日本映画

つ


津軽じょんがら節
JONGARA
(1973)
3
2007年1月
わけありで故郷で津軽のさびれた漁村に若い男、徹男を連れて帰ってきたイサ子は生活のため村の飲み屋で働き始める。そんな中、徹男は盲目の少女ユキと親しくなっていき・・・
江波杏子主演だと思ったらATGだったので好みに合うか微妙で最初は確かに津軽のさびれた村にやって来て何もない村でつまらなそうにしている織田あきらの図。というくらいしか印象になくて盛り上がりに欠けるなぁと織田あきらの心情と重なるものがあったのですが話が盲目の少女ユキが話しに絡んでき始めてきてからだんだん面白くなってきてこれはなかなかよかったです。
江波杏子が津軽の村を真っ赤なコートに銀座のホステス並のメイクで闊歩するところがインパクト大。市場なんかにもその格好で買い物に行ってしまうところがすごかったです。村人達もイサ子はわけありで戻ってきたんだな位に思うだけで案外普通に受け入れるところも興味深かったです。
織田あきらは頼まれもしないのに敵対するやくざを刺してしまったものだから敵にも味方にも追われて仕方なく津軽に身を隠す羽目になった訳で、やることない上に働く場所もなく江波杏子は飲み屋で働いているからすれ違いの生活で・・・という展開なのですがこの時に一人で漁をやっている西村晃を手伝って今までなかった故郷を見つけて人間的にも成長するところはさわやかでした。だてに歯が白すぎるだけじゃなかったな、織田あきらはという感じです。
ネタバレ→最後盲目の少女ユキを売るけどやっぱり助けに戻り、江波杏子は村を去りそしてやくざに殺されるという終わり方が←妙に印象に残る映画でした。
この
主演の二人、一年後に萬屋錦之介のロングラン時代劇「破れ傘刀舟 悪人狩り」で共演しているところも因縁のようなものを感じずにはいられないのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
江波杏子
(中里イサ子)
姐さんという言葉がぴったりのファムケ・ヤンセンで。
織田あきら
(岩城徹男)
雰囲気はジェームズ・フランコといった感じでした。
中川三穂子
(ユキ)
純情路線な印象のオドレイ・トトゥで。


月形半平太 花の巻 嵐の巻
(1956)
3
2009年1月
尊皇派、佐幕派の対立が続く幕末、尊皇派の月形半平太は仲間からも煙たがられ月形半平太を訪ねてきた早瀬にもやがて去られてしまいやがて尊皇派、佐幕派の両派から命を狙われ始め・・・
長谷川一夫の幕末もの。
仲間の行動にも問題があることを提議し、敵の所も取り入れようとして結果的に仲間からも見放されてしまう要は革命?っぽい感じの内容だったと思うのですが、前半がとにかく分かりにくくて後半に入ってようやく面白みが出てきたかなという感じでした。
とにかく大映のスターが小さい役までこぞって出演ということでとにかく豪華。川口浩も出ていたようなのですが全く分からなかったですし、勝新太郎にいたっては台詞は一言二言。ものすごく贅沢でした。妹役はお歯黒の京マチ子というところも強烈でした。
準主役も市川雷蔵も血気盛んな若者で長谷川一夫の考え方についていけず、そばを離れていくという市川雷蔵らしからぬ役どころだったり、長谷川一夫の相手役の山本富士子も普段ならツンツンしている感じの役が多いのに今回は長谷川一夫にぞっこんで一時たりとも離れたくない。みたいな恋する乙女という感じで珍しかったです。こういう普段見られない役どころはやはり大御所の長谷川先生のおかげなのでしょうか。
殺陣のシーンも多勢に無勢と圧倒的不利な状況なのにほとんど無敵というところもさすが長谷川先生ならではというヒーロー映画になっていて長谷川一夫ファンなら満足なはずだと思います。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
長谷川一夫
(月形半平太)
コスチュームものを結構こなすラッセル・クロウで。
山本富士子
(梅松)
シャーリーズ・セロンあたりにお願いしたい。
市川雷蔵
(早瀬辰馬)
突っ走っちゃうタイプのライアン・フィリップで。


椿三十郎
SANJURO
(1962)
5
2005年4月
ひょんなことから上役の陰謀を暴こうとする9人の若侍の手助けをする事になった浪人、椿三十郎だったが敵方にも凄腕の用心棒の室戸半兵衛がいて・・・
「用心棒」の姉妹品らしくなるほど話の筋は似通った部分は同じ(仲代達矢が三船の口車に乗せられてコロッと騙されるあたりはそのまんま。)、三船敏郎の名前も三十郎と同じだし。用心棒の桑畑という苗字は三十郎が桑畑を見て即興で考えたものだから今回の三十郎は「用心棒」と同じキャラクターかな?
「用心棒」は荒れきった宿場町で対立するやくざを成敗する話で西部劇っぽい感じ。「椿三十郎」は腹黒い官僚の悪事を暴こうとする若侍を助け成長を見届ける青春物?ぽくてどっちが好きかと言われると甲乙付けがたいです。「椿三十郎」の方があまり血生臭いところがないからどちらかと言えばこっちの方が入りやすいかも。
若侍のリーダー各が加山雄三なんですけどあまりにシュッとしていてさわやかなんで最初気がつきませんでしたがはなんと言っても
超平和主義の入江たか子に調子を狂わされるとちょっとだけいじける三船敏郎のお茶目な兄貴っぷりが今回は楽しくてよかったです。
三船を信用しきれずに自分勝手な行動をして台無しにしてしょんぼりする仲間の田中邦衛とか三船たちが捕らえた敵方の侍がいちいち助言してくれたりして相変わらず脇役が充実しているけれど宿敵となる仲代達矢が「用心棒」のときよりよかったです。同じにおいを感じた三十郎を仲間に誘ってみたり、敗北が明確になったらさっさと上役の元を去り正々堂々と三十郎に勝負を挑む、そんな人間味あふれているところでこの映画の中じゃ一番かっこよかったんじゃないかなぁと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
三船敏郎
(椿三十郎)
やっぱりこの兄貴っぷりはジョージ・クルーニーです。
仲代達矢
(室戸半兵衛)
敵方の雇い主さえも見捨てるところがショーン・ビーンぽかったです。
加山雄三
(井坂伊織)
素直そうなオーランド・ブルームで。


妻という名の女たち
(1963)
4
2008年7月
ある日、夫から株券を借りる約束をしていると見知らぬ女が自宅にやってくるはそれは夫の愛人だった。雪子は夫の浩三と別れるつもりはなかったのだが浩三はやがて家に帰ってこなくなり・・・
司葉子が浮気されひたすら耐え忍ぶ妻の苦悩を演じたドラマ。
清水美砂に似ている司葉子が子供がいるからといって何故ここまで帰らぬ夫を待たなければいけないのかと思うくらい夫の小泉博を愛してやまないのですが、観ているこっちが司葉子の理不尽な扱われっぷりに誰もが同情せずにいられません。
小泉博のお兄さんや会社の上司も愛人なんかとさっさと別れろと小泉博を叱ってくれて一見、司葉子の味方をしてくれているのかと思いきや世間体やら会社の評判を気にしての発言で本当に心配してくれる人って団令子くらいなのにも一層幸薄感に拍車がかかります。
小泉博はいつもは見た目はちょっと地味で印象が薄い感じですがいい先輩とかいい人のイメージが強かったので何だかこの役はショックでした。司葉子に今夜は帰ってくるといいつつ結局、愛人の左幸子家に入り浸って早1ヶ月というところが子供もいるのに信じられずイラッとします。
そして愛人にしたら最も怖いと思う左幸子。最初は奥さんに悪いからといいつつ後半、小泉博が家から持ってきたパジャマとかにいちいち奥さんが感じられるものは嫌といって同じパジャマを買って来たり、慰謝料を司葉子に支払うことになったと知ったら、慰謝料上げるのは当然だと思うけれど、店の借金ちょっと都合つけて残りを奥さんに上げればいいとか
小泉博に対する要求がエスカレートしていくところが左幸子らしくて恐ろしいです。左幸子には気をつけたほうがいいと思うのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
司葉子
(魚住雪子)
ナオミ・ワッツにお願いしたい。
小泉博
(魚住浩三)
クライヴ・オーウェンにぴったりな感じがします。
左幸子
(八杉夏代)
エミリー・ワトソンが愛人役をやったら怖そうです。


妻として女として
AS A WIFE, AS A WOMAN
(1961)
4
2008年8月
西垣三保は妻子のある大学教授の河野と長年関係が続いていたが河野の煮え切らない態度に次第に心が離れていきついに別れる決心をするのだが・・・
監督、成瀬巳喜男。脚本、松山善三。主演は高峰秀子という黄金トリオによる女性映画。
愛人が高峰秀子、本妻が淡島千景ということで最初は設定逆のほうがいいのではないかと思っていたのですが話が進むにつれてこの配役で正解だと感じました。「浮雲」っぽい感じもしましたし。
それに愛人と本妻の視点でそれぞれの悩みを描いているところもこの時代にしては新しかったのではないのでしょうか。
高峰秀子はただの愛人ではなく戦時中妊娠してしまうのですが父親のない子供にするのは可哀想ということと本妻は子供が産めない体なので生まれた子供を本妻が育てることになってしまったり(しかも二人も)週末、森雅之と旅行に行ったら偶然旅館で教え子に会ってしまって体裁を保とうとするあまり高峰秀子のことは心ここにあらずという感じなってしまい、高峰秀子はそれはやけ酒もするし、心もだんだん離れてしまうだろうなと言った感じです。
本妻の淡島千景も最初は愛人の子供をわが子のように可愛がるのは悔しいはずだったと思いますが今では本当の子供ように愛しているにも関わらず高峰秀子から子供を返せと言われてただでさえ愛人との奇妙な三角関係が20数年続いているのに本妻としては悔しさいっぱいという感じです。
とそんな修羅場の原因を作ったのは森雅之なのですが愛人は体裁が悪いから会うときはこっそりと、というところとか本妻が愛人の陰口をしゃべっている時も愛人のことを擁護する発言をして終いには「今まで通りの関係でいいじゃないか。」といってどっち付かずな優柔不断さがイライラとするのですがそれがまた森雅之らしかったです。一見クールな感じなのですがこういう優柔不断な感じは上手いです。
とそれぞれのメインキャラクターになるようにしてなってしまったバックボーンも丁寧に描かれているところも成瀬巳喜男らしいところだなぁと感じました。
劇中、
やけ酒して高峰秀子は酔っ払って家に帰るのですがくだを巻いた感じの酔っ払い加減がものすごく上手くて中村錦之助の演技もそうですが酔っ払い演技が出来る人は本当に演技が上手いんあだなぁと改めて思いました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高峰秀子
(西垣三保)
マーシャ・ゲイハーデンあたりの演技派にお願いしたい。
淡島千景
(河野綾子)
意外と言う事はしっかりと言いそうなローラ・リニーで。
森雅之
(河野圭次郎)
優柔不断な役も観てみたいデニエル・デイ=ルイスで。


妻の心
A WIFE'S HEART
(1956)
4
2009年8月
家業を継いだ富田家の次男の信二とその妻、喜代子は店の売り上げが落ち込んでいるため喫茶店を開くことにして資金も調達したところに、東京の会社が倒産した兄夫婦が戻ってきて・・・
成瀬巳喜男監督お得意の夫婦の危機もの。
高峰秀子とちょっと頼りない感じの小林桂樹に振り回される感じの内容かなと思いつつも序盤はあまりこれといった盛り上がりはないので成瀬作品としてはもうひとつだなと思っていたのですが、小林桂樹の兄の千秋実が出戻ってきてからグッと面白くなってきます。とりあえず千秋実の出戻り理由が分からず、しかも喫茶店を開くということを知っていながらも金を貸してくれと迫ってくる千秋実。しかも金のせびり方がお母さんの三好栄子を通して小林夫妻に頼んでくるから性質が悪いと言ったらこの上ない。
喫茶店にコックを雇わず自分たちでやろうとしているので甲斐甲斐しくも洋食屋で料理の修業をしている高峰秀子もさすがに心が折れそうになりますが、高峰秀子はクヨクヨせずに親友の杉葉子のところで息抜き。そして杉葉子のお兄さんの三船敏郎とはかつての恋人ということもありなかなかいい感じになりますが、
三船敏郎はシャイなので想いを胸に秘めたまま友達という清い交際をしているのですが何か起こりそうでハラハラしました。
怒り心頭の小林桂樹もやってられなくなり隠れて芸者と温泉旅行に行ったりしてしかもその芸者が
自殺して一騒動。というとことん付いていなくてしかも高峰秀子に責められぐうの音も出ません状態。と男が情けないという成瀬作品ならではの展開であぁ、成瀬作品を観ているんだなという実感が沸いてきます。
高峰秀子の働きに行っている洋食屋の夫婦が加東大介と沢村貞子という姉弟コンビは数多く共演していますが夫婦役は初めて観たので新鮮なのでした。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
高峰秀子
(富田喜代子)
何でも出来るケイト・ブランシェットにお願いしたい。
小林桂樹
(富田信二)
フィリップ・シーモア・ホフマンにちょっと頼りない役をやってもらいたい。
三船敏郎
(竹村健吉)
嫌なところがないヒュー・ジャックマンで。


妻は告白する
(1961)
5
2005年2月
崖に宙吊りとなった三人のパーティー。滝川教授の妻、彩子はついに夫につながったザイルを切り助かるのだが彩子は告発されてしまう・・・
以前予告編だけ観たことがあって妻がザイルを切ったのは殺意があったのかそれとも生きるためなのかというサスペンスフルな内容にすごく興味あったんですけど観られてよかったです。
「妻は告白する」のタイトル通り法廷での彩子が裁かれる様子がメインなのですけど法廷のシーンと山に登り崖に宙づりになる回想シーン。そして裁判後の彩子と幸田とバランス取れた作品めったにないんじゃないかと思うくらい思い出してもつくづくよく出来ているなぁと感心します。
ネタバレ→
彩子は結局無罪になるのですが実は最後、幸田と一緒になるために夫を殺したと幸田に告白するのですが←彩子は大学で教授の滝川の助手をやっているうちに結婚し大学も辞めるも夫は妻を愛さず山を愛する男でついには離婚を切り出すもそれを受け入れるような男じゃないく八方ふさがりという感じで彩子も不幸な女なのです。(夫は密かに幸田との仲を疑い山登りも難所を選ぶような嫉妬深い男です。)不幸だけどそんなことで泣くような女じゃなく愛に生きようとする女をやらせると若尾文子は上手いなぁと思います。しゃべり方も淡々として常に冷静な感じがして愛には程遠いように思えるんですが内に秘めた情熱は半端じゃないんですよね。だからラストの狂気じみた行動も自然と納得できるのです。
川口浩も婚約者がいて裁判中にも関わらず若尾文子と二人っきりで会ったりする普通こういうことやっちゃぁいけないだろうという行動が川口浩らしいけど相変わらずこういう優柔不断な行動が腹が立つけど今回は最後にネタバレ→
悲劇的な結末になるけど自分でけりをつけて←あぁ川口浩も成長したなぁと思うのでした。
増村監督はこの映画でも山のシーンを取り入れていますが山が好きなのかな?宙づり状態になった三人の構図は当時はどうやって撮ったんだろうと思わせる迫力で感心しました。
ハリウッドバージョンはこの人で!!
若尾文子
(滝川彩子)
ナオミ・ワッツにこういったミステリアスな役をやってもらいたい。
川口浩
(幸田修)
まだまだ若造という感じのトビー・マグワイアで。
小沢栄太郎
(滝川亮吉)
教授っぽいし、さりげない意地悪をしそうなジョン・リスゴーで。


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