Il modo della musica antica
第4回:弦楽器編

 さて、このオーケストラの楽器のルーツを探る連載もいよいよ最終回、弦楽器編をお 送りいたしましょう。オーケストラで最も人数が多いこのセクションはそれぞれのパー トが沢山の人数で演奏されています。音が高い方からヴァイオリン(第1、2)、ヴィ オラ、チェロ、コントラバスの四種類五部の編成が殆どです。どれもヴァイオリン族で 基本的には音域と大きさが違うだけで同じような形をしていますが、御先祖様もそうな のでしょうか。調べてみましょう。
 まず、ヴァイオリン。オーケストラでは主に旋律を担当し、独奏にも室内楽にも使わ れる楽器の花形です。その出現は16世紀と言われていますが、突然完成品が忽然と現 れたのです。最も初期のアンドレア・アマティやガスパロ・ダ・サロの楽器は今だに名 器として珍重され現役の楽器として使われています。普通はだんだん変化した痕跡があ る物なのですが、先祖と推定されるフィドルやレベックとの中間の楽器は今のところ知 られていません。そして18世紀にかのストラディバリによって完成されその後変化は 殆どありません。ただし、聴衆の求めに応じて音が大きくピッチが高くなるように改造 が加えられています。バロック以前に製作された名器も殆ど全て現代の求めに応じた改 造が加えられていて製作当時とは少し異なります。顎当てや肩当てが使われるようにな ったのは19世紀半ば以降のことです。
 ヴィオラもヴァイオリンとほぼ同時期に完成され、ヴァイオリン属の中声部を担うア ルトヴァイオリンとして出現しました。バロック時代に多用されたヴィオラ・ダ・ガン バとは全く異なる楽器です。ヴィオラ・ダ・ガンバは今は廃れてしまったヴィオール属 でフレットを持ち調弦などがヴァイオリン族とは大きく異なります。ヴィオラはヴァイ オリンほど大きさが一定せず、現在でもサイズに幅があります。
 チェロもヴァイオリンとほぼ同時に発明され、バス・ヴァイオリンとも言うべき楽器 です。ヴィオロンチェロと言う名称は17世紀以降で、それ以前は様々な名称で呼ばれ ていました。出現当初は大きさも音域も様々な物が作られ、現在のサイズになったのは ストラディバリ以降だと言われています。エンドピンが付くようになったのは19世紀 でそれ以前は膝ではさんで楽器を保持し演奏していました。
 ヴァイオリン属の楽器はいずれも19世紀に演奏場所が貴族のサロンなどからコンサ ートホールへと移ったため、大きな音が必要とされて楽器が改造されました。また同様 に弦も裸のガット(羊の腸)弦から金属巻き線へ、そして戦後はナイロン金属巻き線や スチールの弦が使われるようになりました。弓も19世紀初頭にトルテが現在使われて いるツルの反対側に反った張力の強い弓を発明しました。それ以前は武器の弓と同様に ツルに対して凸型に反った弓が使用されていました。最近ではバロック以前の曲を演奏 するために当時のスタイルの楽器や弓を使用することが普通です。
 最後にコントラバスです。現在ヴァイオリン属に分類されていますが、実は元々は前 述したヴィオール属の最低音楽器ヴィオローネでした。そのため現在でも調弦がコント ラバスだけ違います。他の楽器は五度刻みですが、コントラバスは四度刻みで調弦され ます。また弓の持ち方もヴィオール風に反対です。(フランス式はヴァイオリン族と同 じ持ち方です。)弦の数は普通四本ですが五弦の物や古典派以前には三弦の物も多く使 われていました。(三弦の場合は五度調弦されていたようです。)18世紀にヴィオー ル属からヴァイオリン属へ改造され始め、ウォームギアによるマシンペグ等の発明を経 て現在の姿になりました。
 さて何回かに渡ってオーケストラで使われている楽器のルーツに付いて色々述べてき ました。少ない紙面で駆け足で説明したため、かなり端折った部分も多かったのですが 御容赦下さい。現在オーケストラで使われている楽器が今の形になったのはそれなりの 理由があり、時代の要求によって刻々と変化して行った様子がお解りいただけましたで しょうか。それでは今まで乱文におつき合い頂きましてありがとうございました。

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