日本映画

に


新妻の寝ごと
(1956)
4
2006年8月
新年を初めて迎えようとする新婚の船山敬太・芳子の元に芳子の友人ふみ子が家を出て押しかけてくる。二人っきりの新年を迎えるために二人は一芝居を打つのだが・・・
近所の世話焼き夫婦に左卜全だったり若尾文子側の家族が藤原釜足で羊羹屋だったりと「花嫁のため息」と出演者が同じなので多分続編だと思います。
今回、根上、若尾の新婚生活を邪魔をするキャラはあの岸田今日子です。夫婦喧嘩をして家を飛び出てきた若妻で若尾文子の親友という役どころなのですごく暗くて恨めしい感じが岸田今日子らしいのですがそんな彼女を家の中でいちゃついて追い出そうと画策するところするところがほほえましいです。
いちゃいちゃ作戦で岸田今日子を追い出すことに成功して二人は温泉に行くことになるのですが、途中で偶然出会った若尾文子のお父さんの浮気現場に根上淳が遭遇。お父さんは娘にばれるのが嫌だからピンチになると愛人を押し付けるという無茶してくるところがすごいです。根上淳もついていった愛人との密会旅行で藤原釜足一家も突然押しかけてきてお約束のように根上淳が浮気していることになるのですが藤原釜足は根上淳のこと全然かばわずしらを切り通して、藤原釜足の情けなさが全開でよかったけど自分が根上淳の立場ならこの仕打ちに絶対キレるというか親戚付き合いはなくなるなぁと思うのでした。
最後はもちろん一件落着するのですが「花嫁のため息」と併せて一本の映画でもよかった気もしました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
根上淳
(船山敬太)
「花嫁のため息」の時と同じくマット・ディロンで。
若尾文子
(船山芳子)
「花嫁のため息」の時と同じくケイト・ハドソンで。
岸田今日子
(ふみ子)
恨めしい感じもだせそうなマギー・ギレンホールで。
藤原釜足
(鶴屋儀左衛門)
小心者のくせに浮気者というところがウディ・アレンっぽくて。


肉体女優殺し 五人の犯罪者
(1957)
4
2005年11月
ストリップの人気スターが舞台で殺されてしまう。小道具のピストルが本物とすりかえられていたことが判明し殺されたストリッパーの夫の徳島の指紋がついていたため逮捕されてしまうが徳島の無実を確信した記者の西村は独自に調査を始めるがやがて徳島の妹でストリッパーの水町かほるも何者かに狙われて・・・
肉体女優とはストリッパーとのことだそうでまたひとつ勉強になりました。
ストリッパーといっても裸は出てこないでむしろレビューといった感じでモダンです。しかもショーの最中に殺人事件が起きるって設定はやっぱり当時としては新しかったんじゃないかなぁと思います。
石井輝男監督のミューズ三原葉子も人気ストリッパーで殺人事件の裏に潜む麻薬の秘密を握るミステリアスな得意の役なんですけどネタバレ→
空中ストリップ中に殺されるという意外な展開にびっくりします。←その代わり今回ヒロインなのは秘密売春組織やら裏組織の何かしらの組織に巻き込まれている三ツ矢歌子でちょっと物足りないかなぁ?と思いましたが主役がなぜか正義感にあふれて事件を解決しちゃう宇津井健だからこの二人のコンビは意外としっくりきていました。
五人の犯罪者のアジトが肉屋なんですがその途中にある工場地帯という高い塀で囲まれた迷宮的な道路が「ロスト・チルドレン」的でこのビジュアルは相当気に入ったし、実はこの通りにあるマンホールが肉屋に繋がっていて犯人達はこのマンホールから地下道を通ってアジトに行くという寸法なのですがこの地下道もラスト犯人を追い込む様子を効果的に使っていて、これにフランスあたりの裏道を使ってリメイクしてほしいと思わせるそんな映画なのでした。
タイトルにある「五人の犯罪者」って今思い出してみると結局四人位しか思い出せないのですが、そのうちの一人、天知茂は扱い悪かったけどちょっとサイコで怖かくって天知茂は善も悪もいける俳優でやっぱりカッコよかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
宇津井健
(西村弘二)
一見地味そうだけど実は存在感のあるポール・ベタニーで。
三ツ矢歌子
(水町かほる)
作品の幅が広いセルマ・ブレアにお願いしたい。
三原葉子
(ベテイ桃園)
「ショーガール」のジーナ・ガーションを思い出した。
天知茂
(天野)
あのちょっと暴力的な感じがヴァンサン・カッセルっぽくて。


肉体の学校
SCHOOL FOR SEX
(1965)
5
2007年5月
元華族そして離婚成金の浅野妙子はある日、仲間に連れて行かれた池袋のゲイバーで千吉というバーテンに一目惚れをする。やがて二人は付き合い始めるのだったが・・・
三島由紀夫原作によろ破滅的な男女の恋愛模様を描いた作品。
自分の中にある三島由紀夫の退廃的で破滅的なイメージが全くその通りに描かれているなと感じたこの作品。観終わった後にさらに興味が沸いて小説も読んだのですが上手い具合に映画化したなと感心しました。
当時としては珍しい感じもするゲイバーや男を漁るブルジョアな女の生態というアンダーグラウンド的な内容をここまでストレートに表現できる三島由紀夫はさすがだと思いました。
キャスティングも岸田今日子というのはピタリと当てはまっているし、
山崎努は最初どうなんだろうと思ったのですがこんなにも二枚目でニヒルな男だっただろうか?と思わせるほど。確かに陰のある役は多かったのですが今回ほどカッコよく見えたのは初めてです。
ブルジョア階級の女がゲイバーでゲイではないが金の為に誰とでも寝る青年に惹かれやがて独占欲が芽生え同棲までこぎつけるが奔放な性格の千吉に次第に振り回され心のバランスが危うくなっていくところが面白い。
岸田今日子演じる妙子はプライドが高いから好きな事も言えなければ泣き言も言えない。そんなことを知ってか知らないのか千吉は妙子を焼き鳥屋やパチンコ屋に連れまわしたりと無神経なことをするのですが時折、妙子にわざとフケを飛ばししたりして嫌がる妙子を追い回すいわゆる大人の鬼ごっこ的なことをするちょっといたずらっぽいことをするところが妙子にはたまらないんだろうなと思いました。
後半、千吉の行動に耐えられなくなった妙子はお互いの浮気を公認しようとするのですがここからの二人の破滅が急に加速度的に展開していき、妙子が勝つのか千吉が勝つのかというハラハラする展開に目が離せません。二人それぞれの打算と誤算が交じり合ったラストも個人的にはかなり好きです。この映画をきっかけに三島由紀夫にはまりそうです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
岸田今日子
(浅野妙子)
退廃的な雰囲気のヘレナ・ボナム=カーターで。
山崎努
(佐藤千吉)
見るからにニヒルな役が似合いそうなジェームズ・フランコで。


肉弾
(1968)
3
2005年6月
名もなき特攻隊員の一日だけ許された休暇の出来事とその後について描かれた作品とでも言うのでしょうか?なんともあらすじを説明しづらい独特な作品でした。
この作品、中島貞夫監督の「鉄砲玉の美学」と同じATG作品で世間的にも高評価なのですよね。ちゃんとATG作品ということを意識して見た作品は2作品だけですけど、
ATGの作品は監督のカラーが色濃く出ると思うし新しいことしていてパワーというか勢いがあるインディペンデント系の香りがして嫌いじゃないのですがATG特有の生々しさとでもいうのでしょうか、そういった雰囲気があってATG作品は正直それほどノレないのです。
大谷直子の衝撃のデビュー作と聞いていたのですが本人が出ているシーンは2割にもならないところもちょっと期待とずれてしまったのですが寺田濃と大谷直子が因数分解をして「解けた!」というシーンを観てこれは青春映画なんだなぁと感じました。大谷直子って1950年生まれだから当時17、8歳だと思うんですけどこの時代って高校生のヌードありだったというのもすごいなぁと思ったのですが撮影の時のに前張りいらない発言して逆にスタッフが困るから前張りしろと言われたエピソードを聞くと大谷直子もこの時代にしてはさばけすぎているなぁなんて驚きました。
ちょうどこの時トークショーがあったのでいろいろ撮影う秘話的なことを聞けてかなり興味深くってもう一度じっくり観てみたいなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
寺田濃
(あいつ)
脱ぎっぷりのいいユアン・マクレガーで。
大谷直子
(少女)
アンナ・パキンはもんぺが似合いそうで。


荷車の歌
A SONG OF THE WAGON
(1959)
4
2007年11月
郵便配達員を辞め荷車ひきになった茂市に求婚されたセキは勘当を覚悟で茂市のもとに嫁ぎ荷車をひきを手伝うのだが姑はセキに冷たくあたり・・・
おしんも真っ青壮絶な農村の女性の半生を描いた作品。
好きな男のところに嫁いだまではよかったけれど姑がものすごく冷たかった・・・という感じで橋田壽賀子が得意とするジャンルな感じで今だったら晩年のセキ役は絶対に泉ピン子だろうなと思いました。
姑が自分の息子の昼飯には米なのにセキには粟という分かりやすい嫌がらせとちょっとでも嫌なことがあるとあからさまな嫌味、そして子供が出来たと思ったら女の子だったので不機嫌になるという典型的な嫁イビリに耐える嫁という姿で姑はひどい奴と思いきや何だかんだ言って旦那が一番ひどかった。
女だてらに荷車ひきを手伝っているのにも関わらずちょっとでも遅れると不機嫌になるし姑にいびられている嫁を見てみぬ振りという嫁にとっては最悪な環境だけど勘当された身だから耐えるしかないというところがいかにも昔の日本だなと思いました。
子供も成長した晩年、家も建て直し荷車屋を自分達で持つようになってようやく幸せになったか?と思いきや寝たきりになった姑は相変わらず嫁を気嫌いして介護さえさせてくれないという展開はもう笑うしかありません。だけど親友のアドバイスを聞いてようやく姑とも和解。嫁姑の問題はいろいろあるけれどお互いの気持ちを考えてこそ気持ちが通じるというところがちょっぴり勉強になりました。
とふつうはここでハッピーエンドなのですがまだまだ嫁の苦労は続きます。旦那の三國連太郎の浮気。その相手が浦辺粂子なのですが行く場所がないからと強引に旦那が家に同居させるだけでも耐えられないのに浦辺粂子ときたらだんだん調子に乗って食っちゃ寝するだけの図々しい女の本性が出てようやく追い出された時は胸がすっとしました。
最後も色々あってどこまでもつらい人生だったと思いきや最後はさわやかな感動のあるいい作品でした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
望月優子
(セキ)
たくましく生きていきそうなレニー・ゼルウィガーで。
三國連太郎
(茂市)
クライヴ・オーウェンがぴったりだと思います。
岸輝子
(姑)
辛口そうなヴァネッサ・レッドグレーヴで。


にせ刑事
THE BOGUS DETECTIVE
(1967)
3
2007年12月
拳銃を紛失した刑事の寅松はその拳銃で事件が起きたことが原因で刑事をクビになって家業の魚屋を渋々手伝うことになる。ある日寅松はチンピラに絡まれている山口美惠子という幼稚園の保母と助けるがやがて美惠子の幼稚園の園児が誘拐されるという事件が起き・・・
勝新太郎が型破りの元熱血刑事役を演じる痛快アクション。
勝新の警官姿が全く似合っていないのはご愛嬌で子供が川で溺れているのを後先考えず拳銃をその辺に置きっぱなしで川に飛び込むから盗まれるの当然じゃんといういかにも猪突猛進が似合いそうな勝新の失敗談が微笑ましいというオープニングで始まり、電車内で絡まれる保母さんを助けたらそこから誘拐事件に発展し最後は更なる大事件に繋がるとは最初と最後で全然雰囲気が違うのでビックリします。
キャストも勝新のお父さんが加東大介で元上司が伊藤雄之助というコミカルな顔合わせで実際誘拐事件を軸にしたシリアスな内容なのにみんなちょっと間が抜けていて警察はほとんど役に立っていなかったり下町が舞台なこともあってコミカルなところが分かりやすくてよかったです。
熱血感でほぼ勢いだけで事件を解決していくところも勝新らしく最後はひとりで誘拐犯のところに乗り込んでいって泥まみれで取っ組み合い。気分は「兵隊やくざ」といった感じですが
最後にこの事件がきっかけで政財界を巻き込むような大事件へと繋がるラストは続編も作れますという感じでさすが社会派の山本薩夫作品だと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
勝新太郎
(千田寅松)
熱血という感じのマーク・ウォルバーグで。
姿美千子
(山口美恵子)
保母さんとか似合いそうなケリー・ラッセルで。


ニセ札
(2009)
3
2009年4月
昭和25年、小学校の教頭、佐田かげ子はかつての教え子から発行されたばかりの千円札のニセ札作りの話を持ちかけられる。最初は断るかげ子だったが貧しい村のためにニセ札作りをすること決めて・・・
実話をもとに?木村祐一が監督。
題材は面白そうなのですが話のタッチがコメディ風味に味付けされていてもったいない。ここはシリアスにそしてシニカルにせめてもらえたら相当面白くなったのではないかと思います。
主に偽札を作るところがメインになってはいるのですが話の流れがあっちに行ったりこっちに行ったりして落ち着きがなく感じました。この手の映画はあまり横道にそれてはいけないように思うのですがこの映画はその辺が惜しいというかもったいないところです。
主演の倍賞美津子は貫禄も存在感もあるし村では誰もが一目置くカリスマ性もあって文句なし。倍賞美津子はとにかくカッコいいので何をやっても様になります。
最後の裁判のシーンでも普通の人は言ったら何を言っているんだか・・・と思われそうな事を倍賞美津子が言うとものすごい説得力があってさすがです。倍賞美津子を目当てに観に行きましたが内容はもうひとつでしたが、これだけは最高でした。
その他にはニセ札の紙部門担当の村上淳がチンピラみたいですがいい味出していました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
倍賞美津子
(佐田かげ子)
貫禄十分のヘレン・ミレンあたりで。


偽大学生
(1960)
5
2005年2月
四度の大学受験に失敗した大津彦一は故郷の母親に不合格を告げることが出来ずに偽大学生として振る舞い始めるのだったが・・・
偽大学生として喫茶店でくつろいでいるところ偽った大学先の学生運動のリーダーが逮捕されるのですがここでよせばいいのに逮捕描写を大げさに伝えてしまいやがて大津も学生運動の一員となるのですが警察に逮捕されたことをきっかけに学生達にスパイ疑惑を受けて監禁されてしまうのです。
ここまでのくだりも興味深いのですがやはり監禁されてからがすごいです。監禁すらも正当化してしまう集団の恐怖。椅子に縛りつけ数日間ろくな食事も与えずトイレも小の方は垂れ流しでこんな描写にさすがに誰にも言わないから解放してくれという大津の気持ちも分からなくもないけど結局は嘘の積み重ねの自業自得なんですよね。大津も大変だけど大津を抱え込んでしまった大学生達の方も大変です。なにしろ肝心の学生運動が出来ず大津を見張っていなければならないそのジレンマ。リーダーもなにかっていうと上層部に聞いてくると言ってすぐ他人任せにするところも腹が立ち、こういう奴はリーダーになってはいけないし
学生運動しているんだからこういう時にこそ他人任せのリーダーに対して反乱を起こさなきゃいけないと思いましたよ。
結局隙を突いて逃げ出した大津は警察に保護されるも監禁した学生の名前を言うまで解放されずここでも監禁状態でついには裁判で学生達の口裏あわせで精神が病んでいる事になって精神病院に送られてしまう。その過程で本当に気が狂っていしまうのがやるせないです。外出許可を得た大津が大学に母親と訪れるのですがここで若尾文子がこのやるせなさを「やめてよ。」の一言で見事に表現しているのに感心しました。真相を知らない学生達は若尾文子の告白を最初は笑い飛ばしているのですが大津はおかしくなっているから大学生になっているつもりで演説を始めちゃってみんな笑えない状態。このラストは恐ろしいけどこれは全てジェリー藤尾の猿っぽいへらへらした顔つきだからこそ出来たんだなと思います。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(高木睦子)
やるせなさというかうんざり感を出せそうなリリー・ソビエスキーで。
ジェリー藤尾
(大津彦一)
ジェイク・ギレンホールは常に目の下にくまがあるからはまりそうで。


にっぽん'69 セックス猟奇地帯
(1971)
3
2004年7月
1969年日本のありとあらゆる風俗を追いかけたドキュメンタリー。
35年前に日本でもこんなにもいろいろなアングラ部分があったなんて結構驚き。タイトルにセックス猟奇地帯とでかでかと出ているからどんだけセックスネタが出てくんねん。と身構えていたけれど、学生運動とか整形美容とか刺青を彫る女とかちゃんとした?ネタもあってしっかりドキュメント風になっているのがよかった。ドキュメント風ってのは例えば乱交パーティー潜入とかいっているわりには思いっきり撮られる側意識していたり、性に関するエピソードに関してはコメント言っている素人さん?が台本読まされている感がありましたからね。
とは言ってもこりゃ絶対本物だと思うエピソードがあるのも事実で強烈だったのが整形美容のエピソード。最初は鼻を高くする手術の映像なんですけどシリコンを鼻に無理やり押し込んでるよ麻酔をされている本人は痛くないだろうけど見ているこっちの方が痛い。次は豊胸手術の映像。これは今と基本的に手法が変わっていないようで逆にこの時代に豊胸手術があったんだぁーなんて感心していたら最後に
二重まぶたの手術がキテました。まぶたの上をちょこっと切開するのかな?なんて思っていたら思いっきり切開したところから内側の皮を引っ張り出してハサミでちょん切っています。これはさすがに見るに耐えられなかった。衝撃映像もすごかったけど手術用の手袋しないで素手で処置しているところも何気に衝撃でした。この整形美容の院長が患者にどうして整形するのかって聞くシーンがあったけどこの院長も胡散臭かったなぁ。ってことで1969年の風俗ドキュメントだったけどブルーフィルムの撮影現場や性倒錯者なんかを吹っ飛ばすほど前半に出てきた整形美容がすごく印象に残ったのでありました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
(今回はドキュメンタリーなのでなし)


日本暗殺秘録
(1969)
4
2004年7月
日本のあらゆる暗殺事件を描いたまさに日本暗殺秘録な映画。
オープニングの井伊直弼暗殺で有名な桜田門外の変からすごいパワフル。なんてったって暗殺者が若山富三郎ですからね。次は大久保利暗殺だったり安田善次郎の暗殺。しかも暗殺者の菅原文太が渋くてかっこよかったりと
一つの暗殺について豪華キャストがテンポよく(5〜10分程度)次々と語られてちょっとした日本史の勉強になったりもして結構ためになりもするのです。まさかこんな調子で映画は進行していくのだろうか?(それはそれで面白そうだけど)と思ったけれど血盟団事件という事件がこの映画ではメインとして描かれていました。この血盟団事件って初めて知ったのですが、貧しい人々が役人達に革命を起こすみたいな話ですね。(かなり大雑把すぎますが・・・)
で日蓮宗の井上日召が結成した血盟団の中の小沼正という男が井上準之助前蔵相を暗殺までがしっかりと描かれていましたけど主人公の小沼正は千葉真一なんですけど青春している千葉真一が新鮮だった。カステラ屋で働く千葉真一の恋のお相手がカステラ屋の娘に扮した藤純子、この藤純子が清純派という言葉がまさにぴったりでさわやか。このさわやかな藤純子と濃い千葉真一の組み合わせの純愛を交えつつ非情な警官達によってカステラ屋がつぶれたあたりからいよいよ主人公は血盟団に入っていくのですが片岡千恵蔵はオーラがすごかった。千葉真一を黙らせる気迫があるもの。その片岡千恵蔵の右腕的存在の海軍兵隊になんと田宮二郎。ちょっと辛気臭かった感じはしなくもないけど思いもかけず田宮二郎に出会えてうれしかった。しかも村井国夫なんかもちょい役で出ていたりして35年前からこの世界でがんばっていたんだなんて感心しましたね。
この次が二・二六事件が描かれているんですけど高倉健、鶴田浩二、里見浩太郎とすごい面子。この映画内容もさることながら豪華キャストも贅沢さを味わえるすごい作品なのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
片岡千恵蔵
(井上日召)
やさしさと厳しさを兼ね備えている感じのモーガン・フリーマンで。
千葉真一
(小沼正)
勢いがあったころのマット・ディロンという感じがして・・・


日本侠客伝
(1964)
4
2006年2月
伝統ある材木業者の木場政組は新興企業の沖山運送の事あるごとに因縁をつけられ嫌がらせを受けていた。ある日、木場政組の親分が病死し沖山運送は勢力を伸ばし始めるがそんな時、木場政組の小頭の辰巳の長吉が戦争から帰って来て・・・
「日本侠客伝」とタイトルが着く作品は全11作品で全て高倉健が出ていてそのうちマキノ雅弘が監督したものは9作品の記念すべき1作目。ということで特別出演で中村錦之助も出ていたりして出演者も豪華でよかったです。
高倉健の相手役が藤純子、中村錦之助の相手役が三田佳子で長門裕之の相手役はと言えば南田洋子とそれぞれのカップルが適材適所といった組み合わせで相性ばっちりなのでものすごく安心して観ていられます。
善の木場政組は松方弘樹とか田村高廣から大木実まで有名どころがそろっていて豪華でそれだけでも得した気分。しかも大木実は地味目なのに何故かNo.2的存在で突っ込みをいれたくなる醍醐味もちゃんとあります。
逆に悪徳の塊みたいな沖山運送は任侠もので良く見かける顔の天津敏くらいしか顔と名前は一致する人がいないのですがその他大勢の子分たちを含め全体的に人相が悪すぎるので顔をみれば木場政組の人間か沖山運送の人間か判断がつくので分かりやすいです。
最後はもちろん堪忍袋の緒が切れた健さんとはじめ松方弘樹ら四人で沖山運送に殴りこみ。ネタバレ→
結局生き残るのは健さんだけでしかも刑務所行。すっきりするけど木場政組メインキャスト全員いなくなって←今後どうなるんだろうか?とちょっぴり心配になりました。
あと中村錦之助の角刈りは微妙でしたねぇ。やっぱり錦之助はちょんまげが一番似合います。それと松方弘樹はなんであんなに(特に脱ぐと)ギラギラしているんだろうといつも思います。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高倉健
(辰巳の長吉)
カール・アーバンを抜擢したい。
大木実
(弘法常)
大木実は日本のクライヴ・オーウェンと言いたい。
天津敏
(沖山剛造)
若干モダンなインテリ風味のある悪徳、天津敏の役にはガブリエル・バーンで。


日本侠客伝 浪花篇
(1964)
4
2006年2月
設定は基本的に「日本侠客伝」と同じです。悪役も天津敏だし。
違うところと言えば、健さんが仕事中に事故死した弟の遺骨を受け取りに大阪にいったらあくどい運送業者が町の人をこき使っているのを見かねて助けるという感じの流れです。それといい運送業者のボスが村田英雄ってところと相手役が藤純子じゃなくて南田洋子で今回も長門裕之が出ているのですが相手役はじゃあ誰だ?ってことになるのですが八千草薫でした。当然身請けされそうになった八千草薫を助けて長門裕之が殺されるというパターンは一緒です。
展開が同じなもんで新しい感想っていうものがそれほど出てこないのが辛いところでいい運送会社の
ボスの村田英雄がモノマネしている時のコロッケにめちゃくちゃ似ているなぁとかどうでもいいことしか思いつきません。
あと権力がある村田英雄は悪い運送業者に一喝して物申すところまではいいのですがよせばいいのに夜道のトンネルを一人歩きですよ。そうしたら案の定闇討ちにあってあの世行ですよ。明治、大正、昭和の初期なんてドス持ったごろつきがそこら中にいるんんだし、ましてや悪徳業者に睨まれるようなことしているんだから夜の一人歩きするなんて・・・油断しすぎもいいところです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高倉健
(藤川宗次)
任侠ものの高倉健の役はとりあえずカール・アーバンにお願いしたい。
村田英雄
(和田島義雄)
迫力あるけど肝心なところで油断しそうなジョン・グッドマンで。
鶴田浩二
(冬村吾郎)
イメージ的に渋いところがヴィゴ・モーテンセンっぽい。


にっぽん昆虫記
(1963)
4
2005年8月
不幸な生い立ちで家族にも邪魔者扱いされているが父親にだけは溺愛されている松木とめ。彼女は地主の家に嫁入りさせられるのだったがとめは夫以外の子供を産みやがて東京に出てくるのだが・・・
この主人公のとめという女、製糸工場で課長との肉体関係そして長女の出産をし単身東京に行きメイドとなって働いたもののその家の娘を不注意で死なせてしまい新興宗教にはまる。そこで知り合った女の宿で女中になったらそこはは売春宿でいつのまにか女将を出し抜き新しい売春組織を作っちゃうという普通ならこの尋常でない人生を生き抜いているという様を演じられる人はそうそう見つからないと思うのですが
半分狂気というか普通じゃない雰囲気の左幸子がやるから説得力があってすごいものを観たという気になります。しかも近親相姦的な香りもするし。
最初田舎の農村から始まる訳ですが方言が字幕つけてぇーってくらい何言っているか全然意味分からなくてすごく困るのですが勢いが半端じゃないという感じがスクリーンから伝わってきて目が離せません。東京に出てきてからようやくなんとなく言葉が分かってきたかなって頃から話も面白くなってきて特に新興宗教にはまったら売春宿だったていうところがすごいんですが売春宿の女将に金見せられたらちゃっかり働きつつ仲間が外で客を取っていることを女将に告げ口して着実に地位を上げて仕舞いには女将を裏切り頂点に立ち女帝のように振る舞うしたたかさとそこから同じように陥れられどん底に落ちてしまう演じきる左幸子はさすがだなぁと思いました。
1930年生まれだから当時33歳。この役二十歳くらいから40代後半くらいまで演じていると思うんですが若さもそうなんですが顔つきが最後全然違うんでそりゃベルリン国際映画祭で女優賞を獲るよなぁと感心するのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
左幸子
(松木とめ)
変なパワフル感があるジュリエット・ルイスで。


日本最大の顔役
(1970)
3
2007年5月
戦後まもなく大矢根組三代目を襲名した黒木和也は警察の手が出せないことをいいことに無法を働く三国人から街を救うが進駐軍から追われる身となり各地を旅をすることになるが・・・
小林旭主演の任侠もの。
石原裕次郎とか小林旭の出ている日活ものは苦手であまり観ないのですがこれは梶芽衣子がでているので観たのですがこれが痛快任侠ものといった趣きで結構面白かったです。
劇団ひとりっぽいルックスの小林旭が日本各地を旅しつつなぜか世直し的なことを行って自然に人望を集めていくという内容なのですが小林旭はほとんど手を出さずとにかく血の気の多いやんちゃなジェリー藤男と井上昭文コンビが切り込み隊長要員で悪いやくざに飛び掛っていくのが痛快です。
各地で出会うやくざも藤竜也や郷^治といった「野良猫ロック」でお馴染みの面子が次々と小林旭の仲間になって行くところが普通じゃありえなくて得した気分です。
最後は小林旭の地元で敵対する大きい組織の組と対決するのですが敵対する組にもお約束でいいやくざがいるのですがオープニングで三国人役で登場した宍戸錠。ほっぺたがやっぱり好きじゃないけどわざと片言の日本語の台詞を言っていい人でした。日本各地でいい事した小林旭のもとに日本中からいいやくざが大集結。やっぱりいい事はしておくくものです。
肝心の梶芽衣子は歌謡歌手という役どころで興行をやらせてもらえない嫌がらせを受けているところを小林旭に助けられるのですがこの時期ってちょうど「野良猫ロック」シリーズが始まった頃だと思うのですが別の美しさがあって惚れ直したのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
小林旭
(黒木和也)
ショーン・ビーンに任侠ものの主人公をやってもらいたい。
ジェリー藤尾
(雨宮)
血の気の多そうなコリン・ファレルで。
宍戸錠
(金山)
ほっぺたを見ているとシルヴェスター・スタローンを思い出します。


にっぽん三銃士 おさらば東京の巻
(1972)
4
2005年6月
戦中派の黒田忠吾、戦後派の八木修、戦無派の風見一郎は世代も性格も全く違う三人だがそれぞれトラブルを起こし家にも会社も戻れなくなってしまう・・・
3人のうち一番共感とできて笑えたのはやはり年代の近い風見一郎のエピソードでした。風見という男は一流企業に勤めていながら別段やる気があるわけでもなく出世を目指す訳でもなくなんとなぁーく会社に通っているところが今風で会社に媚びないところというかゆるい感じのところがなんかいいし、そのくせ70年代によくあった街中で歌う若者達のフォークソングにいちゃもんつけて囲まれちゃったりするんですけど逆にギター片手に歌いだして一躍人気者になるという意外な一面とか見ていると人には何かとり得が一つはあるもんなんだなぁと思いました。
大学教授の八木は不能になった男性機能をバーのママ(加賀まりこ)が回復してあげるって展開になって大学病院に忍び込むも見つかって加賀まりこを見捨ててパンツ一丁でずーっと逃亡。しかも最後までズボンをはかないってところが気になってしかたありません。
黒田も行き場のなくなった二人を自宅に連れて行ったけど嫁と娘に追い出されたり、コラムニストをカラムニストと気取る女を助けて警察から追われる身となったり、
3人の主人公それぞれ個性的で一人一人にちゃんとしたエピソードがあるのにどれも印象的で面白いというのに驚きました。
加賀まりこは今と見た目がほとんど変わらずすげーなと思ったけど眉毛がほとんどなかったのが恐かったです。岸田森はいかにも昭和の典型的な上から目線の上司とか脇役も想像していたより豪華で楽しかったです。これ普通にドタバタコメディとして連続ドラマにしても面白そうだなぁと思いました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
小林桂樹
(黒田忠吾)
キャラ的にロビン・ウィリアムスが最適です。
ミッキー安川
(八木修)
こちらもキャラはぴったりのアンソニー・エドワーズで。
岡田裕介
(風見一郎)
やる気がなさそでありそうなジェイク・ギレンホールで。


にっぽん三銃士 博多帯しめ一本どっこの巻
(1973)
4
2005年6月
東京を去った黒田、八木、風見の三人は貨物列車に忍び込みやがて博多にたどり着く。三人はスラム街の女王カラスのお新に拾われ仕事を手伝うのだが、スラム街はやくざの経営するウルフ興業に立ち退きを迫られていた・・・
この三人がカラスのお新の下で働くんですがその仕事がビール造り。といっても博多の屋台で客の飲み残したビールを集めてミックスさせる生ビールならぬ混ビールを造って屋台に卸ししているんですよ。最初とんでもねぇなぁと思ったのですが、お新姐さんによれば博多っ子は瓶ビールに口つけてラッパ飲みしないし、瓶もちゃんと消毒するから衛生的なんだそうですよ。
真面目な戦中派の八木が今回究極のビール作りに没頭したりやくざ相手に凄んでみたりはじけまくっておかしかったです。やくざといえばウルフ興業の総務部長の田中邦衛、部下が風見を拉致して今にも殴るぞって時に制止するんですがその時の台詞が
「やめろぅ!ホットドッグ!」ってニックネームがホットドッグという素敵なセンス、真面目なんだけどいつものようにちょっと勘違い入った田中邦衛節炸裂だから笑いました。風見のことお新姐さんが雇った香港の殺し屋と勘違いしているし。
コラムニストをカラムニストと気取るコラムニストのマリがなんで博多にいるの?みたいな強引な展開なんですけど再び出てきて風見と一暴れしたり総合的にドタバタ具合がちょうどよく「にっぽん三銃士」シリーズ面白かったです。
最後はネタバレ→
結局お新姐さんはみんなのためを思ってスラム街を出て行くことを同意してしまうんですが三人+カラムニストはまた当てのない旅に再び出る←という終わり方が前向きな感じがして好きです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
藤岡麻里
(古賀マリ)
高飛車で気取った役はやはりキルスティン・ダンストが適役です。
市川翠扇
(カラスのお新)
面倒見のよい太っ腹な感じのウーピー・ゴールドバーグで。
田中邦衛
(北風の健)
スタンリー・トゥッチはあの顔でボケをやると面白い。


日本ゼロ地帯 夜を狙え
(1966)
3
2010年8月
社長秘書の衆木はある日であった待村ルミという女と深い仲になるがそれは衆木を売春斡旋をさせるための罠だった。そんなルミの組織でかつて命を助けられた橘と再会し・・・
石井輝男の売春組織もの。
新東宝が無くなっているので松竹の作品なのですが顔ぶれは見事に新東宝。そして「地帯」と付いているので「セクシー地帯」などの地帯(ライン)ものに通じる話で面白いはずと思って観たのですが、とっ散らかっていました。石井輝男らしさはあるのですが・・・
竹脇無我が三原葉子に騙されて裏の世界の仕事を手伝わされる羽目になるので
竹脇無我が主役なのですが吉田輝雄が出てきてからは完全にいつもの吉田輝雄映画になっています。竹脇無我と吉田輝雄の出会いの回想シーンが始まったと思ったらほとんどそれメインですかみたいな感じでそこに嵐寛寿郎が出てきたら完全に竹脇無我の出る幕がなくて何だか気の毒。三原葉子を誘惑して頑張ってはいたんですがねぇ、やっぱりこの面子だとしょうがないですよね。
いったい何十年売春組織のボスをやっているんだという悪役の山茶花究がさりげなくいい味出していて情婦の三原葉子を麻薬漬けにして、薬が切れてのたうち回る三原葉子を見て楽しんでいるドSの山茶花究が意外にも存在感抜群でしたが、やっぱり吉田輝雄が学ラン着ちゃっているあたりで吉田輝雄の一人勝ちだなというか石井輝男がこの人の使い方を完全に分かっているところがさすがなんですね。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
竹脇無我
(衆木直也)
ジェイク・ギレンホールあたりにお願いしたい。
吉田輝雄
(橘)
何かと頼りになりそうなクリスチャン・ベールで。
三原葉子
(待村ルミ)
情婦顔のエマニュエル・ベアールで。
山茶花究
(阿川)
ショーン・ビーンのボス役を久しぶりに観てみたい。


日本誕生
THE THREE TREASURES
(1959)
3
2006年7月
古代神話の日本武尊の活躍を描いた作品。
昔の日本映画が好きな人が観たら豪華すぎてすいません。という感じの人もスケールも大きすぎる超大作。出てくる人みんなちょい役で5分も出ていればかなり出ているという方というのがその豪華さを物語っています。
ポスターもこれだけ豪華だからベテラン女優のブロックに田中絹代、杉村春子、原節子、乙羽信子。ヤング部門に司葉子、香川京子、上原美佐、水野久美といった感じになっているのもすごいです。
で内容はヤマタノオロチのエピソードやら天照大神のエピソードなど小学生の時に読んだことのある内容も出てきて懐かしいなぁと思いながら観ていました。その中で一番の見所はやっぱり原節子が天照大神に扮したエピソード。原節子が小林幸子ばりのものすごい衣装もみどころですが天の岩戸を開けさせる天宇受女命はだれがやるんだろう?と気になっていてこの時点でヤング部門で出てないのは香川京子だからそうなぁ?と思っていたら乙羽信子だったので拍子抜けしました。
天宇受女命といったら裸踊りして引きこもった天照大神を表に出すきっかけ重要なところなのに乙羽信子って・・・楽しそうに踊っているのですがなんかオカメっぽかったです。
全体的な話の流れは腹黒い側近が三男、四男を皇位に付けささせようと三船敏郎を陥れるためにいろいろ企むけど三船敏郎はその危機を乗り越えていくといった感じなのですが、神様だって権力が欲しいんですねぇ。
最後のクライマックス、天変地異の特撮はさすが円谷英二という感じで火山が噴火し大地が裂けたりするシーンはちゃんと人が落っこちているし、溶岩に飲み込まれるときはちゃんと燃え上がったりしてこれは今観てもすごかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三船敏郎
(小椎命/日本武尊)
カリスマ性と濃さを兼ね備えているジョージ・クルーニーで。


日本沈没
SUBMERSION OF JAPAN

(1973)
4
2004年7月
潜水艇で日本海溝へ調査に訪れた田所博士と小野寺は海底で異変が起きている事を発見する。やがて田所博士は日本が沈没すると予見し、その後日本各地で異変が起こり始める・・・
70年代は日本も超大作と言われる作品が作られていた時代のようでこの「日本沈没」は代表的な超大作だそうです。ってことで本当に超大作の雰囲気が漂っていて日本もこんな大作撮っていたんだと感心。
いきなり海底調査のシーンから始まって業界用語が飛び交い日本がやばそうなことになっている危機感が伝わってきましたよ、言葉の意味はさっぱり理解できなかったですけどね。そんなやばそうな状況が発覚して日本のお偉いさんがたが集まるわけですがここで本物の大学教授が登場して用語の説明があったりとますます本格的。そんな地味目な前半が終わると突然大地震やら火山が大噴火したりといよいよ日本がなくなりそうになるんですけど
特撮が想像以上にすばらしかった。CGに頼らなくても十分いけますよってくらいの迫力です。
「ザ・コア」や「デイ・アフター・トゥモロー」も確かにCGによる異常気象とかそういったビジュアルはすごかったけど、なにせ世界規模で大変なことが起きているってのに描かれているのは家族や恋人、仲間の命が助かるかを中心に描かれているので観ているこっちは絵空事って感じで軽いノリになっちゃうんですよね。それと比べると藤岡弘が恋人のいしだあゆみの心配をするエピソードはあるもののほとんど皆無で政府や学者達は日本人をどうにかして海外に受け入れてもらえるように奔走することが中心に描かれているのに軽いノリというより重苦しい雰囲気が漂っていているんですよね。この手のディザスター・ムービーはドラマチックかと言われるとそういうことはないと思うんですけどこの「日本沈没」は「ザ・コア」や「デイ・アフター・トゥモロー」に比べると格段に重みがあるから好きですね。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
小林桂樹
(田所博士)
やっぱりこの手の映画に出てくる博士とかってジェフ・ゴールドブラムがぴったりです。
丹波哲郎
(山本総理)
大俳優という響きが似合いそうなショーン・コネリーで。
藤岡弘
(小野寺俊夫)
「勝手にしやがれ」時代のジャン=ポール・ベルモンドあたりが適度にビジュアル的に熱くていいかと。


日本沈没
(2006)
3
2006年8月
日本が一年後に沈没すると知った時、科学者や政治家のとった行動は・・・
1973年版を若干リメイクした印象。観た人たちの感想がみんなダメだったって言うものだから対して期待しないで観に行ったのですが、特撮はいいんですけどやっぱりドラマ部分がイマイチでした。日本各地で起きている地震やら火山の噴火などいろいろなところを見せたいのは分からなくもないのですが、一つのシーンが短すぎるのが個人的には致命的でした。
草なぎ君と柴咲コウの二人は東京がすごいことになっているのに普通にお互い自由に行ったり来たり出来てものすごく神出鬼没でちょっと笑ってしまったしクライマックス草なぎ君を見送りに来た柴咲コウが抱き合うという感動的なシーンもなぜかスローモーションそして久保田利伸の壮大なラヴソングがベタ過ぎて困ります。
それにネタバレ→
最後の晩、こんな状態なのに柴咲コウが草なぎ君に抱いてと頼むのもどうかと思いましたが「今は抱けない。」と断る草なぎ君もある意味すごかったです。
といろいろ突っ込みたいところはかなりあるのですが、予告編観たときこの美人官僚は誰だろう?思っていたら髪をばっさり切った大地真央でした。そんな
大地真央、ちょい役かと思ったら國村隼の嫌味やら地震にもめげず必死に日本を救おうと奔走して大活躍。個人的には真央ファイト、真央をもっと出せといった感じで大地真央はよかったです。綺麗だったし。ネタバレ→「日本沈没」のその後があれば確実に女総理大臣になっていると思います。
あと日本のダコタちゃんこと福田麻由子は上手かったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
草なぎ剛
(小野寺俊夫)
寡黙な感じのジェイク・ギレンホールで。
柴咲コウ
(阿部玲子)
体育会系のジェシカ・ビールで。
豊川悦司
(田所雄介)
こういう科学者はなんでお前が・・・でお馴染みのクライヴ・オーウェンにやってほしい。
大地真央
(鷹森沙織)
いつの間にか主役を食うところがファムケ・ヤンセン的で。


にっぽん泥棒物語
(1965)
5
2005年8月
戦後まもなく金よりも着物や米が価値があった時代、蔵破りの名人林田義助はいつものように土蔵破りを成功さていたのだが仲間から預かった盗品がバレ逮捕されてしまう。やがて仮出所となった義助は弟子の馬場とともに盗みに入るのだが失敗してしまう。その帰り道不審な集団を目撃した二人は翌日、杉山駅の列車が転覆した事故があった事を知るのだが・・・
三國連太郎はシリアスな役からコミカルな役まで幅広くって感心します。今回も金の価値より物が大切だった戦後すぐの貧しい時代背景に生きるために泥棒稼業をするような男なのですが、
三國連太郎は持ち前のひょうひょうとしたキャラクターで明るく泥棒しちゃうところとか、刑務所で知り合ったドジな自転車泥棒も気前よく弟子にしちゃうところも観ていて楽しいです。
と前半を観た印象は本当楽しい泥棒物語だなぁと思っていたら劇中で出てくる列車転覆事故の杉山事件が起きて事件の真犯人を目撃した三國連太郎と弟子は警察に無理やり逮捕された男達を助けるかどうか葛藤するという急にシリアス路線に入りそうになるのですが三國連太郎はコミカルなキャラクターを崩さずに最後まで持っていったところがこの映画を魅力的にした要因であることは間違いないし、葛藤する理由も泥棒稼業から足を洗ってもぐりの歯科医ながら町でそれなりの信頼と名声も得て佐久間良子という嫁ももらい子供も出来て人間らしい幸せがあるから過去の業が世間に明るみになって全てが台無しになることを恐れているからといういたって人間らしいところに説得力があるのです。だから昔から天敵だった刑事の伊藤雄之助に過去ことを盾に偽証を強要されて最初はいいなりになってしまうんです。
結局、三國連太郎は裁判で本当の事を証言することに決めるのですが嫁の佐久間良子は家を出て行ってしまう。だけどしっかり裁判を傍聴して今まで知らなかった本当の夫の姿を見て感動するのですが観ているこっちも伊藤雄之助を初め検察側を見事にやりこめた三國連太郎の姿にスカッとしたし感動したのでした。
劇中に出てくる杉山事件はおそらく松山事件のことをもじっていることは間違いないと思うのですがこの松川事件を映画化その名も「松川事件」。監督もこの映画同様山本薩夫なので機会があったらぜひ観てみたいと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三國連太郎
(林田義助)
イメージ的には若かりし頃のマイケル・ケインといった感じ。
伊藤雄之助
(安東警部補)
ちょっと不気味な魅力のあるウィレム・デフォーで。


日本のいちばん長い日
(1967)
5
2005年6月
昭和20年7月26日に発せられたポツダム宣言をめぐり8月14日から15日の政府の混乱を描いた戦争ドラマ。
東宝スターが集結した戦争サスペンスとでも言いましょうか。仲代達矢が出てないじゃんと思ったらナレーターだったしとにかく豪華でした。
大雑把に言うと大日本帝国がポツダム宣言を受け入れて天皇がレコードに終戦を伝える内容のを録音した玉音盤を終戦反対派の陸軍青年将校たちが奪おうとクーデターを起こしそれを守ろうとする関係者という構成が「24」のようで
この時代にすでに日本に「24」があったかぁと感心しましたし、これが実際にあったことっていうのだからとてもスリリングでした。
前半はポツダム宣言を受け入れるかどうかの政治の駆け引きメイン。特に総理の笠智衆の総理大臣と陸軍大臣の三船敏郎の睨みあいはすごかったです。三船敏郎はいつも通りの迫力のある睨みを効かせるんですけど、笠智衆は穏やかな印象しか持っていなかったし、映画の中の総理大臣も人がよさそうでどこか頼りなさそうな感じがしたのですが実際睨むと瞳の奥が鋭く光っていて三船敏郎より断然恐かったですね。外務大臣役の山村聡も声を荒げたりしていつものキャラと違うんですけどみんなちゃんと政治家しているという感じがして迫力ありました。
後半は玉音盤を手に入れて戦争を続けさせようと中丸忠雄が陰謀を張り巡らせてはむかう奴らは皆殺しみたいなまさに「24」のような展開で善人も悪人も次々と死んでいってハラハラします。中丸忠雄は相変わらずこういった役がはまっていてよかったのですがその部下の黒沢年男が一人テンションがひく位異常に高くってとにかくすごかったです。なんてったった瞬き一回もしないどころか目を見開きっぱなしでちょっと暑苦しかったのが唯一残念なところです。
それになによりすごいのが中丸忠雄がうまいこと騙して何も知らない軍人達を操って玉音盤を手に入れようと天皇の住んでいるところ占拠しちゃうし建物の中ひっくり返してやりたい放題なんですよ。今の時代じゃ全然想像できませんけどこれが本当にあったってところがやっぱりすごいです。
この映画は今まで観た戦争映画の中で特に群を抜いていて周りに薦めたい気持ちでいっぱいになりました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三船敏郎
(阿南陸相)
「24」気分でキーファー・サザーランドで。
笠智衆
(鈴木総理)
やっぱり一国の主はデニス・ヘイスバートですね。


やくざ戦争 日本の首領
(1977)
5
2004年7月
西日本最大の中島組はある日、アベ紡績の社長のスキャンダルの揉み消しを依頼される。その事をきっかけに中島組は全国制覇に向け順調に動き出すのだが、やがて東京の組織との対立が目前に迫った時、組長の佐倉と若頭の辰巳の間にも亀裂が生じ始めて・・・
壮大なる「日本の首領」シリーズの記念すべき第一作目。
組長の佐倉を筆頭にその家族、若頭の辰巳、その下の松枝、幹部の迫田や片岡など中島組だけでも相当な登場人物で、これにアベ紡績なんかの企業や後半になると東京のの組織なんか絡んできて普通なら頭の中はこんがらがりそうになるところですがこの作品、幹部やその後物語に深く関わってきそうな人物達のキャラクターがわかりやすく色分けされているのですんなり話しに没頭できるところがすばらしい。例えば千葉真一演じる幹部の迫田は今回も一人異彩を放っていて、暴力でことを進めようとするタイプのやくざ。「沖縄やくざ戦争」の時とほぼ同じで結局やりすぎて破門になっちゃうんですよね。ネタバレ→
獄中で自殺しちゃうんですけど遺書というか書き残した手紙が全部ひらがなで書かれているところが知能指数が低くって千葉ちゃんらしかったなぁ。交渉担当?の成田三樹夫も敵対する組に乗り込んで怒鳴られたりするんですけど「あぁびっくりした。」ってわざとらしく言ったりするシーンなんか相変わらず面白いし上手いなぁなんて思いましたね。
これ鶴田浩二が主演だと思うんですが最後に心身とも疲れきった鶴田浩二が病院で組を抜けようと決心するんですね。(この鶴田浩二の枯れ具合がまたすばらいしい)だけどそれだけは認めない佐分利信の心中を察した婿の高橋悦史がネタバレ→
大量のモルヒネを打って病死に見せかけるんですよね。←そこで佐分利信に言う「私も佐倉の人間です。」って台詞にぞくっとしましたね。そう来たかと。鶴田浩二の腹心の松方弘樹も解散を告げる書きかけの手紙を見つけそれを捨てるんですよね確か。やくざの非情さを垣間見たって感じでなんか切なくなったけど、この先の展開がすごく気になるうまい終わり方がずるいというか上手いと言いたい。
中島組の組長の佐倉、その右腕的存在の辰巳を見ていると人の上に立つ人間ってことがどういうことかよくわかります。佐倉も辰巳も基本的には口出ししないんですけど組員たちの行動はしっかり押さえていてやばくなりそうな時に口を出す。これなんですよね人を使いこなすって事は・・・ってためになる作品でもあるのです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
鶴田浩二
(辰巳周平)
いい感じに枯れているハーヴェイ・カイテルで。
佐分利信
(佐倉一誠)
マーロン・ブランドで。最近「ゴッドファーザー」を観ましたがかなりかぶりました。
松方弘樹
(松枝四郎)
次世代を担うイケテル40代のヴィゴ・モーテンセンで。
千葉真一
(迫田常吉)
そのキレっぷりがチェッキー・カリョのようでした。


日本の首領 野望篇
(1977)
5
2004年7月
辰巳のいなくなったあとを支えた松枝と婿の一宮のおかげで佐倉は再び関東進出を開始するのだったが、それを阻止すべく関東では大石が「関東同盟」を結成するのだった・・・
いよいよタイトルどおり本格的に日本の首領の野望を果たそうとする佐倉とそれを阻止し日本の首領の座を狙う関東から登場する大石との攻防が始まったりと見所満載で三部作の中で一番好きですね。
まず、関東の首領に扮した三船敏郎が佐分利信の敵役にぴったりというか申し分なしです。佐分利信が和のテイストで(ガウンの背中には般若の刺繍だ。しかも素材はシルクと見た。)まさにやくざというなら三船敏郎は洋風テイスト(とちらはノーマルなパジャマでした)でマフィアという形になっているところも個人的には似て非なるものって感じでいいんですよね。
日本制覇をするには暴力と金だけじゃダメってことで政界にコネクションを作ろうと松方弘樹が銀座に高級クラブをオープンするわけですけど、このママに抜擢されるのが
なんとか財閥のご令嬢、姉小路尚子役はなんと出ました!岸田今日子。初登場シーンが乗馬っていうのも強烈。もちろん乗馬格好をしても岸田今日子テイストは薄れることはなく松方弘樹とのベッドシーンもとってもあったりしてホラーチックなのでした。(登場するたび岸田今日子の存在感に圧倒されます。)そんな岸田今日子に磨き上げられてレディになるのが一宮医院の看護婦なんですけど、顔が素朴だからいくらドレスアップしても悲しいかなゴージャスにならないんですよね。いっそのこと岸田今日子自信が外国に嫁げばいいのになんて思ったりもして・・・
松方弘樹が佐倉の右腕に抜擢されちゃったから古くからいる幹部の成田三樹夫は面白くないんですよね。だから関東に情報を流したり裏切り行為をしちゃうんですよね。もう切なくなりましたよ成田三樹夫ファンとしては。
高橋悦史も何様?って思うくらい中島組に口出しくるけど、やくざの娘のとこに婿入りした宿命みたいなものを受け入れてそこで生きてく決心が見え隠れするからこそこういった行動が嫌味じゃないんですよね。
それになんといってもラストがすばらしい、ネタバレ→
成田三樹夫は裏切りがばれ消されて、松方弘樹なんて重圧に耐えられなくなって自殺しちゃうんですよね。てっきり完結編で松方弘樹が佐分利信に代わって中島組の組長になるラストを予想していただけに←いい意味でこの終わり方にショックを受けましたよ。もう早く続きが見たいって。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三船敏郎
(大石剛介)
裏切りは許さないという姿勢が「キル・ビル」のデヴィッド・キャラダイン的で。
高橋悦史
(一宮恭夫)
いっつも巻き込まれてる雰囲気のガイ・ピアースあたりで。
成田三樹夫
(片岡誠治)
最後は出し抜かれそうな感じのガブリエル・バーンで。
岸田今日子
(姉小路尚子)
年を重ねますますメルヘン度合いが進んだ感じのイザベル・アジャーニで。


日本の首領 完結篇
(1978)
5
2004年7月
中島組と関東同盟の関係はひとまず落ち着きを取り戻していたが、政界の黒幕大山が倒れ一宮の執刀により大山は一命を取り留めたがそのことがきっかけとなり再び抗争が起きようとしていた・・・
中島組も関東同盟もいつの間にか政界に深く関わっていて、いよいよどちらが日本の首領になるのか決着がついてまさに完結編という名にふさわしいできでした。
今回最後にして政界の黒幕大山役に片岡千恵蔵が登場。大山は中島組と関東同盟が手を組む事を望むんですけど、大山の権力が半端じゃないから、本当は断って日本の首領になりたい佐倉も大石もNOと言いたいところだけど言えないみたいな三つ巴の心理的攻防がまず渋かったですわ。
そんな中、大石がサイパンに行くんですよね、ヘリなんかに乗っちゃって。この完結編に大石はサイパンに観光かい!と一瞬焦りましたけど都会派の大石は観光地として当時発達していなかったサイパンに目をつけてその開発を一手に請け負いその勢いに乗って首領になるという佐倉を出し抜く作戦だったんですね。そんな目立った行動に大山は大石を陥れいよいよ佐倉に天下が回ってきたか?てところで大山は佐倉が古臭い体質だからっていう理由で菅原文太扮する中島組の幹部川西を誘うんですけど川西は佐倉を裏切ることなく仕えるところが男気溢れていて気持ちよかった。
そう、菅原文太といえば毎回違う役で出てるんですよね。一作目では東京のやくざの幹部だったし、二作目じゃクライマックスで大石を撃つ(最後自信も撃たれるけど生きている)中島組の幹部で、今回車椅子で登場したからてっきり同じ役かと思ったら違うしちょっと混乱。だけど今回の菅原文太の車椅子から無理やり立ち上がろうとする演技とか、幹部としてのカリスマ性みたいなものがすごくよく表現されていて
今まで何とも思わなかったけど今回の中島貞夫特集のなかで助演男優賞を上げたいくらいよかったですね菅原文太。
で気になるラストはというとネタバレ→
大石が警察に捕まっている間に、またしても一宮が大山を殺害しついに佐倉が日本の首領にという矢先に心臓発作であっけなく死んじゃうんですよね。その隙に大石が日本の首領になっちゃうんですよね。悔しかったなぁ。もう中島組には菅原文太くらいしかいないからもう崩壊するのが目に見えてこの先中島組はどうなってしまうのだろうとかいろいろ考えてしまいましたもの。
他にも菅原文太に買われるも強い女に成長する大谷直子とか、まだまだ書き足りないことがあるけどDVD買ってじっくり観てまた感想を書こうかなと思います。
三船敏郎が演じた大石が「どうしたらそんな統率力が取れるのか?」みたいなこと聞かれるんですけど大石は一言「裏切りは許さない。」って言うんですよね。これ「日本の首領」シリーズで一番印象に残る名台詞です。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
菅原文太
(川西明)
難病役から凶暴な役まで幅広いショーン・ペンで。
片岡千恵蔵
(大山喜久夫)
なんかすごい権力持ってそうなチャールトン・ヘストンで。
大谷直子
(木村由紀子)
不幸な境遇でたくましく生きていく美女ナオミ・ワッツで。


女房学校
(1961)
4
2006年12月
料亭の女将、山村松代はある晩マダムXと名乗る女から夫と浮気中という怪しげな電話がかかってくる。松代はホテルに向かうと同じようにマダムXから呼び出された菊川経子と露木まりがやってきて・・・
三人の女房達も豪華ですが、旦那達も豪華で山本富士子の旦那が森雅之、叶順子の旦那が川崎敬三、朝丘雪路の旦那が川口浩で
山本富士子は川崎敬三と叶順子は川口浩と朝丘雪路は森雅之と訳ありの関係にあるという
時間があったら相関図を描きたいくらいの勢いで内容もコミカルで楽しかったし作りも終わりから始まりちゃんと終わりに戻って上手い具合に締まるところが上手いなぁと感じました。
中でも注目したのが朝丘雪路と川口浩のカップルで朝丘雪路はテレビプロデューサーで川口浩はサラリーマンというところも時代を先取りした印象を受けたのですがこの二人の結婚が1年の契約結婚で契約が終わってまだお互いが夫婦でいたければ契約を延長するというまさに21世紀型カップルという姿が当時としても進んでいたと思うのですが今観てもこういうスタイルは新しいと感心しました。
あと個人的に好きだったキャラクターは森雅之。金魚学者?で青い金魚を作り出そうと夢中で収入は全くなく料亭を帰営する山本富士子に怒られてばかりというヒモのような生活っぷりで見た目も丸山弁護士のような風貌で最初森雅之って全く気がつかなかったのですが人間性がいやらしいイメージが強かっただけにこういうちょっと三枚目なキャラの森雅之はものすごく新鮮でした。
主役の山本富士子は確かに旦那を養っているけど結構自分勝手でミス日本じゃなければ殴られるところです。
オープニングは「女房なんて女房なんて、みんな見栄張で欲張り・・・」とドゥワップ調ののコーラスが軽快で楽しくそれぞれの夫婦の暮らしも全体的にモダンな雰囲気は今観ても憧れてしまいました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
山本富士子
(山村松代)
女将とか意外と似合いそうなシャーリーズ・セロンで。
叶順子
(菊川経子)
裕福なことが幸せじゃないとか言いそうなクリスティーナ・リッチで。
朝丘雪路
(露木まり)
なんとなく業界人の役もいけそうなクレア・デーンズで。


女系家族
(1963)
4
2007年3月
大阪の老舗繊維問屋、矢島商店の当主が急死し三人の娘に遺言が残されたが財産の一部が愛人の浜田文乃という女に渡ると発覚し・・・
遺産をめぐり愛人と三姉妹どころか三姉妹の中でも相続争いが起きる泥沼劇。
結末は知っていたのですがそれでも面白かったです。若尾文子の出番は意外にも少なく大番頭の中村鴈治郎の暗躍っぷりがじっくり描かれていて中村鴈治郎がある意味この映画の主役でもおかしくはないと感じました。
それにもまして
この映画が上手くいっているところは出演者が各キャラクターにはまっているところだと思います。長女の京マチ子は妹達より遺産が少ないことは絶対許せないいつもどおり闘争心むき出しな役で恋人役は田宮二郎でこちらは京マチ子に協力する振りして遺産を巻き上げようと企んでいたりします。
次女の鳳八千代は三姉妹の中だと一番地味だけど若尾文子のところに産婦人科医を呼んで無理やり検査させたり卑怯な戦法をつかったりします。唯一まともな高田美和はホッとしたりもしますがそのバックについているのが浪花千栄子で大阪弁でまくし立てるところが何とも言えずやっぱりキャラクター濃いなぁと思います。
あと中村鴈治郎の愛人というかいい人が北林谷栄なんですけど中村鴈治郎の計らいでしれっと若尾文子のお手伝いさんになりすましスパイするというところも良かったです。
若尾文子は愛人系の役が多いですが欲深さがないので三姉妹の嫌がらせに堪忍袋の緒が切れて最後のどんでん返しに繋がってすっきりするところは若尾文子ならではだなぁと感じるのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(浜田文乃)
個人的にはナオミ・ワッツにやってもらいたい。
京マチ子
(矢島藤代)
貫禄たっぷりのキャサリン・ゼタ=ジョーンズで。
中村鴈治郎
(宇市)
とぼけた顔して裏で何か企んでいそうなピート・ポスルスウェイトで。


女体渦巻島
GIRLS WITHOUT RETURN TICKETS
(1960)
4
2008年8月
対馬のキャバレーに大神という男がやってくる。大神はかつての恋人、百合を奪った組織のボス陳雲竜に復讐するために百合のキャバレーで陳がやってくる機会を狙うのだが・・・
石井輝男と吉田輝雄コンビでですっかりお馴染みの無国籍アクション。
共演も常連の三原葉子に天知茂で大体思ったとおり話が展開していくのですが相変わらず面白いです。まず対馬の説明が字幕表示されるのですが「東洋のカサブランカ、対馬」という褒めているのか?怪しすぎる説明に石井輝男節炸裂です。
そしてなんとこの映画が吉田輝雄デビュー作ということでいつにもまして台詞回しが臭すぎるところもナイスです。あまりにバタくさい台詞を連発するので印象に残った台詞でも書こうと思いましたが逆に忘れてしまいました。
三原葉子も手下から麻薬の取引に出かける時間ですよと声をかけられたらおもむろに生着替え、セクシーな黒いランジェリー姿は内容と全く関係ありませんがこのサービス精神がなんとも言えません。そしてむっちりしていそうで腰回りはやっぱり細くて、何度思ったことか着やせする人だと感じました。
さらに酔った勢いで踊るというシーンがあるのですが今まで幾度となく面積の少ない衣装で踊っていたはずなのに今回は笑っちゃうくらいセンスのな踊りでどうしちゃったの?と思ったのですが、今でもい愛している吉田輝雄の好きな酒、アブサンをがぶ飲みして酔っ払っちゃったからなんです。ここまで計算して変な踊りを踊っているんですきっと。(多分違うと思いますが・・・)
天知茂は吉田輝雄が主役の時はほとんど悪役が定番で今回ももちろんボス。(チョビヒゲあり)後半になってようやく登場しますがそれでもダンディな姿で強烈に印象を残してくれているので満足です。しかし三原葉子に裏切られた時のビックリ顔が相変わらず油断しまくっていますね。というところも石井輝男作品における天知茂という定番のキャラクターがこの頃からすでに出来上がっていたのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
吉田輝雄
(大神信彦)
ストイックそうなトーマス・ジェーンで。
三原葉子
(真山百合)
アンジェリーナ・ジョリーに妖しく演じて欲しい。
天知茂
(陳雲竜)
ヒゲも似合うヴィゴ・モーテンセンで。


女体棧橋
(1958)
4
2005年11月
指名手配中の犯人になりすまし吉岡はコール・ガール組織に潜入してた。そんなある日香港からルミというボスの女がやってくるがルミは吉岡のかつての恋人だった・・・
石井輝男監督お得意の秘密売春組織を暴け!がテーマなんですけど毎回似ているようで微妙に設定違うんで楽しめるところが感心します。
今回も銀座の表通りに停められている高級車の窓にだけ差し込まれるナイトクラブの名刺。その名刺を持って一歩裏通りに入れば警察の目をかいくぐって存在する売春組織って設定が当時の時代性とマッチしていつもながら妙にリアルです。
大阪からきた凄腕潜入捜査官とコール・ガールのふりをしてナイトクラブに潜入する女新聞記者(当然事件に巻き込まれる)っていうところも今までの秘密売春組織ものと違うしもちろん三原葉子も定番の組織の謎を握る女もっていうポジションで主役(宇津井健)に惚れるという設定は同じなんですけど、三原葉子と宇津井健が過去に恋人同士だったれ三原葉子のことがすごく好きな劇団ひとり似のクラブ歌手が敵に寝返ったりだけど三原葉子が好きだから元に戻ってきたりという今までにない設定で結構新鮮でした。
それに「肉体女優殺し 五人の犯罪者」もそうなんですけどタイトルのつけ方に独特のセンスが感じられて最初このタイトルの映画妖しげだなぁと思うんですけど実際観てみるとちゃんとエンターテインメントしていてすごいと思います。今回の「女体棧橋」も上手いこといって集めた娘達をアジア圏に売りさばく組織の話なんですが、売りさばくときに使う密輸船が日本とアジアの架け橋になるから「女体棧橋」と今回も聞けば納得のタイトルなのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
宇津井健
(吉岡圭三)
潜入捜査官といえばトニー・レオン
筑紫あけみ
(佐田靖子)
「インファナル・アフェア」じゃいつの間にかヒロイン扱いされていたケリー・チャンで。
三原葉子
(ルミ)
どんな役をやっても根はいい人のミシェル・ヨーで。


人間魚雷 回天
(1955)
3
2005年8月
太平洋戦争末期、海軍は最終手段として人間魚雷を開発する。その人間魚雷「回天」に乗り込むのは学徒兵が大多数だったはその中の玉井少尉は特攻という行為に疑問を抱きつつもやがてその日は近づいていた・・・
こういう特攻隊ものって学生を無理やり兵隊にして特攻隊にさせられていたのを観ると、いつ観てもやるせなくなります。なんでこんなことしなきゃいけないんだ。と戦争というか人間魚雷になった事に苦悩するのが木村功なので目新しさは感じないんですけどやっぱりこう常に不満を抱えている青年という感じがはまっていて安心して観ていられます。
そんな中、人間魚雷で死んでいった隊員の遺影に宇津井健の姿を見つけたと思ったら魚雷に乗って出発したはいいけどターゲットが見つからずに戻ってきたというなんだか情けない設定が宇津井健らしいなぁと感じちょっとおかしかったですね。
ネタバレ→
最後も木村功や宇津井健は次々と特攻して死んでいくのですが一人だけ船が故障して海に沈んで身動きが取れなくなっちゃうんですよね。結局自決してしまうのですが、海の中だから逃げ出すことも出来ないのでそうするより他に道がないってところが可哀想という言葉を当てはめるのはどうかと思いますがそんな感情に駆られました。
これ映画の内容よりも上映後、監督の松林宗恵のトークショーがあったのですが特攻で死んでいく際の叫びが軍人が「天皇陛下万歳!」で徴兵された学生なんかは「お母さん!」それ以外の兵隊は無言で死んでいったという
戦争体験者の生の話が聞けたのが映画よりも当たり前なんですがずっと重みがあってこの話が聞けただけでも観た甲斐はあったのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
木村功
(玉井少尉)
不満顔のバリー・ペッパーあたりで。


人間の條件 第一部 純愛篇
THE HUMAN CONDITION I
(1959)
4
2011年3月
鉄鋼会社に勤める梶は、理想的な労働条件で生産性を上げるという企画を実現すべく赤紙免除も受け恋人と美千子と結婚をし満州へ向かうのだが・・・
全6作からなる骨太ドラマ。
6作もあると観始めるまでが腰が重いのですが、観始めるとテーマは重いのですが、次が気になってしかたがありません。
序盤、赤紙が来そうだからと新珠三千代との交際を続けることをためらう仲代達矢。家に誘っておきながらやっぱり止めたとなって
仲代達矢のキャラクター生真面目すぎて周りが引くタイプです。頭が良くて仕事も出来んでしょうが、息が詰まるタイプの人だろうなと感じました。
満州に行って早速自分の理想を実現しようとするも現実派日本人が中国人を奴隷のようにこき使う姿を見て愕然として理想と現実を突きつけられるも正義感が強いので現場改革をガンガン推し進めていき周りに煙たがれ始めます。現場も急に改革されても困るよねと、元からいる現場の小沢栄太郎があくどいキャラクターとして描かれていますが、こっちの気持ちは分からなくもないのです。
と夫の仲代達矢の気苦労を知らずに妻の新珠三千代は満州で新婚気分を満喫して結構ノーテンキでやっています。
後半、戦争捕虜を軍から使ってくれと命令があり脱走は許されないのですが脱走事件が発生。正直に軍に言って意見を言う仲代達矢にこいつ結構やるかもと思われるも、会社からは目をつけられ、中国人からは日本人信用できないと言われ次第に孤立していく仲代達矢であるのでした。というところで激怒篇に続く。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
仲代達矢
(梶)
クライヴ・オーウェンにお願いしたい。
新珠三千代
(美千子)
後々不幸になることが目に見えているのでナオミ・ワッツで。


人間の條件 第二部 激怒篇
THE HUMAN CONDITION II
(1959)
4
2011年3月
満州でますます孤立していく梶の姿を描いた詩シーズ第二弾。
中国人のことも思いやって仕事をしてもらおうとするも中国人からは恨まれるし、日本人からはそんなことするなと睨まれるという前作と同じ自体がますます悪化して悩んでしまう仲代達矢。現代だったらすぐに根をあげそうな状態ですが、この時代だったら愛する人を残して戦争に行かなければならなかったりしていろいろな事情があって頑張らなければいけないと思うとこの時代の人は精神的にものすごいタフだなと思います。
そんな中日本人を出し抜いて一儲けを企む連中も出てくるのですが、それが山茶花究だったり、娼婦のトップに淡島千景だったりとものすごく豪華。みんな流暢に中国語を中国語を話す姿も感心します。ほかにも奴隷のように働かされている男と恋に落ちる娼婦にチョイ役なんですけど、有馬稲子が出ていて、可哀そうな役どころが「ゼロの焦点」とかぶるのですが、
有馬稲子は中国語もペラペラと話して英語もいけるしすごいなと思います。ほかにも東野英治郎や北林谷栄にレジスタンスっぽい感じのリーダー?に宮口精二と実力派がこれでもかと出てきてこの頃の日本映画は本当に層が厚くてすごかったんですね。
そんな中、脱走事件が頻発。楽しみにしていたデートが脱走のおかげで亡くなって駄々をこねる新玉三千代。こんな時にデートをすっぽかされて怒るなんてやっぱり呑気です。そしてついに憲兵に楯突きすぎてリンチを受け、会社からはたまには衝突するも唯一の理解者だった山村聡も飛ばされて一人きりになってしまった仲代達矢はついに会社からも見捨てられ赤紙が来たところで次回に続くのです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
山村聡
(沖島)
頼れる先輩という感じのジョシュ・ブローリンで。


人間の條件 第三部 望郷篇
THE HUMAN CONDITION III
(1959)
4
2011年4月
北満州に贈られた梶。そこで梶は理不尽な命令に反発をし次第に上官たちから目をつけられていくのだが・・・・
舞台は変わって軍隊で苦労することになったシリーズ第三弾。
エリートだった仲代達矢が煙たがられて、免除されていた赤紙が手元に届くというサラリーマンで言うと左遷みたいなことになった前作のエンディングからの続きです。
内容としては「兵隊やくざ」的な理不尽な上官に立ち向かうスタイルですがこの時代のこういう映画には独特な勢いがあって面白いです。新キャラクターに反抗的な思想の持ち主の佐藤慶や何をやってもダメな田中邦衛という個性的で適材適所な配役もばっちりで、今まで真面目で優秀なんだろうけどどこか近づきがたい仲代達矢のキャラクターにも感情移入しやすくなっているところがよかったです。
佐藤慶も反抗的なのですがかなり優秀で田中邦衛はほんとうにダメなやつで上官は佐藤慶はいざとなったら使えるが田中邦衛は足を引っ張るだけ。みたいなことを言っていたのがものすごく印象に残りました。
田中邦衛は一緒に訓練していたら連帯責任を負う感じのキャラクターでいらっとすることもあるとは思うのですが、性格はいいので本当気の毒なひとなんですよ。ネタバレ→
最後も自殺しようとしてもうまく自殺できなくて、いつでも死ねるのだから頑張ってみようと心に決めた瞬間、間違って死んでしまうという皮肉なオチとか←切なすぎますがいいキャラクターでした。こんな人どこにでもいるよなぁ。みたいな。
そんな中、相変わらずメルヘンな感じの新玉三千代は軍隊にまで押しかけて仲代達矢と強引に一夜を過ごすのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
佐藤慶
(新城)
ショーン・ペンあたりにお願いしたい。
田中邦衛
(小原)
 イメージはポール・ダノです。


人間の條件 第四部 戦雲篇
THE HUMAN CONDITION IV
(1959)
4
2011年4月
ソ連の国境付近にやってきた梶。そこで梶は景山と再開し、上等兵になるのだが・・・
敗戦が間近に迫ったシリーズ第四弾。
今まで見てきたシリーズの中では戦闘シーンが多いので激しいのですが、内容は個人的に一番印象が薄かった気がします。一作目にちょっとだけ出ていた(仲代達矢に恋愛も仕事もアドバイスした先輩)佐田啓二と僻地でまさかの再開とドラマチックな出来事。
仲代達矢が優秀だから兵役年数は浅くても昇格するのですが、それがまた古参兵は気に入らなくて嫌がらせをされるという定番の展開。
しかし今回は佐田啓二もいくらか守ってくれるのですが、それも限界があって
サラリーマンでいうところの中間管理職的なポジションはいつの時代でも苦悩するんだなと思いました。
そんな仲代達矢の下につくのは中年や歳のいった初年兵。いろいろミスをして嫌がらせを受けるのですあ、ついに仲代達矢もキレます。しかも包丁か何かを持って。もっと早くキレてもよかったと思いますが、このシーンはスカッとします。
それに仲代達矢のチームは人間関係が良好なところも魅力的で、こういう上司が現代にもいたらその会社は確実に業績アップなるんだろうなと思うのでした。
そして佐田啓二も仲代達矢のことをかばいきれなくなって結局、再び僻地に飛ばされてしまいます。この頃になるとみんな生きることに必死になり始めているので必然的ににリーダーシップのとれる仲代達矢が頭角を現してくるのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
佐田啓二
(影山)
ここは顔がそっくりなトニー・レオンで。


人間の條件 第五部 死の脱出篇
THE HUMAN CONDITION V
(1961)
4
2011年4月
日本が敗戦し、戦地を彷徨う梶たちは道中で避難民たちと出会い、梶は美千子のもとに戻るために彼らとともに旅を続けるのだが・・・
いよいよ佳境のシリーズ第五弾。
軍隊が壊滅状態で民間人が物語に絡んでくるのでエピソードの幅が増えてここにきてまた面白くなりました。
前半は慰安婦の女で岸田今日子や避難民多数と遭遇し、日本軍がいるという地に向かって旅を続けるという内容。道中、食料が不足し幼い子供を亡くし半狂乱になる母親、楽にしてやると言って家族を殺す男、罵り合いや食料争奪といった人間の醜さを描いてヘビーです。そんな中、
慰安婦の岸田今日子は最初は慰安婦だからと言って罵られていましたが結局、気高かったのは岸田今日子たちの娼婦というところも興味深かったです。
後半はまた別の避難民グループと出会い、その中の女学生に中村玉緒がいて話の中心は彼女メイン。生きていても死んでいても、生き別れた両親を探しに今では危険になっている自分の住んでいた場所に戻りたいという希望を持っているけなげな女の子の役ですが、結構幸が薄い役が似合うのでこの役ははまっていました。そんな中で口を出してくるのが兵隊の金子信雄。相変わらずこの人の役は口だけ番長で観ていてイライラするのですがこれがまた、金子信雄らしいのでしかたがありません。
主役の仲代達矢は新玉三千代に絶対再会するという信念がありながらも途中で出会う弱い人たちを必ず助けるところがすばらしいなと思いました。
あと、ちらっと菅井きんが出てくるのですが昔の映画を観ているとこの人いったい幾つなんだろうかと思わずにはいられません。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
岸田今日子
(竜子)
ファムケ・ヤンセンあたりにお願いしたい。
中村玉緒
(避難民少女)
 幸薄顔のクリステン・スチュワートで。


人間の條件 第六部 曠野の彷徨篇
THE HUMAN CONDITION VI
(1961)
4
2011年5月
さらに旅を続ける梶たちは女ばかりの避難民のいる集落にたどり着き一夜を過ごすがやがてソ連軍がやってきて・・・
長かった梶の旅路もついに終わる完結編。
最後に流れ着く集落でついに最後の大物ゲスト高峰秀子が登場。村長的な存在にさりげなく笠智衆もいて完結編にふさわしい顔ぶれといった感じです。
高峰秀子は集落でたくましく生きる役どころがぴったり。仲代達矢と高峰秀子お互いに一目置く感じがよかったです。というか格が上がりますねやっぱり。
集落では、たまに見回りに来るソ連兵が食べ物を置いて行ってくれて、たまに流れ着く日本兵は食料を要求してさっさと立ち去って行ってしまうから日本兵よりソ連兵の方が何かといいという思いで、日本兵が煙たがられているという描写がなんだか複雑な気持ちです。
後半ソ連へに捕まった梶たち。強制労働させられるのですがそこで現れたのがかつて仲代達矢に痛い目に遭わされた金子信雄。弟分の川津祐介がひとりになったところを見計らって嫌がらせをするという相変わらず汚い手を使って最後の最後までイラッとさせますよ。金子信雄は。
ネタバレ→
とうとうシベリア送りになりそうになった仲代達矢は脱走するのですが、新玉三千代の幻影を追ってそのまま力尽きてしまうんですよ。ここまで来てこの終わり方。てっきり最後は苦労が報われて新玉三千代と涙の再開となったところで終わると思っていたのでものすごく切なかったです。新玉三千代の消息も結局わからず仕舞いなところが悲壮感を盛り立てます。がこれは実際こういうケースが沢山あるわけなんですよね。愛する人に会いたいけれどそのまま力尽きてしまった人たちが。←観終わって今の時代は平和なんなだなぁとか色々と考えさせられました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
川津祐介
(寺田)
弟分という感じのジェームズ・マカヴォイで。
高峰秀子
(避難民中年の女)
ヘレン・ミレンあたりにお願いしたい。


日本映画に戻る