日本映画

せ


清作の妻
(1965)
4
2005年2月
貧しい暮らしのお兼は村を出て老人の妾となるがその老人も死に遺産をもらい大金を手にしたお兼は村に帰るのだったが村人達は冷たかった。そんな中、村一番mの好青年清作が帰ってきて・・・
妾だった村の女が帰ってくるも村人には白い目で見られるも若尾文子はそんなことで泣くようなことは全くなく、むしろそれを承知で近所づきあいもせず一人ぼーっと毎日を過ごす日々でますます村人達に嫌われるという役どころがなんとも若尾文子らしと思います。
清作と恋仲になったお兼は生まれ変わったかのごとく村の行事に参加して彼女なりの努力をするんですよね。
そう、若尾文子はやはり金でも仕事でもなく愛が一番大切な女がよく似合う。その証拠に最初は嫌っていた小姑がラストお兼がとった行動を非難するどころか擁護するような発言をするんですよね。愛にストレートな行動がやがて人の心を動かすのです。ちょっとしたシーンだったのですが強く印象に残りました。
最後のお兼の行動はちらしに書いてあったあらすじ「愛する夫を戦争にやるまいと、妻はある恐ろしい行動に出る。」で想像がついたのですがこの映画は清作が最初、お兼を死ぬほど恨むけど数年後お兼が戻ってくる間にやはり愛しているのはお兼だけでネタバレ→
大げさかもしれないけど言ってみれば、お兼が全ての業を背負って清作とともに生きていく。←というその後が描かれているところがよかったです。
あんまり関係ないのですがこの映画に成田三樹夫が出ていて、彼が出てくるシーンだけなんか今までの雰囲気ががらっと変わってしまったような気がして良くも悪くも成田三樹夫も独特なオーラがあるんだなぁと痛感しました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(お兼)
村人に嫌われたくらいじゃへこたれなそうなケイト・ベッキンセールで。
田村高廣
(清作)
模範的青年という感じがするジム・カヴィーゼルで。


青春の殺人者
(1976)
3
2005年10月
斉木順は親から与えられたスナックを恋人のケイ子と経営をしていたが両親はケイ子との交際を反対していた。ある日実家に帰った順はケイ子のことで口論となり父親を殺してしまう。やがて母親も殺してしまい・・・
一応ジャンル的には水谷豊と原田美枝子の逃避行ものになるのでしょうか?これはいろいろな意味でパワフルですごかったです。
特にすごいのはやっぱり両親を殺ししまう前半なので、最初父親をカッとなって刺し殺してしまったところに母親の市原悦子が入ってきて若干取り乱すも子離れできずに溺愛しすぎているから一緒に死体処理を手伝う始末。しかも
エスカレートして市原悦子キャミソール姿で水谷豊に迫るからそりゃぁ殺されるわ!って展開が本当濃くって笑えました。
中盤以降は原田美枝子と死体のあった風呂場の掃除から始まって逃げるのか逃げないのかはっきりしない逃避行?っていう展開なのですが水谷豊って当時もう相当有名だったんですよねぇ。それなのに死体処理後に血を落とすシーンは全裸なのにはびびりました。確かに永島敏行も「サード」じゃ脱いでいたけどあんまり有名じゃなかったと思うし、女優のほうは原田美枝子も森下愛子も当然のように脱いでいるしこれもATG映画の醍醐味なんだろうなぁなんて思いました。
って話はそれましたけどこの映画もうひとつノレなかったのは何かにつけて原田美枝子が「順ちゃんなんでぇー。なんでなのよぅー。」と正直うんざりするほどのうざったさとテンションの高さが生理的に受け付けずもうちょっと「サード」の森下愛子なみのクールさがあればこの映画もきっとお気に入りになったんだろうなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
水谷豊
(斉木順)
マット・ディロンを若返らせたイメージで。
原田美枝子
(常世田ケイ子)
こちらもイメージ的には若き日のジェニファー・コネリーといった感じ。


関の彌太ッぺ
(1963)
4
2006年11月
祭りの晩に生き別れた妹探す旅を続ける彌太郎は道中お小夜という少女が溺れているところを救うがその父親に金をすられてしまう。しかしその父親も森介という渡世人に斬られてしまいお小夜を宿屋に連れて行くように頼まれるのだが・・・
中村錦之助らしい人情味溢れる股旅もの。
渡世人だから持ち金といえば博打と一宿一飯の恩義で稼いだ金なんですけどそんな金をこつこつ貯めて10年前に生き別れた妹と出会った時に嫁入りの足しにあるいは女郎にでもなっていた時は身受け料にでもという心意気がすでに錦之助節なんですけど、お小夜という娘を宿屋に預ける時にこの子のためにと全部預けて名も名乗らず去っていくところが観ている方もいい事したと感じてしまうくらいすがすがしかったです。
途中、妹が女郎屋で働いていると噂を聞きつけ早速女郎屋に向かうのですがそこで妹のことを知る女郎があたいを可愛がってくれたら教えてやるよと意地の悪いことを言うのが見た目がいかにも性格悪そうな岩崎加根子というのがナイスキャスティングで妹のこと本当に話しているんですけど最後まで信じられなかったです。
ネタバレ→
意外にも妹は病死して←それから10年後、美しく成長した十朱幸代は顔は覚えていないけど世話になったあの人に一目合いたいと縁談を断り続ける日々を送っているのですがひょんなことから錦之助の弟分になった木村功が嘘をついて十朱幸代に近づくというこいつもやっぱりダメな奴だったかぁ。そして十朱幸代も偽者って気がつけよという展開なんですが錦之助はその辺をさっしてケリをつけたりするのですが、そんなことより錦之助もやくざものに恨みを買うようなことをして追われる身になっているのですがやくざものたちも錦之助がやらなきゃいけない用事があると知ると「じゃあ後でここに来い。」とか言って行かせてあげるところは義理人情ってこういうことだよなと感心するのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
中村錦之助
(関の彌太郎)
渡世人とか意外に似合いそうなヒュー・ジャックマンで。
木村功
(箱田の森介)
結局裏切ったりダメな奴が似合うジャレッド・レトで。
十朱幸代
(お小夜)
いい子に育ったという感じのアン・ハサウェイで。


セクシー地帯(ライン)
(1961)
5
2003年12月
吉岡はある日部長から預かった盗まれた書類が盗まれたことが原因となって転勤をが決まってしまう。恋人の滝川玲子は転勤を取り消さなければ部長との関係をばらすと脅しをかける。実は彼女、秘密売春組織で働く女だったのだ。やがて彼女は遺体で発見され吉岡は警察に追われる身になるが、書類を盗んだ女スリ真弓と偶然出会い謎のクラブ「クロッキー・クラブ」の存在を突き止めるが・・・
吉田輝雄って1960年代の映画スターなのか?「吸血鬼ゴケミドロ」に続き主演の巻き込まれ型サスペンス。
吉田輝雄の真面目なんだけどちょっと間の抜けたキャラと三原葉子のすっとぼけた女スリのキャラクターの掛け合いがサスペンスのなかにユーモアを加えてくれて楽しかった。物語の方も「クロッキー・クラブ」が実は闇の高級売春組織という東京のアンダーグラウンド的な所や女スリがしょっちゅう警察のお世話になっているもんだから警察の人とも顔なじみなんて
もう今の時代でもそのまんま通用しそうな設定がいいですね。
この時代にもう地下鉄があることに驚きつつ、60年代のモダンというかレトロというかそんな東京が舞台だからどうか分りませんけど、吉田輝雄はちょっと物事が上手くいかないと「ちぇっ」と言って指パッチンしたり、三原葉子はお茶目さを強調したいのか常にぺロっと舌を出すんですよねペコちゃんみたいに。それに何でスリをするのかと聞かれ「この指が勝手に動いちゃうのよね。」と一指し指を曲げたりと今では考えられないしぐさが次々と出てきて素敵です。
極めつけは情報を聞くために吉田輝雄が呼び出した女がシャワーを浴びようとした時に言った台詞「私、バスをいただくわ。」もう耳を疑いましたよ。バスをいただくって・・・聞いたことないみたいな。いやーモダンという時代の流れを感じましたよ。
前々から噂に聞いてちょっと気になっていた三条魔子も見ることが出来てよかったし、娼婦役に池内淳子が出ていたりしていろいろ得した気分になりました。
この「セクシー地帯」はセクシーラインと呼ぶそうで、監督の石井輝男作品に「黄線地帯」「黒線地帯」「白線秘密地帯」とラインシリーズというもの(どれも秘密売春組織ものっていうところがなんとも言えません。)があるらしくこちらもぜひ観てみたいと思いました。
2回目のコメント
2005年11月
日本映画で2回目の感想は初めてで2年ぶりに観ました。「地帯」シリーズや他の秘密売春組織ものどれも面白かったんですがこの「セクシー地帯」は別格の面白さがあります。オープニングも初めて観たときもおしゃれだなと思ったのですが、英字で「Call Girl Sexy Line」ともよく見たら新聞の切り抜きにまぎれて書いてあったりして個人的には生涯のベスト10に入ると思います。
改めて観て女スリの三原葉子が初めてパクられた刑事の細川俊夫もよかったです。刑事の感で三原葉子がまたスリでもやるんじゃないかと最初つきまとったりするけど三原葉子はうまいこと撒いてしかもちゃかり警察手帳もすったりするその辺のコミカルなやりとりも好きです。しかも最後ピンチの時にはしっかり駆けつけてくれるところか細川俊夫って「黒線地帯」の天知茂のライバル記者もそうでしたけど一瞬顔はちょっと強面で主人公達をピンチに陥れそうなキャラなんですけど実際「黒線地帯」の時は天知茂にチャンスをあげるし、今回も三原葉子を心配しているところもあって実はいい人というところで細川俊夫は渋かっこいい人という印象が残りました。
それとやっぱり目を凝らして街の裏道などを見てみれば秘密売春組織へのサインはそこら辺にあるというところが一番興味深かったです。
「地帯」もの全5シリーズあるようなんですがこれ「地帯」ボックスとしてDVD発売されないかなぁと本気で思っています。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
吉田輝雄
(吉岡博司)
真面目でちょっと間の抜けた役は「フレンズ」でばっちりのデヴィッド・シュワイマーで。
三原葉子
(真弓)
一見スリには見えない、ちょっとふわっとしていてぽっちゃり系のレニー・ゼルウィガーで。
三条魔子
(滝川玲子)
魔性の女的役はやっぱりレベッカ・ローミン=ステイモスかな?


銭ゲバ
(1970)
3
2009年7月
幼い頃に貧乏ゆえに母親が病死してしまった風太郎は金のためなら何でもするようになっていた。ある日風太郎は兄丸j社長の車に体当たりし社長の元で働くことになり・・・
最近だと松山ケンイチがドラマでやっていましたが40年くらい前に既に実写化されています。
「世の中銭ズラ」という台詞が似合いすぎる唐十郎。オープニングから近寄りがたいオーラ全開で最初から最後まで観ていて居心地が悪かったのと同時にものすごくスカッとしないピカレスク・ロマンだなと思いました。
車に突っ込んで社長のところに住むことになった唐十郎は長女の緑魔子に一目惚れ。が緑魔子のものすごい高飛車な態度で手ごわすぎるので手始めに足が不自由な妹の横山リエに目をつけるのですが既に岸田森という婚約者がいたのでちょっとムカッとしたついでに岸田森の頭を灰皿でカチ割って殺害。岸田森のオーバーなのけぞりっぷりと噴出し過ぎの血しぶきがやりすぎです。
そんなこんなで殺人を重ねていきついには社長を殺して社長の座にまで付いた唐十郎ですが殺人の証拠を握った父親の加藤武が金の無心に来てさすがの唐十郎も焦ってしまいます。と加藤武のロクデナシ感もぴったりはまって銭ゲバの世界観は以前ちらっと読んだ漫画の雰囲気にそっくりで感心します。
銭ゲバに育ってしまった唐十郎が社長を務める工場でコウアイが発生するのですがそういったトラブルは金で解決すればいいと何でも金で解決できると思っているところがちょっと可哀想なのですがこういうキャラクターが生理的に合わないので観おわった後はただ後味の悪さが残る珍しいタイプの映画だなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
唐十郎
(蒲郡風太郎)
ニコラス・ケイジがものすごくはまりそうな気がします。


ゼロの焦点
ZERO FOCUS
(1961)
4
2009年11月
新婚七日目に禎子は仕事の引継ぎのため金沢へと立つ夫を見送るがその後、夫の憲一は消息を絶ってしまう。禎子は夫の消息を追い金沢に向かうが・・・
最近リメイクで話題のオリジナル版。
オリジナルでは広末涼子の役が久我美子、中谷美紀の役が高千穂ひづる、木村多江の役が有馬稲子という風になっていて、リメイク版も機会があったら観たいと思っているのでまずはオリジナル版から観ておこうと思って観ました。
魔が差す感じとか崖っぷちのシーンとか、犯人の不幸な過去とか松本清張らしいストーリー展開。
久我美子は新婚早々夫が行方不明ということで気の毒なのですが、それ以上に高千穂ひづると有馬稲子は時代の波に飲まれた感があって可哀想なんです。特に有馬稲子が。ものすごく英語が堪能だったりしてしかもそれが後に効いているところもすごくて出番に期待。と思ったら思った以上に出番が少なくて中々有馬稲子が出てこないのでやきもきするのですが、
有馬稲子ものすごいキーパーソンで哀しすぎる過去がよかったです。出番は少なくても印象に残るいいお手本だと思います。
男性陣も南原宏治を初め、南原宏治のお兄さん役の西村晃に高千穂ひづるの夫役の加藤嘉とか色々なタイプの可哀想な人オンパレードで悲壮感も最高潮です。もっとも切ないのは加藤嘉だと思います。そして西村晃はネタバレ→
死にっぷりが最高に上手くてさすがだなと思いました。
後半の謎解き部分が結構唐突だった気がするのですがサスペンスものとしてはよく出来ているなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
久我美子
(鵜原禎子)
絶好調のエイミー・アダムスで。
高千穂ひづる
(室田佐知子)
ケイト・ブランシェットに気高い感じでやってもらいたい。
有馬稲子
(田沼久子)
こういう役はナオミ・ワッツにやってもらいたい。


ゼロの焦点
ZERO FOCUS
(1961)
3
2009年12月
1961年版をリメイク。
オリジナルを観たときにも書いたのですが、オリジナルでは広末涼子の役が久我美子、中谷美紀の役が高千穂ひづる、木村多江の役が有馬稲子がメインで脇役は南原宏治が西島秀俊、西村晃が杉本哲太に加藤嘉が鹿賀丈史という布陣です。
オリジナル版と比べて40分位長いので結構違うんだろうなと思ったのですが、大きな流れは大体同じでした。
と言うことで今回は新旧の比較を中心に。
大きく違うところはネタバレ→
木村多江の死に方が違う。
中谷美紀の死に方も違う。
広末涼子のことをこれでもかと手伝っていた本田さんが殺されてしまう。


その他ネタバレないところでの違いはというと、鹿賀丈史の役がものすごい嫌な奴でこれはオリジナル版の加藤嘉が断然哀愁に満ちていてよかったです。それと初の女性市長を目指す黒田福美絡みのエピソードや中谷美紀の役に弟がいたりととにかく中谷美紀まわりのエピソードがボリュームアップしているのですが、
中谷美紀はっきり言ってメインの広末涼子を完全に食っていました。もう社長夫人で権力もあるという設定なのですがとにかく立ち振る舞いが舞台女優なみのテンション高さで出てきた時から目がくぎづけです。後半に進むにつれさらにテンションはアップしてクライマックスの目力も半端なくて広末涼子の夫探しはこの際置いておいて中谷美紀をもっと出して欲しい、もっとテンションの高い演技が見たいと思いました。
広末涼子はちょっと力不足かと思ったのですが、じゃあ代わりに誰がいるのかと言えば答えられないし、木村多江もこの不幸な役は想定内すぎて上手いのですが新鮮味がなく物足りなかったりして、日本映画でこういう役が出来る層が薄いんだなとつくづく感じました。そんな中、映画自体の出来はオリジナルの完勝なのですが、中谷美紀だけは別格なのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
(オリジナルを参照)


禅 ZEN
(2008)
2
2010年3月
道元の一生を描いた伝記映画。
以前予告編を観たときに何となく良さそうだなと思って観てみました。
中村勘太郎扮する道元が中国で修行をするオープニングで西村雅彦とか笹野高史が中国語を流暢にしゃべっていてすごくいい感じで始まったなぁと思っていたのですが、本編が始まっても一向に面白くならないんですよ。残念なことに。
道元が日本に帰ってきて教えを世間に広めるけれど色々辛い目にあったりしたり、内田有紀がロクデナシの旦那の哀川翔のために体を売っていたりと
面白くなりそうなエピソードがあって出演者はみんないい演技をしているのですがストーリーが流れていなくてぶつ切りなのが全くもって盛り上がらない一番の原因なんだと思います。
中村勘太郎はさすがに背筋もよく若いのの晩年まで演じきって丁寧だったしちゃんとしているなぁと思ったし、内田有紀も綺麗で存在感があって意外な役どころだtったけれどよかったし、哀川翔なんて嫁の内田有紀を子供もいるのに金づるとしか思っていない最低な旦那役を好演で今まで観てきた中で出番は少ないけれど一番いい演技している気がして配役もよかっただけに話に繋がりがなくいところがもったいなかったなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
中村勘太郎
(道元)
僧侶とかもいけそうなジェイク・ギレンホールで。
内田有紀
(おりん)
逞しいアンジェリーナ・ジョリーで。


千客万来
(1962)
3
2009年6月
山村聡と三宅邦子夫婦の長女、岩下志麻の結婚を中心に繰り広げられる恋のさや当て的な群像劇。
岩下志麻の叔父と叔母役の佐田啓二と岡田茉莉子が出演者の初めに来ていたのでてっきりこの二人が主役かと思っていたら出番が一番多かったのは岩下志麻とその旦那の川津祐介の結婚に至るまでを結婚後に酒癖の悪い川津祐介とケンカして仲直りみたいな話が中心だったように思えます。
岩下志麻は父親の山村聡の親友の伊藤雄之助の会社で働いているわけですが、その伊藤雄之助の奥さんが水戸光子、息子が調べるまで全く分からなかった若かりし頃の竹脇無我だったり、岩下志麻のよく行くてんぷら屋の息子のお母さんが沢村貞子にそのほかにも瑳峨三智子、高千穂ひづる、桑野みゆき、津川雅彦と出てくる出てくる有名俳優が大きい役小さい役ところ構わず。
内容云々よりこういった豪華な顔ぶれを眺めているだけで贅沢な気持ちになるところが昔の映画のいいところだと思います。それに昔の俳優は踊りも普通に踊れて、劇中の岡田茉莉子は多彩で多忙(執筆活動をしている)で踊りの名取になって舞台が控えているということになっているのですがちゃんと本人が踊っているところが素敵だなと思います。佐田啓二はそんな岡田茉莉子と日によって家事を交代するという当時としては珍しい夫像なのですが人がよさそうなのでこういう役もよく似合うしこのいい人キャラをじっくり観ていたらただでさえ似ているトニー・レオンにますます似ていると思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
佐田啓二
(番取良介)
ここはトニー・レオンで。
岡田茉莉子
(香取アヤ)
気の強そうなコン・リーで。


戦国自衛隊
G.I. SAMURAI

(1979)
4
2005年1月
隊長の伊庭義明が率いる自衛隊一行は演習地に向かう途中にふと気がつくとそこで侍のような格好の男達に襲われるのだが彼らは戦国時代にタイムスリップしていたのだった・・・
自衛隊が戦国時代にタイムスリップするというとんでもない設定なんですけど千葉真一が主役だから違和感がなくってさすが千葉ちゃんだなぁなんて思いました。
前半、千葉ちゃん達自衛隊になにかと興味をもって親しくなる長尾景虎役の夏八木勲のファーストコンタクトはおかしくってたまりません。戦車がサイレン鳴らしたのを聞いて「この鉄の馬め、泣いておるわ。」と言っては笑いヘリコプターに笑いなんでも大笑いで気が狂っているとしか思えないほどのテンションの高さ。このテンションの高さはいつもの千葉ちゃんの役どころじゃないか?じゃあ千葉ちゃんはというと藤岡弘ばりのトーンで「陸上自衛隊の伊庭義明です。」なんて自己紹介しちゃうし二人で一緒に機関銃の試し打ちするシーンで流れるBGMはなんて軽やかで平和なことか。大喜びする夏八木勲にさすがの千葉ちゃんも一本とられたという表情。しかも
大親友になった二人は着ているものを交換して砂丘を馬で仲良く走っちゃってこれは笑っちゃいけないんだろうけど笑っちゃいましたよ。さすが角川映画です。
そんな二人のおもしろエピソードの間に渡瀬恒彦が千葉ちゃんにいろいろと反抗的な態度をとってくるエピソードが入ってくるんですけどやっぱり渡瀬恒彦はこういった反逆児的な役をやらせると上手いです。
で後半武田信玄を倒すエピソードに入ると一転血生臭くなるから驚きです。千葉ちゃんも景虎みたいにおかしくなっちゃって「わしは天下を取る!」なんて駄々こねだすから仲間もちょっと困り顔。でもこれが本来の千葉ちゃんのあるべき姿でホッと一安心。最後はちょっと苦い終わり方だけど今度はもう一度映画館の大スクリーンで観たいなと思うのでありました。
関係ないけどにしきのあきらは死んだと思ったら結構しぶとく生き抜いてさすがスターだと思いました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
千葉真一
(伊庭義明)
スティーブン・セガールはこううとんでも系の作品にぴったりな予感。
夏八木勲
(長尾景虎)
結構とんでもない作品に出ているジョン・トラボルタで。
渡瀬恒彦
(矢野隼人)
血の気が多く反抗的なイメージのヴァンサン・カッセルで。


戦国野郎
(1963)
5
2005年6月
武田の忍者達に次々と狙われながらも強敵、雀の三郎左を倒した忍者の越智吉丹。そんな越智吉丹は武士に進められ馬借になるのだったがその武士こそ後に豊臣秀吉として有名になる木下藤吉郎だった。
オープニングでいきなり雀の三郎左こと中丸忠雄が加山雄三に倒され火山に転落していったので、えー中丸忠雄もう見られないのかぁ。とテンション下がりつつ中丸忠雄をあっさり殺す贅沢さもありといったらありかなぁととちょっと残念に思いながらも自分を納得させて鑑賞していたらちゃんと生きていました中丸忠雄。これで一安心・・・って安心するところ違いますか。やっぱりあれしきのことで死ぬわけないですよ。なんってったって手足れの忍者(いや刺客と言ったほうがいいかもしれない)なのですから。
この映画、一国一城の主の夢を抱いた忍者の加山雄三が佐藤允扮する木下藤吉郎に上手いこと利用されて世間の厳しさとズルさを学ぶみたいな内容でしたがとにかく痛快で楽しかったです。
特に中谷一郎がやっぱりいい味を出していました。最初、中谷一郎も加山雄三の命を狙っていたのですが、このまま戦ったら負けそうだからと仲間になっちゃう。この姿勢が人間らしいといったら大げさですけど武士道とか刺客道より自分の意思を優先するところがいいなぁと思いました。
馬借の娘の星由里子と藤吉郎に騙されて仕返しにくる海賊姫の水野久美の女同士の睨みあいも楽しかったけど中谷一郎この海賊姫と一緒になっちゃうお気楽さ。だけど最後の加山雄三の
絶対絶命のピンチにはしっかり助けに来てくれるしこの映画で中谷一郎の風車の弥七像の原点を見たのでした。
佐藤允の木下藤吉郎はイメージぴったりだったしキャラクターのイメージがみんなぴたりとはまると面白さも倍増するといういい例です。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
加山雄三
(越智吉丹)
ダークサイドに堕ちる前のヘイデン・クリステンセンあたりを。
中谷一郎
(銅子播磨)
ここぞという時に助けてくれそうなジョージ・クルーニーで。
佐藤允
(木下藤吉郎)
ここは猿系のマーク・ウォルバーグで。
中丸忠雄
(雀の三郎左)
イメージはやっぱりショーン・ビーン


戦後猟奇犯罪史
(1976)
4
2007年10月
凶悪事件をワイドショーの再現ドラマ形式で見せるオムニバス作品。
レポーターは泉ピン子なんですけどピン子の下世話な語り口調がこの手の事件にマッチしていてなかなかよかったです。
・日本縦断、詐欺、殺人事件
室田日出男が女ったらしの連続殺人犯を怪演しています。床屋の未亡人に金をせがまれ強盗殺人を犯して律儀に未亡人に金を渡して日本中を逃避行という感じの話ですが
あの脂ギッシュな雰囲気でなぜか女にモテモテというところが笑えます。なんと言うか精力がみなぎっていますというところが室田日出男がモテモテの理由でしょうか?最後は10歳の女の子の通報で逮捕されるのすが少女には室田日出男の魅力は通用しなかったのである・・・みたいなオチが笑えました。
殺した人数、計5人。
・K歌手、空港死体遺棄事件
かつて一世を風靡した落ち目の歌手にカムバックのチャンスがくるが愛人のトルコ嬢だったから別れる別れないのケンカで思わず殺してしまったという内容。これ内容が10分あるかないかで無理やり入れ込んだみたいで箸休め的なエピソードです。
・連続強姦殺人事件
川谷拓三が女学生ばかりを言葉巧みに車に誘い込み山奥に連れ込み抵抗されたら犯して殺すという内容なのですが川谷拓三が強烈すぎて引きます。見るからに怪しくてそんな川谷拓三について行くほうも問題あると思うのですが面白くなるのは逮捕されてから。
警察の取調べに対して無駄に法律の知識があるから警察を煙に巻くのですがそれがまた憎々しいこと。観ていてイライラするのですが愛嬌のある川谷拓三なんで10パーセントくらいは憎めないんですよね。
結局殺した人数、計12人。事件もキャラも最後のエピソードが一番濃かったです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
泉ピン子
(レポーター)
辛らつな口調のトレイシー・ウルマンで。
室田日出男
(西本明)
ギラギラした感じのラッセル・クロウで。
五十嵐義弘
(風見のぼる)
情けない感じの役はビル・パクストンにお願いしたい。
川谷拓三
(久保清一)
情緒不安定な役をやったらピカイチのジョヴァンニ・リビシで。


戦争と人間 第一部 運命の序曲
MEN AND WAR
(1970)
3
2007年8月
昭和三年から第二次世界大戦開戦前までに突入するまでの戦争に翻弄される人々の姿を描いた大河ドラマ。
第一部は戦争に突入する前の五代家と満州の五代産業を取り巻く人々の姿を描いている感じでしょうか?とりあえずスケールが大きすぎて話についてくより登場人物を把握するのも大変でした。
日本の五代家だけでも家長の滝沢修と長男の高橋悦史が商売の方向性で対立し、次男の中村勘九郎が一般市民の苦しい生活を目の当たりにして苦悩し始めたり、長女の浅丘ルリ子も実直すぎて軍から煙たがられている高橋英樹との恋愛エピソードありと盛りだくさん。
個人的には満州のエピソードが好きで、滝沢修の実弟の芦田伸介が兄とは違って積極的に軍を利用して飛躍的に五代産業は経済的に発展していくわけですがそんなやり方を快く思っていない高橋幸治が妻の松原智恵子が誘拐され死んでしまった時にこの自己中心的に成長を続ける五代産業の行く末を見届けてやろうという密かに心決めるところなんかは第一部では一、二を争うドラマチックな展開でした。そんな高橋幸治とは対照的に芦田伸介に忠実な右腕的な存在の三國連太郎は平気で暗殺まがいなこともしたりして、
当時こういった金に物を言わせて軍に取り入り私腹を肥やしている財閥があってそういうことが平然と行われていたかと思うとがとても興味深かったです。
第一部は死なないだろうと思っていた人たちが次々と死んでいき死ぬだろうと思っていた人が生き残る意外な展開だったのですがそういったことっも含めて大河ドラマの序章に過ぎないと思うと改めてこの映画の結末はどうなるのだろうかと興味津々にならずにはいられないのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
滝沢修
(五代由介)
先のことをしっかり考えていそうなイアン・マッケランで。
芦田伸介
(五代喬介)
悪そうな顔つきのクリストファー・ウォーケンで。
高橋悦史
(五代英介)
意外と野心的な正確そうなクライヴ・オーウェンで。
浅丘ルリ子
(五代由紀子)
顔の濃いところでアンジェリーナ・ジョリーあたりで。


戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河
MEN AND WAR, PART II
(1971)
4
2007年8月
成長した伍代俊介とその妹、順子を中心に本格的に戦争に突入していこうとする日本の姿を描いた第二部。
いきなり北大路欣也と吉永小百合が普通に出てきて誰だっけ?と思ったら五代家の末娘と次男の中村勘九郎が成長したのが二人でした。第一部では色々なエピソードが多すぎて登場人物を把握するだけでも大変でしたが今回は一通り人物も把握しているのですんなり話しに入っていくことが出来ました。
戦争を食い物に私腹を肥やす五代家の姿に疑問を抱く北大路欣也とその親友の山本圭に密かに恋心を抱く吉永小百合については完結編で感想を書くことにして、今回は時代に翻弄された女性キャラクターについて感想を書いてみたいと思います。
高橋悦史に犯された栗原小巻は排日運動に参加し様々な工作活動に手を染めていくのですが日本軍に逮捕されるのも時間の問題というところで謎の女情報屋の岸田今日子が暗躍して栗原小巻を助けるシーンはスリリング。岸田今日子の役は情報で儲けているようで五代家の芦田伸介との愛人関係的なつながりがあって何故、栗原小巻を助けたのかは結局最後まで明らかにされなかったのですが
岸田今日子独特の雰囲気がミステリアス度に拍車をかけていて彼女が出てくるシーンはやっぱり面白かったです。
高橋悦史に捨てられた婚約者の佐久間良子は仕方なく別の男(西村晃)と結婚するも北大路欣也と不倫関係になっていていつかは離婚したいと思っているけれどそれをネタに西村晃は五代家から金を巻き上げる腹黒いところもあり結局悲恋に終わってしまい、失意の北大路欣也はあれほど嫌っていた五代産業に務めざるおえない状況になって物語りは完結編へと続きます。
個人的には人権などの問題も織り交ぜ最も内容が充実していた第二部が一番好きです。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
栗原小巻
(趙瑞芳)
政治活動とかを行う役もいけそうなケイト・ウィンスレットで。
岸田今日子
(鴻珊子)
見るからにミステリアスというより怪しげなシェールで。
佐久間良子
(狩野温子)
幸薄系のジェニファー・コネリーあたりで。


戦争と人間 第三部 完結篇
MEN AND WAR, PART III
(1973)
4
2007年8月
反日的な行為をしたとして軍の優遇を受けていた伍代俊介は戦地に送り出されてしまう。一方妹の順子は俊介の親友で反戦運動を行う標耕平と密かに結婚をするが標も戦地へとしまい・・・
戦争大河ドラマもこれにて完結の第三部。
北大路欣也は佐久間良子との恋に敗れたその後、反戦運動の画家に頼まれ身売りされそうになった農家の娘、夏順子を五代家の女中に雇い入れ自分は満州に行くのですが夏順子もついてきてしまって結局微妙なれない状態に。北大路欣也は案外恋多き男だったりもします。
吉永小百合も山本圭と結婚し五代家を勘当されるのですが戦争で親を失った子供達のために慈善活動に身を投じた精神的にも強くなっていき憲兵に殴られても気丈にふるまうシーンなんかは正しい吉永小百合像という感じがして
吉永小百合が出ている映画は意外にも初めて観たのですがこういう役が似合うからきっと人気があるんだろうなぁと感じました。
相手役の山本圭は見た目がちょっと地味だなと思ったのですが役どころとしては一番共感しやすいキャラクターで初年兵仲間でおちこぼれがいてかばっているうちに先輩兵から半殺しのようなリンチにあって戦争映画の下っ端の兵隊によくあるシーンですけどいったい無理やり戦争に連れてこられて仲間同士で何をやっているんだろうか何のための戦争なのだろうかといつも考えさせられます。
話の決着はノモハンの戦闘でロシアに壊滅的な敗北をして、日独伊が手を組みいよいよ第二次世界大戦に突入というところで終わるのですが五代産業がどうなったのか?生き残って中国人に助けられた山本圭はその後どうなったのかなど全てが投げっぱなしで終わるところが逆にもっと戦争について色々と知りたくなる感じがして社会派の山本薩夫らしいなと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
北大路欣也
(伍代俊介)
ここのところ社会派になっているレオナルド・ディカプリオで。
吉永小百合
(伍代順子)
献身的な役が似合いそうなブライス・ダラス・ハワードで。
山本圭
(標耕平)
ジャレット・レトあたりにお願いしたい。


戦争と平和
BETWEEN WAR AND PEACE
(1947)
3
2007年11月
中国で健一が戦死したと連絡を受けた妻の町子は戦地で傷を負った健一の親友、康吉と結婚するがやがて死んだと思っていた健一が帰ってきて・・・
山本薩夫監督が中国から復員してからの記念すべき第一作目。
町子は健一との間の子供がいるけれど健一が戦死したと思って康吉と結婚。子供も康吉が自分の父親だと信じているから健一が5年ぶりくらいに帰ってきたときにも康吉の友達と見られておじさんなんて呼ばれてしまって本当のことをいうことを諦めつせつなさ。
康吉は戦争で負った心の傷がやがて酷くなって発狂してしまいその日の食料はどうするの?という状態で精神の状態がやっと戻ったと思っても職にありつけず安易にやくざな仕事へ手を出してしまうという
エンターテインメントな感じはしなかったけれど戦中から戦後にかけていかに一般の人が暮らしていくことの大変さを描いていたりして戦争の重さを感じる作品でした。
主演は「青い山脈」の池部良と伊豆肇コンビで「青い山脈」の時は池部良もよかったのですが伊豆肇がなかなかいい味わいを出していたのがものすごく印象に残っていたのでこの映画で実質上主役だったのが個人的にはよかったです。
最後も希望を持たせた終わり方が今まで観てきた山本薩夫作品とは違いましたけどこの作品ばかりはこういう終わり方でよかったと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
伊豆肇
(小柴健一)
いい人という役が定着しているマット・デイモンで。
岸旗江
(町子)
逆境に強そうなケイト・ウィンスレットで。
池部良
(伍東康吉)
発狂したりする役を狙っていそうなレオナルド・ディカプリオで。


千羽鶴
(1953)
4
2009年6月
後の増村保造監督によってリメイクされた吉村公三郎監督作品。
以前観た増村版と内容はほとんど同じでした。配役としては若尾文子の役を木暮実千代。京マチ子の役を杉村春子に平幹二郎の役を森雅之といった感じでオマケにリメイク版ではもうひとつ影の薄かった太田夫人の娘役をオリジナルでは乙羽信子と
役者の層としては若尾文子も京マチ子も好きなのですがこのオリジナル版の方が上だなと感じました。
個人的にリメイク版の方がよかったなと感じたのは森雅之ではなくて平幹二郎の方が何となく年上の女性に愛されるキャラとしてしっくり来ていたと思いました。
木暮実千代はもちろん愛人の息子の森雅之が大好きなのでよろめき演技で若尾文子と同じように大好きオーラを出しまくっていますが若尾文子のよろめきよりあっさりしていつつもちゃんと甘えている感が伝わってきてさすがだなと思いました。杉村春子も最初は木暮実千代のことをとるに足らない存在で見下した幹事で見ていたのですが、邪魔をすればするほど二人は急接近するし、森雅之にも煙たがられて結構可哀想なキャラクターなのですが、後半どんどん嫉妬していく姿は怖いです。回想シーンで木暮実千代の家に襲いに行くというところも狂気の沙汰という感じで強烈でした。後半の訃報を聞いての高笑いや茶碗を庭の石に叩きつけて壊すシーンなど後半に行けば行くほど恐ろしくなっていく杉村春子は本当に何をやっても様になると思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
木暮実千代
(太田夫人)
ジュリアン・ムーアにお願いしたい。
森雅之
(三谷菊治)
お坊ちゃまという感じのするエリック・バナで。
杉村春子
(栗本ちか子)
敵に回すと怖いであろうメリル・ストリープで。
乙羽信子
(太田文子)
真面目と言う感じのクレア・デーンズで。


千羽鶴
THOUSAND CRANES
(1969)
4
2006年10月
生前の父の愛人、栗本ちか子に茶会に呼ばれた三谷菊治は訪ねるがそこには母よりもちか子よりも愛した愛人の太田夫人と娘も来ていた。やがて菊治と太田夫人はたびたび会うようになるのだがちか子はそれを許さず・・・
若尾文子が増村保造監督最後のコンビとなった作品。
お茶の先生の父(船越英二)の愛人二人がその息子をめぐって争うというより生前に捨てられた京マチ子が若尾文子をいじめ抜くといった感じの内容で改めてこの二人が共演している作品はライバル関係になってるものが多い印象を受けました。
若尾文子は一人息子の平幹二朗を亡くなった船越英二と重ね合わせて常に泣きっぱなしという状況なのですがそこはさすが若尾文子、おえつ交じりで平幹二朗に会いたくてたまんないという雰囲気を見事にかもし出しているしそれが艶っぽかったです。
そんな若尾文子を寝取られたもう一人の愛人京マチ子の恐ろしいこと。まず胸にこぶし大のアザがありそれが衝撃的。そしてそれが元でふられたと思い込んでいて何かと若尾文子に陰湿な罠を仕掛けるのですが
やっぱり京マチ子は敵に回すと怖いです。
何かと平幹二朗の世話を焼くのですがいくら悪態をつかれても「はいはい、私はいつでも悪者ですよ。」と友近のおばさんコントに出てきそうなキャラで悪びれるところがないのがよりいっそう質が悪いです。そんな京マチ子にクールに接する平幹二朗はカッコよかったです。
ネタバレ→
若尾文子は自殺してしまうのですが、←これを観て若尾×増村の最終作というのも実感したし、当時36歳という女優としての難しいところとで1970年代に入ると日本映画も衰退し出演作品もぐっと減って、若尾文子と日本映画は一心同体だった気がしたのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
京マチ子
(栗本ちか子)
やり手という感じのジュディ・デイヴィスで。
若尾文子
(太田夫人)
こういう不幸な女はやっぱりナオミ・ワッツです。
平幹二朗
(三谷菊治)
ジェイク・ギレンホールあたりにやってもらいたい。


千姫と秀頼
(1962)
3
2005年6月
徳川家から豊臣家に嫁いだ千姫だったが徳川家によって大阪城は落城し千姫は徳川の手によって救出されるのだが・・・
千姫の不運な人生を綴った歴史大作。
タイトルが「千姫と秀頼」となっていたので美空ひばりと中村錦之助がずーっと出ずっぱりなのかと思っていたら千姫メイン。そりゃそうです。序盤で大阪城が落城して秀頼は自決してしまいますから。落城してから千姫は秀頼の事をずーっと想っているのでこういうタイトルになったんだなぁと思いました。
千姫は政略結婚で豊臣家に嫁いで豊臣家の人間に白い目で見られながらも秀頼だけは本当に愛していて、それでいて秀頼は死んでしまい徳川家に戻ってきてまた政略結婚させられてしまい(本多の家に嫁ぐも体を一度も許さなかったというエピソードもすごい)祖父の家康を恨むという難しい役どころでこれどうなんだろうと思ったのですが、
美空ひばりは姫っぽくもなくおかしな話ですがひばりっぽくないんですけどしっかり演技が出来ていて感心を通り越してびっくりしました。
千姫は徳川の威厳を落とそうと罪のない町人を斬ったりして横暴な振る舞いをして町の人からも気がおかしくなったんじゃないかと思われて千姫の味方も徐々に減っていき、最後は家康と父の秀忠も斬ろうとする。ここでようやく家康は自分の過ちに気がつき、千姫は尼になるのですが数奇な運命とはこういうことですね。
大阪城で助け出されなければ歴史はまた大きく変わっていたんだと考えると歴史って不思議だなぁと感じるのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
美空ひばり
(千姫)
不幸な女をやらせたら右に出るものはいないんじゃないかというナオミ・ワッツで。
中村錦之助
(豊臣秀頼)
秀頼というキャラクターは「トロイ」のエリック・バナ的な印象でした。


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