★★★★★......Excellent
★★★★..........Very Good
★★★.............Good
★★................Fair
★...................Turkey
1/2は★半分。

「マジェスティック」
The Majestic
2001米 153min
Frank Darabont/Director Michael Sloan/Screenplay David Tattersall/Photography Mark Isham/Music
CAST/Jim Carrey,Martin Landau,Laurie Holden,Allen Garfield,Amanda Detmer

もう日本ではジム・キャリーでは集客が難しいのか、この映画の公開前にかかってた予告や広告は「監督/フランク・ダラボン」っていうのを売りにしてた。実質的には「ショーシャンクの空に」と 「グリーンマイル」の2本を監督しただけなんで、まあその作品の質に対する信頼感みたいなものなのか、、 個人的には「ショーシャンク」は大好きで、「グリーンマイル」は、、少しおしつけがましい、、そんな感想を持っているけど。
この映画の印象はどちらかというとその中間ってところかな。もっと言うと「ニュー・シネマ・パラダイス」と、フランク・キャプラの映画、特に「スミス都へ行く」を足して2で割ったような、、、そんな印象.
新進の脚本家ジム・キャリーが、1950年代に映画界に席巻したいわゆる「アカ狩り」のあおりを食って 仕事をほされた直後に交通事故で車ごと橋から川に転落してしまい、意識不明のままある街へ流れ着く。彼はその街で閉館した映画館「マジェスティック」の館主の息子ルークに瓜二つだった。街の皆にも第二次世界大で行方不明になっていた彼が帰って来たと勘違いされて、、、
映画が終わって、結構長い映画だったんでびっくりした。観ている間その事を意識しなかった のは、時間軸が長い物語でもないのに、ひとつひとつの情景をかなり丁寧に描いていていて、その割には無駄な描写が無かったからなんだと思う。戦争で息子たちを失った街は、なんとなく元気が無い。その彼らを「ルークの帰還」と映画館の再興を通して元気を取り戻していく。例えばルークが帰ってきたことを祝って 開かれるビーチパーティの場面なんかは、何が起こる訳でもないけど、綺麗ですごくいシーンだと思った。 また、主人公が決して「ウソ」を言わない事にも好感が持てた。
ちょっと残念なのはそこまで丁寧に描いているのに、、肝心のラストの展開が早すぎる事。実際の街の人たちの心の葛藤をもっと深く描いていたら、もっといい映画になったんではと思うのは僕だけか?それから「グリーンマイル」同様、何となく「大作然」としてて、演技も「名演を見せる」っていうちょっと鼻につくような感じが少し漂ってて、、、こんな事考え過ぎなんだろうけど、もしこの題材で無名の役者中心のB級映画みたいな作りだったら僕はもっと好きになってたと思うこの映画。そうはいってもジム・キャリーは相変わらずいいです。
「ニューシネマ・パラダイス」同様、映画好きにとっては映画館というのは特別な所で、テレビとかでは 無くて皆でスクリーンにかかる映画を共有する、、ってのがとても素晴らしいことなんだ、、ってことが この映画でも凄く感じられるよ。
★★★1/2

←2002index


「ドリアン・ドリアン」
Durian Durian/榴連飄飄
2000香港 117min
Fruit Chan(陣果)/Director and Screenplay Lam Wah-Chuen(林華全)/Photography Lam Wah-Chuen(林華全),Chu hing-Cheng(朱慶祥)/Music
CAST/Qin hailu(泰海王路),Mak Wai-fan,Wong Ming(黄明),Yeung Mei Cam(揚美金)

ドリアンって見た目はとげとげしてて、果物には見えない程だけど、中の果肉は「フルーツの王様」と 言われる程濃厚な味だとか。食べた事ないですけど。映画の中では、凶器に使われたりしている、、 不思議な果物。
監督フル−ツ・チャンの「香港製造」(メイド・イン・ホンコン)は、かなりぐっとくる作品だった。その後の「花火降る午後」と「リトル・チュン」は現在ではまだ観れてないけど、今回の作品、特に前半は物語というよりも、時間の流れを傍観者的に観ているような感じ。少しドキュメンタリ−に近い手法をとっていた。 まず前半の主人公イエンは、いかにも水商売風で、娼婦として感情も無くただひたすら客をとっている、、、という描写が延々と続く。この段階で彼女の内面は語られない。
それが後半になって、地元に帰ると、「えっこんな地味なコだったの??」という印象を観ている誰もが 思うように構成されている。彼女が長年に渡って京劇を学んでいたこと、その仲間と結婚したばかりで スピード離婚の話し合いが済んでいる事、一人で生きていく為に事業を始めた くて、香港での仕事はあくまでも短期決戦で資金を稼ぐためだった事。もちろん皆には内緒で、、、。(故郷の人たちが香港で何をしていたか聞くシーンが無いのも不自然に思ったけど)
その「事業」も結局何をしたいのか自分では定まっていない。
人の持つ二面性の描き方が興味深く、中国に比べると賃金格差の激しい香港には、現在彼女のようなコってたくさんいるんだろうと思う。監督は街で見かける、そんな大陸の女の子も、実際は帰る所があって別の面を持っている事、それは上手く描けていたと思うけど、、、、
結局何を言いたいのかが僕にはよくわからなかった。ドリアンが元で交流する皿洗いの 少女とのやりとりも、なんだかとってつけたような感じで、、、、映画が現実に近いのであれば向こうに住んでる人はまた違った印象を持つんだろうな。
でも前半と後半、同じ人でも環境によってまったく別人のようになる事を演じているチン・ハイルーはなかなか。
★★★

←2002index


「愛しのローズマリー」
Shallow Hal
2001米 114min
Bobby Farrelly,Peter Farrelly/Director and Sean Moynihan Screenplay Russell Carpenter/Photography Ivy/Music
CAST/Gwyneth Paltrow,Jack Black,Jason Alexander,Joe Vitterelli,Rene Kirby,Anthony Robbins

ルックスがいい人は性格悪くて、その逆は性格がいい??そしてやっぱり人間ルックスが大事?ってのは良く言ったりする事だけど、決して容姿端麗(死語?)とは言えない自分は「そうではなーい!」と信じたいところ。
この映画は今まで有りそうで無かったそういう部分をビジュアル化した映画といえるだろう。 しかしながら、作ってるのが「メリーに首ったけ」のファレリ−・ブラザース、、、、、どう考えても深い思慮のもとに作ってるとは考えがたいのよ。
ハルは外見だけで人を判断する典型的な青年。ある日、エレベーターが停止してしまい、偶然乗り合わせてた 自己啓発セミナーの教祖に、「内面が見える」まじないをかけられてしまう。彼が外見上には、内面の美しい人しか見えなくなる、、、という物語。
今までの映画と違って、結構マトモに作っているからよけい、映画のテーマそのものに差別的な雰囲気が 漂う。
この映画は外見が悪い=中身が良いというのをステレオタイプにしすぎ。それであるなら、グイネス・パルトロウ扮するローズマリーが、内面が美しい、、、というのっをもっと深く描くべき。やけど病棟の子供達を 診ている、、、とか、平和ボランティア活動に従事していた、、とかそういったのが内面的に美しい、、という決めつけ方があさはかすぎと感じた。そのくせ、ネタとして彼女がデートの際にも、彼の食べている者を 横取りしてむさぼり食べるとか、普通、そんなにいいコだったらそんな事しないだろう、、というような 表現を入れてて、辻褄がなんとなくあわなくなっている。
個人的には「内面」は必ず「外見」または、その人が持っている魅力そのものに反映されると思っているので、はっきり言ってそれをテーマにしているだけ志しの浅はかさが際立った映画になってると感じた。 まあファレリ−兄弟の映画にもともとそんなもん無いと思うので、どうせならもっと無茶苦茶な映画に しても良かったのに。中途半端やね。
★★1/2

←2002index


「アイ・アム・サム」
I Am Sam
2001米 133min
Jessie Nelson/Director Jessie Nelson,Elliot Davis Screenplay Emmanuel Lubezki/Photography John Powell/Music
CAST/Sean Penn,Michelle Pfeiffer,Dakota Fanning,Dianne Wiest,Laura Dern

立ち寄ると絶対ムダ買いしてしまうので、足を向けないようにしている心斎橋のタワーレコードで手にとった 瞬間、買ってしまったこの映画のサウンドトラック盤。
Sala mclachlan,The Black Crows,Ben Harper,Stereophonics等、かなりバラエティに富んだミュージシャンが参加。しかし、すっかり定着した映画タイアップサントラと異なる点は全曲がビートルズのカバーだってこと。1曲目の"Two Of US"は傑作「マグノリア」のテーマとなっていたシンガーのエイミ−・マンとその夫であり、主役のショーン・ペンの兄貴である マイケル・ペンがデュエットしていて、これが一番出来が良い。個人的には映画では使われていない、Chocolate Genuisの「ジュリア」がお気に入りだったりするが。
というのは映画でビートルズが重要な役割を果たしているから。主人公サムは7歳の知能しか無いけれども、一人娘のルーシー・ダイアモンド(そう、Lucy Is The Sky With Diamonds)を一人で育てていた。彼女が学校に通い出すと、父親の知能を超え始める。誕生日パーティーの些細な誤解がきっかけで、ソーシャル・ワーカーがサムには養育能力が無いと判断して、ルーシーは施設に保護されてしまう。、、、サムは知能は 確かに低いが、ビートルズが大好きで、その事に関しては誰よりも詳しかったりする。
あかん。この設定を聞いただけで泣いてしまったよ。自分もビートルズは大好きなんで。なんでも知的障害者 を映画作る段階でリサーチしたら、最も愛されていた音楽がビートルズだったとか。判るような気がするなあ。
とにかくショーン・ペンの演技に圧倒されてしまう。めちゃくちゃすごいわこの人やっぱり。
僕には父娘というよりも、恋愛映画のように見えた。周りは障害だらけ、しかも二人の仲は 他者によって引き裂かれていくが、心の底からお互いを必要としていて、後半、ルーシーが深夜に里親の家を 何度も抜け出す描写がほほえましかったりする。
冒頭サムが勤務先のスターバックスのコーヒーの砂糖の順番を何度も何度も丁寧に直している描写が延々続くが、決して優れていないけれども、自分の出来る事精一杯やろうとする、そういう彼のピュアな性格を表現しているシーンなんだったと思う。
昔読んだ宮本輝の小説に、青年が父親の葬儀の帰りに乗っていたバスから、少し頭が弱そうな少年が道路工事の現場で働いてて、一心不乱に旗を振って、停止させた車に何度も深くお辞儀をしてて、他人が見ると滑稽に見えるその光景をぼんやりと眺めているうちに、これまで父親と真面目に話した機会を持たなかった事を死ぬ程後悔する、、、、という短編があって、それがとても印象に残ってたんだけど、この映画を観て何故かそれを思い出してしまった。
★★★1/2

←2002index


「アリ」
Ali
2002米 157min
Michael Mann/Director Michael Mann,Stephen J. Rivele,Christopher Wilkinson,Eric Roth Screenplay Emmanuel Lubezki/Photography Peter Bourke,Lisa Gerrard/Music
CAST/Will Smith,Jamie Foxx,Jeffrey Wright ,Jon Voight,Mario Van Peebles

う〜ん。モハメド・アリの生涯をドキュメンタリー風に追っていくのは判るが、肝心のアリが どんな内面を持っているかが全く描けて無い。聞けばウイル・スミスがどーしてもアリをやりたくて 作ったって映画らしく、人間的に美化しすぎている部分もあって観ていて何のカタルシスもなし。
ファイトシーンが感情的にはクライマックスになる筈なのに、ドラマ部分がそんなんなんでちっとも観ていて 盛り上がらない。意図としてそういう映画にしたかったというなら、もっと他にやりかたあったんちゃう? 途中何度も睡魔が襲いました。3時間近くもあるんですこの映画。モハメド・アリの偉大さを映画にしたいというなら、変にこむずかしく作るなよお。「少林サッカー」観て出直してきて欲しい。
★★

←2002index


「マルホランド・ドライブ」
Muluholland Drive
2001米 146min
David Lynch/Director and Screenplay Peter Deming/Photography Angelo Badalamenti/Music
CAST/Justin Theroux,Naomi Watts,Laura Elena Harring,Robert Foster

いろんな伏線があって、な〜んかあるんちゃう?って思わせといて、実際はな〜んも無いんではないか? というのがデビッド・リンチの映画、、この最新作は今までの中で最高に訳わかりません!でもこれは好き!
元は「ツイン・ピークス」と同じく、米ABCテレビのシリーズ用としてパイロット版を製作したところ、 あまりの内容のヘビーさに、放映もシリーズ化も中止になった映像を再編集したとか、、これをテレビで!すげえ!一般人はついていけなかったことでしょう。というか誰もついていけない。
冒頭一人の女性が何ものかに拉致?されたキャディラックがマルホランド・ドライブ(ハリウッドの上の山) で事故に逢い、記憶喪失になった彼女が、その日に田舎から出てきた女優志願の女の子と知り合って、、 という物語の発端はあるにはあるが、、、様々なキャラクターが出てくる中、ハッキリいって謎が100個くらいあってそのどれも解決しないまま映画は終わってしまう。でも不思議な事に2時間半もある上映時間が何だかあっと言う間に過ぎていた。
ちりばめられたアイテムをあれこれ自分勝手に推測しながら、映画全体のムードにはまる、、そんな映画 あっていいんでは無いだろうか。まさにこれがそれ。ただ不必要なシーンの切り貼リでは無く、リンチ 映画特有の妙な間と映像で引きつける「何か」があるように感じた。
特に謎の記憶喪失美女、、後半は映画女優のローラ・エレナ・ハリングの存在が大きい。彼女の妖しい 魅力が映画全体のムードを作っている。一方ナオミ・ワッツのほうは、田舎から出てきた無垢な女優志望の 女の子と、後半、、、そうこの映画では後半で世界が違う次元に飛ぶのです。、、、の疲れきった 元女優のイメージの違いが凄くて、最初別の女優がやってるんではと思う程。また劇中、オーディションを 受ける場面では劇中の芝居という意味で、また違った演技を見せていて、凄いなと思った。
なかなか言葉では表現しずらいので、実際観て、「あれはどーだった」とか議論するにはとても楽しい? 映画なんではないか。元のパイロット版がどんなだったのか凄く観てみたい。DVDでオマケについたら 買ってしまいそう。
ちなみにこの映画は第54回のカンヌ映画祭グランプリを受賞している。
★★★★

←2002index


「E.T. 20周年アニバーサリー特別版」
E.T. The Extra-Terrestrial
The 20th Anniversary Special Edition
2002米 120min (0riginal 1982)
Stephen Spilberg/Director Melissa Mathison Screenplay Allen Daviau/Photography John Williams/Music
CAST/Dee Wallace Stone,Henry Thoimas,Peter Coyote,Robert Macnaughton,Drew barrymore

たまたま松阪(三重)のシネコンで何か観ようと思ったけど、観た映画ばかりで、、、この記念版はオリジナルをかなりいじって作ったとの噂。原版を観たのは20年前、その後1度だけビデオで観た記憶があって、人並みに感動はしたけれども個人的にそんなに思い入れのある映画では無かったので、今見直すとどんな感想を持つのか、、、
結果としては、、凄く良く出来た傑作だし、大作ではなく、B級映画短編みたいなイメージのする映画だった。スピルバーグ作品ではこれが映画の完成度としてはベストだと思う。
  まず映画そのものを完全にファンタジー的な寓話として描いてる事、、よけいな人物とか、描写とかをあまり 加味せず、地球で迷子になったETと、エリオット少年の家族、NASAの調査隊の介入、、、これ以外の不必要な 要素はほとんど無く、誰しもがこの宇宙人と少年との心の交流に感情移入出来るように作られたシンプルな 内容。
3人の子役、、、すごくいい。特にエリオット少年のヘンリ−・トーマス、、、「A.I.」のオスメント君と は違って、自然な感じがいいし。ドリュ−・バリモアの妹はめっちゃくちゃキュートで可愛い、、全然顔 変わって無いのにはびっくりしたけど。
再観して僕が泣いてしまったとこは、以外と例のチャリンコが空を飛ぶ有名な場面やラストではなくて、 まず、エリオットが初めてて学校から帰ってきた兄貴にETを見せる所。ここから一連のシーンは完璧。最初、弟をバカにしてたかのように見えていた兄がその後の態度の描写に変化があるのだが、それがおしつけがましくなくていい感じなのだわ。また、母親が妹に「ピーターパン」を読んで聞かせ、ドア越しにETがそれをそっと盗み聞きしている場面、、ここなんかもスピルバーグらしくてたまらんかったな。
たしかにラスト近くはお約束で少しクサ過ぎる部分もあるけど、最近の「感動させよう」家族向き映画と比べると以外と、媚びて無い作りだってことがわかる。
肝心の「特別版」がオリジナルとどう違うのかあまりよく判らなかった、、刑事が持っていた拳銃がCGで無線機に変わっていたりとか、例のチャリで飛ぶ子供も撮り直してるとか、、、はっきりいって観ている側としてはそんなことどーでもいい、、というかほとんど気にならない。基本的に映画は全体の物語りにいかに 入り込めるか、、ということのほうが重要で、派手なSFXは過剰になると、それを削ぐ危険性もあるような 気が最近の映画では感じていて、あくまでも映画の要素であるべきだ.そんな事を観てて思った。どこを いじったか気にならない程、映画の夢の世界に浸らせてくれているのだから。
★★★★

←2002index


「鬼が来た!」
Devils On The Doorstep/鬼子來了
2000中国 140min
Jian Wen(姜文)/Director Jian Wen(姜文),You Feng-wei(尤風偉),Shi Jian-quan(史建全),Shu Ping(述平)/Screenplay 
Shu Ping(願長衛)/Photography Cui Jian(崖健),Liu Xing(劉星),Li Hai-ying(李海鷹)/Music
CAST/Jian Wen(姜文),香川照之,Jian hong Poo(姜鴻波),澤田謙也

まさにタイトルの如く、降り注ぐ陽光の風景が美しかった「太陽の少年」のチアン・ウエン(以下、姜文と記す)の5年振りの監督第ニ作。今回は主演もしている。と思ったら画面はモノクロ。その陰影を利用した美しいシーンが多かった。
この映画は第二時世界大戦の終戦近く、日本の占領下にあった中国・華北が舞台となっている。ある貧しい 農村の男の家に、夜中に何ものかが二つの麻袋を無理矢理預けていく、、中に入ってたのはひとつは日本兵、 もう一つは通訳の中国人だった、、、それが発端で、特に何も無かった村が揺れていく、、、という ストーリー。
最初人情喜劇なのかな、、と思って観ていると、後半でとんでもないことになります。日本人にとっては 色んな意味でかなりヘビーな映画だと思う。
日本兵を演じているのは、今年の大河ドラマで秀吉を演じている香川照之。あの爆笑オーバーアクト時代劇(僕はそう思ってるんだが、、)でマトモに好演している数少ない一人の彼が、前半、ほとんどが中国人の 役者の中で、最初は「殺せ!」とか言って軍人振るまいしていたのが人情に触れ、人間らしさを取り戻していく様がおもしろい。ただし、この映画のテーマはおそらく「戦争が普通の人にもたらす狂気」
人間が何かの力によって権力を持ったり、人を支配する状況が起こると、人間としての本来有るべき心は どうなっていうくのか、、、またその心というのは普遍ではないのか、、というのを特に香川照之の 変化を通して描いている。この狂気というのは 日本側に片寄ったものではないことが、、、ラストのシークエンスで読み取れるのだが、、、
今までも僕が観た海外製作の映画で日本兵を扱ったものは、ほとんどが知性も無い間抜けな存在としての日本人を描いていて、この映画に関しても正直な所、日本人の描写に対しては、中国人が観ると憎く感じれる 見られてしまうように作られているように思った、、というかそれが姜文の気持ちであるんだろう。よく聞く話では実際に中国にいた日本兵はそんなに悪い人はいなかった、、と当時を知る現地の人の話、、、そりゃそうだと思う。実際は今の僕達と性根は変わらない筈なのだから。ただ、このように映画に描かれているような 正気を見失っている日本人もいたんだろう。それが一握りだったとしても、その事がクローズアップされ、 今だにその事が問題視される。
逆も同じで、例えば日本の原爆を扱った日本映画はアメリカ人にとっては痛い筈である。日本側の気持ちを込めて作られているから。でもアメリカ人とて一握り以外は直接関与した訳ではないので、、同世代以下ならこの映画を観た僕達と同じく複雑な気持ちになるんだと思う。
ラスト、、、もし現実にああいう事があったとしたら、僕は香川扮する花屋小三郎がそうしない事を信じたい。これ書いてしまうとどーしようも無いので、実際観て確かめて。
インタビューを読んだが、この映画の撮影状況はかなり過酷だったらしく、実際に兵隊の訓練をさせたりとか、麻袋に入れられた状態で1日実際ほっとかれたりとか、かなりアナログで古風な作り方をしている ようである、、それが姜文の演出の狙いなんだろう。今の日本映画ってマーケティングバカ映画か、賞狙いのような作家寄りのこむずかしいのばっかりで、こういう力作ってほんと減っているように思う。
力作ではあるけど、もう一度見るのは自分にとっては結構つらい映画。ヘビーすぎて。
★★★★ 

←2002index


「アザ−ス」
The Others
2001米,仏、スペイン 104min
Alejandro Amenbar/Director,Screenplay and Music Javier Aguirresarobe/Photographer
CAST/Nichole Kidman,Fionnula Flangan,Christopher Eccleston,Eric Sykes

ハリウッド映画らしからぬ古風な作りで、そこが気に入った。かなり地味な作品である。
主演のニコ−ル・キッドマンを除けば、ほとんど馴染みの無い役者が脇を固めており、その事で 個人的には変な先入観を持てずに観れて良かったと思う。 若干29歳のアレハンドロ・アメナバールは監督、脚本、音楽もこなす才人。ただこの映画に 関しては音楽はもひとつだったが、、「バニラ・スカイ」の元ネタ「オープン・ユア・アイズ」を作って よっぽどトム・クルーズに気に入られたみたいで、この映画でトムはプロデューサーを買って出ている。
この映画、「音」が効果的に使われている。先ほどもひとつだと言った音楽も、 要所要所に出てくるだけで、ほとんどが無音の世界。これはニコール扮する 母親が子供たちの為に「音を立てない」ということに神経を使っているから という部分に寄与しており、得体の知れない「他者」が屋敷の中で動いている というのを感じる部分に上手に音を使っていて、恐怖心を盛り立てている。
実際映画を見て欲しいのだが、この映画を観ている人は実際どういう事実があるのか をあれこれ推測していながらストーリーを追っていく事になると思う。 家政婦のフィオヌラ・フランガンたちが善なのか悪なのか最後まで判らなく、なかなかいい味を出してい た。
古風なニコール・キッドマンは美しく撮られており、現実離れ した感じを出すには絶妙のキャスティングだったとは思うが、もう少し キレた感じを醸し出さないといけない役だったようにも思うのだが。
下の「パニック・ルーム」と同じく、狭い限られた環境内で映画は完結する 物語だが、恐怖という点ではこっちの方が数段上。ただし、物語の背景とか に深みがあまり感じられなかったのも正直な感想。ただ比較すると残るのは やっぱりこっちかな?
二コール・キッドマンは「パニック・ルーム」 の主演にも抜擢されていて、怪我の為に急遽ジョディ・フォスターに変わった という経緯があるんだって。売れっ子ですな。
★★★1/2

←2002index


←2002/1

このページに関することとか、映画の激論等あればメール下さいまし。
kazupon@can.bekkoame.ne.jp

←HOME