MW-ムウ- M.W. (2009) | |
2010年5月 | |
沖之真船島の島民が虐殺されて15年、生き残った結城美智雄はこの事件に関わった者に次々と復讐をしていきくのだが・・・ 手塚治虫の原作を実写化。 原作の同性愛的な部分がないというのは知っていたので大分違うかなと思っていたのですがここまで違うともう別物です。 オープニングから玉木宏と刑事の石橋凌の追跡劇で始まるのですがこれがまた長い、オープニングは導入部だからサクっと終わらせないといけないと思うのですがオープニングに時間をかけすぎて全体的にテンポも悪いです。 結局のところものすごく頭の切れるシリアルキラーの玉木宏と執念深い刑事の石橋凌の追跡劇メインでまとまってしまって、本来なら重要な賀来役の山田孝之の出る幕が全くなくて、なんだか顔面に返り血を浴びて「キャリー」状態になっていたり、出てくるシーン全て涙目で崖から落ちたり海に落とされても全く死ぬ気配のない変なキャラクターで実力のある山田孝之を使いきれていなくて、ものすごくもったいないなと思いました。 山田孝之が玉木宏を仕方なく助けるのですが、原作ではちゃんとその辺が描かれているのですが映画では同性愛の部分を取っ払っているのでそれなりの動機付けが必要なので一応そういう動機付けがあるのですが脅されているだけ、みたいなとても薄っぺらいことになっていたのも残念です。 あとオリジナルっぽいキャラクターを出すのは構わないと思うのですが石田ゆり子のキャラクターが全然本人のイメージと違っていたりして全体的に配役に難ありというのも大きな問題だなと思いました。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
玉木宏 (結城美智雄) | 女装もいけるキリアン・マーフィーで。 |
山田孝之 (賀来裕太郎) | 苦悩が似合うエリック・バナあたりで。 |
石橋凌 (沢木和之) | イメージはローレンス・フィッシュバーンがやりそうなキャラクターでした。 |
無警察 (1959) | |
2008年2月 | |
ゴルフ場計画の噂がある市で市長が事故死する。市長の娘が恋人が新聞記者の北村は市長の死に疑問を抱き街を支配する松崎を調べるために松崎のキャバレーのマダムはるみに近づく。一方その頃、次々とやくざの死体が見つかり刑事の原田も調査を始めていた・・・ 天知茂がはみ出し者の刑事と手を組みやくざに立ち向かい事件の真相を暴くアクションサスペンス。 偶然街に戻ってきた時に事件が起きて単独で調査を始めて伏線としてボスの丹波哲郎の情婦と天知茂がしっかり出会っているところが新東宝らしい展開でしたが、別の事件と市長殺しが交錯していくところなどはなかなかよかったです。(偶然であった天知茂とややはみ出し刑事ぎみの大原譲二の推理が百発百中なのはご愛嬌ですが) 久しぶりに新東宝作品を観ましたがキャバレーでマダムが歌う歌が演歌調の歌謡曲というところなど当時の風俗はやはり興味深く観ていて飽きません。 天知茂はやっぱり正義も悪も両方出来るクールな俳優だなぁと思いました。今回も悪役をやっていいところですが悪役は貫禄の丹波哲郎なのでこの配役は正解。 丹波哲郎は資金集めのために敵対する組織の裏切り者と手を組み、麻薬の運び屋を殺して麻薬を奪うのですが命令だけしてあまり自分で動かないところがさすが大物俳優といった感じでしかも中盤、敵から銃で脅されて怯むあたりが丹波哲郎らしくて微笑ましかったのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
天知茂 (北村浩一) | クライヴ・オーウェンあたりにお願いしたい。 |
丹波哲郎 (松崎譲二) | 見た目がボスという感じのハビエル・バルデムで。 |
小畠絹子 (清川はるみ) | ボスの情婦とか似合いそうなサンディ・ニュートンで。 |
大原譲二 (原田常雄) | 意外とどんな役でもこなすマーク・ラファロで。 |
娘の縁談 (1955) | |
2009年10月 | |
幼なじみの玉次との結婚話に嫌気が差し、東京で勤め先の編集長の家に下宿している千栄子だったが下宿先に玉次がやって来て・・・ 南田洋子と菅原謙二のラブコメディ風な映画。 南田洋子がとにかく働き者。速記者でありながら下宿先の奥さんが入院中ということで何故か家事を一手に引き受けています。若尾文子も下宿人なのですが一切手伝う気なし。それどころか恋多き女という感じで常によろめいている感じで、南田洋子が家事でてんてこ舞いなのによこで恋の悩みを打ち明けるという悠長なことをやってのけ、女が嫌う女のタイプを好演しています。 一応、若尾文子はいいところの出のようでかつての恋人の根上淳を探しているのですが、偶然南田洋子が出会った根上淳はすっかりやさぐれていたりして若尾文子は奔放な分だけ恋愛運がない感じです。 そんなこんなで若尾文子の使いパシリをしたり、下宿でひとり働き通しだったり、デリカシーのない菅原謙二にバカにされてようやく下宿を出てのびのびと思ったら九州から鬼婆さんの北林谷栄が結婚をまとめに上京。 色々あって頭にきた南田洋子は根上淳と結婚式を挙げることに。が、しかしやっぱり根上淳は無理と思った南田洋子は本当に愛しているのは菅原謙二だと分かり彼の元に向かいめでたしめでたしな感じなのですが、菅原謙二が危機感ゼロというか鈍感というか南田洋子が当然自分のところに戻ってくると信じているあたり、がさつで鈍感だけど憎めないという菅原謙二の真骨頂という感じでよかったです。ついでに若尾文子と根上淳も強引にめでたい感じになっていて無茶だけどまぁこんなものかと思うのでした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
南田洋子 (泉千栄子) | テキパキしてそうなエミリー・ブラントで。 |
菅原謙二 (小森玉次) | 女心にちょっと鈍そうなベン・アフレックで。 |
若尾文子 (瀬木友子) | ふわふわっとした感じのズーイー・デシャネルで。 |
根上淳 (島本幸喜) | 遊び人という感じのマシュー・マコノヒーで。 |
娘・妻・母 DAUGHTERS, WIVES AND A MOTHER (1960) |
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2005年7月 | |
嫁に行った長女早苗が実家に遊びに来ていたがその晩、早苗の夫が交通事故で急死してしまう。嫁ぎ先で上手くいっていなかった早苗は実家に戻ってくるのだったがやがて遺産を巡り一家は崩壊していく・・・ 原節子と高峰秀子の大女優同士の共演はありえないと思っていただけにこれはまさに夢の共演。しかも高峰秀子組みって言っていいのか分かりませんが、高峰秀子とよく共演しているけど原節子との共演は見た記憶がない草笛光子も出演しているし、森雅之、上原謙の夫にしたくないタイプの二人も出ているし他にも杉村春子とか有名、ベテランどころがこれでもかと出演していて本当豪華でしたね。 高峰秀子は相変わらず嫁に来たって役で肩身が狭い思いをしているのかな?と思ったらそうでもなく旦那の森雅之は多少頼りなさげなところはあるけれど勝手に家を抵当にいれて金を借りた意外としたたかな高峰秀子をちゃんとかばうという、いつになくまともな役なので感心しちゃいました。 結局家を立ち退かなくなっちゃって母親の三益愛子をだれが引き取るか子供達で口論になるのですが原節子、森雅之を除いた宝田明、草笛光子、団令子って自分勝ってそうで親の面倒なんて到底見そうにない顔ぶれを見てこりゃ当然だぁと思わせるキャスティングに感心。 そんなドロドロな状態でも原節子はちゃっかり恋愛しちゃっているのですがその相手が年下の仲代達矢ですよ。この組み合わせすごーく珍しくってしかも原節子と仲代達也のキスシーンはびっくりしました。結局原節子は金持ちの上原謙に見初められてしょうがなく上原謙を選ぶのですが、上原謙は不幸になりそうだからやめとけと心の中で叫ぶのでした。 本筋とは全く関係ないところで公園に子守をする怪しげな老人がいたと思ったら笠智衆じゃないですか。台詞の余韻が本当おじちゃんって感じがして笑っちゃいました。 |
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ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
原節子 (曽我早苗・長女) |
原節子=ケイト・ブランシェットという印象がなんとなくついてしまいました。 |
高峰秀子 (坂西和子・妻) |
旦那の家に嫁いだ嫁という役が似合いそうなジュリアン・ムーアで。 |
三益愛子 (坂西あき・母) |
貫禄のジュディ・デンチで。 |
娘の冒険 DAUGHTER'S ADVENTURE (1958) | |
2008年5月 | |
京子はある日、母を亡くして10数年経ち義母に気兼ねして再婚しない父親の宏二が田村ますという小唄の先生に気がありと知り同じ演劇部の恋人、英一とともに弟子になりすまし、ますに近づくが・・・ 大映ロゴの後の出演者に女優陣が山本富士子、野添ひとみ、若尾文子、京マチ子、男優陣が根上淳、船越英二、川口浩 、菅原謙二と出てきたので大映オールスターキャストで4組のカップルが誕生するラブコメディかなぁと思っていたら野添ひとみが父親の上原謙と京マチ子をくっつけようとする内容でした。看板俳優は出番が少なくてもとりあえず並列に名前を並べてあげなくちゃいけないんですね。 奥手な上原謙と京マチ子をくっつけようと野添ひとみと川口浩コンビが奔走するのですが、京マチ子を狙っている女好きの船越英二(ものすごく積極的)がいて野添ひとみは船越英二の気を引くためおもむろに手を握ったり、二人っきりで料亭行って軽く襲われそうになったり結構危険なことをやってまさに冒険という感じです。 上原謙も奥手な割りにパパと呼んでくる年増のママっぽい女がいたりして一緒にいるところを京マチ子に見られて京マチ子が涙するみたいなお決まりのパターンがあったりするのですが上原謙はあまりこの女が好きじゃないのでしつこく言い寄ってくるとものすごく冷たい態度をとるところがナイスでした。 後半、突然船越英二には芸者の山本富士子が恋人だったことが分かり山本富士子の友人の若尾文子が船越英二を馴染みのうなぎ屋で裁判をするという本編とあまり関係ないシーンがあったりするのですがこれはこれでなかなか面白いです。 うなぎ屋の若旦那が菅原謙二(お母さんが浪花千栄子)で若尾文子の恋人で菅原謙二が船越英二を軽くかばったら二人はけなくモードになるけれどもちろん仲直りみたいなシーンありです。 最後は野添ひとみがサプライズお見合いを仕込んで二人を引き合わせるのですが鬼婆のようなメイクの義母、北林谷栄に身分が違うからと猛反対されて最大のピンチ。上原謙がそれなら家を出ます、発言をするのですが亡き妻の実家で10数年住むのはどうなのかなぁ?なんて思ったりするのですがとにかく最後はハッピーエンド。映画は娯楽ですね。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
野添ひとみ (長島京子) | 気が強そうなキルスティン・ダンストで。 |
川口浩 (伊丹英一) | まだまだ学生役がいけそうなイライジャ・ウッドで。 |
上原謙 (長島宏二) | 冷たい感じのするブルース・グリーウッドで。 |
京マチ子 (田村ます) | ヘレン・ハントあたりにお願いしたい。 |
宗方姉妹 THE MUNEKATA SISTERS (1950) | |
2009年7月 | |
失業中の夫の亮助に代わってバーで働く節子。そんな姉の節子の姿を見ては憤りを感じる妹の満里子はある日、節子がかつての恋人の田代の事を想っていることに気がついて・・・ 小津作品に田中絹代と高峰秀子が姉妹役という強力タッグを組んだ作品。 夫婦の危機、姉妹の考え方の違いの描かれ方がドロドロしていて小津作品というよりは成瀬巳喜男っぽい印象を強く受けました。田中絹代の耐え忍ぶ妻の形はイメージ通りなのですが高峰秀子のキャラクターが自分を持っているというところはいつも通りでしたがちょっとドジを踏むと舌をぺロッと何かにつけて出すところはいただけなかったです。お父さんの笠智衆も「舌を出すぞ。出すかな?」みたいなベロ出しに対して変な執着があるところは面白かったですが。 それと高峰秀子は田中絹代と上原謙をくっつけようとするために上原謙の女友達の家に上がりこんで嫌味のひとつも言って帰ってくるといういつもと違ったキャラクターがイラッとしましたが後半の酔っ払いの演技は相変わらず上手いと思いました。 古風な田中絹代が新しいものばかり追い求める高峰峰子に「本当に新しいってことは古くならないってことだと思うの。」みたいな事を言うのが説得力があって、いい事言うなと思いました。 内容は成瀬風ですが同じ台詞が繰り返し出てくるところや上原謙が相変わらずはっきりしない性格なのですが、他の作品と違っていい人であるというところはやっぱり小津作品だなと感じました。(もちろん笠智衆が出ているところもそうなのですが) それとアイパッチ(というか眼帯)の山村聡がドメスティックな感じで怖いです。無職だから代わりに田中絹代がバーで働いていて資金繰りで上原謙にお金を借りに行ったら面白くないので「俺に相談もしないのか」と絡んできてちゃんと説明したかと思えば急にキレ出して田中絹代に平手打ち。こんな山村聡は初めてだったの衝撃的でした。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
田中絹代 (宗方節子) | 耐える女というイメージのナオミ・ワッツで。 |
高峰秀子 (宗方満里子) | 勝気なスカーレット・ヨハンソンで。 |
上原謙 (田代宏) | 優男という感じのスチュワート・タウンゼントで。 |
山村聡 (三村亮助) | 強面のジョシュ・ブローリンで。 |
無法松の一生 WILD MATSU, THE RICKSHAW MAN (1958) | |
2006年7月 | |
小倉では荒くれ者で知られる車夫の松五郎はある日足を痛めた少年を母親の元へと連れて行く。その子供は吉岡大尉の息子で吉岡家と何かと親しくなった。そんな大尉も風邪が原因で死んでしまい松五郎は大尉の妻の良子と息子の敏雄の世話をすることが生きがいになり始め・・・ 観終わったときはちょっと北九州の小倉の風土が内容より強い感じがしたのですがしばらくしてから松五郎の人柄とかが行動が思い起こされてじわじわとよさが来ました。 三船敏郎と高峰峰子の組み合わせも最初水と油みたいでどうなんだろう?と思ったのですがこれが意外とナイスな組み合わせでびっくりしました。演技で言うと大雑把な方向の三船敏郎が荒々しくも父親のような包容力のある松五郎というキャラにはまっていたんですよね。「無法松の一生」というだけあって松五郎の一生なわけなんですけど三船敏郎は見事に演じきっていたと思います。 泣き虫で一人じゃなんにもできない敏雄くんもこの豪快で頼りがいのある松五郎にすっかりなついたりりするシーンは親子とか関係なく面倒を見る古きよき日本の風景と言った感じでこの松五郎にはちょっと憧れました。 高峰秀子もは相変わらず細かな演技で実力十分といった感じで彼女との関係もお互い好きとかそういう一言で片付けられる関係ではなく一貫してプラトニックだったところがよかったのかもしれません。 この「無法松の一生」いろいろバージョンがあって阪東妻三郎は傑作らしいので機会があればぜひ観てみたいです。 | |
ハリウッドバージョンはこの人で!! | |
三船敏郎 (富島松五郎) | 暴れん坊なイメージのキーファー・サザーランドで。 |
高峰秀子 (吉岡良子) | 未亡人とかシングルマザーの役が良く似合うトニ・コレットで。 |