日本映画

さ


サード
(1978)
4
2005年10月
高校野球の三塁手だったためサードと呼ばれる少年は小さな町を出るために仲間とともに資金集めをするのだが傷害事件を起こし少年院に入ることになる。
前から気になっていたのですが最初のスタッフロールに脚本、寺山修司の名前を見つけてしまい嫌な予感がして確かに少年院のシーンは即興的で例えばサードがご飯にタンを入れられて少年院の古株と乱闘してこの二人の処分をどうしたものかと少年達が討論するのですが、「タンを入れたのも悪いけど、殴ったサードも悪いと思います。」とか「僕はよくわかりません。」とかまったりした雰囲気でいかにも寺山修司的でやっぱり生理的にちょっとダメでした。
ダメなんですけどやっぱり面白いと思うのはサードが少年院に入るまでの顛末を回想するシーンがよかったからだと思います。なんと言っても永島敏行の高校生には見えないけれど変な生々しさと熱血漢があるところが妙にリアルでよかったし、森下愛子の挑発的で可愛らしいことときたら!売春持ちかけるのも森下愛子達の女の子二人だし、実際売春もさらりとやってのける二人とその行為が終わるのただなんとなく待っている男の子二人という姿が現代にもありそうなことろも無軌道な若者達って感じなところが個人的には波長があったのかな?
峰岸徹もネタバレ→
森下愛子を長時間帰さなかったため永島敏行に殺される←やくざの役なんですけどこれがまた黒のふんどしに背中にはもちろん刺青という典型的なスタイルがカッコよすぎます。
永島敏行の
母親役に島倉千代子なんですが、風呂上りでパンツ姿で飯を食うシーンなんて「母さんだって女なんだよ。」って恥らう台詞も微妙におかしくって回想シーンには70年代映画の面白さが詰まっていたと思いました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
永島敏行
(サード)
躍動感に溢れているイメージのガエル・ガルシア・ベルナルで。
吉田次昭
(IIB)
インテリ系な親友役にはジェイク・ギレンホールあたりで。
森下愛子
(新聞部)
結局は男を不幸にするタイプのエリシャ・カスバートで。
志方亜紀子
(テニス部)
女友達役にデヴォン・青木はぴったりなんです。


最高殊勲夫人
THE MOST VALUABLE WIFE
(1969)
5
2006年10月
野々宮家三姉妹のうち長女の桃子は三原商事の社長、一郎と次女の梨子は専務と結婚し、桃子は三女の杏子を今は大島商事で働いている三郎と何としても結婚させようと企んでいた。そのことを知った二人は絶対に結婚しないことを誓うが・・・
若尾文子と川口浩の増村作品常連のラブコメディ。
姉の策略を知って
絶対結婚なんかしないと誓い合った二人が最後には絶対一緒になることは分かりきっているのですがそれでもやっぱり出演者の魅力とテンポのよさでものジャンルを問わずすごく面白く仕上がっているところが増村保造監督のすごいところだと思います。
次男次女カップルはあまり出演シーンがないのですが長男長女夫婦の船越英二、丹阿弥谷津子コンビも濃くて楽しいです。船越英二は嫁さんに頭が上がらないくせにこっそり浮気をしていてばれそうになったら焦っちゃうところもいい男なんだけど船越英二らしい三枚目なキャラが相変わらず似合っていました。長女の丹阿弥谷津子も夫を尻に敷いて若尾文子に近づく社員を北海道に転勤させるよう指示したり強引な事を次から次へと周りを巻き込むほとんどトラブルメーカー的なキャラクターも楽しかったです。
それに今回の舞台って丸の内なんですけど、みんな昼も夜も丸の内の地下街のお食事処が集まってるような所でランチとかしているところが風情があっていいのですが若尾文子も昼はサンドウィッチ三口でフィニッシュ、そして牛乳一気飲み。そして夜はとんかつを豪快にほうばるところが気持ちいいし必ず割り勘でOKという好感の持てるデートの仕方でただでさえもてるのに、そりぁ会社で一番人気になるわけです。若尾文子はどんな役をやっても魅力的ですね。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(野々宮杏子)
誰からも好かれるタイプのジェニファー・アニストンで。
川口浩
(三原三郎)
やんちゃな感じもまだまだいけそうなユアン・マクレガーで。
丹阿弥谷津子
(三原桃子)
夫に強そうなキャサリン・ゼタ=ジョーンズで。
船越英二
(三原一郎)
三枚目な印象のグレック・キニアで。


サイレン
FORBIDDEN SIREN
(2006)
2
2007年5月
かつて島民全てが失踪する事件のあった夜美島。事件から29年後、天本由貴は弟の療養のために父親と夜美島にやってくる。やがて由貴は島に伝わる「サイレンが鳴ったら外に出てはならない」という言い伝えを聞くのだが・・・
プレステのゲームの映画化。
ゲームはやった事はないのですが、オープニングのいつもと違う阿部寛による物語の導入部や日本じゃないようなものすごく風変わりな島とその島に伝わる奇妙な言い伝えといい面白そうな設定なんですがラストとキャストが全然ダメでした。
お父さんの森本レオ、島で唯一の病院の先生の田中直樹がホラー映画に向いていないんですよね。特に森本レオなんてサイレンのなる真夜中に一人森に取材に行く(島の秘密を探りに来たフリーランサーだから)という緊迫感が頂点に達するシーンでも
森本レオは真っ暗な森の中で「風が強いなぁ〜。」とあの口調で言っちゃう緊張感のなさ。これホラー映画で致命的です。田中直樹もなんか相変わらず微妙だったし・・・
ラストのオチもいきなり的でだから何?というかオープニングの阿部寛シーンと関連性も感じられないし唯一、市川由衣の味方?をする松尾スズキも演技はよかったのですが本編と全然関係なくてこの役はなくてもよかったと思うし、市川由衣はそれなりにがんばっていたと思うのですがこれは全体的に話自体に問題があるのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
市川由衣
(天本由貴)
高校生の役?ということでエレン・ペイジあたりがちょうどいいかと・・・


鎖陰
(1963)
2
2009年9月
チラシにこの映画のあらすじというか解説が書いてあるのでうが、そのまま引用させてもらうと
当時、日大新映研に所属していた者たちによって撮られた、伝説の’60年代フィルム。「膣欠損症・メロドラマ・海・日本刀・儀式・マニエリスム・異端・ワイセツ・火葬場・病院・死産児アルコール漬け・出口のない悪夢・死臭プンプンたる衛生博覧会(チラシより)」といったイメージが横溢し、ゼンエイ的かつカンネン的な物語が展開する。
と書いてあって解説にさえ当時のチラシを引用しているので説明のしようがないんだと思います。話の内容がなくかなりと言うか100%実験的な映画で60分もないのですがとにかく終始流れているガラスを爪でこするようなバイオリンの不快な旋律のような音が流れていてうたた寝している時に見てしまった悪夢のような感じそれだけが残る映画です。
数年に一回くらい分からない映画に出会うことがあるのですが、久しぶりに分からないというかワカラナイとカタカナで書きたくなるような最上級に理解できないという感覚に陥りました。
60分もない短い映画ですが途中退出者もちらほらあり、観ている方も早く終われと思いつつ実際終わってみると理解不能だけど滅多に観られないすごいものを観たという気分にはなって得したんだかしてないんだかやっぱりよく分からない映画なのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
(実験的というか前衛的なのでなし)


さくらん
(2007)
3
2007年7月
吉原に売られた少女はきよ葉と名づけられるが喧嘩っ早いきよ葉は幾度となく脱走を試みては失敗していた。やがて花魁になることを心に決めたきよ葉は美しく成長し瞬く間に人気が出てきたきよ葉だったが・・・
吉原の門の中央に金魚が泳いでいるという斬新なビジュアル、と花魁たちの部屋や着物ととにかくビジュアルは文句なしでしたが肝心のお話の方がいまひとつ。
ちいさなエピソードで構成されているのですがどれも中途半端に終わってしまうのが原因だと思います。成宮寛貴との恋のエピソードとかも成就しないのはいいのですが何か中途半端な感じだから「で?」といちいち思ってしまうんですよね。これ映画全体にこういう雰囲気が漂っているので本当もったいなかったです。
土屋アンナは喧嘩っ早くて気が強い役どころというのは分かるのですが言葉遣いが現代的すぎるのと顔がまちゃまちゃっぽいのでイマイチという印象。そんな中、安藤政信は時代劇の格好と雰囲気はマッチしていてよかったし特に群を抜いてよかったのが木村佳乃。今まで何とも思わなかったのですが目玉を引ん剥いて土屋アンナを睨みつけて取っ組み合いのケンカしたり、腹黒い策略で土屋アンナを落としいれようとするという
普段お目にかかれないおっかない木村佳乃は新鮮で助演女優賞を上げたくなるくらいに一気に好きになりました。
でもやっぱり振り返ってみると内容よりはビジュアルと木村佳乃と安藤政信でもっていたような感じだったなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
土屋アンナ
(きよ葉/日暮)
勝気なスカーレット・ヨハンソンで。
安藤政信
(清次)
いい奴という感じのクリス・エヴァンスで。
木村佳乃
(高尾)
ルーシー・リューにやっていただきたい。


細雪
LIGHT SNOWFALL
(1950)
4
2009年7月
旧家の蒔岡家の四姉妹の悲喜こもごもを描いた谷崎潤一郎原作の文芸映画。
「細雪」は3回映画化されていてその時々の時代にあった豪華女優陣が四姉妹を演じているのですが今回は初めての映画化バージョンです。四姉妹は長女に花井蘭子、次女に轟夕起子、三女に山根寿子で四女に高峰秀子という豪華な顔ぶれ。
長女の花井蘭子はほとんど出てこないので、実質次女から四女が話の中心になるのですが、
全体的な印象としては和製「若草物語」といったところでしょうか。
結婚適齢期を過ぎていてお見合いも何回もしているのにうじうじして結婚が決まらない三女と自分で人形の教室を開いて生徒に教えて自立しているけれど恋愛は自由奔放な四女。その二人の面倒をみる次女という構成で話が進んでいくのですが、何と言っても四女の高峰秀子が素晴らしかったです。
かつての本家の栄光は今は何処という状態で家名とか形式とか同だっていいじゃないとズバッとものを言えるすがすがしい性格で金持ちの吹越満そっくりなボーイフレンドを捨ててボーイフレンドの使用人だったカメラマンの田崎潤と付き合うのですが吹越満似のボーイフレンドから宝石をプレゼントされるとついそっちにもなびいてしまうという微妙な心情。そしてそれを関西弁で演じる演技力ときたらさすがだなと思いました。
山根寿子の三女はイラッとします。お見合い手からデートのお誘いの電話が来たときの要領の得ない回答をしてそのままお見合いはなかったことに。そのくせ次女の轟夕起子に泣きつくとは面倒くさいタイプの人間です。そのくせ最後には最高の相手と結婚がまとまり、この手のタイプの人間は一番したたかで自分の手に入れたいものを手に入れるタイプだなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
花井蘭子
(鶴子)
ちょっとの出番でも存在感のあるケイト・ブランシェットで。
轟夕起子
(幸子)
面倒見のよさそうなケイト・ウィンスレットで。
山根寿子
(雪子)
クロエ・セヴィニーあたりにお願いしたい。
高峰秀子
(妙子)
勝気そうなキルスティン・ダンストで。


雑居家族
(1956)
3
2009年3月
作家の小森安江は夫と子供三人との五人暮らし。そんな安江のもとに義兄の兵六が突然やってきたり、田舎から家出してきた知り合いの娘、浜子が転がり込んできて・・・
轟夕起子が厳しくもお人よしなお母さんを老けメイクで好演した家族もの。
轟夕起子はあまり意識して見ることがなかったのですが、この映画で見る限りかなり演技レベルの高い人なんだろなと思います。劇中、回想シーンで若い頃のエピソードが出てくる前まで、轟夕起子が老けメイクをしていたとは気がつかなくてこういう極端な何例設定を演じ分けられる人はやっぱりすごいと思いました。
そんな轟夕起子の長女は新珠三千代なのですがこの家の子供たちはみんなもらわれっ子。で母親が死んだからもらってくれと言われもらって育てていて、この辺りは時代性を感じました。新珠三千代もいい年なのに結婚しないのは恋人を戦争で亡くしたからで、この時代はよく戦争についてあれこれエピソードが広がって話しに深みが出るところがいいなぁと思います。
とここまで観ると
血はつながっていないけれど家族愛に溢れたいい映画だと思うのですが、伊藤雄之助と左幸子の厚かましさに腹が立って仕方が無い映画なのです。
左幸子はよく言えば天真爛漫なのですがとにかく礼儀作法を全く知らず、人のうちに居候しているにもかかわらず酔って帰ってきて大声出したりして轟夕起子を怒らせるのですが怒られる時も開き直っているところが余計腹立たしいです。しまいには妊娠して帰ってきてとばっちりを受けた新珠三千代が不憫でなりません。
伊藤雄之助も何かにつけて金を借りに来るのですが最終的には小学校の一番下の子から何万をいう金を銀行から下ろさせて借りるという厚かましさ。本当イライラしましたが、ここまでイラッとさせるのも演技力のおかげかと思うと少しは腹の立つのも治まりますが、こういう人たちとは絶対に上手く行かないし、口も利かない自信があると思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
轟夕起子
(小森安江)
演技派のメリル・ストリープで。
新珠三千代
(小森音枝)
グウィネス・パルトロウあたりにお願いしたい。
左幸子
(宮川浜子)
妊娠する役はやっぱりエレン・ペイジで。
伊藤雄之助
(鷲兵六)
ちょっと伊藤雄之助ちっくなハビエル・バルデムにやってもらいたい。


殺人狂時代
(1967)
5
2005年6月
精神病院の溝呂木院長が会長を務める「大日本人口調節審議会」という怪しげな団体に突然命を狙われる破目になった犯罪心理学の大学講師の桔梗は偶然であった女記者の鶴巻とチンピラのビルを仲間が加わり次々と襲ってくる殺し屋をやり過ごすのだが・・・
オープニングのアニメももろサウスパークだったし精神病院のセットがモダンな雰囲気というよりキッチュな感じでこの遊び心が岡本喜八ワールドなんだなぁと感じました。そんな精神病院で院長をやっているのが天本英世なんですけど
選び抜いた患者を殺し屋に仕立て上げて操るマッドサイエンティストぶりがはまっていて正しい天本英世像を今回堪能しました。もちろん仲代達矢との一騎打ちもありまけどこれがお互いナイフ一本で切り付けあう正々堂々としたスタイルで対決するところも気に入りました。
偶然殺し屋に狙われることになった仲代達矢の初登場シーンはこれが仲代達矢?と思うくらいのボーっとしたオタクっぽい風貌で死んだ母親をいまだに何かっていうとママ、ママと呼ぶマザコンキャラに今まで数々のクールキャラを演じてきた仲代達矢のイメージが崩れかけましたけど、眼鏡をとってひげを剃り「大日本人口調節審議会」に立ち向かう決心してからはいつも以上にクールでかっこよかったです。ネタバレ→
最後仲代達矢は双子で兄貴の方が殺し屋で弟を名乗って「大日本人口調節審議会」の陰謀を阻止したということなんですけど、思うにこれは双子でもなんでもなく最初っから仲代達矢が殺し屋と大学講師の二つの顔を持った男なんじゃないかと思いました。
殺し屋達も、仕込み傘に仕込み松葉杖と仕込み系から剃刀をトランプに挟んで投げつける正統派はもちろん催眠術を使う変り種やアイパッチの中から毒針を出すダリル・ハンナちっくな女殺し屋の登場など次々出てくる殺し屋を観ているだけで楽しかったです。
ネタバレ→
団令子が天本英世の娘だったというどんでん返しはちょっと無理があると思いましたが、団令子がはめている指輪は予想通り薬が仕込まれていたのが当たってちょっとうれしかったりもしました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
仲代達矢
(桔梗信治)
殺し屋役から医者役までこなす何かと話題のクライヴ・オーウェンにやってもらいたい。
団令子
(鶴巻啓子)
今注目のセクシー系エヴァ・メンデスで。
砂塚秀夫
(大友ビル)
お調子者のこのキャラはやはりショーン・ウィリアム・スコットに。
天本英世
(溝呂木省吾)
ジェフリー・ラッシュあたりにマッドサイエンティスト系の役をやってほしい。


殺人容疑者
(1952)
3
2009年12月
一人の男がしたいとなって発見され警察は被害者の知人と思われる女将を見つけ出すが、女将も殺され次々と事件に関わる人物が殺されていき・・・
連続殺人犯を追う警察と真犯人の攻防を描くサスペンス。
警察が操作を進めていくと浮かび上がるとある会社の社長が丹波哲郎。その時点で真犯人は丹波哲郎ということが誰が観ても明らかなので、そこから警察がどう追いつめていくかがサスペンスのポイントなのですがこれはなんだかバランスが変だなと思いました。
前半は警察があの手この手で犯人に繋がる情報を得ながらも肝心な参考人に話を聞こうとするとその人が殺されてしまい警察も困ったなぁと言うところも描かれていて警察メインに話が進むと思いきや、後半丹波哲郎が容疑者として確定してからは丹波哲郎の逃走劇メインとなる展開がどうも個人的にはしっくりきませんでした。
何か
極悪非道の丹波哲郎が実際自分が逃げる時はものすごいチキンな感じになっているところが微妙だったのかもしれません。
クライマックスは下水道?で丹波哲郎と警察が心理戦を交えた捕物帖みたくなっているところはスリリングで最後はよく出来ているだけに中盤のバランスの悪さがもったいない思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
丹波哲郎
(木村)
悪役の方がどちらかというと盛り上がる、ヴァンサン・カッセルあたりにお願いしたい。


座頭市物語
シリーズ第1作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 1 THE TALE OF ZATOICHI

(1962)
4
2004年1月
ひょんなことから飯岡助五郎の客となった居合い切りの達人で盲目の座頭市。彼は病に苦しむ浪人、平手造酒と出会い意気投合するが、彼は飯岡と敵対する笹川の用心棒だった・・・
記念すべき座頭市シリーズ第一弾。勝新太郎の作品を始めて観たんですけど、
うん。噂どおりすごいわ勝新太郎って。殺陣で本気になったとき(怒りが頂点になった時に)見開く眼は猟奇的というか鬼気迫る勢いというか人を寄せ付けない迫力あったもんなぁ。やっぱり勝新じゃなきゃだめなんだろうな座頭市って思うくらいはまってますもん。
第一作目なのでかどうかわかりませんけど、意外と殺陣のシーンは少なめ。逆に座頭市の性格描写が思っていたより多かった気がしますね。
座頭市と平手造酒の友情と宿命の対決。宿敵と書いて友と読むみたいな今となってはベタな設定ですけどこれが当時の雰囲気とマッチして逆に新鮮かも。平手御酒役の天地茂も勝新の脂の乗った身体とは対照的に(病気という設定もあるけど)線が細くシュッとしてさわやかでこれがまたいいんですよね。
ヒロインのおたねも座頭市の内面を見抜き惚れて座頭市に「こんな俺と一緒になると苦労するからやめとけ。」みたいなことを言われるんですけど「かまいません。市さんの面倒を見たいのです。」的な台詞を返すわけですよ。あぁなんて健気で古風なんだろうおたねさん。しかもラストネタバレ→
おたねが待っている場所をわざと避けで険しい道を通って一人旅を続ける座頭市。愛しているからこそおたねには幸せになってもらいたいと思うこの心遣いがなんとも言えないのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
勝新太郎
(座頭市)
「ピッチブラック」で暗闇では目が見えるという微妙な接点のあるヴィン・ディーゼルがはまると思う。坊主頭だし。
万里昌代
(おたね)
なんか最近ちょっと売れてきたケイト・ベッキンセールあたりで。
天知茂
(平手造酒)
線の細い感じがスチュアート・タウンゼントって感じで。


続・座頭市物語
シリーズ第2作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 2 THE TALE OF ZATOICHI CONTINUES

(1972)
5
2004年2月
座頭市は平手造酒の墓参りに行く途中やくざ達にからまれるが謎の浪人与四郎がその邪魔をする。宿に着き市は殿様を按摩するよう依頼を受け治療するがその後侍達に襲われる。殿様が狂っている事を口外させぬよう家臣達に次々と命を狙われる羽目になった市はついに刀を抜くが・・・
「続」が付くのはだてじゃない。前作で男の友情が芽生えつつもやむをえなく斬ってしまった平手造酒の墓参りのエピソードや市に憧れるおたねの再登場などしっかり続編になっているじゃん。殺陣のシーンもドーンと増えてパワーアップしているところもすごいのです。
しかも後に対決することになる与四郎役の
城健三朗ってどこかで見たことあるんだよなーって思って後で調べてみたら、若山富三郎の旧芸名でまず驚き、若山富三郎が勝新太郎の実兄と知ってさらに驚いた。本物の兄弟対決、しかもこの二人でしょ。贅沢なことこの上ないじゃないですか。(若富と勝新が兄弟っていうのは有名なんでしょうけど日本映画に疎いもんでいまさら知ったのです。)
それに市を助けるお節がいまはまっている「悪名」シリーズでおなじみの水谷良重と今が旬じゃないですか。(一人で盛り上がっています。)
お節の台詞「市さんどうしてそんなに強いんだい?」に本当だよ。どうしてだい?と心の中でつぶやくのだった。
ラストネタバレ→
飯岡一味のせいで命を失った兄与四郎の仇を討つぞってまさにそのとき←画面に「終」の文字が・・・あぁ続きが観たかったけど当時としては斬新な終わり方なんだったんだろうなと感心するのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
水谷良重
(お節)
きれいだと思うけどなぜか恋が実らないイメージのアン・ヘッシュで。
城健三朗【若山富三郎】
(渚の与四郎)
アレック・ボールドウィンで。白人なのに濃いって感じがなんとなく。


新・座頭市物語
シリーズ第3作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 3 NEW TALE OF ZATOICHI

(1963)
3
2004年2月
故郷に戻ってきた市は剣の師匠伴野弥十郎に出会い弥十郎の家を訪ねる。そこには妹の弥生がいた。以前と変わらぬ市の誠実さに弥生は市に求婚し市もそれに応じ堅気になることを誓うが弥十郎は許すことはなかった。やがて弥十郎は金策のため悪事を行い始め市は対決することになり・・・
「新」になって確かにドラマティック度は上がった気がするけど、個人的に座頭市らしからぬ行動があったので★-1。
座頭市は女に惹かれることはあっても決して一緒になることはしないと思うんですけど、今回はいとも簡単にプロポーズを受けちゃうんですよね。そんなの市じゃないと思ったのです。
執拗に弟の仇を討とうとする勘兵衛は市が堅気に戻ると知り仇を討つのをあきらめ身を引くエピソードなんかは男気あふれていてよかったり、徐々に悪事に手を染めていくかつての師匠の弥十郎、市を許した勘兵衛を非情にも殺してしまう弥十郎との最終対決とか見所は盛りだくさんだったので恋愛エピソードはもったいなかったなぁ。
今回のヒロイン弥生役がいまや通販番組の司会でよく見かける坪内ミキ子だ。以外に武家の娘とうい役どころが合っていたけど、こう見ると面影はおもいっきりあるけど昔はかわいかったなと思うのでありました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
坪内ミキ子
(弥生)
ちょっといいところの娘という役どころが合いそうなケイト・ベッキンセールで。
河津清三郎
(伴野弥十郎)
いい人から悪人まで何でもこなすダニエル・デイ=ルイスで。


座頭市兇状旅
シリーズ第4作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 4 THE FUGITIVE

(1963)
4
2004年2月
上州下仁田に訪れた市は宿泊した宿の娘のぶと出会う。のぶには二代目の親分になったばかりの佐吉という恋人がいたが佐吉の軟弱さが気に入らない手下どもは蛾十郎という浪人をやとって佐吉を殺そうと企んでいた。そんなか市はおたねとみたび出会うが彼女は蛾十郎の妻になっていて・・・
座頭市版ロミオとジュリエット風というような内容か?ちょっと違うのはロミオ的役柄の佐吉がヤワというか軟弱というか・・・やくざ稼業の二代目なのに超がつくほど気弱だし、二代目という地位も捨てたくはないけど命も惜しい。そのためには恋人ののぶや市をはめるような行動だってしてしまう。そんな人間くさいところもなんかちょっぴり共感しちゃったりするんですよね。
それに今回は一作目二作目で初代ヒロインだったおたねさんが三度登場でちょっとうれしかった。しかし
今度のおたねさんは一味違う。浪人の蛾十郎の嫁になっていてさらに蛾十郎とともに人を騙して生活しているちょっぴりダークなおたねさんに出会えます。清純だったころと違いちょっと影がある女というおたね役の万里昌代がまたいいんですよね。やっぱり万里昌代はちょっとワルって役がぴったりなんですよね。
座頭市シリーズ、相変わらず前作からの登場人物やら市が斬った人物なんかの名前が続々登場してきますけど、女性キャラはわかるんですけど、浪人ややくざなんて見かけはほとんど一緒なもんで誰のことを言っているの二回観なくちゃかもうわかりません。もしかしてそこんとこ計算されて作られていたら相当商売上手だなぁと思うのでした・・・
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高田美和
(のぶ)
ほんと普通の優等生という感じのこの役、ケイティ・ホームズで。
成田純一郎
(下仁田佐吉)
若旦那という感じもしなくはないトビー・マグワイアあたりで。
北城寿太郎
(棚倉蛾十郎)
ちょっとアウトロー的な雰囲気があるジェラード・バトラーで。


座頭市喧嘩旅
シリーズ第5作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 5 ON THE ROAD

(1963)
4
2004年2月
旅の途中、市は武士に追われているお美津という娘を助ける。市達が泊まった宿ではお美津がいいところの娘であるとしったお久が無事に江戸に帰せば大金をもらえると企みお美津をそそのかし連れ出してしまうが・・・
シリーズもここまでくると市もかなり有名人になっていて喧嘩の依頼が次から次へと舞い込んで今回はお互い敵対する下妻一家と堂山一家のダブルブッキング?とお美津を江戸に送り届けるミッションが絶妙に入り組んでいていい感じ。
ネタバレ→
一度は堂山一家の味方についた市が下妻一家がお美津を人質にとられ仕方なく寝返ったように見せかけ下妻一家と堂山一家の親分を成敗しお美津を逃がす←ラストに、市の弱気を助け・・・的な精神が完璧に確率された感もあるかなぁなんて思いました。
市もお美津の忘れた小物を大事そうに懐にしまってほのかな恋心・・・これこれ、前作はプロポーズを受けてちょっと違うぞっと思ったけど、本来の市は片思いか相思相愛でも一緒になろうという考えは起こさないんだよね。
お美津も最初は市を信頼しきれていなくてお久についていったりするけど、徐々に市の人間味にふれ信頼していく過程もさりげなく描いていてなかなかよかったなぁ。
藤原礼子はやっぱり粋いいですね。今回は市もお美津もはめる峰不二子的な悪女的な役柄ですが、これもばっちりきまっています。市に喝を入れられてラストはお美津を助けるのに一役買うところも峰不二子的でいいんですよ。60年代はやっぱり藤原礼子に決まりなのです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
藤村志保
(お美津)
一見地味目だけど存在感あるセルマ・ブレアで。
藤原礼子
(お久)
粋な雰囲気が個人的に藤原礼子=ナオミ・ワッツという図式なのです。


座頭市千両首
シリーズ第6作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 6 ZATOICHI AND THE CHEST OF GOLD

(1964)
3
2004年3月
心ならずも斬ってしまった男の墓参りに訪れた市。そのころ村では千両箱が強奪される事件が起きていた。市は斬った男の妹に強奪した仲間の一人と間違えられてしまう。
市は身の潔白を晴らそうとするのだが・・・
役柄は全く違うものの、シリーズ第2作目で出演した若山富三郎とシリーズ第3作目で出演した坪内ミキ子が再び登場。坪内ミキ子は前回のお嬢さんって感じの役から貧しい村の娘役だったり、若山富三郎はやっぱり最後は勝新太郎と対決する役どころだけど馬に乗って鞭を使うというインディー・ジョーンズ風の役が新鮮だったけど、ほっそりして無精ひげがない若山富三郎に最初気がつかなかったし、
何か雰囲気が違くてこんなの若山富三郎じゃないと思うのでした。
それにちょっと違うなと思ったのが、奉行所や役人なんかの政治的な人々が出てきちゃうところ。
座頭市って盲目のやくざが仁義に反する汚いやくざをやっつけるところややくざ同士の島の取り合いに巻き込まれてしまうってところに面白みがあると思うんですが、これはなんか汚い役人を成敗する世直しものになっちゃってるんですよね。そこのところがちょっと残念でした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
坪内ミキ子
(女馬子)
村の娘ってのがぴったりな感じのミシェル・ロドリゲスで。(気性が荒いのが気になるけど・・・)
城健三朗【若山富三郎】
(仙場十四郎)
インディといえば若き日のハリソン・フォードだな。


座頭市あばれ凧
シリーズ第7作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 7 ZATOICHI'S FLASHING SWORD

(1964)
4
2004年3月
旅の道中、座頭市をしとめ名を上げようとする清六というやくざに鉄砲で撃たれた市は川に流されお国という女に助けられる。市はそんなお国を訪ね彼女の父親の文吉のところで世話になる。
文吉のところでは因縁をつけてくる安五郎に頭を悩ませていた。ある日文吉の息子が久しぶりに帰ってくるが安五郎の罠にはまり捕らえられてしまう。しかしその息子こそ市を襲った清六だった・・・
冒頭で浪人達にからまれた市が逆にこらしめるんですが、その浪人達が一転後半には敵方の安五郎の仲間になっているっていう座頭市シリーズではよく見かけるシチュエーションですけど相変わらずそこのところのつなぎと言うか話の持っていきかたに無理がなくって改めてすごいシリーズだと思うのです。
市も按摩を装って敵方に入り込み情報収集するというスパイ活動もこなす優れ者だし(誰に頼まれるわけでもなく自ら進んで行動するところが心憎い)、痛いマッサージをしてちょっとこらしめるところがほほえましかったりするんですね。
ラストも今回は花火が打ち上げられる中の殺陣が粋でなんか江戸時代だなぁと思うのでした。
お国役の久保菜穂子が地味な綺麗さで日本美人とはこのことだと感心したのです。
DVDの特典映像で予告編が入っているのですが
「上は火祭、下は血祭」というキャッチフレーズ、エミネムも真っ青な韻を踏んでこれがまたすばらしくって、センスのよさを感じるのでありました。キャッチフレーズだけで★+1。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
久保菜穂子
(お国)
日本髪も案外いけそうなクレア・デーンズ


座頭市喧嘩旅
シリーズ第8作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 8 FIGHT, ZATOICHI, FIGHT

(1964)
5
2004年3月
駕籠屋のしつこい勧誘に負け駕籠に乗った市は途中赤ん坊を抱えた若い母親が苦しんでいるのに気づき譲るが市を狙う殺し屋は駕籠の中を市と間違え母親を殺してしまう。
市は責任を感じ途中で出会った女スリ師のお香とともに赤ん坊を父親の元へ届けようとするが・・・
ヒットはあったけど久しぶりに座頭市シリーズで大ヒット。
市が赤ん坊にオシッコを引っ掛けられたり、オムツを探して四苦八苦するとかお約束の展開と市と赤ん坊の不釣合い加減が斬新で楽しいんです。今回はロード・オブ・ザ・オムツ状態でメインは赤ん坊を届けつつオムツ探しの旅で、案山子が身にまとっている布をオムツにするけどちゃんと殺菌しておくれとささやかな心配をしてしまった。
女スリ師お香とのやりとりも次第に夫婦のようになっていくところがいいしスッたおもちゃで赤ん坊をあやしたら市に喝を入れられて堅気になろうとするところもいいんですよね。
最後は当然別れがあるけどお決まりの展開で市も赤ん坊に情が移って自分がが育てるなんて言うんですけど、ネタバレ→
めくらのやくざがまともに育てられるものか。←と言われ涙の別れ。殺陣のシーンは少なかったけどたまにはこんな話も新鮮でよかったし、座頭市でしんみりするなんて思わなかったのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高千穂ひづる
(お香)
スリ師という感覚もいけそうなファムケ・ヤンセンで。


座頭市関所破り
シリーズ第9作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 9 ADVENTURES OF ZATOICHI

(1964)
4
2004年3月
初日の出を拝もうと旅をしていると新助という男から旅籠で働く妹のお仙に手紙を託される。旅籠に着いた市はお仙に手紙を渡し宿をとるが相部屋になったお咲という娘が行方不明になった父を待っていたが、新助が代官に騙され父親を手にかけていた・・・
騙されてある娘の父親を殺してしまった男、その男の妹が働く旅籠で何も知らず父親の帰りを待つ娘。と意外と入り組んだ設定でしかも市の父親にかかわるエピソードも絡ませているもかかわらずわかりやすくてドラマチック。
新助に会いに行くお仙についていった市を毛嫌いする新助だったけど、浪人達に襲われ
超人的な殺陣で新助を助けた市に「お前さんいったい・・・」と驚きの表情をするけど、そうでしょうとも、びっくりするよなぁと市の殺陣は水戸黄門の印籠代わりのようなものなんだなと思うのでした。
お咲役の高田美和もシリーズ2度目の登場だけど純情な町娘がよく似合うし、滝瑛子も悪名のときとは打って変わって旅籠で働く役だけど粋な雰囲気でよかったなぁ。
雇われ浪人の平幹二朗がめちゃくちゃかっこいい。最初どれが平幹かわからなかったけどもしやこれが平幹?なんて思っていたらやっぱりそうだった。顔なんて今とは全く別だし自分より強い相手と戦うことだけを目的として浪人暮らしをしている姿も一本筋が通っていてかっこいいんですよね。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高田美和
(お咲)
町娘という感じのレイテェル・リー・クックで。
滝瑛子
(お仙)
粋ではないけど旅籠で働くという設定が似合いそうなミニー・ドライバーで。
平幹二朗
(沖剛之助)
いま一番勢いのあるジョニー・デップで。


座頭市二段斬り
シリーズ第10作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 10 ZATOICHI'S REVENGE

(1963)
4
2004年3月
按摩の師匠のもとへと向かった市は師匠が殺されたことを知る。娘のお小夜を訪ねるも女郎となっていたが言うことを聞かないお小夜は牢屋に閉じ込められていて・・・
座頭市シリーズで坪内ミキ子が出演した作品は座頭市シリーズの中ではあまり得意じゃないんですけど、三度目の正直で素直に面白いと感じた記念すべき作品。やっぱりこれは三木のり平効果ががかなり高いと思います。三木のり平は最初敵方でさいころ振ってる奴なんですけど、市の性格にほれ込みなぜか仲間になるという新しい展開。しかも市に女郎達の金をまかされて裏切るかと思いきや忠実に金を守るし、女郎達を逃がすわで完全に市の子分となっているところが斬新だった。
しかもこの
三木のり平の娘役がどこかで見たことある顔だなぁと思っていたら、なんとティーンエジャーの小林幸子だった。子供なのになぜか貫禄十分な小林幸子を見てすでに大物感が漂っているなぁと思うのでした。
冒頭で市が屋台のおでん屋でおでんにからしをつけて食べるシーンがあるんですが、
「からしにおでんを付けて食べるくらいがおいしいんですよ。」と言ってからし8に対しておでん2位の割合でからしをつけるシーンは観ているこっちがやめてーと思うくらい強烈だった。案の定というかお約束でからしが目と鼻に効いているオチはわかっていても楽しいんですけどね。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三木のり平
(井戸尻軍十郎)
コミカルな子分肌という役が似合うオーウェン・ウィルソンで。娘役はダコタ・ファニングね。


座頭市逆手斬り
シリーズ第11作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 11 ZATOICHI AND THE DOOMED MAN

(1965)
4
2004年5月
もぐりの賭博の罪でつかまった市は牢で知り合った死刑囚の島蔵に無実の罪を証明してくれる兄弟分を訪ねてくれるように頼まれる。災難に巻き込まれたくない市は牢から出た後わざと兄弟分のいない道を選ぶのだったが・・・
今回もお約束で事件に巻き込まれれちゃうわけですけどその途中で出会う百太郎という調子のいい男が楽しい。百太郎は市が世間で話題の座頭市ということに気がつくと偽者に扮して行く先々でやりたい放題するわけなんですが、
この百太郎を演じているのがあの藤山寛美。ぱっと見T・I・Mのゴルゴ松本に似ているけど本物の芸人という感じがして一つ一つの芝居がさまになっているっていうですかね?そういうのが素人目から見てもわかるんだから藤山寛美って人は偉大な芸人だったんだなぁと思います。
偶然出会う生意気な娘お米役も小悪魔的な魅力のある滝瑛子(9作目の「座頭市関所破り」は地味にイメチェンしてたけど)で、生意気な態度を市に見せながらさりげなく島蔵の兄弟分の悪行を教えるという表面上は市に気がないふりをして心で市を慕うというお得意の役柄で滝瑛子も安心して見ていられるところがいいですね。
とそんなこんなで今までだって勝新の個性で悪役が目立つことが少なかったのに滝瑛子と特に藤山寛美の強烈な個性で今回は特にそれが顕著に現れてしまって悪役の人達はなんか斬られ損って感じもしなくはないけど藤山寛美の芸達者ぶりに勘弁してやっておくれと思うのでありました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
藤山寛美
(百太郎)
お調子者の芸人って感じのジャック・ブラックで。
滝瑛子
(お米)
(若いときの)ブリジット・バルドーで。元祖小悪魔という感じが。


座頭市地獄旅
シリーズ第12作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 12 ZATOICHI AND THE CHESS EXPERT

(1965)
4
2004年6月
相変わらず命を狙われる市は江ノ島に向かうべく船に乗り込む。そこで将棋好きで腕もめっぽう立つ十文字糺と知り合い意気投合する。しかし十文字糺がある兄妹に父親の仇として命を狙われていることを市はまだ知らなず・・・
十文字糺、彼に恨みのある兄妹、市の巻き添えになって道中旅をすることになる(かつて市によって夫を斬られた)母娘、
三つの異なる人生が市によって次第に絡まりあってくるさまはまるで「21グラム」のようで見ごたえ十分。(大げさか?)
ってことで結構ドラマチックだったんですけど中でもお種の娘が市の巻き添えになって破傷風になり市が薬を買いに行くエピソードで帰りに市とやくざものたちが斬りあいになり薬を落としちゃうんですよね。その薬を探すシーンがもうハラハラしっぱなし。目の前に薬が落ちているのに目が見えないからもうあきらめようとしたその時、指先に軽く触れる薬箱。あぁ見つけたって表情がちょっと感動的なのであります。
それに市に仕方なく旦那を斬られたお種も最後は市に惚れるんですけど、市は「惚れた女はお種さんて名前だけど違うお種さんだよ。」って言って振っちゃうところがまた心憎かった。(お種さんといったらシリーズ初期のころに確か3回ほど出演して本当に市が愛した女だもんな)
今回の親友で後に敵となる十文字糺役が成田三樹夫です。名前は知らなかったけど顔を見たら「犬」シリーズで田宮二郎の敵役のやくざでおなじみのお人じゃないですか。いつもは腹黒い頭脳派の性悪やくざで憎らしい感じだったけど今回は市のために一緒に戦ってくれたりずっと旅をしたりしてシリーズ始まって以来の親友のような存在のいい感じの浪人でカッコいいじゃん。(将棋で人を斬るようなサイコな部分もあるのだけど)この人案外二枚目路線もいけるんだと新たな発見をした12作目なのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
成田三樹夫
(十文字糺)
普段は悪役が多いけど最近ようやくまともな役も増えてきたショーン・ビーンで。
岩崎加根子
(お種)
結構いろいろ出ているけど地味な印象のモニカ・ポッターで。


座頭市の歌が聞える
シリーズ第13作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 13 ZATOICHI’S VENGEANCE

(1966)
4
2004年11月
ある日市はやくざに襲われた為吉から財布を託されるのだったが為吉は息絶えてしまう。やがて市は争いのない宿場の噂を聞きつけやってきたが偶然にも為吉の母のいる宿場だった。しかし平和な宿場も板鼻の権造が乗っ取ろうとして・・・
座頭市シリーズ13作目。5ヶ月ぶりくらいに観ましたけど今回もいつものように巻き込まれながらも悪党撃退みたいなおなじみの展開でしたけど今回は出演者がよかったです。金のために市の命を狙う宿敵に二度目の登場の天知茂、天知茂の嫁で今は女郎をしているお蝶に小川真由美。で宿場を荒らすのやくざが佐藤慶ときてみんな役にぴったりなんですよね。
天知茂はニヒルだし、小川真由美は姐さんという感じだし佐藤慶にいたってはやくざのボスなんだけど自分は手を上げないで下っ端に命令するだけの言ってみれば腹黒いタイプのやくざがなんともはまっていました。
これだけの顔ぶれを見るだけで十分満足なんですけど市にいろいろとアドバイスする謎の盲目の琵琶法師が加わって今までと趣向が変わっていてちょっとだけ新鮮でした。何でも見抜く琵琶法師によって市は幼い頃までは目が見えていたという新事実が今回発覚してちょっとしたトリビア気分に浸れました。
そしてやっぱり最後は天知茂との一騎打ちなんですけど今まで金のために殺しをしていたけど市の腕を知った天知茂が「今日は気持ちよく刀が抜けそうだ。」なんて感じのまたキザな台詞を言うわけですけどこれがまたカッコいいですね。
殺陣のシーンもつばぜり合いあり、駆け引きありといい感じに仕上がっていてやっぱり天知茂はかっこえーなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
天知茂
(黒部玄八郎)
ちょっとだけニヒル?なアンディ・ガルシアで。
小川真由美
(お蝶)
「L.A.コンフィデンシャル」のキム・ベイシンガーを思い出しました。
佐藤慶
(板鼻の権造)
人を使って悪事を働きそうなブルース・グリーンウッドで。


座頭市海を渡る
シリーズ第14作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 14 ZATOICHI’S PILGRIMAGE

(1966)
4
2004年11月
四国に今まで斬った者達を弔う旅を続けていた市は突然男に斬りつけられるのだがやむなくその男を斬る。そして偶然男の妹のお吉の家にやっかいになるのがったがその村は暴力で乗っ取ろうとする藤八に狙われているのだった・・・
座頭市なんだけど座頭市らしくないちょっと変わった印象を受けたシリーズ14作目。
今までのシリーズは関東圏でしまの取り合いに巻き込まれたり殺伐としていたんですけど、四国の田舎が舞台だから村というより本当に小さな集落だしそこを狙う藤八も確かに悪い奴だけど山形勲ということもあってか憎めない奴なんですね。
悪人がジャイアンレベルで今回の座頭市って小さな集落をみんなで奪い返そうみたいなノリがなんだか西部劇のようでした。
本当にあくどい悪役が出てこないのでちょっとほのぼのとしているのでいつもは泣きを見ることの多いマドンナも今回は強気です。藤八は一応馬の面倒を見る仕事もしているからお吉に馬糞くせぇと言われる始末でちょっと惨めだし、村人達は市が運良く藤八をやっつけてしまったら万々歳という考えを持つ連中なのでこっちの方が悪い奴らに見えてきてしまいました。
というわけで全体的に展開はぬるいんですがボスに山形勲にその手下に悪役やっても味方をやらしてもよしの大映の名脇役、伊達三郎に同じく大映でちんぴらやらしたら天下一の千波丈太郎あたりの当時映画が全盛期だったころの俳優がちょこちょこと見ることが出来たので嫌いじゃないです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
安田道代【大楠道代】
(お吉)
しっかり者というイメージのフランカ・ポテンテあたりで。
山形勲
(藤八)
悪役やってもどこか憎めないジョン・トラボルタで。


座頭市鉄火旅
シリーズ第15作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 15 ZATOICHI'S CANE SWORD

(1967)
3
2006年4月
道中、足利の親分の死を見取った市は足利に向かい博打で大もうけするが逆恨みして襲われてしまう。いつものしょうに仕込み杖で斬り倒すのだったが、市の刀は寿命が近づいていた・・・
今回は仕込み杖に隠されている居合いの刀があと一回人を斬ったら折れてしまうという今まで観てきた中でシリーズ最大のピンチを迎えた珍しいタイプの作品に仕上がっていました。そんなものだからちょっと毛色が変わっているのはいいのですが観ていてなんかしっくり来なかったのは悪代官とかその手の悪い政治家達がかなり出てきたからだと思います。
「座頭市」ってやくざの世界でいいやくざと悪いやくざの事件に巻き込まれてそこには必ず苦しんでいるヒロインがいるという構図じゃないとなぁと感じました。
だから市が住み込みで働く旅籠が無茶苦茶にされてしまうんですけど結局好き放題やってっているのは悪い役人なので個人的にはもうひとつピンと来なかったんですよね。
ヒロインで足利の親分の娘の藤村志保と刀鍛冶の親父の東野英治郎の関係、あと一回斬ったら折れてしまう市の刀の結末などものすごくいい感じに出来ているので惜しかったです。
ほとんど本編と関係ないけれど水前寺清子が旅回りの一座の売れっ子として登場していました。もちろん歌つきで。昔の映画って売り出したい歌手を出演させるってのが案外普通だったんだなぁと感じます。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
藤村志保
(お志津)
いい娘さんという感じのアンナ・パキンで。
東野英治郎
(仙造)
鍛冶屋とか似合いそうなピート・ポスルスウェイトで。


座頭市牢破り
シリーズ第16作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 16 THE OUTLAW

(1967)
4
2006年6月
敵対する清滝の朝五郎に使いに出された市は朝五郎と剣を捨てた百姓の大原秋穂の人の良さに心打たれ朝五郎たちの百姓を助けるのだったが・・・
記念すべき勝プロ第一回目。
三國連太郎をゲストに迎えた今回は悪い方のやくざに世話になっていながらもいい方のやくざに加勢して命を狙われる。といういつも通りの展開ですがそれは前半だけであっさり悪いほうの親分は市に斬られてしまい後半は助けられたいい方のやくざと悪いやくざの手下達のその後を描いているところが新鮮です。
最初はいいやくざだった三國連太郎が市が旅に出ている間に悪いやくざになってしまっているという設定なのですが「飢餓海峡」を彷彿とさせてこの役は三國連太郎しかいないと思わせるくらいはまっていてました。
こういう人間臭いというかドツボにはまっていく役、やっぱり三國連太郎は上手いなぁと思います。
三國連太郎は悪いやくざの跡をついで悪代官的な西村晃の命じられて仕方なく十手持ちになったところがあって気づいたときには農民達を苦しめる立場になっていたという切ない役どころ。しかし最後の市との戦うシーンでは手下どもを盾にしてしまいには死んだふりをして市に斬りかかるという生に執着しすぎて卑怯になるところも見せる二面性はさすがでした。
按摩屋を通り過ぎる女に京唄子がほんのちょっとだけ出ていたりもするところも楽しかったです。もちろん京唄子はあの強烈な個性を放っていて通り過ぎるだけでも思いっきり目立っていました。そした按摩屋には旦那の鳳啓助やら藤岡琢也がコミカルに出演していて豪華でした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三國連太郎
(清滝の朝五郎)
ドツボにはまる役が似合いそうなベニチオ・デル・トロで。
鈴木瑞穂
(大原秋穂)
いい人という感じのデニス・ヘイスバートで。


座頭市血煙り街道
シリーズ第17作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 17 ZATOICHI CHALLENGED

(1967)
4
2006年7月
相部屋になった婦人の死を看取った市は彼女の息子良太を父親の庄吉の元へと送り届けることになり彼の働いているという店を訪ねたのだが彼は行方知らずとなっていて・・・
初め旅の一座と一緒に旅をともにして中尾ミエが見た目も歌もオリエンタルな感じでおまけに一座がやくざものに絡まれて興行できなくなりそうになりそうという「座頭市鉄火旅」みたいな展開で面白みがないと思ったら腕の立つ謎の浪人、近衛十四郎が出てきて普通だったら市がどうにかするところを近衛十四郎がごたごたを解決してちょっと新しい展開。座長も朝丘雪路だったり豪華なのにあっさり市と別れるところも新鮮でした。
しかし今回の見所はなんといっても小生意気なガキんちょです。市の目が見えないことをいいことに小石をつかませてあめ玉とか言って食わせる悪ガキっぷり。観ていて腹立ったりもして
「子連れ狼」の大五郎もそうなんですけど、時代劇に出てくる子供は悪ガキか愛想のないガキか何れにしても中途半端にかわいい子より個性的な子供が出ているといいスパイスになるものです。
ネタバレ→
良太の父親庄吉は脅されてご禁制の絵を書かされているにも関わらず、実は公儀の隠密だった近衛十四郎は事件に関わったというだけで庄吉を斬ろうとするけど市が止め最終的に一騎打ち。クライマックスでのこの二人の斬りあいは1作目の天知茂以来の互角の闘いで久しぶり見ごたえありました。←最後も後味よろしく久しぶりに「座頭市」シリーズとしてはかなりの快作だった気がします。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
近衛十四郎
(赤塚多十郎)
隠密とか似合いそうなダニエル・クレイグで。


座頭市果し状
シリーズ第18作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 18 ZATOICHI AND THE FUGITIVES

(1968)
4
2006年8月
秩父街道を旅する市は弦八郎の率いる荒くれ者たちに痛めつけられた百姓を順庵という医者の元に担ぎ込みそのまま彼の元に住み込みで働くことになるのだが・・・
今回は巻き込まれがたの内容なのですが今回は凶悪な強盗集団の中の紅一点、野川由美子が妖しくも美しくいかにも悪党の中のお色気担当という感じがしてよかったし、
志村喬ももらった野菜や魚を乳の出が悪い奥さんに気前良くあげて患者さん思いのいい医者で赤ひげっぽくて志村喬らしさを堪能できました。
弦八郎に脅されかくまった松五郎一家という十手持ちのところに弦八郎を捕まえようとする役人が現れ、今回は役人が絡んじゃうのかな?と心配したのですがそれもなく逆に十手持ちの松五郎も悪い奴という座頭市ならではの展開で一安心。
クライマックスもさらわれた順庵とその娘を助けつつ野川由美子も改心させたりドラマ部分も盛り上がりますが、今回は弦八郎の手下達が銃やら小刀投げてきたりと今まで観てきた中で市は最大のピンチ。ネタバレ→
傷ついたままで最後は弦八郎との一騎打ちになるのですが弦八郎は順庵に勘当された息子で知らずに斬りその事実を知った市は無言で宿場町を去っていく←という渋い終わり方で雰囲気も西部劇風で好みでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
野川由美子
(お秋)
悪女系のファムケ・ヤンセンで。
待田京介
(小鹿野弦八郎)
インテリな悪役もいけるポール・ベタニーで。
志村喬
(順庵)
いい人という感じのウィリアム・H・メイシーで。


座頭市喧嘩太鼓
シリーズ第19作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 19 SAMARITAN ZATOICHI

(1968)
4
2006年11月
一宿一飯の恩義に報いるため市は一人の男を斬るがその男にはお袖という姉がいた。しかし市の世話になった男達はお袖を妾にし一儲けしようと企んでいて・・・
今回の共演者は三田佳子、佐藤允、藤岡琢也という勝新作品としては珍しい組み合わせで今までの「座頭市」シリーズとは違った雰囲気で新鮮でいいやくざものの藤岡琢也が「犬」シリーズ同様コミカルな演技で楽しかったです。最近亡くなっちゃいましたけど藤岡琢也って60年代は貴重なポジションだった人なんだなと改めて思いました。
三田佳子もこの時代の作品ってあまり観たことがないのですが幸が薄いというかついていない役とか多かったような気がします。だけど三田佳子って今とあんまり代わっていないところがさりげなくすごいなと思いました。
今回の宿敵はあの佐藤允なんですけど役どころはどこか侍だったけど問題を起こして放浪旅をしているような浪人で、今回は特に話の本筋とは全然関係ないのですが偶然市を見かけて興味を持って市を斬ってみたいと思っちゃうやんちゃなところは座頭市に出ても変わっていないところが佐藤允らしくてよかったです。
最後はもちろんやられることは分かりきっているのですがやられた時の倒れ方がどさっと潔く倒れる姿が今まで観たことのないやられ方でものすごくカッコよかったです。時代劇も中々いけるんですね佐藤允は。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三田佳子
(お袖)
ついてないって感じのするブリジット・フォンダで。
佐藤允
(柏崎弥三郎)
いつまでもやんちゃなマット・ディロンで。


座頭市と用心棒
シリーズ第20作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 20 ZATOICHI MEETS YOJIMBO

(1970)
4
2005年6月
かつて訪れたことのある平和な里に再びやってきた市だったがその里は小仏の政五郎というやくざに乗っ取られていた。市は里を救おうとするが政五郎は凄腕の用心棒佐々大作も雇っていた・・・
座頭市20作目の記念なのかな?映画会社の壁を越えた勝新と三船にさらに若尾文子が加わった共演はまさにミラクルで、岸田森もまた政五郎も父親が雇った殺し屋で出てくるし寺田農も密かに若尾文子に恋をしていて座頭市を助けるチンピラ役で出てくるしでアニバーサリー的な作品は内容は座頭市っぽくない外伝的な感じなんですけどやっぱりこのメイン3人を見ているだけで楽しかったです。
特に面白かったのがやっぱり三船敏郎ですね。やくざの親分政五郎が情けない奴ですぐ「しぇんしぇー」って泣きついてくるから雇われ用心棒のくせにすっかり雇い主の政五郎をなめてかかって「しぇんしぇー」といたずらっぽく真似するところがやっぱりやんちゃで楽しいです。勝新が若尾文子に触ろうとすると速攻で「触るな!」って本気で怒るところも可愛らしくもあり、
勝新と三船敏郎は約10歳の年の差あって当時50歳。50歳でこういうキャラクターでいられるのって憧れます。
若尾文子は別にこの作品に出る必要ないような役どころですけどいいんです。これはお祭映画だから。若尾文子も1933年生まれだから当時37歳でしょ?ハリウッド女優並に年齢を感じさせない容姿はさすがだなと思いました。
最後は座頭市と用心棒の一騎打ちですが見た感じは用心棒の方が強かったような気がしますが当然引き分け。これは最初っから分かりきっていたので本当安心して純粋に楽しめました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三船敏郎
(佐々大作)
今回の三船敏郎はどことなくベン・スティラーっぽい感じがあったかも。
若尾文子
(梅乃)
ビジュアル的にはケイト・ベッキンセールかな?


座頭市あばれ火祭り
シリーズ第21作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 21 THE FESTIVAL OF FIRE

(1970)
3
2006年12月
妾市場で買われた女を救った市は闇公方といわれる盲目ながら闇の世界を取り仕切る大物に目をつけられてしまい・・・
メインが仲代達矢、大原麗子、森雅之で監督は三隅研次でこれは相当期待したのですがどういうわけか詰め込みすぎてまとまりに欠けるといういう、もったいない結果になっていました。
仲代達矢が大菩薩峠の机龍之助のような剣に取り付かれたようなまるで死に急いでいるようなキャラで本筋と全然関係なく確かに殺陣とかはキリッとしていてカッコいいのですが余分だと思います。逆にこれはこれで別の作品で出した方がいいのになぁと感じました。
今回の敵、森雅之はさすが大御所だけあってシリーズ中1、2を争うほどのインパクト。盲目という市と同じ設定で目にはコンタクトを入れて見た目も怖いけどやることの残酷度は間違いなくシリーズ一番だと思います。
市をやるには剣の使えない普通の娘がいいと言って大原麗子を差し向けるのですが、案の定、市のまっすぐな性格を知って殺すどころか逆に愛情すら感じる始末。それを知った森雅之は池の上にある方法で誘い出し、油が浮いている池に火を放ち逃げ場をなくすという非道っぷりは久しぶりに市のピンチを観た気がしました。
森雅之は昔から人間的にいやらしい役をやらせたら右に出るものはいないと思っていましたがやっぱりそうだったなと感じました。
もちろん最後はやられるわけでそのやられ方も「キル・ビル」な雰囲気もあり余分なところを削れば本当面白くなりそうだったのにもったいなかったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
仲代達矢
(浪人)
悲壮感漂う感じのダニエル・デイ=ルイスで。
大原麗子
(お喜代)
まだまだ娘さんという感じの役がいけるアリソン・ローマンで。
森雅之
(闇公方)
非道なイメージが強いゲイリー・シニーズで。


新座頭市 破れ!唐人剣
シリーズ第22作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 22 ZATOICHI MEETS THE ONE-ARM SWORDSMAN

(1971)
3
2006年12月
侍に斬られた唐人一家の子供を預かってしまった市は旅の途中騒ぎを起こした唐人の王剛と出会い当い子供を渡すが王剛に道案内を頼まれるのだが・・・
今回の目玉はなんといっても海外からのゲスト、ジミー・ウォングにつきます。理不尽な役人や侍を次々と倒してしまったことで追われる身になるわけですが跳躍力とかがハンパじゃなくてカンフー映画を観ているようでした。よくよくみたらこの人、片腕だったのでもしかしたら・・・と思ったらやっぱり
「片腕カンフー対空とぶギロチン」の人で座頭市シリーズでまさかお目にかかるとは思わなかったので思わぬサプライズでした。
ち唐人をかくまった先での坊主の裏切り、言葉が通じないところからくるちょっとした行き違いなどで最終的には二人は戦う羽目になるのですが後半出てくる裏切り坊主の南原宏治が見た目からして俗っぽくていかにも怪しいと睨んでいたらやっぱり裏切ってくれてナイスでした。
とほとんどメインはジミー・ウォング中心になっていて勝新太郎が脇役になっているようで座頭市っぽくないので市を助ける女郎の浜木綿子もきっぷがよくて本来ならもっと絡みがあってよさそうなんですけどそれも期待したほどなくなんだかもったいない感じがしました。
ダブル主演ってバランスが難しいんですね。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
ジミー・ウォング
(王剛)
正義感の強そうな山本耕史で。
浜木綿子
(お仙)
やさぐれ感はあるけどきっぷはよさそうなアーシア・アルジェントで。


座頭市御用旅
シリーズ第23作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 23 ZATOICHI AT LARGE

(1972)
4
2007年1月
やくざに襲われ金を奪われた女。やがてその女が陣痛に苦しむところを市が通りかりなんとか出産させるが女は父親、佐太郎の名前と場所を言い息絶えてしまう。市はしかたなく塩原まで産まれた子供を連れて行くことになるのだが・・・
ここのところ今一歩という感じだった座頭市シリーズでしたが久しぶりにいい事しているはずなのに何故か周りからは人殺し扱いされてしまい市も「下手な仏心を出したばっかりにえらい目に遭った。」とやるせない台詞を言うところが座頭市シリーズらしさが出ていて良かったです。
やくざ者のいない珍しく平和な村に凶悪なやくざ者、鉄五郎が現れるけど村の平和を守ってきた十手持ちの藤兵衛は毅然とした態度で鉄五郎の悪さを許さないという定番の内容なのですがこの頼れる十手持ちの役がいつもはおちゃらけているというかゆるいキャラクターのイメージの森繁久彌だったので意外で
こういう芯のしっかりした役を見たのは新鮮で初めて森繁久彌をいいと思いました。
極悪非道なやくざ者は座頭市シリーズでは悪役が定番の三國連太郎。悪人アイシャドーも濃い目でシリーズ中、正面切って悪人ですという感じが一番強いかもしれません。散々あくどい事やっておいて追いつめられると情けなるという定番のスタイルもよかったです。
ヒロインは大谷直子ですが大映時代の座頭市シリーズを比べるとちょうど10年経っていて10年で映画界も大分変わったんだなぁと感じるのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
森繁久彌
(藤兵衛)
いい人というイメージのモーガン・フリーマンで。
大谷直子
(八重)
ブライス・ダラス・ハワードは旅籠で働いていそうな庶民的な雰囲気がします。
三国連太郎
(鉄五郎)
悪役栄えする感じのビル・ナイで。


新座頭市物語 折れた杖
シリーズ第24作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 24 ZATOICHI IN DESPERATION

(1972)
3
2007年3月
旅の途中、三味線引きの老婆が目の前で死に市は老婆の形見の三味線を渡しに娘を探すことになるのだが・・・
シリーズ21作目の「座頭市あばれ火祭り」を超えるまとまりのなさがなんとももったいないと思えるシリーズ24弾。女郎屋を舞台に話しが繰り広げられていくところは好きなのですが本筋と全然関係のないエピソードがありすぎてちょっとなぁという感じです。例えば女郎屋の住み込み吉沢京子のエピソードはそれだけでもひとつの作品になりそうなんですよね。
そしてこういう時に限って太地喜和子、小池朝雄、中村賀津雄と出ているゲストも豪華だったりするのもたまに傷。
老婆が事故死したのは自分のせいと責任を感じた市は女郎の太地喜和子をみうけするも太地喜和子には中村賀津雄という男がいた。村では極悪非道の小池朝雄が牛耳っていて市の首を取るため中村賀津雄を脅して市を罠にはめるという内容で小池朝雄の子分たちの非道ぶりは徹底しているのはいいのですがクライマックス、
市が捕まって両手を潰されているにも関わらず止めをささずに市を家に帰してしまう小池朝雄の神経がわからず困惑。ここでやらなくてどこでやる?といった感じです。
最後もちろん小池朝雄はやられるわけですが追いつめられた時の狼狽っぷりと情けなさはさすが小池朝雄と言った感じでよかったです。今思うと最初の老婆の事故死のシーンからして今回はATGっぽい座頭市だったのかなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
太地喜和子
(錦木)
女郎屋が似合いそうなコン・リーで。
小池朝雄
(鍵屋万五郎)
極悪顔のチェ・ミンシクで。
中村賀津雄
(丑松)
いつの何かに巻き込まれていそうなトニー・レオンで。


新座頭市物語 笠間の血祭り
シリーズ第25作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 25 ZATOICHI'S CONSPIRACY

(1973)
4
2007年4月
生まれ故郷の笠間に帰って来た市は江戸で成功した米問屋で幼なじみの新兵衛が不作で苦しむ村人のために年貢を代わり払うが新兵衛にはある考えがあった・・・
新がつく座頭市シリーズはイマイチなのですがこれは面白かったです。
今回の敵は岡田英次なんですけど悪代官でもなければやくざでもなく商人で頭と金を使って村の石切り場を自分のものにしようとするところがずる賢く今までにあまりなかったタイプの悪役でよかったです。身から出た錆的な最期も雰囲気があってよかったです。
そんな岡田英次の悪さをいち早く察する村の良心は志村喬だし、他にもヒロインが十朱幸代にその他にも岸部シローが出ていたりと
新旧の俳優がいい具合に混ざり合っているところも70年代という時代を感じます。
岸辺シローの役もどこからともなく村に現れたチンピラたちで悪さばかりして本当にしょーもないのですけど最後は市を助けたり自ら斬り込んでいったりいままでの自分の悪行を悔い改めるような行動に出るところも意外とチンピラたちもいいところあるじゃんと思って見ることが出来たし全体的にバランスは良かったんじゃないかなぁと思いました。
それにしても岡田英次は若いときはカッコよかったですけど年をとっても渋カッコよくて上手い年のとり方をしたなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
十朱幸代
(おみよ)
いくつになっても娘さんとい印象でありそうなアンナ・パキンで。
岡田英次
(常陸屋新兵衛)
ガブリエル・バーンに悪役をやってもらいたい。


座頭市
シリーズ第26作
ZATOICHI THE BLIND SWORDSMAN, VOL. 26 DARKNESS IS HIS ALLY

(1989)
3
2007年5月
シリーズ25作で終わったと思っていた座頭市シリーズが16年ぶりに復活?したのがタイトルもずばりそのまま「座頭市」。
出演者もさすが1989年の作品だけあって陣内孝則とか片岡鶴太郎とかいまどきの人だなぁという感じ。しかし座頭市シリーズの特に後期によく感じたことなのですが詰め込みすぎてまとまりに欠けるという現象は今回も残念ながらありました。
本来ならばヒロインになるはずの樋口可南子は気風のいい女親分といった趣でしかも悪党どもにも一目置かれる存在で話の中心になることは十分なのですが最初にちょこっと市とのラブシーンがあって出番が終わりみたいな展開はもったいないです。というか市がラブシーンをやってはいけないと思います。
勝新の息子の鴈龍太郎が一応大ボスというポジションで登場しているところはにくい演出に思えるのですがどうも若手の関取にしか見えないところがたまに傷だったりもします。
そんな勝新の息子の下についた内田裕也が密かに寝首をかこうとするところや常に殴られっぱなしでなんだか気の毒な蟹江敬三や浪人の緒方拳など脇役と、この時代にしてはセットもしっかりしていて抜かりないところはさすが勝新太郎と思えるところは沢山あるのですがやっぱり話がごちゃごちゃしすぎているのがもったいないなぁと思うのでした。
それにしても
緒方拳と勝新が楽しそうにジャンケンをするシーンはものすごくシュールでした。この時代にジャンケンってあったんですね。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
樋口可南子
(おはん)
姐さん役もいけそうなケイト・ブランシェットで。
陣内孝則
(関八州)
テンションが高いレイ・リオッタで。
内田裕也
(赤兵衛)
ビル・ナイあたりにお願いしたい。
奥村雄大【鴈龍太郎】
(五石衛門)
冷酷な役が似合うポール・ベタニーで。


座頭市
THE BLIND SWORDSMAN:ZATOICHI
(2003)
4
2007年5月
とある宿場町で野菜を売るおうめの家でやっかいになることになった市だったがその宿場町は銀蔵一家が町民を苦しめていて・・・
あの座頭市を北野武版がリメイク。
勝新太郎の座頭市は全26作品観終ったので北野武版を観てみました。正直、北野武の演技はあまり好きではないのでこれはどうだろうとあまり期待しないで観たのですがこれが思っていた以上に面白かったです。
殺陣のシーンがスタイリッシュで現代的に仕上がっていて内容の方も色々盛りだくさんなんですけど詰め込みすぎていなかったし、どこかマヌケなキャラクターが市の味方をしたり訳ありで用心棒をし後に運命的に出会う好敵手など
オリジナルの要素を守りつつもタップダンスや最後のオチもオリジナリティもあってそこのところが上手くまとまっているなぁという印象です。悪役も見るからに悪徳そうな顔つきの岸部一徳をもってきたところもよかったし座頭市では悪人ではなく好敵手として最後に対決するキャラクターが出てくるのですがリメイク版では浅野忠信が用心棒として登場するのですがどことなく天知茂を彷彿とさせるクールなキャラクターでよかったと思います。
そんな中やはり一番よかったのはオリジナル版にも出演経験ありの10年後の戸田恵子みたいなルックスの大楠道代(安田道代)が圧倒的な存在感でさすがです。最後のハッピーエンドにあの有名なタップダンスのシーンがあるのですが出演者がみんなタップを踏んでいて大楠道代までもが楽しそうにタップを踏んでいて大楠道代はいい人なんだろうなと思いました。
欲を言えばヒロインがいないところがちょっと物足りないけど十分楽しめました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
ビートたけし
(座頭市)
最近好調のマーク・ウォルバーグにお願いしたい。
浅野忠信
(服部源之助)
陰のある感じのジム・カヴィーゼルで。
大楠道代
(おうめ)
気丈そうなジェシカ・ラングあたりで。
ガダルカナル・タカ
(新吉)
三枚目が似合うジェイソン・リーで。
岸部一徳
(銀蔵)
悪徳な雰囲気のジョン・ヴォイドで。


座頭市 THE LAST
ZATOICHI: THE LAST
(2010)
2
2010年6月
妻のタネに最後と誓い戦いと出向いた市だったが目の前にタネが現われて命を落としてしまう。失意の市は生まれ故郷に戻り幼なじみの柳司の家にやっかいになるのだが天道一家が村に現われて・・・
最後ということで作られた座頭市。
勝新太郎の座頭市は全26作品観ているし、北野たけし版と綾瀬はるか版も観ていたので香取慎吾版は評判悪かったのですが観てみたところやっぱりダメでした。綾瀬はるか版もダメでしたが香取慎吾版が一番出来が悪く感じました。
一番悪いところは説明すべきところが省かれていてどうでもいいところが無駄に長いところ。市がそもそも結婚しているというところがどうにも納得できないを置いておいてもそも結婚しているんだったら馴れ初めくらい入れたらどうですか?と思ってしまうわけですよ。石原さとみなんてヒロイン扱いされてますが実質カメオ並の出番の少なさでしたし。
香取慎吾の市の重みがなくて殺陣に関してもスピード感が今一歩で力不足感は否めません。ボスの仲代達矢については存在感抜群で殺陣の時も割と軽々と動き回って感心したのですがどうもこの役には向いていなかったようで台詞がしっくりきていなくて、観ていて仲代達矢大丈夫かなと思ってしまいました。
脇役からちょい役まで出てくる人は見たことある人ばかりで豪華なのですがその豪華さを全く活かしきれずもったいないなと思うでした。そんな脇役の中でも、仲代達矢の息子役の高岡蒼甫が今までにない役どころを熱演していたのと、街医者的な役どころの原田芳雄はよかったのがせめてもの救いだと思います。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
香取慎吾
(市)
ニコラス・ケイジがやったら意外とはまりそうです。
仲代達矢
(天道)
クリストファー・リーにぜひともお願いしたい。


真田幸村の謀略
RENEGADE NINJAS

(1979)
3
2004年7月
天下統一をもくろむ徳川家康に父、昌幸を暗殺された真田幸村は草の者と呼ばれる腕は立つが世のはみ出し者を集め徳川家康を倒そうとするのだが・・・
歴史とかあんまり興味ないんで真田幸村がどういう人かはよく知らないんですけど名前くらいは知っていますってレベルで鑑賞したけど相当突飛でしたよ。もう完全にカルト映画の域に入っています。家康に殺される丹波哲郎がトラを飼ってんだから。
当然時代劇だから殺陣のシーンがあるけれど、十勇士がまぁ侍じゃないからアクロバティックなアクションになるのはなんとなくわからないでもないけどそれにしても殺陣は素人目から見ても酷かった。
話もめちゃくちゃだし(真田幸村が独眼流正宗みたいなルックスになっちゃうし)出演者も真田幸村の兄さんに梅宮辰夫だったりと無駄に豪華でいつもなら腹も立つところですけど、逆にこんな内容でよくぞここまで豪華な出演者をあつめたなと感心してしまいましたよ。本当、高峰三枝子や片岡千恵蔵の大ベテランからガッツ石松まで幅広いんですから。
途中で仲間になる三好清海入道が普通は男らしいんですが今回、女にしたとチラシに書いてあって迫害される切支丹の姫みたいな設定である意味ヒロインだったんですけどこのヒロインが秋野暢子かぁ。一人で何とかしそうな人だから全然ヒロインぽくありません。
それに極めつけは
猿飛佐助役のあおい輝彦が金髪なんですけどこの金髪のかつらが全くといっていいほど似合ってねー。っていうかこいつの正体がネタバレ→宇宙人←ってお前一人で徳川家康倒せるどころか世界制覇も出来るっちゅうねん!みたいな感じで完全に一人勝ちじゃん。ネタバレ→最後宇宙に帰っていくし・・・←
よかったのは寺田農の霧隠才蔵と火野正平の穴山小助くらいでしたよ。特に火野正平は世間に不満があるやんちゃな感じが自然でよかったなぁ。
これ最初、観なきゃよかったと正直思ったけど今となってはいろんな意味で貴重な作品で観といてよかったと思う不思議な作品なのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
松方弘樹
(真田幸村)
ジョージ・クルーニーのアイパッチ姿を見てみたい。
寺田農
(霧隠才蔵)
ショーン・ビーンにここは渋く決めてもらいたい。
あおい輝彦
(猿飛佐助)
猿系のビジュアルといったらこの人、マーク・ウォルバーグで。
秋野暢子
(三好清海入道)
一人でなんとか出来そうな女アシュレー・ジャッドで。
萬屋錦之介
(徳川家康)
悪役の大物はやはりクリストファー・リーに。


錆びた炎
(1977)
3
2009年9月
種村総合病院から血友病の子供が誘拐されるが犯人は病院長から身代金を払わせようとする。警部の遠丸は院長の誠一郎に捜査協力を仰ぐも誠一郎は全く身代金を払う意思はない。そうこうしているうちに患者の命のタイムリミットが近づいてきて・・・
大物多数出演の誘拐サスペンス。
何でも血友病患者を72時間以内に助け出さなければならないというところが大きく間違っているのでソフト化されないらしいこの作品。
何だか色々なジャンルの俳優総出演という感じでとにかく濃い感じがします。
主役の平幹二郎を筆頭に冷酷な病院長の丹波哲郎、その息子の嫁が梶芽衣子にお手伝いさんが少女時代の原田美枝子他にも色々出ていてこんなに異色の顔合わせはないってくらいの顔合わせは見ていて面白いです。突然事件に割り込んでくる藤岡弘は相変わらず暑苦しいです。
サスペンスとして血友病のタイムリミットがどうのというアラは抜きにしても結構よく出来ているなと思いました。
丹波哲郎が誘拐された子供が自分のところの子供じゃないのに何で身代金を払う必要があるのだ!とすごんでさすがの平幹二郎もたじたじなのですがこの子供がじつは・・・とか息子の嫁の梶芽衣子が舅の丹波哲郎に毎晩抱かれているとか金持ちにありがちなちょとおクレイジーな場面もありつつも身代金の受け渡しの点字を使うトリックは今では使えませんがここのところはものすごく考えられているなと思いました。
何となく犯人の察しはつくのですが救急患者のたらいまわし問題をこの時代から取り入れているところもよかったし全体的にただよう大雑把感がなければこれはかなりの傑作になりそうです。
ミステリアスな梶芽衣子は出ているシーンは多いけれど台詞も少なめで最後までミステリアスなのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
平幹二朗
(遠丸次郎)
こういうジャンルで刑事役が多いクライヴ・オーウェンで。
梶芽衣子
(種村登志子)
ミステリアスな雰囲気がたまらないファムケ・ヤンセンで。
原田美枝子
(伊山比佐子)
お手伝いさん顔のエレン・ペイジで。
丹波哲郎
(種村誠一郎)
冷酷な感じのするジェレミー・アイアンズで。



(1964)
3
2004年10月
流民の子として生まれたサメは母親と貧しい生活を送っていた。そんなある日役人が流民達を一掃しに村を焼き払ってしまう。一人生き残ったサメはどうにかして京にやってきたがそこで出会った四郎左という男に出会い生きるために悪行の数々を身に付けるのだったが・・・
3時間近くの大作だからさすがに疲れました。テーマが差別と悪行だから。
村を焼かれてから京にたどり着き四郎左に出会い悪行を身に着けていく前半、貧しいながらも母と二人幸せな生活を送っていたサメに村が焼き討ちに会ってしまい生き残った加藤嘉(この人こういう役をやらせたら本当に上手いです。)と逃げるけど結局餓死してしまい一人になったサメの元にひょっこり肉を持った女が現れ彼女と行動するもその肉は人肉で・・・という展開は飢餓感みたいなものがひしひしと伝わってきてよかったです。この肉を持って現れるのが「宮本武蔵」シリーズのお甲でおなじみの木暮実千代なんですけど彼女も登場するとなにかしでかしそうなファムファタール的な雰囲気をかもし出して期待せずにはいられません。
京につくと片腕の悪人四郎左に拾われて段々と悪の道へと染まっていくわけですが分け前を全くもらえないサメはついに四郎左を殺してひとり立ちします。その後は悪行三昧なんですけどサメの今までの苦悩を知っているから、
今までつらい思いをして来たんだから思う存分暴れなよ。と思えてきてしまうんですよね。
勝新太郎の「不知火検校」くらい救いようのない悪党だったら最後の尼さんによって改心するってのも説得力があるような気がするんですけど錦之助のこの役って元は純朴な青年だから改心して当然と思えてしまうところが残念でしたね。それともうちょっとコンパクトだったらよかったかなぁ。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
中村錦之助
(サメ)
ヴィン・ディーゼルあたりの悪顔がやったらよさそうです。



(1965)
3
2005年6月
井伊直弼の命を狙う水戸浪士星野監物たちは暗殺計画を実行に移したが井伊直弼は現れず計画は失敗に終わる。裏切り者として疑われたのは孤児だった新納鶴千代と温厚な栗原栄之助だったが・・・
仲代達矢の「斬る」系の楽しい感じの内容かと思っていたら、歴史の授業で習った桜田門外の変で井伊直弼が暗殺されるまでの内容でした。イメージしていたのと違ってかなり骨太でヘビーでした。
一回目の暗殺計画が失敗してどうやら井伊直弼の側室と姉妹の妻がいるから小林桂樹は怪しいし彼ともなかよしの三船敏郎も怪しいと二人は疑われ伊藤雄之助に小林桂樹を斬れと命令された三船はあっさり斬っちゃうんです。だけど突然真犯人が出てきてしまうのですが
間違って小林桂樹を斬ったのは仕方ないから先に進もうみたいな展開にちょっと取り残されてしまいました。
最後はもちろん井伊直弼の暗殺シーンで締めくくるのですがネタバレ→
ここで三船敏郎の孤児という設定が効いてきて三船敏郎は井伊直弼の息子だった。というオチで自分自身の手で井伊直弼の首をとるという結末、三船自身そんなことは知らないからおお喜びしながらの終わり方が戦慄でした。
この年代に作られた映画って「日本のいちばん長い日」もそうだったんですが結構大胆なことするなぁと毎回思います。
リーダーの伊藤雄之助はあの顔で非情なキャラクターだから恐さ倍増だし書記係に江原達怡とみんなはまっていたけど三船敏郎だけラストのオチを考えるとちょっと無理がありました。三船の役どころは加山雄三あたりがベストかなぁなんて思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三船敏郎
(新納鶴千代)
あの終わり方を見るとちょっとダークなホアキン・フェニックスあたりがいいかも。
伊藤雄之助
(星野監物)
異様な迫力と非情な雰囲気を持っているベン・キングスレーで。


サンダカン八番娼館 望郷
SANDAKAN 8
(1974)
4
2010年4月
女性史研究家の三谷圭子はからゆきさんと呼ばれる海外で売春婦をしていた女性の事を記事にするために天草にやってきた。そこで偶然サキという女性がからゆきさんだった事を知った圭子は素性を隠しサキに近づき・・・
貧しい家庭に生まれた少女が海外で売春婦として売られてしまった話を社会派監督の熊井啓が映画化。
フィクションかとおもっていたらノンフィクションということでこの映画だと北川サキという女性に焦点が当たっていますが他にもこうして何も知らずに海外に娼婦として売られて行った少女たちが沢山いたんですね。そう考えると今は本当に平和だなと思います。
物語は栗原小巻が田中絹代に話を聞きに行きやがて二人の間に親子のような感情が芽生えるパートと高橋洋子が演じるからゆきさん時代のパートに分かれているのですがどちらも力強くて見応えがありました。
ベルリン国際映画祭の女優賞を受賞した田中絹代の演技派さすがで、過去の辛すぎるからゆきさん時代の話を現代の栗原小巻に語る語り部的な役割はあるもののどちらかというと、栗原小巻に心許して楽しげに生活をしている姿がとても印象に残っています。
若い頃のサキを演じた高橋洋子という人は初めて知ったのですが、からゆきさんだけどサンダカンでであった青年との初恋と別れから日本に帰ってきてからの周囲の冷遇に対する絶望からくる狂気とかこの人も田中絹代に負けず劣らずエネルギッシュな嚥下でよかったです。
映画だと2時間観て終わりですけど、実際のからゆきさんたちは12,3歳くらいで売られて行ってようやく日本に帰ってきても苦労が報われる人もほとんどなく年老いていくというのを思うと色々と考えさせられました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
栗原小巻
(三谷圭子)
演技派のケイト・ブランシェットにお願いしたい。
高橋洋子
(北川サキ)
何でも演じるメリル・ストリープで。
田中絹代
(北川サキ/晩年)
勝気そうなエミリー・ブラントで。


秋刀魚の味
AN AUTUMN AFTERNOON
(1962)
4
2011年7月
平山周平の娘、路子は結婚適齢期に差し掛かっていたが、周平の世話をしなければと結婚する気はなく周平もそれはそれで嬉しかったのだが、恩師の娘が未婚のままのという姿を見てから考えが変わり始めて・・・
小津安二郎お得意の父娘もの。
カラーになったのと娘が原節子から岩下志麻に代わっただけで雰囲気が大分変りますね。岩下志麻の役が現代的かつツンデレっぽい雰囲気なのもあるのですが・・・
それにこの映画に出てくる女性人が結構強気なのも珍しいかなと思いました。長男の佐田啓二の奥さんの岡田茉莉子がズバズバと物申すので佐田啓二がちょっといじけてしまうところがかわいらしかったです。と脇のエピソードも気が利いていて面白のですが、笠智衆が恩師の家に行ったら娘が婚期を完全に逃してギスギスしていて、岩下志麻もこうなるんじゃないかと焦ってこっこんのことを考えるというところが笠智衆らしくてよかったです。それにしても行き遅れた娘が杉村春子というところもポイントですね。
岩下志麻の恋のお相手が吉田輝雄ってどうなの?と思いつつ吉田輝雄は佐田啓二に紹介された女性とあっさり結婚。岩下志麻まさかの失恋という展開が可哀そうです。でも最後は結婚するんですけどね。昔の結婚ってさっと決まってさっと式を挙げるみたいな時代だったんですね。
個人的にはバーのママ岸田今日子がいいなと思っていたら、この役で何か賞をとったみたいです。納得。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
笠智衆
(平山周平)
ちょっととぼけた感じのトニー・シャローブで。
岩下志麻
(平山路子)
ツンとした感じのキーラ・ナイトレーで。


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