日本映画

そ


狙撃
SUN ABOVE, DEATH BELOW
(1968)
3
2008年3月
狙撃を専門とする殺し屋の松下はある日金塊強奪の依頼を受け見事に成功する。しかし松下のもとに殺し屋の片倉が送り込まれてきて恋人の章子ともども狙われてしまい・・・
加山雄三がストイックな殺し屋に扮したサスペンス。
無口でクールな殺し屋が主人公なのですがこれがどうも加山雄三がやるキャラクターじゃないのでミスキャストに感じてしまいました。相手役の浅丘ルリ子はちょっと気取ったモデルなのでいままでちやほやされてきたのに偶然であった加山雄三に冷たくあしらわれて逆に興味持っちゃった感じの役どころで奔放で高飛車なところが浅丘ルリ子らしくて「銀座の恋の物語」の時は今の面影はなく清純派という感じでしたがこの映画のときはもう既に目がでかくて今の浅丘ルリ子になっていて、いつ浅丘ルリ子が完成されたのか非常に気になりました。
中盤から登場する加山雄三を狙うベテランの凄腕の殺し屋が森雅之なのですがこれがほとんど何もしゃべらずに容赦なく狙い撃ちしていくところがクールでよかったです。完全に加山雄三を食っていましたし最後の決闘なんて砂浜で走っています。
森雅之のダッシュシーンを観ることが出来ただけでも得した気分です。
あと加山雄三に銃の手入れやいろいろ手助けしてくれるの大学時代の同級生で友人に岸田森も出ているのですがこれもいい味出していました。いっそのことキャラクター的には二人が入れ替わった方がよっぽどいいなぁと感じるのでした。
あと浅丘ルリ子と加山雄三がガングロメイクしてニューギニアダンスを踊るシーンは意味不明でした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
加山雄三
(松下徹)
「ザ・シューター」なマーク・ウォルバーグで。
浅丘ルリ子
(小高章子)
こういうキャラはラテン系のジェニファー・ロペスにお願いしたい。
森雅之
(片倉譲二)
非情な印象のテレス・スタンプで。


組織暴力 流血の抗争
(1971)
3
2006年8月
秋庭一家の手塚が刑務所に入っている間に秋庭一家には誠心会が志村組には宇田川組がついて平和だった街は一触即発の事態になりついに秋庭一家の親分が殺されてしまい・・・
内容は観た感じ「反逆のメロディー」と同じひとつの街で何とか丸く治まっていた二つの暴力団にそれぞれ外から新興勢力が手を出してきてお互いのリーダーが手を組み新興勢力をやっつけるという印象なんですけどこの「流血の抗争」は個人的にもうひとつ。
やっぱり宍戸錠が尾崎紀世彦ばりのもみ上げを蓄えても暴力団という設定がなんか違うんだよなぁと思ってしまうのが致命的。梶芽衣子との恋人関係もどうもピンとこないんですよねぇ。それに藤竜也が宍戸錠のことを兄貴と呼ぶのも違和感ありあした。
ライバルの暴力団のリーダー佐藤允は70年代になると貫禄をましてよかったんですけどね。
最後は「反逆のメロディー」と同じで藤竜也と二人っきりで敵の本拠地に殴りこみ。一回殴りこむ前に支部で一暴れしていて藤竜也なんて腹を刺されて血の気が引いて、移動中も「兄貴、寒くないっすか・・・」なんて死期が迫っているのに敵の本拠地じゃしっかりボスの手下を何人も倒して驚異的。
最終的に頼りになって敵にしたくない男といったら藤竜也です。
誠心会にだまされて秋庭一家どころか志村組までボロボロにしてしまうきっかけととなる情けない若い衆の沖雅也はまさに70年代の劇団ひとりといった感じで日活のニューアクションを観る時にはちょっと注目してみようかと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
宍戸錠
(手塚直人)
ヴィゴ・モーテンセンあたりがやったら様になりそうで。
佐藤允
(吉永博)
兄貴と呼びたくなる感じのマット・ディロンで。
藤竜也
(小沢浩次)
「反逆のメロディー」と同様ラッセル・クロウで。


曽根崎心中
(1978)
5
2005年10月
醤油屋の徳兵衛は主人の久右衛門から縁談の話を持ちかけられたが遊女のお初と恋仲のため縁談を断った。久右衛門の怒りを買った徳兵衛は最後の仕事を期にクビになるがその帰り道店の金を油屋の九平次に期限付きで貸すのだが・・・
ずーっと観たくてビデオをレンタルしようか迷っていたらちょうど新文芸座で上映されるということで行ってきました。最初、徳さまこと宇崎竜童の演技にずっこけそうになって特に序盤の継母に金を返してもらいに嘆願するシーンなんて相手が左幸子なものだから演技の差が歴然としちゃっていて観ていられないという気持ちになったのですが梶芽衣子が本格的に登場してきてから一気に面白くなってくるというかこれは映画を観ているというか舞台や演劇を観ているといった感覚が近くてそれに気がついたときに一気に面白くなりました。
面白いというよりかは徳さまのキャラがいちいち突っ込みをいれたくなるようなことしてくれるのがツボなんですよね。見るからに親友といいつつ悪そうな顔つきの九平次に仕事で集金してきた金をあっさり貸すし、騙されたと知って九平次に喧嘩を挑むもあっさり負けるわ、最後も梶芽衣子の店の縁の下で隠れているだけですよ。ネタバレ→
しかも最後の心中シーンも一気に殺してあげれば楽なものの急所はずしまくってさすがの梶芽衣子も「一思いにやってください。」的な事を言われる始末。←徳さまの情けないけどがんばっているなぁというキャラは嫌いじゃないです。
九平次も「バットマン」に出てきそうな典型的すぎる悪役像に次はとんな仕打ちを徳さまにするのだろうか?とワクワクしましたから。
金返せと迫られたら「金なんて借りてねぇよ。親友の俺をゆする気かぁ?」ってたちの悪いことを言うのは序の口でその後、徳さまボッコボコですから九平次おっかないです。最後なんて徳さまをはめたことが明るみに出たときに開き直って「バレちまったものはしょうがない。逃げたりなんかしねぇよ。」と本性を出したかと思うと「ぶわっはっはっは!」ともろ悪役笑いをしてくれてここまで徹底してくれると心底楽しいです。
今まで梶芽衣子作品は10数本観ましたが今回の「曽根崎心中」は役どころといい、ビジュアルとといい最高です。といっても今まで観てきた梶芽衣子物って「野良猫ロック」か「女囚さそり」のシリーズものが半分以上を占めていて確かにカッコいいんですけどどれも設定がどれも普通じゃないという感じでしたが、今回遊女役ですけど初めてまともで?ドラマチックな作品の梶芽衣子は新鮮でした。やっぱり監督が女性を描いたら天下一の増村保造監督だからかなぁなんて思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
(掲示板にも書きましたが「シン・シティ」のキャラで)
梶芽衣子
(お初)
一番綺麗だったゴールディで。
宇崎竜童
(徳兵衛)
もちろん活躍していそうでたいしたことしていないドワイトで。
井川比佐志
(久右衛門)
腕っ節の強いハーティガンで。
橋本功
(九平次)
もろ悪役のイエロー・バスタードで。


その木戸を通って
FUSA
(1993)
3
2010年3月
城代家老の娘との結婚も決まった平松正四郎の元にある日、見知らぬ娘が訪ねて来ていると連絡が入る。その娘と会った正四郎だったが見覚えもなく娘も記憶を失っているようで、ふさと名づけ仕方なく面倒をみることになるのだが・・・
市川崑監督作品なのですが、何でもハイビジョンドラマとして制作されて1度だけ放送されたようなのですが、最近劇場公開したので一応、映画扱いで感想を書きます。
浅野ゆう子この頃って多分そうとう売れっ子だったんじゃないですかね。トレンディドラマで。なのにこういうジャンルの映画に出て演技力を磨いているところが偉いと思いました。(という勝手な想像)当時絶好調の石田純一と比べると今の俳優とのさが歴然ですもの。
そしてやっぱり浅野ゆう子が若くて時代を感じました。
さらにこのドラマと言うか映画と言っていいのか、脇役がフランキー堺に井川比佐志、岸田今日子、神山繁という日本映画全盛期の一対が出ていて豪華だし、そのほかにも石坂浩二に榎木孝明とかも出ているのですがものすごいちょい役で光石研が出ていたのがちょっと感動しました。
話はこれという大事件が起きるわけでもなく坦々と二人の時間がメインで過ぎていくのでドラマチックではなくむしろ眠くなってしまったので何かもっとハッとする展開があったほうが個人的にはよかったなぁと思うでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
浅野ゆう子
(ふさ)
イメージは若い頃のジェニファー・コネリーという感じで。
中井貴一
(平松正四郎)
時代劇もいけそうな気もするヒュー・ジャックマンで。


その夜の妻
THAT NIGHT'S WIFE

(1930)
4
2004年5月
深夜のとあるオフィスに一人の強盗が入り金を盗んで逃走した。すぐに非常線が張られ強盗の周二は逃げ場を失う。一方そのころ妻のまゆみは娘のみち子の病の看病をして周二の帰りを待っていてた。周二は娘の治療費のために強盗したのだ。逃げ場を失った周二の前に一台のタクシーが停まっていてなんとかまゆみの元に帰る事ができたのだがしばらくしてドアをノックする音が聞こえた。その人物はタクシーの運転手だったが実は周二を追っていた刑事で・・・
原作「九時から九時まで」というものを映画化した小津安二郎監督のサイレント映画。冒頭の周二がビルの合間を必死に隠れながら逃走するシーンでまたもやモダンな建造物の登場に改めて小津監督のモダンな心意気を見た。(周二の職業も画家で家の様子は画材やモダンな作品が飾られていてどこか西洋のアパートメント風でおしゃれなのだ)
話はほとんどというか冒頭以外全て周二のアパートでの展開なので結構圧迫感があってスリリング。妻まゆみの気分になって観てしまった。なんてったって家に強引に入ってきた刑事(しかもゴリラのような強面)を拳銃で脅して刑事の銃を取り上げちゃうんですからね、いやぁ家庭を守る主婦の火事場の馬鹿力的なものを見て唸ってしまった。
結局強面刑事の取り計らいで娘の峠が越える今晩だけはって計らいがあり一家は最後の一夜を過ごす展開になるんですが、
今夜死ぬかもしれない娘がやたらと元気というかわがままなこと。周二が隠れているのに「お父ちゃんは?」と散々泣く始末に頼むから静かにしていてくれよとストレスを感じてしまった。無垢な子供も時に残酷なのです。
ラストネタバレ→
家族愛を見た刑事は周二が逃げるのを見逃してやるのだが、周二の中の良心がそれを許さず戻ってきて自ら捕まっちゃうんですよね、罪を償わなければとか言って。そんな捕まったら妻子の生活はどうなるのだろう?個人的には家庭をとって自分の罪を背負って生きていくという←ほろ苦い展開もありだと思ったけど、そこが自分と小津監督の良心の違いなんだなぁと思うのでありました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
岡田時彦
(橋爪周二)
ちょぴり頼りなさげなところがジョン・キューザックで。
八雲恵美子
(妻まゆみ)
芯が強そうな母親像のイメージがあるケイト・ブランシェットで。
山本冬郷
(刑事香川)
人情味溢れる刑事がはまるモーガン・フリーマンで。


その夜は忘れない
(1962)
3
2005年4月
週刊誌の記者の加宮恭介は戦後十七年経った広島に新しい原爆の傷痕を求めやってきたが特にこれといったものは見つからず諦めかけていたところをバーのマダム秋子を紹介され二人は親しくなるが彼女にはある秘密があった・・・
若尾文子と田宮二郎の悲恋もの。
戦後十七年経って新しい新しい傷痕を記事にしようと躍起になる記者と週刊誌に興味本位に書かれることを嫌う年老いた被爆者や逆に被爆したからってどうなの?と言わんばかりにあっけらかんとしている若い被爆者など前半は世代によってそれぞれ原爆に対する感じ方の違が興味深いというかいつの時代もジェネレーションギャップは付いてまわるものだなと思いました。
若尾文子は始まった段階で実は被爆しているという役どころは観客側からはすぐにわかるし、田宮二郎と惹かれあう展開は読めるのし、若尾文子が川で原爆にあった握れば崩れるような小石を田宮二郎に渡して被爆の傷痕を語るシーンなどは切ないんですけど田宮二郎は恋と仕事を天秤にかけて恋を取るようなタイプのイメージじゃないから今回はちょっと違和感ありました。やはり田宮二郎は仕事で自分の理想と会社のやり口でジレンマに陥るような役がぴったりだと思います。
若尾文子は相変わらず斜め45度の角度であれこれ苦悩しますけど意外とこの演技パターンがどんな作風にもしっくりくるところがいまさらながら若尾文子の魅力なんだなぁと感じました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(早島秋子)
不幸な役をやらせると抜群のジェニファー・コネリーで。
田宮二郎
(加宮恭介)
デヴィッド・ウェンハムはジャーナリストの役がはまりそうで。


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