (矢沢章夫) |
ショーン・ビーンもバイクに乗らしたら渋かっこいいと思います。 |
黒の挑戦者 シリーズ第8作 (1964) |
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2005年1月 | |
真夜中、優秀な青年弁護士の南郷次郎に助けを求める女性の電話がかかってくる。南郷は女性の下に向かうがすでに死んでいた。彼女が妊娠していたことを知った南郷は独自に捜査を始めるが・・・ 黒シリーズって火曜サスペンス劇場や土曜ワイド劇場的なのりのものが時々あるのですが今回はもろにそんな感じがして、弁護士がひとりで事件を解決していく展開なものでいっそのことタイトルを「弁護士・南郷次郎」にしたほうがいいのでは?という内容でしたね。 前半は金持ちやVIPたちの集まる秘密クラブに田宮二郎にに憧れる藤原礼子(水着姿あり)の手引きで潜入するのですがこれが仮面パーティでやることといったら人間を馬に見立てて競馬をする人間競馬。こういうのって現代ならありそうだけど40年前からあったんだなぁなんて変に感心してみたりしたけど面白かったのはネタバレ→藤原礼子が殺されちゃうまでの前半でした。←あとは黒幕の久保菜穂子の駆け引きやら秘書の坪内ミキ子がさらわれるとかよくある展開で安定した楽しみはあるけどもう一つひねりが欲しいところでした。久保菜穂子は相変わらずふてくされているというか仏頂面というか何やら敵っぽい雰囲気が案外悪くなかったですけどね。 今回のヒロインは坪内ミキ子ですが、やっぱり彼女が出ている作品って座頭市シリーズにしてもそうなんですけどどうも相性が悪いらしくピンとくる作品に出会えたためしがないんですよね。坪内ミキ子がヒロインで出ているとイマイチというジンクスを破る作品に出会いたいものです。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
田宮二郎 (南郷次郎) |
知的な役もアクションもこなせるようになったマット・デイモンで。 |
坪内ミキ子 (金丸京子) |
セルマ・ブレアは秘書にぴったりなイメージがする。 |
久保菜穂子 (宝城寺竜子) |
ジェニファー・ロペスは悪役をやれば伸びると思う。 |
黒の凶器 シリーズ第9作 (1964) |
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2005年3月 | |
いずれは正社員の技師になることが夢の大日本電機で働く片柳はある日同僚と行ったバーで登川れい子という女性と親しくなる。彼女は株で儲けていて片柳は新製品の情報を提供するのだがそれが会社にばれ片柳はクビになってしまう。しかもれい子は産業スパイで・・・ 田宮二郎が女にはまって会社の情報を漏らしてクビになるなんて・・・らしくないと思ってしまった序盤でしたが、産業スパイに利用されたと知った田宮二郎は自ら産業スパイになって復讐しようと思い立ちやがて本物の産業スパイになる。これでこそ田宮二郎だ!と思いつつ産業スパイを取り扱ったテーマがシリーズ一作目の「黒の試走車」を彷彿とさせました。 女産業スパイを裏で操っていたのがライバル会社の黒沼という男でこの役が金子信雄なのですが、相変わらず汚い戦法で田宮二郎を陥れようとするところがらしくてよかったですね。 お互い汚いやり方なんですけど今の時代のようにネットもなければハイテクでもない時代だからこの時代のスパイ行為ってギリギリ許されるような気がします。盗聴器だって今みたいに小型じゃないところが愛嬌があるように感じるしなんてったって自分でライバル会社の重役の部屋に仕掛けるところがスパイらしくっていいですよ。 女産業スパイの浜田ゆう子とのロマンスもあり彼女の手助けで危機を脱出して結局最後は田宮二郎が勝つのですがネタバレ→金子信雄の子供を利用した人間としてあまりに卑怯なやり口に浜田ゆう子は去っていく←というもやもやしたと言うか後味の悪い感じのエンディングもシリーズ当初の「黒」シリーズ的な雰囲気があってこれぞサラリーマン・サスペンスである「黒」シリーズの醍醐味だなと思うのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
田宮二郎 (片柳七郎) |
クリスチャン・ベイルは転んでもただでは起きなそうな感じがします。 |
浜田ゆう子 (登川れい子) |
女スパイと言えばファムケ・ヤンセンで。 |
金子信雄 (黒沼一徳) |
手段を選ばない感じのドナルド・サザーランドで。 |
黒薔薇の館 BLACK ROSE MANSION (1969) | |
2007年9月 | |
佐光喬平が経営するクラブ「黒薔薇の館」にある日ミステリアスな美女、藤尾竜子がやってくる。竜子の前に次々と恋人と名乗る男が現れる。そんな中、佐光の一人息子が竜子と恋に落ち・・・ 三輪明宏らしいビジュアルの愛憎劇。 監督は深作欣二なんですが深作作品てなんと言うかバイオレンスなイメージが強くてこういうタイプの映画は珍しいと思うのですがこれも三輪明宏の魔力なのでしょうか?とはいっても「黒蜥蜴」も深作監督なんですが・・・ 「黒蜥蜴」っぽい感じを想像していて前半は三輪明宏と付き合っているという男達が次々と現れては数奇な運命をたどっていき男達の証言する三輪明宏像がそれぞれ異なっているという「羅生門」スタイル?はなかなか面白かったのですが、中盤から登場して三輪明宏と真実の愛に落ちる田村正和が出てきてからはちょっとイマイチな感じになってしまったのが残念でした。 田村正和は小沢栄太郎の息子で風来坊みたいな生活をしているという設定で無精ヒゲなんか生やしているのですが全然ワルに見えないんですよねぇ。 「黒蜥蜴」のメインキャストだった川津祐介と松岡きっこがちょい役で出ているのでどうせだったら川津祐介が田村正和のの役をやれば断然面白かったと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
丸山明宏 (藤尾竜子) | この際、年齢不詳のシェールにお願いしたい。 |
小沢栄太郎 (佐光喬平) | クラブ経営とか似合いそうなマーティン・シーンで。 |
田村正和 (佐光亘) | 風来坊とか似合いそうなジョシュ・ハートネットあたりで。 |
軍旗はためく下に (1972) |
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2005年8月 | |
昭和27年、「戦没者遺族援護法」が施行されたが戦争未亡人の富樫サキエは夫、富樫勝男が敵前逃亡の罪で処刑されていた事を理由に却下されていた。サキエは夫の無罪を信じ真相究明に乗り出すのだが・・・ 去年の戦争映画特集で見逃した後にこの映画すごいよ。と聞き惜しいことしたなぁと思っていたら今年も上映されたのでもちろん観に行きました。噂どおりすごい映画で反戦映画なのですが、結構な問題作でした。 最初は丹波哲郎の死の真相を左幸子が生存者に真相を聞きに回るとその証言が異なるという展開に想像と違かったのでちょっとびっくりしましたが、よくできていました。 証言は英雄的だったり上官を殺したりとその証言は異なっているというシチュエーションはメグ・ライアンの死の真相をデンゼル・ワシントンが究明に乗り出す「戦火の勇気」を思い出すのですがそりゃぁハリウッド映画の爆弾を使った爆撃シーンは迫力ありますが、こっちの方が様々な異なる証言を観ても生きるために仲間を殺して仲間の肉を食べたり、いもを盗んだりとにかく生きるということの執念というか生きようとする本能みたいなものがリアルで実際こっちの方が何倍も説得力あるし迫力があるなぁと思いました。 今まで観てきた戦争映画って絶対負けるって分かっているのに戦地に行かされて犬死にしてしまって確かに悲惨な状況は分かるのですがこの映画って生きるために虫はもちろん人肉まで食べなければならい究極の所まで描かれているところが一線を画していると思います。 夫の死の真相を必死にそれこそ何かに取り付かれたように究明しようとし時に非情な証言を聞いたときに絶叫する左幸子はやっぱりすごい迫力でさすがだなぁと思うのでした。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
丹波哲郎 (富樫勝男) |
役のイメージ的にはラッセル・クロウかなぁ。 |
左幸子 (富樫サキエ) |
結構執念深い役が多いレニー・ゼルウィガーで。 |
クワイエットルームにようこそ WELCOME TO THE QUIET ROOM (1976) | |
2011年4月 | |
ライターの佐倉が目覚めると精神科の病棟で拘束されていた。そなまま隔離病棟で過ごすことになった佐は一日も早く退院する方法を探すのだが・・・ 内田有紀主演のシニカルなコメディ。 良くも悪くも日本のミニシアター系の映画だったなと感じました。大作映画でない分出演者はみんな芸達者な感じで個人的にはみんなはまっていたと思います。特に恋人役の宮藤官九郎なんてちょっとしか出てこないのかと思いきや扱いが準主役級の露出度で驚きました。しかもとぼけたキャラクターが宮藤官九郎にぴったりでいい役もらったなと思います。 そのほかにも拒食症の蒼井優や悪魔のようなナースにりょうとか俳優陣はよかったです。蒼井優はかなり痩せていて実はデ・ニーロタイプの人なのかなとも思ったりもしました。 そんな中、異様な存在感を放っていたのが大竹しのぶ。隔離病棟の主みたいなキャラクターでほかの患者から金を巻き上げていて、まるで女囚のようでした。スイッチが入った時は怖かったし。 とぜんたいてきにはコメディなんですが、記憶を亡くした内田有紀が徐々に思い出してくると、ネタバレ→実際はいつも明るく振舞っているけど心の中に大きな傷を抱えていたという結構ヘビーな問題が描かれていて←後半はなんだか楽しんでいいのか悪いのか微妙な雰囲気になりました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
内田有紀 (佐倉明日香) | アン・ハサウェイあたりにお願いしたい。 |
宮藤官九郎 (鉄雄) | シャイア・ラブーフなんてどうでしょうか。 |
蒼井優 (ミキ) |
最近は汚れ役もやるようになったダコタ・ファニングで。 |
大竹しのぶ (西野) |
大竹しのぶ=ヘレナ・ボナム=カーターという図式。 |