Il modo della musica antica
第5回:鍵盤楽器

 おや、前回最終回と言ったのにまた出てきてますね。現代の楽器を昔の楽器 と比較するこのシリーズ、今回は番外編ということで鍵盤楽器の巻をお届け します。
 オーケストラに鍵盤楽器は必須ではありませんが、いくつかの曲に参加してい ます。有名なところでは、サン・サーンス作曲交響曲第3番「オルガン付き」のパ イプオルガンとピアノや、ショスタコビッチ作曲交響曲第5番「革命」のピアノと かがあります。でも本来は独奏用楽器で、モーツァルトからベートーヴェン、 ショパン、リストなどピアノ独奏用の名曲は言うまでもなく沢山ありますね。 最初に知られている鍵盤楽器は紀元前5世紀のギリシアで作られた水オルガン 「ヒドラリウス」です。水圧を利用して空気を送り込む一種のパイプオルガンで、 後にふいごで送る現在のパイプオルガンに発展していきます。中世には片手で 演奏する携帯パイプオルガンが辻音楽師などに使われ、また教会には巨大なパイ プオルガンが設置されるようになっていきました。15世紀になると、音の数だけ 張った弦を爪で引っかいて音を出すプサルテリを機械化したチェンバロ(ハープ シコード)が考案され、18世紀にかけて隆盛を極めました。独奏楽器だけでなく 通奏低音(合奏の低音部の和音を受け持つ)やコンチェルトまで作られるようになり、 18世紀には指揮者はチェンバロを弾きながら指揮するというスタイルが確立され ました。また弦を叩いて音を出すクラヴィコードも作られました。
 さて、チェンバロの欠点として強弱のダイナミクスの幅が小さいことが挙げられ ます。そこで18世紀イタリアのトスカナ大公お抱えのチェンバロ製作家クリスト フォリは強弱がつけられる打弦楽器、すなわちピアノフォルテを発明しました。 その後改良が加えられ現代のピアノになるわけです。ピアノはその強弱の大きな 差と大きな音量のため、音楽の中心が王侯貴族のサロンからコンサートホールへ 移るという時代のニーズに乗って、チェンバロやクラヴィコードを駆逐しました。 でも、チェンバロとピアノはその発音機構も音色も全く異なる楽器ですので、現 在はチェンバロのために作られた曲はチェンバロで、ピアノのための曲はピアノ でというように演奏されるのが普通です。
 以上鍵盤楽器編をお届けしました。もっとお知りになりたい方にお勧めなのが、 名古屋市栄の芸術文化センターにあるアートライブラリーです。ここは音楽、美 術、演劇、映画、建築などアート系専門の県立図書館で他に類を見ない規模です。 愛知県が文化面で他県に誇れる珍しい施設ですので、まだ行ったことのない方は ぜひ一度ご利用されてみてはいかがでしょうか。楽譜の蔵書も多く、CDやLDも閲 覧できます。

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