特選・幻のシーン集 初期シナリオ編2

★特集 これをやったらラジー賞
 〜ラスサムがまだトンデモ映画だった頃(笑)〜


サブタイトル通り、初期シナリオから「何なんだこれはーっ! という突っ込み所」を選りすぐってお届けいたします(笑)。

確かに、今までの「ハリウッドの日本物」とは一線を画した、日本への敬愛は感じます。なのに……なのに、まだまだ変(苦笑)。憧れは溢れ返っているのに、誤解尽くしの片想いのごとき、トホホな物悲しさが漂います。しかも要所要所で、気合い入れて作ったんだろうなーというシチュエーションが、その気合いに正比例してトンデモ化するという……。
そして、こういう恥ずかしい原型が、情け容赦なく公開されているというのにも、プロの世界の厳しさを見る思いです(苦笑)。
という訳で、私選ワースト5のうち、まずは5位から。

第5位 指詰めはあんまりです
忍者バトルで、負傷するオールグレン。……小指を斬り落とされます(ぎゃーいたたたたたた)。監督か脚本家さんの脳裏には、ヤクザ映画の「指詰め」が焼き付いていたものと思われます。自分がこういうの苦手ってことを抜きにしても、これは没で正解な気が。

第4位 だから二千年の戦いの歴史が……
合戦シーンで、待ち伏せにあって撃破される官軍の様子に、バグリー大佐がこんな発言を。
“A classic‘V’ambush. Sonofabitcb is using West Point tactics.”
つまり、「古典的な『V字待ち伏せ戦法』だ。あの野郎(オールグレン)、ウェストポイントの戦術を使ってるな」と……違います大佐(泣)。これ多分、戦国時代から使われていた『釣り野伏せ』の術です。確かにオールグレンのアレンジは入ってるはずだけど。
そりゃバグリーは、オールグレンが侍を「二千年の戦いの歴史を持つ奴らだ」と評したのを、信じるどころか覚えてもいなさそうですが。でもこのセリフが残ってしまったら、海外の人は「サムライには、その程度の作戦も立てられなかったのか?」と首をかしげ、国内の歴史マニアは「島津の釣り野伏せぐらい調べりゃ分かるだろ!」とぶち切れたでしょう。

第3位 大村さんは城持ちでした
東京で捕らわれた勝元が、何故か大村邸に自宅監禁される(笑)。コアな腐女子が卒倒しそうな状況……はともかく、その「大村邸」は、「OMURA CASTEL」と書かれてるんですけど、城?? いやまさか。向こうの感覚じゃ、ちょっと立派な屋敷程度で「CASTLE」とか呼んじゃうからなぁ、とか思いつつ見ていくと。
この「OMURA CASTEL」は、東京湾に面した立派な建物。「日本の古い建築」であり、「過去には軍事用に使われ」、かなりな高さがある……って、やっぱり城かよ!
本編にあったらラジー賞確定、の最たる設定ですが、この城への侵入作戦&脱出劇はかなり盛り上がります。ビジュアル的には、すごく格好いいんだわ。少なくとも「日本についての予備知識がない人が見たら、間違いなく『格好いい!』と認識するはず」と言えます……日本人なら、怒るか呆れるかでしょうが。
チャンバラも派手で、本編比、オールグレンの格好良さ5割増、ただし哲学性4割減(笑)。

第2位 殿、いきなり土下座
上京シーンにて。オールグレンとの別れ際に、勝元がいきなり路上で土下座してしまうという、仰天の場面がありました。想像して笑い転げましたよ、もう。この文脈では「座礼」には見えないってば。あんたら、別れ際に土下座を要するような関係を結んでいたのかと…(略)
まあ腐女子的には、一冬中愛し合った相手に、半ば捨てるように別れを告げる場面ですから、土下座したくもなるかもしれないのですが(笑)。……って、それではますます情けない。

第1位 受け継がれる侍魂……がすっかり裏目に
そして堂々のワースト1(笑)には、例の赤い鎧が絡んできます。
初期シナリオにおいては、たかがオールグレンに着せるのは、亡き信忠の戦装束。鎧はまだ着せません。その後飛源が、父の形見である赤い鎧の、胸当ての部分を手渡すのです。
なかなか感動的ですし、いきなり鎧フル装備では重くて戦闘どころじゃないかも、という意味でも設定的にはいいかな、と思ったら……オールグレンが、その胸当てを「革コートの上から」装着してしまったことで、ビジュアルが一気にぶち壊しに。
(はい皆さん、想像してみて下さい。和服の戦装束の上に洋風革コート、さらにその上に鎧の胸当てです。トホホ、もう笑うしかない)
ちなみに、わざわざ革コートを着るストーリー上の理由は、そのポケットに、かつて授与された名誉勲章が入っているからです。最終決戦に臨み、オールグレンがこれを取り出して装着する場面が、「名誉と誇りを取り戻した」象徴として感動的に描かれます……が、こんな格好では、見ている方は感動どころじゃありません。あーあ。


……以上っ! という訳で、この段階からよく、日本人が見ても「おおっ!」と思うような作品までこぎ着けたなぁ、と変な感動の仕方をしてしまいました。日本人スタッフの意見も採り入れつつ、必死で直して直して直して……という制作側の皆様の姿を想像すると。


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